一刀「元嗣(げんし)【韓浩の字】ってなんで女じゃないんだろうな?」
元嗣「……………は?」
俺たちは配置につくために、並んで歩いていたのだが、俺の発言に、元嗣が俺をおかしなものを見るような眼で見てくる。
一刀「……。いやだってさ、基本この国……っていうか三国ってさ、武将といえば女の子だろ?…強ければ強いほどな?」
元嗣「はぁ…、それはそうですね」
一刀「だろ?で、元嗣って強さ的には、真桜と同じくらい強いんだよな?それって将軍になれるくらい強いってことだろ?」
これはさっき、他の将に聞いたこと。
元嗣「まぁ、一応……。……しかし、場合によっては李典将軍より下のときもありますよ?」
一刀「場合?」
元嗣「そのときの感情といいますか、なんといいますか…」
一刀「ふーん……」
テンションで実力が変わるタイプか…。確か、呉の孫策がそうだと聞いたことがあるな…。
一刀「けど、どっちにしたって、男なのに三国の将軍たちと互角に渡り合えるわけだろ?じゃあ、やっぱり女の子じゃないとなぁ……」
元嗣「……………?……はっ!ま、まさか……!」
元嗣は顔を青ざめて、素早く俺から距離をとる。
一刀「……………………………なんだよ」
なんとなくムカつくぞ、こいつ。
元嗣「…………さ、流石は、魏の種馬。魏の種馬は、決して上層部以外には、抱かぬ、手つけぬ、種撒かぬ、の三つを正義としているというのを聞いたことがあります」
……何それ?────いやそれよりも、侍女の子と仲良くなりかけたことあるよ?……あと、それで何で俺から距離をとる?
元嗣「──上層部は全て女性。だが俺は、上層部に近いながらも───女性ではない」
なんだか自分の世界に入り始めて、だんだん声が小さくなってきたな…。近くに寄るか……。
元嗣「上層部には手を出さなければならない!だが俺は女性でない!それに疑問を感じた。───そして、それは同時に魏の種馬の矜持を傷つけた!」
一刀「いや、矜持なんてないよ!?」
誇りに思ったことは一度もないからね!?
元嗣「だが隊長は───────己の名を守るための方法を思いついた」
一刀「……なんだよ」
なんでこんなに物語風?
元嗣「それは───────────俺を菊の蕾を侵略するという悪魔のような手段」
一刀「………………え?いや、おい………」
こいつ今、なんつった?
元嗣「隊長は、思い切ったが吉日と踏み、俺を部屋に呼ぶ。俺は隊長の思惑など知らず、お叱り、もしくは褒美かと思い隊長の部屋に入る」
……なかなか行動的だな、元嗣の中の俺よ。
元嗣「部屋に入って始めに目に入ったのは、下着一枚の隊長。俺はビビっているのに対し、隊長は冷静に、『いいのか、ホイホイついてきちまって?俺はノンケでも構わず食っちまう男なんだぜ?』という」
え?その俺、最初からガチかよ!?
元嗣「そのセリフに俺は何が起こっているのか分からず、その場を動けない。その隙をつき、隊長は俺の手を引き、寝台へと引き入れる。そして隊長は「お前初めてか?」と聞く。そこで俺は『いや、前に李典将軍に…』と言いつつ、逃げようとする」
真桜、何やってんの!?──いや、それよりも!
元嗣「だが、隊長は俺の言に構わず、手を押さえつけ、俺の唇に──『いい加減にしろ!!!!!!』《バキッ!!》──ぐぼっ!!」
妄想(?)の止まらない元嗣にいい加減我慢できなくなり、青龍刀の峰を鼻尖に叩きつける。
一刀「お前、本気でそう言うのやめろよな!?てかお前、稟とキャラかぶり過ぎだ!」
鼻血出さないだけ、まだセーフだけどな!
元嗣「いっつー……。……じょ、冗談ですよー…。本気にしないで下さいよ……」
一刀「ホントか!?ホントなんだな!?」
元嗣「当たり前でしょう?俺は三度の飯より女の子の方が大好きなんですから…」
一刀「…ふぅ。そうか、そうだよな。よかった。……そういや、お前に『魏の種馬』の称号を譲るって言ったもんな?」
元嗣「いらないですよ!…というか、覚えておられたのですね?───よく話していたのに、俺の字も忘れていたくせに…」
一刀「しょうがないだろ?作者の後付け設定なんだから」
───ちょ、おま、バラすな!
元嗣「……後付け設定、とは?」
一刀「気にするな、俺もよく分からん。けど、言わなきゃならない気がしたんだ」
元嗣「はぁ………」
意味が分からないって顔だな。俺もだけど。
一刀「それより、早く配置についてくれ。元嗣が今回の戦のカギを握るかもしれないんだからな」
あくまで、『かも』だけどな。
元嗣「はっ!お任せ下さい!」
姿勢を正し、元気のいい返事。
一刀「ああ、頼む。じゃ、行って」
元嗣「は!」
元嗣が小走りでこの場から離れようとする。
一刀「─────あ、ちょい待ち」
その元嗣を呼びとめる。
元嗣「はい?」
元嗣が立ち止まり、こちらを向く。
一刀「一つだけいいか?」
ちょっと聞きたいことがあるんだよな。
元嗣「は、何でしょう」
真面目な顔で俺に答えてくる元嗣。
一刀「……………お前さ」
元嗣「はい」
一刀「───────マジで、真桜に菊の蕾を奪われたのか?」
元嗣「は?…いえ、寸での所で何とか逃げきれまし……た、ってまさか!?」
一刀「それはもういい!もう分かったから、さっさと行け!」
剣を構え、元嗣を威嚇する。
元嗣「は、はい!そ、それでは失礼します!」
今度は小走りではなく、全力でこの場から離れていった。
一刀「あの野郎……。この世界を去る時よりも、パワーアップしてやがる…」
前はもう少し素直だったのに…。
一刀「けど良かったな、奪われなくて。流石にトラウマになると思うし」
断じて、元嗣の後ろを奪いたいとか、そういう意味じゃありません。
一刀「………ふぅ。元嗣も行ったし、俺も配置につくか……」
軽く深呼吸をし、肺の中の空気を入れ替える。
一刀「戦、なんだよな、今から……」
この感じ、懐かしい。…元の世界では俺には無縁の感覚。
感じたくはない空気。─────けど、また肌に、肺に、目に、耳に、…全ての五感で感じたかったもの。
……この矛盾が、俺は『帰ってきた』んだ、と認識させてくれる。
一刀「それをネオ黄巾党の奴ら──────最悪の形で思い出させやがった」
────許さない。絶対に許さない。潰してやる。
俺の大切な人たちを傷つける奴は絶対に許さない。
────けど、それももう………。
一刀「くそ、ダメだな…。今は戦に集中しないと……」
俺も配置につこう。気合いを入れなおし、方向転換し配置場所に向かう。
一刀「今行くぞ、天和、地和、人和」
────────戦に勝った。
………なーんて、バトルをスキップ出来る、みたいなご都合展開で話は進まない訳でー。
…では、改めて。
俺も元嗣も、それに他の将兵、そして、助っ人の顔良に文醜も配置についた。
配置はこんな感じ。
舞台は馬で引き、民への被害が少なくなるように、盾として役立ってもらう。
その横には文醜と顔良を将とした部隊を配置。
そして俺はというと、…………役に立たないと思われているためか、民を守る2つ目の盾として、さらに後方に配置。その後ろには『避難が遅れている民』。
そういう配置になっている。
配置が終了して10分ほど。
一刀「そろそろ一刻だ。ネオ黄巾党の連中はまだなのか………」
義理堅き連中とか言っていたが、所詮は賊。天和たちを手に入れたいが為だけに、民を狙うなどという、虚言を用いているとしたら?
俺たちが、陣形を整えている間に遠方へ逃げているとしたら?
すでに天和たちは奴らに傷つけられているとしたら?
……ネオ黄巾党が現れないためか、考えが、どんどん悪い方向へ向かっていく。
一刀「くそ…」
青龍刀の柄をつぶさんがばかりの力で握りしめる。
一刀「早く、早く、早く、早「伝令!」…っ!」
来たか!
一刀「なんだ!?」
兵「前方に、ねお黄巾党の軍団を確認!数は約二万!『波曼』の二人も確認できています!」
よし!
一刀「わかった!下がってくれ!」
兵「は!」
一刀「よし、まず1つ目……」
─────うまく、釣られてくれよ?ネオ黄巾党よ。
黄巾党を率いるは、波才と張曼成の2人。この2人は目の前の光景に攻めあぐねていた。
波才「………どう思う?」
張曼成「あの舞台のことか?」
波才「ああ。避難が遅れている民を守るためだとは思うが、あの程度の張りぼてで我らを止められると思っているのか?魏の兵どもは」
目の前に映るは、数え役萬☆姉妹が公演の際に使用している舞台。波才の言う通り、確かに大きいが、壊せばすぐに抜けられる。
張曼成「…止められるだろうな」
それに対し、張曼成から出た答えは反対の意だった。
波才「なに?」
その答えが意外だったのか、訝しげな顔を張曼成に向ける。
張曼成「よく考えてみろ。張角たちを信仰している者が、張角たちが使用してきた舞台、この戦に勝った後に使える舞台を壊そうと考えるか?」
波才「………ちっ、考えんな。こいつらは『俺たち』とは違うからな」
張曼成「…仕方なかろう、それを利用しているんだ。兵どももこれだけは譲れんだろう」
波才の『俺たちとは違う』とはどういうことか?
それは、波才と張曼成は天和たちを信仰している訳ではないということ。
波才たちは、天和たちの為に黄巾党に入ったのではない。漢王朝に対する怒り、そして国家転覆を狙って天和たち、そして黄巾党を利用したのだ。
そして、黄巾党が無駄に膨大となった所を、華琳たちに黄巾党が潰されたとき、波才たちはすでに地下に潜っていた。
そして、反董卓連合結成直後から、黄巾党の残党を集め、鍛練を欠かさずに生きてきた。
その後戦は終わり、内政に力を入れる三国は少なからず『平和ボケ』をしていた。
それを好機と見たのか、天和たちを擁し、もう一度『黄巾の乱』を起こそうとしているのだ。
波才「……まぁいい。それだけで我らが止められると思っている愚鈍な魏の兵士どもに、今一度分からせてやろう」
張曼成「そうだな、張角たちを手に入れた兵どもの力を見せてやろう」
二人は同時に頷き、前を見る。
波才「聞けい!ねお黄巾党の戦士たちよ!」
張曼成「奴ら魏の弱兵どもは、我らに敵わないと踏んだ為か、神聖なる舞台を盾として我らの道を阻もうとしている!」
その言葉にネオ黄巾の兵たちの瞳に怒りの火が灯る。
波才「だが我らがその程度の策で止められると思うか!?」
張曼成「思わんだろう!」
兵『応!!』
波才たちの問に怒気をはらんだ声で答える。
波才「連中が、どんな策を弄しようが我らには通じぬ!」
張曼成「我らは天に認められし天兵ぞ!」
波才「以前、魏にはまやかしの『天』が付いたらしいが、天は『黄天』のみ!」
張曼成「まやかしの兵と、まやかしの民を潰せるのは我ら、『黄天』の兵のみ!」
波才と張曼成が同時に剣を掲げる。
波才「全軍!」
張曼成「抜刀!」
シャララララララララララン!
兵たちの槍、剣などの武器が一斉に構えられる。
波才「誇り高き天兵達よ!」
張曼成「全軍!」
『波曼』「突撃ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
兵『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!』
『波曼』の下知により、黄巾の兵たちは舞台を避けながら横にいる文醜と顔良の部隊へ突撃する。
波才「くく、奴らは単純でよいな」
張曼成「笑っている場合ではない。我らも行くぞ」
波才「分かっている。フッフッ…ここまでだな、俗物」
そう言って馬の走らせ、戦場へと向かっていった。
一刀「まやかしの『天』ねぇ……。ま、当たってるよ」
『魏の種馬』の方がよっぽど合ってるよ。
………認めた訳じゃないぞ?
一刀「…奴らは舞台を避けた、これで2つ目……」
信者って連中は信仰するものに関わるものを神聖視する。
一刀「残念ながらただの『盾』じゃないけどな…。頼むぜ…、文醜、顔良」
文醜「来た来た来た来た来た来た来たキターーーーーーーーーーー!!!!!!」
文醜は久々の戦に燃え、喜んでいる。
顔良「文ちゃーん!喜んでばっかいないで、きちんと北郷さんの策通りにしないとダメだよー!」
顔良はその文醜に気付き、文醜を冷静にさせようとする。
文醜「わーってるって!斗詩は大丈夫なのかー?鈍ってないだろーなー!」
顔良「大丈夫!桃香さんの所で鈴々ちゃんの相手とかしてきたからー!…………一度も勝ったことないけど」
聞こえないようにボソリと。
文醜「よっしゃ!じゃ、行くか!」
顔良「うん!」
文醜「お前らもしっかりやれよー!」
顔良「キツイかもしれないですけど、頑張ってください!」
魏兵『応!』
兵の返事に頷き二人は目の前を向き、黄巾の連中を見据える。
ネオ兵A「どけー!廃れた鈍兵共!!」
ネオ兵B「死ねよやー!」
近づいてきたネオ兵たちは槍や剣を振りかぶり、攻め立ててくる。
文醜「くっ!……強え!」
魏兵A「な、なんだ、この強さは!今までと違う!」
顔良「も、もしかして、天和さんたちを手に入れたから!?」
それに対し魏に属する『全員』が防戦一方。
ネオ兵C「弱えなぁぁ!これだから平和ボケした連中はよぉ!」
ネオ兵D「我らは黄天の兵!貴様らなどに負けぬわ!」
ネオ兵は反撃の隙も与えぬほど、果敢に攻める。
───だが、魏の兵には誰一人倒れていない。
その防戦一方にどれほど時間が経っただろうか。
それはどちらにも分からないだろう。
だが、どちらが疲弊しているかは明白だった。
攻め続けるのは、ネオ兵。防ぎ続けるのは魏の兵。
疲れが出始めたのは、ネオ兵だった。
───────そして。
文醜「ちくしょー!」
顔良「もうダメです!」
文醜と顔良のひと際大きい声が戦場に響く。
そしてこの2人はとんでもないことを言いだした。
文醜「お前ら逃げんぞ!」
顔良「敵いません!ここは一度撤退します!」
民が後で避難しているのに『逃げ』の意思を表に出す。
魏兵「お、応!」
魏兵も困惑しながらも、文醜たちに従う。
文醜「お前ら、こっちだ!」
顔良「舞台から離れてください!」
文醜の部隊は舞台の左下に。顔良の部隊は舞台の右下に、舞台から避けるように逃げていく。
ネオ兵A「え?は?────ちっ!今だ!行くぞお前ら!」
ネオ兵はその行動に直後こそ混乱したが、すぐに立て直し避難している民の方へ向かっていく。
ここは流石に精兵と呼ばれるところか。
─────だが
ネオ兵B「なっ!?」
ネオ兵C「なぜ、こんなに!」
─────ネオ兵を迎え撃つ者たちあり。
それは、舞台の裏にいた弓を構えた弓兵たちと、文醜、顔良の部隊後ろに『剣』をもっていた、弓を構えている弓兵たち。
なぜ、先ほどまで剣を持っていた兵たちが、弓を構えているのか?
それは、『合図』があったから。
それは───
文醜「ちくしょー!」
顔良「もうダメです!」
という、『ひと際』大きい声。
この『合図』で合計、約三千の弓兵たちは弓を構え、弓の巣へと入り込んだネオ兵たちへ狙いを定めたのだ。
当然魏の兵の困惑も演技。
将A「三!二!一!」
将B「斉射!」
その弓兵の斉射の合図は文醜と顔良に出番を取られた、将2人。
ネオ兵C「がぁっ!!」
ネオ兵A「ぬがぁっ!」
放たれた矢の雨に、ネオ兵たちは対応できなかったのか、次々と死んでいく。
そして、斉射が終わると同時に文醜、顔良の部隊は反撃に転じる。
文醜「よっしゃあっ!行くぞお前ら、今まで攻められなかった鬱憤を晴らすぞ!」
顔良「どんどん行ってください!」
魏兵『応!』
先程まで防御しか出来なかった憂さ晴らしとまでに攻め始める、
ネオ兵G「くっ!くそおおおお!」
ネオ兵L「ひでぶっ!」
弓隊による伏兵の混乱で、ネオ兵たちは反撃できないどころか、防御も満足に出来ない。攻守が逆転しただけでなく、守の機会すら持てない。
一刀「舞台はただの盾じゃないんだ。弓兵を隠すためでもある。兵が少ないことに気づけばこんなことにはならなかったろうにな」
これは正直やりたくないことその1。
なぜかというと、これは民を『囮』に使っているのと同義だからだ。
弓兵を隠すためには、舞台を盾に見せる必要があった。
だからあの時、元嗣が伝令に伝えるとき、
「『民』の『避難』を『遅らせる』ように伝えてくれ」
と、言ったんだ。
そうすれば、舞台の目的は盾『だけ』と思わせることが出来る。
そのことを文醜に『えげつない』とか言われたな。………それだけじゃないんだけどな。
一刀「これで3つ目……あと2つ」
最後のは運任せだ。……頼む!
文醜「押せ押せー!」
顔良「相手は下種な賊です!容赦はしないで下さい!」
文醜の斬山刀と、顔良の金光鉄槌が容赦なく敵を叩き、潰し、斬る。
その勇士に魏兵は士気が上がり、ネオ兵を地に伏せていく。
波才「くっ!貴様ら何をやっている!さっさと突破せんかぁ!」
魏兵にいい様にやられているネオ兵に対し、波才が激を飛ばす。
ネオ兵Z「し、しかし!部隊は混乱!しかもあれほど弓兵がいるとなれば攻め込んでもまた狙い撃ちされます!」
ネオ兵が言うことももっとも。だが、
張曼成「だからといってこのままでいい訳が無かろう!精魂尽きるかのように攻めに転じろ!」
ネオ兵Z「は、は!」
張曼成の言葉に反撃に転じようとする。
だが、如何せん混乱が大きい。うまくリズムに乗っていない。
波才「くそぉお!貴様ら舞台を突きぬけろ!そこからあの臆病者の弓兵たちを殲滅しろ!」
その兵たちに憤りを感じ、舞台付近の兵たちに指示を出す。
ネオ兵Q「し、しかし、あれは神聖なるもの!それをこw「黙れっ!」……ひっ!」
波才の舞台を破壊しろとの指示に、拒否しようとした兵に張曼成が怒号で返す。
張曼成「そのようなことを申しておる場合か!ここで我らが負ければ天和ちゃんたちの歌を聞けないばかりか、会うことすら叶わぬのだぞ!」
張曼成はネオ兵たちを相手にするときだけ、『張角』ではなく『天和ちゃん』と呼ぶ。
波才「それにだ!舞台ならばまた造ればよかろう!この舞台よりもより良いものをな!…舞台はまた造ればよいが、死んでしまえば天和ちゃんたちに会うことに『また』はないのだぞ!」
そして波才も同様に『天和ちゃん』といい、会えなくなることを強調しながら、兵たちを奮い立たせようとする。
そして、その言葉に兵たちの目が変わる。
ネオ兵Q「そうだ、俺たちが造るんだ!」
ネオ兵W「天和ちゃんたちは俺たちのものだ!魏の連中に渡すものか!」
ネオ兵E「そうだ、所詮は魏が作ったもの!真の舞台は我らで造るのだ!」
自らを奮い立たせる言葉とともに、ネオ兵たちは次々に部隊の上へと駆け上がる。
ネオ兵R「うわっ!」
兵の一人がこける。
波才「何をやっている!さっさと登れ!」
ネオ兵R「は、はい!」
波才の叱りを受け、急いで上っていく。
そして、何千人の兵が舞台へと上ろうと舞台へと近づいていき、そのうち何百人かは、舞台の壁にたどり着き、壁を武器で壊しはじめた。
だが、そこでもまた足を滑らせる兵が多くいる。
波才「…まったく、何をやっている。……まだ混乱で腰が定まっておらんのか?」
波才はそう思っていた。
一刀「来たか、4つ目!できればもう1回弓兵で蹴散らしたかったんだけどな!」
悔やんでいる間にも舞台が少しずつ壊されていく。
そんなに厚い壁じゃない。あと30秒ほどで全壊するだろう。
────この迅速な行動、混乱した兵をまとめあげる能力。…なかなかいい指揮官みたいだな。
一刀「けど、……混乱してるのは兵だけじゃないみたいだな、波曼…」
策が成功したことについニヤける。
一刀「……おっと、それどころじゃないな。銅鑼を鳴らせ!三回だ!そして弓隊は『あれ』を準備しろ!」
魏兵『は!』
兵たちが準備に取り掛かる。
頼む、気付くな!
ガシャーンッ!ガシャーンッ!ガシャーンッ!
文醜たちに聞こえた銅鑼の音。これは『合図』。
文醜「よし、来た!お前ら全力で逃げろ!巻き込まれるぞ!」
顔良「弓隊の皆さんもなるだけ遠くに逃げてください!」
銅鑼の音と2人の声で兵は一斉に舞台から離れていく。
波才「……なぜあそこまで足を滑らせる?」
舞台に上がろうとしている兵たちをみて波才は呟く。
張曼成「波才!」
原因を考えているときに張曼成が近くに寄ってくる。
波才「なんだ!」
張曼成「……魏軍が舞台から離れていくぞ」
波才「なに!?」
波才が確認すると、そこにはネオ兵だけ。
張曼成「…どういうことだ?先程の銅鑼も…よく滑る舞台、この手際の良さ、それにこの臭い………はっ!」
張曼成は気づく。そして波才も。
ネオ兵P「おらぁあ!俺が一番乗りだぁっ!」
そう言って、穴の開き始めた舞台に向かって剣を振りかぶる。
波才「や、やめろ!お、おr「───────もう、遅えよ」…なに?」
その聞こえた声が誰だったのか、彼は分からない。なぜ聞こえたのかも。だが、それは波才の耳に強く残った。
ネオ黄巾党の開けている小さな穴から波才らしき男が止めようとしているところが見えた。
一刀「───────もう、遅えよ」
もう詰んでるんだ。
一刀「弓隊!前方、『舞台』に構え!三、二、一、……斉射!!!!」
シュパパパパパパパパパパパパパ!
俺がいるところの部隊の矢が舞台に向け、発射される。
──────これはな、罰だ。
波才「あ、あれは……っ!」
はるか後方から飛んできた矢。それは────
張曼成「やはり、火矢か!」
────赤き光を宿し矢───火矢。
その火矢は舞台に刺さると、舞台を一瞬で燃やしつくす。
ネオ兵M「がぁあああああああ!ああああああああ!」
ネオ兵F「あづぅぅうううう!誰か!誰か、助けてくれええええ!」
その燃え上がる火を、舞台に群がっていたネオ兵に逃げる術はなく、数千の命が散っていく。
波才「これが、これが!これが、正規の軍のすることかぁああああ!武人としての誇りはないのかぁ!?」
張曼成「これが民に対することだというのかぁ!」
舞台から離れていた波才と張曼成は魏軍に向け怒りのヤジを飛ばす。
一刀「武人としての誇りだと?────これは戦じゃない、いわば粛正なんだよ。それに悪意を持って人を殺す賊を民とは呼ばない」
とはいえ、
一刀「やっぱり火計は見ていていい気はしないな」
それが自分の考えた策ならなおさらな。
この火計の為に、舞台にはあらかじめ油を敷かせた。さらに、舞台の中には油壷を仕込んである。
だからこれだけ火の回りが早い。
これが、正直やりたくないことその2だ。
一刀「けど、それでもネオ黄巾党のしたことは許せることじゃない」
汚い欲望のための殺戮を、ただ勝つだけで終わらせるわけにはいかないんだ。
一刀「お前たちが殺してきた民たちの怒りが、地獄の業火となりお前らを灰になるまで燃やし尽くす。───ネオ黄巾党よ、地獄より来たりし怨嗟の的となれ」
そう言って親指を下に向ける。
─────ああ、それとな
ガシャーンッ!ガシャーンッ!ガシャーンッ!
兵「お伝えします!右前方に騎影!旗印は楽、李、于!楽進将軍、李典将軍、于禁将軍の部隊です!」
一刀「……分かった。下がってくれ」
兵「は!」
──────お前たちへの罰は、まだ終わってないんだよ。
続く!
~あとがき~
はい、というわけで毎回恒例のオチが今回はなし!ということになりました。
(今回しかも、絵まで入れてみたよ?大丈夫かな?)
韓浩(元嗣)が女だったってことはネタにさせていただきましたー。…すみません。
というか、元嗣って呼んだ方がいいですか?韓浩って呼んだ方がいいですか?よろしくお願いします。
…………僕は頑張った!頑張ったんだよぉ!策が微妙、とかいうなぁ!
とにかく頑張りました!
…どうでした?どなたか意見をお願いします。
次で戦は終わりです。
これはあくまでプロローグですからねぇ。やっと本編に向かうのですよ。
でわでわ~
ってか、長いな!?
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繰り返しながらも新たなる外史が帰ってきた!!
二か月経ってないぐらいかかってますね。…覚えてますか?
あ、ちなみに図を書いてみましたー!
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