No.741434

黒外史  第十七話

雷起さん


やっとヨメが出せましたー!

初登場キャラ:紀霊・徐庶・大喬・小喬

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2014-12-04 13:34:25 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2142   閲覧ユーザー数:1821

 

黒外史  第十七話

 

 

 汜水関から官渡を目指して退却する反北郷連合。

 敗走時の混乱の為、他の軍がどのような動きをしているかを完全に把握するのは名将名軍師であっても困難な状況となった。

 殿に残った孫堅軍と本隊である劉虞袁紹軍の位置は例外だが、この混乱に紛れてひとつの軍の姿が消えている事に誰も気が付いてはいない。

 その消えた軍とは………。

 

「七乃!妾たちは何処に向かっておるのじゃ?」

「嫌ですねぇ、美羽さま♪南陽に戻るってお話したじゃないですか♪」

 

 一度中隊や小隊規模に別れて散り散りになり戦場を抜け出した袁術軍は、荊州南陽に向かう道で再び集結しつつあった。

 馬で駆けながら軍勢の数は百、千、万と増えて行く。

 

「劉弁さまの仇も討てず、連合軍から離れてしまって良いのかのう………」

 

 アホの子袁術とはいえど、自分の軍だけで北郷軍と董卓軍を相手にする事は不可能だと痛感していた。

 一刀が戦う姿を見ては漏らし、董卓が戦う姿を見てまた漏らし、呂布の戦う姿を見て更に漏らして袁術は理解したのだ。

 しかし張勲は気にした風もなく、むしろ楽しそうに笑ってさえいる。

 その様子に気付いた将軍の紀霊が、馬を寄せて訝しげに問い糾す。

 

「おい、張勲!お主何を企んでおる!」

「ええ、企んでますよ♪美羽様にどうやって天下を取っていただくかを♪」

「それが何故、連合を離脱し南陽に戻る事になるのだ!?このままでは連合諸侯まで敵に回し孤立無援となってしまうぞ!」

「嫌ですねぇ、紀霊さんったら♪そんな顔良ちゃんみたいな心配しちゃって♪もっと視野を広くして状況を見てくださいよぅ。」

「視野を広く?」

「あんな化け物揃いの北郷軍と董卓軍ですよ。おまけに洛陽には馬騰さんの軍まで居るんです。勝目なんか有りませんよ、今は♪」

「今は…………成程、読めたぞ。貴様は北郷連合軍と反北郷連合軍が争い合って共に弱体化するのを待って漁夫の利を狙うつもりだろう。しかし我らには反北郷連合の様な大義が無い。それに軍備の拡大も間に合うとは思えん。」

「その二つを一気に解決する手が有るから、こうして南に向かってるんじゃないですか。」

「何だとっ!?」

「紀霊さんは劉表さんが今は襄陽に居る事を知らないんですか?」

「劉表殿が襄陽に!?あの方は洛陽ではないのか?」

「ええ♪私達が洛陽を逃げ出した後、劉表さんも適当な理由を付けて襄陽の太守に収まったんです。劉表さんはどうやら、自分も何進大将軍の配下だったから自分が洛陽に居たら民に要らぬ不安を与えるとか言ったみたいですけど、あのタヌキ親父がそんな殊勝な訳無いですよねえ♪。」

「しかし、劉表殿は今回の反北郷連合に参加しておられん。果たして我らと手を組むか?」

「劉表さんが連合に参加しなかった理由は袁紹様が劉虞様を担ぎ上げたからですよ♪劉表さんは内心『なんで儂ではないんじゃああああっ!』とか思ってますからねえ♪」

「その劉虞様が今度は劉備殿を担ぎ出したからな………劉表殿は今の反北郷連合には絶対に参加しないな………」

「そこで美羽さまが劉表さんを推挙すると言えばホイホイ言う事聞くという寸法です♪」

「袁術様の推挙だけでは劉表殿が首を縦に振るとは思えんが………」

「江東の地も手に入ると言えば確実ですよ♪」

「江東!?…………そうか、孫堅軍は殿に残った。最悪全滅。良くても孫堅軍は拘束されて江東には戻れない………空き巣狙いとは貴様らしい……」

「北郷連合に取られるのを防ぐって言っとけばいいんですよ♪」

「物は言い様だな。」

 

 紀霊は溜息を吐きながらも現状の打開策としては悪くないと思い始めていた。

 肝心の主がどう思っているのかと見てみれば、珍しく袁術が難しい顔をしている。

 

「のう、七乃。紀霊。つまりはどういう事なのじゃ?」

 

「「ですよねえ~」」

 

 紀霊も結局は『アホの子ほど可愛い』を地で行く人間だった。

 袁術の父袁逢に仕え、袁術を幼い頃から見て来た紀霊である。

 自分が主を守り盛り立てねばと改めて心に誓うのだった。

 

 

 

 

 一方、官渡へ向けて浸走る反北郷連合。

 そこは補給基地として物資が集められており、追撃を迎え撃つには格好の場所だ。

 馬を駆りながら劉虞と曹操は迎撃の方針を話し合っていた。

 

「曹操殿、官渡の砦に籠城して各地の諸侯に援軍を要請するか、官渡で数日耐えてから完全に撤退して再起を図るか。どちらかになると思いますが貴方の意見はどうですか?」

「劉虞様、この戦はまだ始まったばかり。ここで完全に撤退して反北郷連合が散り散りになってしまえば、日和見していた諸侯が北郷側に従い何れは各個撃破されてしまうでしょう。ここは何としても官渡で勝利して日和見共をこちらの味方に付ける必要が有ります。」

 

 曹操が不敵に笑うのを見て、劉虞は気が付いた。

 曹操はこうなる事も予想して準備を進めていたに違いないと。

 

「官渡で必勝の策を用意してある様ですね。」

「我が軍に李典という面白い将が居ます。その者が考案した新兵器で北郷軍を蹴散らしてご覧に入れましょう。」

 

 最初からこうなる様に仕向けたとまでは考えていないが、曹操が己の力を世間に広く知らしめるには絶好の舞台になったのは確かだ。

 しかも、負けても風評の下がるのは総大将の劉虞と本隊の袁紹で、参戦しているだけの曹操軍への影響は微々たる物だ。

 尤もここで負ければ曹操軍の物的損害も大きくなるので、官渡での曹操軍の働きは苛烈を極めるだろう。

 そこまで考えて劉虞は大きく頷いた。

 そんな劉虞と曹操を劉備と張飛が後ろから追いかけ目を凝らしている。

 汜水関で曹操に抱えられながら馬に乗せられた劉備だが、今は自分で手綱を握っていた。

 劉備の横で張飛も手綱を握っている。

 

「(桃香お兄ちゃん。今なら逃げられそうなのだ。)」

 

 張飛は後ろを走る許緒と典韋をチラ見で確認した。

 自分ひとりでも撃退出来る確信している

 しかし劉備は頭を降った。

 

「(ダメだよ、鈴々ちゃん。愛紗ちゃんとはぐれたままだし、美花(ミーファ)さん、雷々ちゃん、電々ちゃん、それに兵のみんなとも離れ離れなんだよ。わたしが逃げたらみんながどんな目に遭わされるか判らないよ。)」

 

 張飛は劉備の気持ちを察して口をつぐんだ。

 

「(それに今の曹操さんの話…………新兵器がどんな物か確認してから逃げて、一刀さんに知らせた方がいいと思うの。)」

 

 劉備の決意に満ちた目を見て、張飛も強く頷く。

 そこに後ろの軍勢を掻き分けて、物凄い勢いで近寄る騎馬の姿があった。

 

「あれは愛紗ちゃん♪」

「愛紗なのだっ!」

 

「遅くなりました!桃香様っ!ご無事ですか!?」

 

 許緒と典韋の横を抜けて劉備の隣にピタリと着ける。

 見事な手綱捌きに劉虞と曹操も振り返りながら「ほう」と感心した。

 

「鈴々が付いているんだから桃香お兄ちゃんが無事なのは当たり前なのだ♪」

「わたしよりも愛紗ちゃんはどうなの!?怪我してないっ!?」

「この関雲長、そう簡単に敵の刃に体を触れさせはしませんよ♪何より我ら三人は…」

 

「「「生まれた日は違えども!逝く時は同時を願わんっ!」」」

 

 劉備、張飛、関羽の三人は声を揃えて笑い合った。

 それを見ていた曹操は目を細めて劉虞に語り掛ける。

 

「劉備に対する二人の忠義。見ていて気持ちがいいではありませんか。」

「そうですね……しかし貴方にも後ろに居る許緒と典韋。それに夏侯兄弟を初め多くの臣下が貴方を慕っているではないですか。」

「それはそれですよ。特にあの関羽の武と智と忠義は欲しくなりませんか?」

 

 劉虞は言葉に詰まり、曹操の顔を凝視した。

 曹操は劉備を自分の代わりをさせるために劉備を巻き込んだと思っていた。

 それは間違い無いだろう。

 しかし、それと同時に劉備から関羽を奪いたいみたいな事を言い出す。

 曹操は劉備を味方にしたいのか、したくないのか。

 劉虞は曹操という人物を見誤っていたのではないかと迷い始めていた。

 

 

 

 

 そして汜水関では一刀が率いて出陣した追撃部隊を張遼と趙雲に任せ、一刀自身は孫堅軍の受け入れを自ら行う事にした。

 口約束とは言え約束は約束だ。ここで対応を間違えれば董卓の思惑通りの未来が待っている。

 無血で迅速に江東を支配下に置ければ、それだけこの外史から抜け出す時間が早くなるのだ。

 将兵全員の武装解除をした後、将を汜水関に連行する。

 しかし実際は連行と言うより招待と言った方が近かった。

 先程は大まかな話しかしなかったが、今度はより具体的な話をする為に軍議を行う部屋へ全員を通し、一刀はお茶も用意させて話し合いを始める。

 

「おいおい、えらく待遇がいいじゃねえか。」

 

 孫堅はまるで警戒する様子も無く、どっかりと椅子に座っていた。

 孫策も似たような態度で席に着いているが、この二人以外は警戒しまくっているのが嫌でも伝わってくる。

 一刀は孫堅の隣の席に着きその様子を一通り眺め、軽い口調で話しだした。

 

「孫堅さん、ぶっちゃけて言わせてもらうぞ。俺の味方になってくれ。」

 

 この場に居た全員が驚いた。

 いや、正確には管理者五人は例外だが、クリームの孔明ですら驚きの表情を見せている。

 その中で最初に言葉を発したのは孫堅の軍師、張昭だった。

 

「北郷殿!貴方は先程文台様に法に則った裁きをと仰言られた!その舌の根も乾かぬ内に文台様へ己が私兵になれと言われるかっ!」

 

 見た目はまるで少年の様な張昭が席を蹴って立ち上がるのを、一刀は内心懐かしさを覚えながら見返した。

 一刀の記憶に有る女性の張昭とまるで同じ反応を見せたからだ。

 張昭と出会う事が出来た外史では、蓮華と子供みたいな口喧嘩を繰り返し、そのとばっちりを受けて一刀もよく怒鳴られていた。

 

「先ずは名前を教えて頂いても宜しいですか?」

 

 一刀は判っていながらそう問い掛ける。

 

「私の名は張昭!字を子布と申す!」

「では張昭さん、貴方の問いに答えよう。俺は孫堅さんに『漢の臣』かと訊いた時、孫堅さんは『そうだ』と答えた。ならば罰を下すのは天子様である帝でなければならない。俺が孫堅さんの味方だとハッキリさせておけば、罪を軽くする嘆願がしやすく、事実上の無罪まで持っていける自信がある。」

「そ……それは法を捻じ曲げる様な物ではないか!収賄と何ら変わらん!」

「いや………孫堅さんを助けなきゃいけない立場の人がそれを言い出しちゃダメでしょ。」

 

 一刀は堪えきれず苦笑交じりで張昭との問答を楽しんでいた。

 そこに今度は孫権が席を蹴って立ち上がる。

 

「雷火!貴方はお父様を斬首にしたいのっ!?」

「その様な訳有りますかっ!この張昭が身代わりになりましても文台様はお守りしてみせる所存ですぞっ!」

 

「ぶわっはっはっはっはっ♪」

 

 孫堅の爆笑で孫権と張昭は呆気に取られ、目が点になり言い合いがストップした。

 

「ようし、雷火!それじゃあお前は俺の首の代わりに北郷の所へ人質に行ってくれ♪」

 

「…………こ、この身で文台様をお救い出来るのであらば、喜んで参りましょう!」

 

 張昭は孫堅の考えを読み取ろうと考えたが、瞬時に答えが出ないと諦め、破天荒な主の考えは後で聞けば良いと思い決断した。

 

「そんじゃま、北郷。ここに来る前に話した俺の末っ子も一緒にこの場で預けるぜ。おい、小蓮!」

「はい!お父様!」

 

 元気よく立ち上がったピンクのツインドーナツ。

 見た目が一刀のよく知る小蓮と殆ど変わりがないのに、朱里とそっくりの諸葛均の時ほど衝撃を受けなかったのは、単に一刀が慣れてきたからなのと孫尚香の一刀を値踏みする視線に気付いていたからだった。

 

(性格もシャオと同じっぽいぞ…………これは出来るだけ距離を取って接する様に気を付けていないと…………)

 

 どの外史でも積極的な小蓮に流されてしまうのを自覚していたので、何かの拍子に道を踏み外す可能性が一番高い相手である。

 一刀はシモ的な意味で一番警戒しなければいけないと心に刻んだ。

 

「北郷殿。尚香様が行かれるのでしたら、我が子二人もこちらに呼びたいのですが、宜しいですかな?」

 

 喬玄が挙手をして発言した。

 その態度は実に事務的で我が子を人質に差し出す父親とは思えなかった。

 しかし、一刀は心を押し殺した結果なのだろうと思い、こちらも事務的に対応しようとした…………が、今のセリフの引っかかるワードに気が付いた。

 

(二人?さっきは『我が子』としか言わなかったよな?)

 

「何だ、喬玄。お前もあの子達を人質に出すのか?」

 

(喬玄っ!?前に孫堅さんと黄蓋さんは『げんきょう』って呼んでた筈………って!俺はこの人から名前を直接聞いて無いじゃないかっ!なんで今まで気が付かなかったんだっ!?)

 

「はい、大喬と小喬を尚香様のお世話役に…………どうやら雷火殿のお世話もする事になった様ですが。」

 

 

(大喬!小喬!)

 

 

 この時、一刀の封印がまたひとつ外された。

 一刀の頭の中に大喬と小喬との思い出が激流の様に思い出されて行く。

 

「ご主君、どうしました?ぼ~~~~~~~っとして。『江東の二喬』に会えるからって舞い上がってるんですか?」

「うるせえっ!!お前は劉備達を助け出す策を考えてろっ!!」

「ああ、その事なんですがね……」

 

 

「ちょほいと待なは!」

 

 

 会議室の扉が突然開かれひとりの男が現れた。

 

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

 

 その男が手にしたギターを掻き鳴らす。

 

「…………なんだこいつ?」

 

 一刀は可哀想な人を見る目でその男を観察した。

 赤いシャツに黒い革のベストとパンツ、黒いテンガロンハットを被り、手にしたギターも真っ赤。

 

「臥龍諸葛孔明。主を主とも思わねえ大胆不敵で不遜な態度。そんなクソ度胸もこの国じゃぁ二番だ。」

「ほほう、では一番は誰だというのです?」

「ヒュ~………チッチッチッ!」

 

 男はテンガロンハットで隠れた顔の前で人差し指を数回左右に揺らした後、その指で鍔を押し上げニヒルに笑った顔を見せ、次に親指で自分を差してみせた。

 

「ふふふ、相変わらずですね。元直ちゃん♪」

 

「ぶふっ!」

 

 一刀は思わず吹き出した。

 孔明が『元直』と呼んだのでこの男が誰だか理解出来たのだが、とても『ちゃん付け』で呼べる様な代物では無かった。

 

「いよぅ!初めまして、天の御遣いさんにお偉いさん方!俺ァ人呼んで『胡弓を抱いた渡り鳥』!徐庶元直とぁ俺の事よっ!」

 

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

 

「胡弓じゃなくてギターじゃねえかっ!」

「天の国では胡弓を『ぎたあ』と言うのですね。ひとつ勉強になりました♪」

「あいつの持ってるの、胡弓と全然違うだろうがっ!そもそも弓を使わずに弾いてるじゃねえかっ!」

「また細かいことを気にしますね、ご主君は。」

 

「まぁまぁ、天の御遣いさんよぉ。そんな事より、さっきの話なんだが。」

 

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

 

「俺がその劉備の所に潜入して助け出してきてやるぜぇ!」

 

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

 

「いちいちギターを掻き鳴らすなっ!って、あんたが!?」

「ええ、その為に私が元直ちゃんを呼んだんですよ。元直ちゃんも侠ですから劉備さんとは馬が合うと思いまして。」

 

(う~~ん、正史の徐庶と劉備の関係を考えればそうなのかも知れないけど、向こうには曹操も居るし………)

 

 正史で曹操が徐庶の母親を人質にして劉備から離反させるのは有名な話だ。

 一刀はその事を懸念していた。

 まあ、目の前の徐庶が胡散臭すぎるのが警戒する原因なのだが。

 

「なあ、徐庶。あんた親はどうしてる?」

 

 一刀が問い掛けると徐庶は滝の様に涙を流しだした。

 

「えっ!?ど、どうしたんだいきなり………」

「天の御遣いさんよぉ…………あんたいい人だなぁ!俺っちの親の心配してくれるなんてよぉ!でも大丈夫だ!俺の親父は襄陽で飯屋をやってるが、俺が死んじまう覚悟は家を飛び出した時から出来てるさぁ!」

 

「いや、別にそんな意味じゃ………」

 

「燃えてきたっ!この徐庶元直が劉備玄徳を助け出してやるぜぇっ!」

 

 徐庶は拳を握り、瞳と背景はに炎が燃え上がっていた。

 

「(流石ご主君。一言で元直ちゃんの心を掴みましたね。)」

「だからそうじゃ無いっての!」

 

「この熱い思いを歌わずにはいられねぇっ!!」

 

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

「燃えるオト~コの~!アカイ…」

 

「その歌は拙いから止めろっ!!」

 

 

「一刀様!反乱軍は官渡に向かっていると霞殿から連絡が………何なのです、この奇妙な男は?」

 

 

 会議室に走り込んで来た陳宮はギターを掻き鳴らす徐庶をジト目で眺めた。

 

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

「官渡だな!それじゃあちょっくら行ってくるぜぇ!朗報を待ってなぁ!」

ジャンジャカジャンジャカジャカジャカジャン!

 

 徐庶はギターを掻き鳴らしながら走って出て行ってしまう。

 こうして奇妙な徐庶の冒険が新たに始まったのだった。

 それを孔明以外の全員が疲れた顔で見送る。

 

「あ~…………俺達も官渡に向かう為の軍議を始めるか………」

 

 徐庶の事は極力触れない形で軍議は進められた。

 

 

 

 その頃、孫堅軍の兵がまとめられた場所で、輜重隊の荷物を整理している兄弟の姿が有った。

 

「ねえ、小喬ちゃん………お父様は大丈夫かな?」

「お父様は大丈夫よ!それよりもあたしはお兄ちゃんの方が心配だよ………」

「わたしは…………」

 

 大喬と小喬の兄弟だ。

 小喬の見た目は一刀のよく知る姿とほぼ一緒だった。

 ピンクのセーラーカラーの白いワンピース。

 違うのは胸が完全に真っ平らで、完璧な男の娘という点だ。

 対して大喬は大きな外套で全身を包み、顔もフードを被って隠していた。

 

「何が有ってもあたしがお兄ちゃんを守るんだから!」

「小喬ちゃん…………」

 

 小喬が大喬を庇う様に肩を抱き、大喬は外套の胸元を強く握り締める。

 

(何故お父様はわたしを人質に決められたの?…………わたしではきっと北郷様の怒りを買うだけなのに………そうなれば孫呉は致命的に………皆さんに迷惑を掛けてしまう……)

 

 大喬はフードの下で涙を流した。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

三爸爸に続いてこちらでも徐庶登場!

元ネタはまたしてもかなり古いですが小○旭と怪傑ズ○ット。

徐庶が侠だったのは今では有名なので、最初は任侠ヤクザっぽく考え始めたのですが、いつもの様に道を踏み外してしまいましたw

 

 

ここでお知らせです。

この黒外史を二ヶ月程お休みします。

理由は三爸爸の方の『クリスマス』『お正月』『バレンタイン』ネタにかかりっきりになるのと、去年の年末年始に黒外史を書いていて悲しい気持ちになったからです……………。

そんな訳で次回の黒外史は暫くお待ち下さい。

 

 

 


 
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