No.740091

寂しがりやな覇王と御使いの兄21話

あなたまさん

益州編です~焔耶の扱いがみんなにばればれだった!

2016/1/14 手直し完了。
まだまだ手直しの先が長い

2014-11-28 13:12:13 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10939   閲覧ユーザー数:8082

風「稟ちゃん……抜け駆けしましたね」

 

桂花「いきなりどうしたのよ」

 

風「稟ちゃんとお兄さんがいい雰囲気になった気配がしたのですよ」

 

桂花「あんた時々怖いわよ・・・」

 

いきなりおかしな事を言い出すのには以前からだから驚きはしないものの、一刀の事に関してはそろそろ人間を辞めてるんじゃないかという節がいくつも見られるようになった。未来の言葉で、風の事を電波と言うらしいのだが、この電波な発言をするのが増えたら……自分の手に負えないから勘弁して欲しいと思う桂花だった。

 

侍女A「お嬢様、旦那様から書簡が届きましたのでお届けに参りました」

 

風の電波発言に困惑している時、桂花の身の回りの世話を任されている侍女から手紙を渡された。勿論送り主は一刀である。侍女はも悪戯心が芽生え、一刀の事を旦那様と呼んで桂花をイジっている

 

桂花「だからあの馬鹿は旦那じゃないから!」

 

侍女「つい間違えてしまいました。呂珂様からのお手紙です」

 

桂花「いいから!速く寄越しなさいよ!」

 

侍女A「そんなにがっつかなくても、誰も手紙を取ったりしませんよ」

 

風「そうですよ~桂花ちゃん」

 

桂花「ほんとうるさいわね!いいから下がりなさい!」

 

侍女との会話に風が加わったらそれこそ収拾がつかなくなる、そう思った桂花は強引に侍女を下がらせ、まだイジリにかかってくる風を完全無視して手紙を読み始める。手紙の内容は汝南で明命や亞莎と出会った事、亞莎を美羽に仕えるようになった事、襄陽で劉備と再会した事と、伏龍・鳳雛の勧誘に失敗した詳細などが書かれていた

 

桂花「……あの馬鹿の甘さは直らないわね」

 

風「どうしたんですか?桂花ちゃん」

 

桂花「一刀から書簡が届いたのだけど、以前呉に仕えていた呂蒙を袁術の陣営に加えさせ、諸葛亮・龐統を劉備に譲ったらしいわよ。その代わりに、同じく呉の将軍だった周泰を引き入れたみたいだけど」

 

なんでせっかく手に入れた戦力を袁術に就けたのかが理解出来ない表情だったが、風はなんとなくだが一刀の思考を読み取っていた

 

風「この世界の袁術ちゃんはお兄さんの妹的ですからね~前は孫策さん達に領地追われてますし、それを阻止するために、呂蒙ちゃんと黄忠さんを袁術ちゃんの配下に加えさせたのでしょう~」

 

桂花「黄忠は一刀が説得する前に居たって事は、旅する以前から手を打っていたという訳ね。というか、あれだけ力説しておきながら、あっさり龐統を諦めたところが馬鹿なのよ!」

 

風「まぁ……あの二人は以前も劉備さん陣営でしたからね~。伏龍・鳳雛の件に関しての詳細は、なんと書かれているんですか~?」

 

桂花「えーと、劉備が二人を登用に来てた時に一緒になって、護衛も連れていなかったから女学院まで一緒に行き、劉備の大徳に触れて、二人の決意が固まったのが見えたから勧誘しないで益州に向かうて書いてあるわね」

 

桂花独自の情報網で、劉備が太守まで出世している事、桂花と風も劉備が孫家四天王の程普と韓当、徐栄などを配下にしている情報を入手していた。それに加えて諸葛亮と龐統の加入は風達を警戒させるには十分な戦力だった

 

風「白馬陣営の公孫讃さんに燕人張飛ちゃん、元孫家四天王の程普さんと韓当さんの武に加え、伏龍鳳雛の知……そして劉備さんの大徳による治世……むぅ~強敵ですねー」

 

桂花「えぇ、しかも風と一刀曰く、多少なりとも甘さはあるけど、王と呼ぶに相応しい才覚なのでしょ?」

 

風「ですねぇ、桂花ちゃんもそのうち解ると思いますが、以前の劉備さんの人物像は一回捨てた方がいいかと。劉備さんに領土野心がないのが幸いですね」

 

実際に会って話しを聞いている風は劉備の才覚の一部を感じとる事が出来ていた。現在一刀と旅をしている稟も劉備と出会い、風と同じ結論に至っている、桂花も同じように出会い、会話を重ねれば理解するだろうと風は踏んでいる

 

桂花「華琳様・夏侯姉妹・趙雲・関羽に新しく仲間にしたっていう、周泰に私達3軍師……それに一刀と恋がいるんだし、そうそう劉備に負ける事はないんじゃない?」

 

風「まぁ~敵対したらの話しですから。お兄さんと劉備さんが男女の関係になる事はありますが、敵対する可能性はほぼ皆無かと……むぅ、お兄さんの浮気ですか……帰ってきたらお仕置きです」

 

桂花「勝手に可能性を示唆して、勝手に嫉妬してお仕置きって……あんた流石にそれはどうかと思うわよ」

 

風「おや、あれだけ種馬に突っかかってた肌馬の台詞とは思えないのですよ」

 

桂花「あんた喧嘩売ってるの!?」

 

桂花は風に抗議の声を挙げるが、風はふふふと小バカにするような笑いを浮かべるだけで、桂花の抗議に取り合わない。その態度を見て、桂花はまたバカにしたわね!と声を荒げる。そんな桂花達をずっと間近で見ていた恋が間に入るように口を挟んだ

 

恋「桂花……いつからにぃにの事を”一刀”って呼ぶようにしたの?前は種馬とか北郷とかだったのに」

 

風「ダメですよ~恋ちゃん、自分で気が付くまで放置して、いつ気がつくかな~と楽しむ場面だったのです」

 

風の言葉を受けて、恋は前に言われた事を思い出したようだ。桂花が一刀と呼んでいる事にいち早く気がついた風は、恋や稟などを抱き込み、いつ自分から呼び方が一刀になっているかを自覚するのかを楽しもうと提案していたのだ

 

恋「……そうだった。ごめんね風。風の計画の邪魔しちゃった」

 

風「気にしなくていいのですよ、恋ちゃん。多分このままだと永久に気がつきそうにもありませんでしたし」

 

桂花「ちょっと!勝手に話しを進めるな!私がいつあの馬鹿のこと一刀なんて呼んだのよ!」

 

風や恋に指摘されて尚、自分が一刀と言っている事に気がつかない。むしろ気がつかないように自分でフィルターをかけているような感じだ。そんな桂花に対して恋は一言で切り捨てた

 

恋「さっきから……ずっと?」

 

風「桂花ちゃんも素直に呼べばいいのに、損な性格ですねえ~流石ツンデレさんなのですよ」

 

恋「むしろ……ツンツン?」

 

桂花「うるさいわね!私に天の国の言葉をつけるな!そして、なんで恋がそんな言葉知ってるのよ!」

 

恋「風に教えてもらった」

 

桂花「恋、今すぐ風から教えてもらった言葉を忘れなさい。悪影響しかないから」

 

桂花は、風が天の国の言葉を知っているのは咎めないが、保護欲を誘う恋に天の国の言葉を教え、染まるのだけは見過ごせなかった。態度には出さないものの、意外と面倒見がいい所は変わらないようだ

 

 

風「むぅ……酷い言われようなのです。ところで、お兄さんは冀州に戻ってきますか?」

 

桂花「予定だと冀州に戻ろうとしてたみたいなんだけど、せっかく荊州まで来たから益州・擁州を見てくるらしいわよ」

 

風「擁州……天水の董卓さんですか?ふむぅ……董卓さんの配下には霞ちゃんが居ましたね。お兄さんは霞ちゃんに会いたかったのでしょう」

 

桂花「……まぁ、擁州だけなら日数的にそんなにかからないし、帰りは長安経由で戻ればそこまで時間は食わないハズだもの」

 

風「風達も動ける準備しておかないとですね、黄巾党の動きが活発になってますし。桂花ちゃん兵集めよろしくお願いします~」

 

桂花「あんたもやるのよ!恋、集めた兵の調練よろしくね」

 

恋「……コク、わかった」

 

 

張三姉妹は記憶を持っていないのか、以前と同じように黄巾党が結成され、大陸各地で挙兵に向けて動きを活発にさせていた。黄巾党に素早く動くためにも、一刀には早く帰還して欲しいのだが、一刀が擁州に向かう心境も理解出来るの……だからいつでも動けるように風・桂花・恋は準備を進める。新たに始まる”乱世””群雄割拠”の濁流に飲み込まれないために……なにより、自分達の大切な存在を護る為に

 

 

 

 

 

 

一刀達一行は襄陽を出立後、襄陽と同じく荊州南郡に属する江陵を通過し、巴東郡(白帝城のある永安地域)から入蜀する。

 

 

稟「そろそろ巴郡でしょうか?」

 

一刀「多分ね……それよりも、この辺りはまだまともか」

 

愛紗「いままで通ってきた村々が酷すぎました」

 

明命「なぜあそこまで放置できるのでしょうか……」

 

入蜀してから一刀達が見てきたのは荒れ果てた田畑、痩せ衰え生きる希望を失った人々の姿だった。

この巴郡は蜀の名将と謳われる厳顔が治めている地域であり、同じ益州に位置し重要拠点ともなる漢中・上庸・涪・梓潼に比べれば、まだこの巴郡は裕福な現状だと云うのを村人が教えてくれていた

 

一刀「いまの益州太守は劉焉だ、劉焉は蜀漢を支配し、独立国家を建てようとしている野心高き人物。一方で息子劉璋は才に乏しい……恐らく自分に従わず、抵抗を続ける南中と漢中に出兵を繰り返し、国力が疲弊しているのかもな」

 

明命「一刀様ほんとによくご存知ですね」

 

一刀「いろいろ知る機会があったからね」

 

稟「一刀殿の言う通りであれば、確かに益州に入ってから続く荒地の説明がつきますね。働き盛りの若者を徴兵し続けていれば労働者の数が足りなくなるのは目に見えてますから」

 

愛紗「そんな現状を省みず、自分の野心だけの為に兵を動員し続ける……一刀様、なんとか劉焉を失脚させる事は出来ないでしょうか」

 

一刀「今の俺たちじゃ無理だ、劉焉を倒せたとしても、次の支配者が劉焉と同じような志なら意味が無い。こういう人達を救う為にも、今は力を付ける地盤と人材が必要なんだよ」

 

正義感の強い愛紗には、この環境を見逃す事が出来ないようだ。

一刀としても、この現状を打開したい……しかし、今の自分達は身分を隠したただの浪人にすぎない。いくら一騎当千、神算鬼謀の力を持っていても、たった4人ではどうしようもないのだ

 

明命「でしたら一刀様、一度この巴郡太守に会って見るのはいかがでしょうか?この巴郡太守・厳顔は蜀随一の実力者ですし、今のうちに面識を持っていた方が良いと思います」

 

稟「確かに明命の言う事も一理ありますね。蜀随一の将である厳顔を味方に引き入れる事が出来れば、彼女に同調する将は我等の陣営に就いてくれる可能性も高いです」

 

愛紗「それと厳顔には魏延という弟子が居るそうです、この者の武も蜀では秀でていると聞きます」

 

一刀「厳顔と魏延か。一度会ってみたいが、いきなり会いに行っても門前払いされる可能性が高いし」

 

愛紗「それならば……先ほど住人から厳顔が主催している武力大会が開催されるそうです。これの目的は娯楽もあるのでしょうが、市民からも参加可能で、厳顔の目に留まれば兵士として登用されるそうです。生活に困った若者たちは、兵士に取りたててもらう為に参加している者もいるとか」

 

明命「つまり、それに私達が参加して、上位に入れば厳顔さんと話す機会があるかもしれない訳ですね!」

 

稟「それ以外の方法を採っている時間はありません、その方法で行きましょう。その武力大会はどのような方法で行われるのですか?」

 

愛紗「最初は一対一で参加者を絞り、決勝まで進めるのが4人。そして4人と魏延が戦うみたいですね、魏延との戦いぶり見て厳顔が用いるか判断を下すそうです」

 

稟「魏延の武は一級品ですが、武一辺倒の言わば脳筋武将。勝つのは難しくないかと」

 

一刀「脳筋か……なら明命に任せるよ」

 

明命「わかりました!その脳筋さんを倒せばいいのですね!」

 

武しか頭に無い者とわざわざ真正面から打ち合う必要は無い、ここは速度に秀でた明命に任せるのが一番と判断した。任された明命もやる気満々だが、完全に明命の中で魏延=脳筋が確率されてしまった

 

一刀「明命、気持ちは解るけど、ちゃんと名前で呼んであげて」

 

明命「あぅあぅ、なぜかそっちの方がしっくりきたので、ついつい言ってしまいました!」

 

一刀「直接言わなければいいさ。よし、武力大会に乗り込むぞ!」

 

 

 

 

 

 

厳顔「さて、そろそろ決勝が始まる頃か、今回は何人わしの目に留まるか楽しみでしょうがないわ」

 

魏延「桔梗様!今回もさくっと倒してきます!」

 

厳顔「張り切るのはいいが油断はするなよ」

 

魏延「大丈夫です!私に敵うものなどおりません!」

 

厳顔「やれやれ、決勝まで勝ち残った4人の強者たちよ!ここにいる魏延を見事倒してみせよ!倒したら望む褒美を取らせるぞ!」

 

参加者3人「うぉーーーーーーー!」

 

厳顔「それでは始め!」

 

大会は問題なく進み、残すは決勝を残すのみ。明命も一般市民に遅れをとるなんて失態を犯す事なく、決勝の4人の1人として勝ち進んだ。魏延は厳顔と少し話してから決勝を行う舞台に姿を現す、それを確認してから厳顔は決勝開始を宣言する

 

参加者1「まずは俺からいくぞ!おりゃあーーー!」

 

魏延「ふん、ぬるいわ!」

 

参加者1は獲物の模造槍を構え、真っ直ぐ魏延目掛けて突進する。迎え撃つ魏延は自分に向かってくる槍を軽々と避け、大金棒・鈍砕骨で槍を叩き落とし、その勢いのまま参加者1の腹に当てて吹き飛ばす

魏延の扱う鈍砕骨も模造ではあるが、力が自慢の魏延が振るったのだからダメージは大きい、参加者1は痛みで蹲って立てないでいる

 

参加者2「さすが魏延様強い……おい、2人同時に行こうで!」

 

参加者3「そうだな!同時にいくぞ!」

 

参加者2と3の獲物は槍より小回りの利く直刀を扱う。両者は打ち合わせ通り、左右に別れて魏延の挟撃にかかる。参加者1の場合と違い、両側からの攻撃なので、一旦防御の姿勢に入り一度両者の攻撃と受け止める

 

魏延「予想以上に良い剣の太刀筋をしている……だが、まだまだ甘いわ!」

 

攻撃を防がれた参加者2と3はすぐさま態勢を整え、再度攻撃を仕掛けようと魏延に迫るが、脳筋らしく真正面から鈍砕骨で2人の武器目掛けて叩き付る。2人は魏延の豪撃に耐え切れず、手が痺れて獲物を地に落とす。拾うと魏延から目を切った時に見逃さず、2人に攻撃をぶち当てて、先程の参加者1同様に吹き飛ばす

 

厳顔「あいつらの考えは悪くなかったが、最初から3人で行くべきであったな。格上相手に1人で挑むのは愚の骨頂。その点、2と3は使えそうだ……町人にしては太刀筋も悪くない。鍛えれば勇猛な兵士に育つだろう……あとは小柄な女子(おなご)一人か」

 

魏延「ふん、やはり男なぞ軟弱だな!誰か私に敵うものはおるか!」

 

明命「ここにいます!」

 

参加者3人を打ち倒したが、物足りない魏延は不敵に叫ぶ。その叫びに呼応するように明命は名乗りを上げる。

 

その同時刻の涼州では……

 

???「ちょっと!それ私の台詞!私の登場場面だよ!?」

 

???「お前は何を言ってるんだ?」

 

???「お姉さまは黙ってて!私のキャラ立てには必要なことなの!」

 

???「何言ってる解らんが、五湖が攻めてきたんだ。迎撃いくぞ!」

 

 

場面は闘技場に戻る

 

魏延「はん!ただの小娘ではないか!お前が私に敵うわけがないだろう!いますぐ負けを認めれば痛い目に合う事はないぞ」

 

明命「馬鹿にするのもいい加減にしてください!呂珂様の護衛兼、隠密部隊隊長・周幼平参ります!」

 

魏延の叫びに呼応した明命の姿を見て小娘と侮り、明命に向けて降伏勧告を言い渡す

そんな魏延の態度にカチンときたのか、名乗りを上げて素早く魏延に向けて斬り込む。魏延はなんとか初撃を鈍砕骨で防ぐが、明らかに一般の参加者とは違う実力を見せ付けられ、真剣な目つきに変わる。

 

素早く動く明命の動きをなんとか捉えようとするが、初見で明命の速度を見極める事は難しく、攻撃を振るっても空振りが続いた

 

魏延「だああああ!ちょこまか動くんじゃねえ!」

 

明命「誰もがあなたみたいな脳筋みたく、ただ突っ込むと思わないことです!」

 

魏延「誰が脳筋だごらああ!」

 

明命「あなたしかないではないですか」

 

魏延「こっんのおお!おらあああ!」

 

明命に脳筋呼ばわりされ、頭に血が昇った魏延は明命に向けて最大の力を込めた一撃を放つ。しかし、明命はそんな大振りな攻撃は簡単に避けれると言わんばかりに、軽々と攻撃を避け魏延に対峙する

 

明命「当たらなければそんなのただの馬鹿力です。私に脳筋さんの攻撃は当たりません」

 

魏延「また脳筋と言ったな!もう手加減してやらん覚悟しろ!」

 

明命「全力だったくせに、何言ってるんですか脳筋さん」

 

魏延「貴様ぁあああ!!!!」

 

また同時刻のとある涼州

 

???「そいつを挑発して遊ぶの私の役目なのにいい!また奪われたああ!」

 

???「だから、さっきから何を言ってんだよお前は!」

 

???「言わないとダメなような気がしたの!もおー!こうなったら五湖の兵に八つ当たりしてやるんだからあ!」

 

???「あいつあんなに強かったっけ……?あまり怒らせないようにするか」

 

 

 

その後試合は一歩的に進み、魏延の振るう攻撃は一度も当たる事なくすべて避けられる。逆に明命の攻撃も直撃はしないものの、じわじわと魏延を追い詰めていった

 

魏延「くそ!攻撃が当たれば打ち倒せるのに!」

 

明命「悔しかったら当ててみて……気が変わりました。貴方の攻撃を受け止めてあげます!」

 

明命の度重なる挑発で沸点がかなり低くなっている魏延は受け止めると明言した明命に自分が持てる最大の攻撃を放つ。魏延のイメージでは攻撃を受けた明命が吹っ飛び、自分の勝ちが決まるハズだったが……魏延の見た光景はイメージと真逆、細身の剣ですべての衝撃を受け止め、その場で踏ん張る明命の姿だった

 

明命「愛紗さんに比べたら軽いです!なんて事はありません」

 

魏延「なに!私の攻撃を打ち返しただと!」

 

旅では主に愛紗から武の鍛錬を受けている明命にとって、魏延の攻撃の重さなど子供が振るう攻撃同様に軽いモノだった。

 

明命「今度はこちらの番です!呂珂様直伝の……抜刀術!」

 

一度鞘に収め神速の抜刀による旋風によって発生するカマイタチ

 

魏延「っくそ!数が多すぎる!」

 

明命「これでトドメです!同じく呂珂様直伝の抜刀術!」

 

素早く相手の懐に飛び込み、抜刀しながら斬りつけ、そのまま勢いで右側に斬り抜ける。どれも魏延は初めて見る技術であり、それを防ぐ手段は無かった魏延はまともに攻撃を受け、とうとうその場に倒れる

 

魏延「このわたしが小娘ごときに……」

 

厳顔「そこまで!勝者周泰!」

 

勝者を告げる厳顔の顔は驚愕に染まっていた、自分の弟子である魏延が倒された事。初めて見る技の数々と身軽さ。どれを見ても只者では無いと実感できる

 

明命「ふぅ~~大口叩いてる割りにはたいしたことないのです」

 

一刀「お疲れ様、明命。魏延も決して弱くはない、明命が愛紗との鍛錬で強くなったんだよ」

 

愛紗「見事だったぞ明命!私との鍛錬時は見せてなかったではないか」

 

明命「まだ完全に使いこなせるわけではなかったので……今回は頭にきたので使ってしまいました」

 

一刀「悪くはなかったけど、まだまだ熟練度が低いかな?俺も愛紗との訓練がない日に指導してあげるから」

 

明命「はい!お願いします一刀様!」

 

一刀と愛紗は明命を労うと同時に、見つけた反省点を明命に告げ、次回以降の鍛錬のポイントに組み込む事を話し合っていた

そんな一刀達の傍に寄って来た人物が1人、この武力大会に参加した目的の厳顔だった

 

厳顔「邪魔するぞ、周泰の武見事であった。あそこまで一方的に焔耶がやられると思わなかったぞ」

 

明命「あの方が油断してくれていたおかげでもありますよ」

 

厳顔「確かに焔耶が相手を甘く見ていたのもあったな……また一から鍛えなおしかの」

 

稟「あなたが厳顔様でしょうか?」

 

厳顔「おうよ!蜀の喧嘩師、厳顔とはわしのことよ」

 

自分で喧嘩師と名乗る辺り、この人もなかなか戦バカだと云うのが伺える

 

一刀「あなたが厳顔さんでしたか、私達は旅の者ですが、蜀で有名な厳顔さんに会ってみたいと思い、この催し物に参加しました」

 

厳顔は自分に話しかけてくる男を観察する、仮面をつけて武に秀でた者を率いているこの男の噂を聞いた事がある

 

厳顔「仮面の男に旅……お主が幽州代郡で暴れた呂珂というものか?」

 

一刀「ここまでその噂届いてたのですか」

 

厳顔「そこまで派手に暴れればこの田舎にも噂は届くものだ」

 

言い当てられた一刀は一切隠す事無く正体を告げる。告げられた厳顔は、まさかこのような田舎で呂珂に出会えると思っておらず、興奮気味の様子だった。

 

魏延「私は……負けたのか」

 

厳顔「言い訳できないほど見事に負けたな」

 

魏延「しかし桔梗様!油断しただけで今度は負けません!」

 

厳顔「たわけが!相手の力量を見抜こうとせず、自分の力を過信して負けておいて言い訳するか!それに聞くところ、この者は幽州で黒山賊の一部隊全滅させた呂玲綺が鍛えたのだぞ?まだ未熟なお前が勝てると思うのか」

 

気絶から冷めた魏延は自分が敗北した事が信じられず、油断しただけだと自分の師である厳顔に告げる。厳顔はそんな弟子をバッサリと切り捨て、魏延が負けたのは必然だったと言い放つ。魏延はようやく一刀の存在に気がつき、意識を一刀に向ける

 

魏延「呂玲綺?貴様があの胡散臭い仮面をつけた呂玲綺だというのか?」

 

一刀「うさんくさ……まあその呂玲綺だよ」

 

胡散臭いと言われて少し傷ついた一刀だが、気を取り直して名乗る。魏延はそんな一刀を見て、小バカにした態度を再度取る

 

魏延「ッハ、このような胡散臭い者の小娘に私は負けたのか、油断せずに戦えば私の勝ちだな」

 

愛紗「……貴様いまなんと言った?」

 

魏延「何度でも言ってやるわ!このような男の子飼いに負けたのはたまたまだとな!」

 

一刀を貶された愛紗は凄まじい殺気を出しつつ魏延を睨み付ける。しかし魏延はそれに気がつかず、不遜な態度を貫き、暴言を繰り返す。

これにはとうとう愛紗の堪忍袋も切れた

 

愛紗「貴様のその考え矯正してやる!こっちに来い!今度は私が相手だ!」

 

魏延「望むところだ!」

 

愛紗は汝南で山越軍と相対した時よりも、凄まじい闘気を身に宿しながら青龍偃月刀を手に持ち闘技場に向かう。

 

一刀「俺は別になに言われても気にしないのに」

 

稟「一刀殿、そういうわけにはいきません。今の一刀殿は魏延如きに馬鹿にされていい人物ではりません」

 

一刀「あれ、稟さん怒ってる?」

 

明命「あれで怒らないほうがおかしいんですよ一刀様!」

 

普段は冷静沈着の稟だが、この時ばかりは冷静でいられなかった。自分達の大切な存在である一刀を貶されたのだ、これを聞いていたのが華琳、春蘭、秋蘭、霞、凪辺りならばすぐに魏延に襲い掛かってだろう。それ程までに稟の怒りを抱いていた

 

厳顔「力量を見ろと言ったそばから……呂珂殿申し訳ござらぬ、不肖の弟子が失礼をした」

 

厳顔はこの一連の出来事はすべて自分達に非があると、すぐに一刀達に謝罪をする

 

一刀「それはいいんだけど、このままだとうちの子が落ち着かないから、もう一戦してもいいかな?」

 

厳顔「あの馬鹿にもいい薬になる、こちらは問題ないですぞ」

 

一刀「ありがと厳顔さん。愛紗!俺からの命令守れるか?」

 

愛紗「内容によりますが……なんでしょうか?戦うなと云う命令は聞けません」

 

一刀「今更止めはしないよ。その代わり……一撃で仕留めろ。格の違いを見せてやれ」

 

愛紗「……お任せください」

 

一刀の指示した命令に、愛紗は力強く頷く。愛紗にとって、一刀の命令は絶対。その一刀が下した命令を実行するために……後の世で軍神と称された少女が動く!

 

愛紗「一刀様直伝……青龍・・・逆鱗撃!!!」

 

愛紗の放った一撃は防御を固めていた魏延の武器である鈍砕骨の上から叩き込み、鈍砕骨は威力に耐え切れずに真っ二つに粉砕され、魏延は文字通り一撃で叩きのめされた。いかに魏延が豪の者であろうと、愛紗とでは武人としての実力が桁違い。それに加え、主君を貶された怒りを込められた一撃を防げるのは、愛紗と並ぶ規格外の武人だけだ

 

厳顔「馬鹿な……鈍砕骨が真っ二つに斬られそのまま焔耶を壁に叩き付けたのか!」

 

愛紗「戻りました一刀様」

 

一刀「見事だったよ愛紗」

 

愛紗「あ、ありがとうございます・・・」

 

明命「一刀様!私もがんばりましたよ!」

 

命令通り、一撃で粉砕した愛紗は何事も無かったように一刀の下へ帰還する。戻って来た愛紗に、一刀は命令を守った労いとして頭を優しく撫でる。最初はくすぐったそうにしていたが、気持ち良さそうに一刀に頭を撫でられていた。それを見た明命も自分も褒めて褒めて!と犬が尻尾を振るうように一刀に近づく。そんな明命の労いとして、愛紗を撫でていた逆の手で明命を自分の体に寄せて同じように頭を優しく撫で始める

 

一刀「明命もよくやったね」

 

明命「一刀様……嬉しいですが、流石に人前で恥ずかしいです」

 

稟「満更でもない表情をしていて、何を言っているんですか」

 

 

厳顔「焔耶がこうまでやられるとは……まだまだ大陸に猛者が潜んでいるか」

 

一刀「魏延さんは一度再教育したほうがいいかもしれませんね。このままでは潜む猛者に潰されるのがオチでしょう」

 

厳顔の呟きに一刀が話しに加わる。確かに今のまま益州に留まれば、強者との戦いが無く、成長する機会が無いだろう。それゆえに一刀の提案も悪くないと思っている

 

厳顔「そうだの……わしがこのまま再教育をやったところで、結果は同じかもしれん。ならば環境をかえるのがいいかもしれませんな。呂珂殿、どこかこのバカ弟子の成長に繋がりそうな場所しらないだろうか」

 

一刀「そうだなあ……幽州の劉備さんのところなんてどうかな?」

 

厳顔「劉備といえば北方の匈奴と手を結び幽州を一躍大陸屈指の都市まで成長させた劉備か?」

 

一刀「彼女は王として成長を続けているし、関羽にも匹敵する武を持つ将もいる。鮮卑にも狙われてるから、防衛の経験も身に付くし、魏延にもいい勉強にもなるとおもうよ」

 

厳顔「焔耶を一撃で仕留めた関羽と互角の武を持つか……それは確かに興味深いの。話しは変わるが、呂珂殿、わしと手合わせしてもらえんだろうか」

 

一刀「俺がですか?」

 

厳顔「周泰と関羽に技を教えるということは、呂珂殿は相当な腕を持っている証拠。それに黒山賊を全滅させた武と戦いたいと、喧嘩師としての血が騒いでしまっての」

 

厳顔も普段は民を思いやる事の出来る将ではあるが、一度戦場に出れば戦バカといわれる部類に属するだろう。それゆえに、愛紗、明命を従える一刀と一戦交えたくて、ウズウズしているのだ

 

稟「一刀殿、どうするのでか?」

 

一刀「それじゃあ……そこで気絶してる魏延さん叩き起こしてもらっていいかな?男でも武に秀でた者が居ると見せてあげるから」

 

厳顔「それは助かる。焔耶いつまでも寝てないで起きんか!」

 

厳顔は気絶している魏延の頭に拳骨を一発叩き込む。気絶している者に拳骨は意味ないかと思えたが、いつもお仕置きで喰らっているために、体が覚えているようだ。殴られたら条件反射で目を覚ますというのも、嫌な慣れだが……

 

魏延「痛いです桔梗様……」

 

厳顔「一撃でやられたお前が鍛錬不足なのだ、いまからわしと呂珂殿が戦うからお前が貶した呂珂の武を見ておれ」

 

一刀「明命ちょっと魂切かしてもらえるか?」

 

明命「いいですが、なにをするのですか?」

 

一刀「完成した抜刀術を見せてあげるよ」

 

明命「……みなさん!一刀様の後方に移動してください!!」

 

一刀は明命から借りた魂切を使って、明命に抜刀術を披露すると宣言する。自分のまだまだ未熟な抜刀術と違い、一刀のは完成された抜刀術。何が起きるか解らないため、対戦者である厳顔を除き、一刀の後ろに非難するように警告を発する

 

一刀「厳顔さん、武器の予備ってありますか?」

 

厳顔「うむ、壊れたときように造ってあるぞ。それがどうかしたのか?」

 

一刀「なら厳顔さん……その場から決して動かないでください。動くと危険ですので」

 

先程の優男という印象からは全く想像出来ないほど、魂切を構えた一刀から凄まじい闘気が湧き上がる。これには先程バカにしていた魏延ですら闘気に押され息を呑む

 

闘気を発し始めてから一切動く気配が一刀が鞘から魂切を振りぬき、神速とも呼べる一閃を放つ。相対していた厳顔を含め、明命や魏延も何かが起きたのか解らずにいた。一刀が行ったのはその場から動かずに、鞘から魂切を振り抜いただけ……その場に居た将達が見抜けずにいる中、愛紗だけは一刀の攻撃をギリギリだが捉える事が出来た

 

 

魏延「なにもおきてないではないか」

 

愛紗「厳顔殿の武器を見てみろ、それで答えが解る」

 

魏延「なにがあったと……な!!」

 

愛紗の言葉につられ、魏延や厳顔本人を含め、厳顔の扱う豪天砲に視線を向け、一同は驚愕する。一同が見た先には厳顔の操る武器、豪天砲が持ち手だけ残し、粉々に粉砕されていたのだ

 

 

明命「あぅあぅ……私の魂切でここまで差見せられてしまいました……まだまだ訓練が必要です」

 

愛紗「私も見るのは初めてだが・・・威力を抑えてこれとは・・・驚きました」

 

厳顔「焔耶わかったか!貴様の武はまだまだ未熟なのだ!」

 

厳顔は魏延に説教をしつつも、己の未熟だったと気が付かされる。この場で一刀の攻撃を見極められたのは愛紗ただ1人、自分も高みを目指す事を決意する

 

魏延「呂珂殿……それに関羽殿や周泰殿、先程の暴言を訂正させて欲しい、すまなかった」

 

愛紗や明命に負けた事、自分の師である厳顔が一刀に手も足も出なかった事を受けて、魏延は自分の武を過信し、天狗になっていたと反省する。そして先程の自分の非礼を謝罪した。一刀はこの謝罪を受け、傲慢な所と自分を過信する所を直せば、もっと実力が伸びるだろうと確信する

 

一刀「謝ってくれたし、先程の件は水に流すよ。魏延さんの暴言を言ってないし、俺達も何も言われてない、これで終り」

 

厳顔「すまない、呂珂殿。感謝しますぞ。焔耶、お前には今から幽州に向かってもうら、そこで今一度、自分を見つめなおすのだ」

 

魏延「幽州……ですか?」

 

一刀「幽州太守の劉備玄徳は知り合いでね、事情が解ればきっと彼女は魏延さんを受け入れてくれると思うよ。あそこには愛紗に匹敵する子がいるんだ、その子から色々学ぶといいよ。劉備さん宛てに手紙を書いておいたから、彼女に渡して欲しい」

 

魏延「感謝いたします、呂珂様。それでは桔梗様……行って参ります」

 

厳顔「少しはじゃじゃ馬が直ればいいのですがな」

 

一刀「それは魏延の頑張りしだいかな?」

 

(劉備さんに押し付ける形になったのは、今度会った時に謝っておかないとな。この件は完全に俺の独断だし、劉備さんの性格なら受け入れてくると思うけど、事後承諾だもんな……何かお礼考えておかないと)

 

厳顔「呂珂殿……いきなりになるのだが、そなた達の旅にわしも加えてはもらえないだろうか。わしもまだまだ未熟と痛感した所での、呂珂殿や関羽殿達から鍛え直して欲しいと思いましての」

 

一刀「申し訳ないですが、厳顔さんを連れて行く事は出来ません。厳顔さんがいま巴郡を離れたら、ここも他の場所同様廃れてしまいます。厳顔さんは巴郡に住まう民を守って下さい」

 

厳顔「むぅ……それを言われては、わしが離れるわけにはいきませんな……解りました、今回は諦めましょう。しかし、いつかあなたの下で戦わせてくだされ」

 

一刀「その時はこちらからお願いします。それでは厳顔殿、またお会いしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

稟「一刀殿、当初の目的はすべて果たしましたが、どうするのですか?各地で黄巾党が蜂起する構えを見せていると、桂花から手紙で教えてくれました。後手に回らないように、冀州に帰還しますか?」

 

一刀「稟の言うのが最善なのは解っているんだが……すまない、もう一箇所だけわがままに付き合ってくれ。最後に霞に会いたいんだ」

 

稟「天水の董卓陣営に居る霞ですか……しかし、霞が覚えてるかわかりませんよ?霞の性格上、覚えていたら一刀殿を探しているハズです。凪達同様に、一刀殿と深い繋がりがありましたから」

 

一刀「それか、本来董卓陣営に居るはずの恋が俺の所にいるし、抜けられないだけかもね。霞も責任感は強いから。それに……俺との記憶がなくても、元気に過ごしている姿が見れればそれでいいんだ」

 

稟「……わかりました、天水に参りましょう」

 

一刀「すまないな、わがまま言って」

 

稟「それは今更ですよ一刀殿。迷惑なら散々被ってきましたから、この程度どうという事はありません。それに、あなたを支えるのが私の役目です」

 

一刀「ありがとな、稟。それじゃあ次の目的地は天水だ!」

 

 

 

 

 

 

 

焔耶は最初から桃香陣営にさせるつもりだったけどバレバレだったかな?

20話で焔耶桃香陣営でがんばれーが多くて笑っちゃったよw

 

 

幽州の黒山賊で暴れたときの諸侯の反応で焔耶のフラグ立てたせいでばれたかな~

 

 

 

 

 

次回は天水編です。

天水での行動が後に大きな変動につながる予定になってます!

 

需要ないと思うけど登場武将数値(魅力省きました)

 

魏延って史実だと劉備が漢中王になったとき漢中太守になって、劉備との受け答えで群臣達を納得させた逸話とかあるし、本来名将のはずなんだけど恋姫だとネタキャラだよね

徐栄は史実の功績加味して統率高め

程普 韓当は次回で!

 

 

焔耶    桔梗   徐栄   簡雍

武力86  武力91  武力88  武力40

知力43  知力70  知力65  知力76

政治56  政治68  政治58  政治82

統率72  統率87  統率94  統率62


 
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