外史――――
突端を開かれ、終端に帰すもうひとつの世界。
人の願いが形となった世界。
それは、終端を迎えることで、新たな外史を生み出す。
もし、それが、
終端が訪れなかったら―――
終端を打ち消すほどの意思と力を持てば―――
そして、俺は願った。
華琳は言った。
――あなたが側にいないことを後悔するほどの世界を作ってあげる―――
華琳なら出来る。そうしてほしいと、
願った。
【一刀】「・・・・・・」
何も考えられなかった。
湿った風が頬をくすぐる。
戻ってきた。
そう、戻ってきたのだ。
俺は・・・『帰る』ことが出来なかった。
いつもより力をこめて歩き出す。
足に触れたもの全てを踏み潰すように、一歩一歩踏みしめて歩いた。
希望を見せられたのだ。
俺が一番望むものを。
寮に戻る道の途中、誰ともすれ違うことはなかった。
世界に自分しかいないような錯覚にめまいを起こしそうになる。
自分の部屋の前に着き、ドアノブに手をかける。
だが、そこで静止する。
入りたくなかった。
入れば、自分がどうなるのか、わかってしまうから。
ドアノブを握る手に力がはいる。
ただ、お前は帰れないと告げられるほうが、どれだけマシだろうか。
【一刀】「――――っ」
力をこめた右手が赤くにじむ。
結果として、干吉から与えられた言葉は、
『帰ることができる』というものだった。
だが、俺には・・・
少なくとも、今は
選べなかった――――。
どれほど、そこに立ち尽くしていたのだろう。
戻ってきたきた時には夕方だった空もずいぶん暗くなった。
観念して、部屋に入る。
考えることを避けようとベッドへ倒れこむ。
自分が思っていたより疲れていることに気づいた。
【一刀】「時差・・・滅茶苦茶だもんな・・・。」
独り言でも、少しは気分がかわらないかと何かをつぶやく。
やがて意識が朦朧としてきたことで安心する。
暗闇に吸い込まれる意識の中で、自分にすら聞こえるかどうかという声で最後につぶやいた。
【一刀】「・・・・・華琳・・・ごめん・・・」
夢。
誰かの心が軋みをあげて、今にも崩れそうなイメージ。
音もなく、ただその哀しみと絶望だけが流れ込む。
【??】「・・・・ん・・さま」
【華琳】「ん・・・」
声が聞こえてきたことで意識を水面上へ引き上げる。
【春蘭】「華琳さま・・・」
【華琳】「春蘭・・・おはよう。」
【春蘭】「おはようございます・・・大丈夫ですか、華琳さま?ずいぶんうなされてましたけど」
【華琳】「・・・・大丈夫よ。それより、春蘭。仕度をするから手伝ってくれるかしら?」
まだ少しぼやけた頭を覚醒させていく。
【春蘭】「あ、はい!」
今日は休暇をとり、春蘭達と街へ行くことになっている。
仕度を済ませたあと、秋蘭とも合流し、街へ向かった。
――――ガヤガヤ
今日はずいぶんと人が多い。
【華琳】「・・・何かあるのかしら。」
【春蘭】「あれではないでしょうか。新しい・・・茶屋がでるとか。」
【秋蘭】「めいど喫茶・・・というらしいです。」
【華琳】「めいど・・・?」
そういえば、以前一刀が職人に作らせていた服もそんな名前だった。
【秋蘭】「店員の着ている服装が、全てその『めいど』・・・というものに統一されているそうですが、詳しくは・・・」
【華琳】「ふぅん・・・面白そうね。」
【春蘭】「よってみますか!?」
春蘭の声が少し大きくなる。
【華琳】「いえ、今度にしましょう。あれだけ人が混んでいる中でとても茶など楽しめそうもないし」
【春蘭】「はぁ…そうですか」
明らかに残念そうにする春蘭。行きたかったらしい。
【秋蘭】「そう落ち込むな、姉者。今度私といこう。」
【春蘭】「本当か…?」
【秋蘭】「ああ。」
【春蘭】「よし!では、華琳様!次に行きましょう!」
【華琳】「…ふふ。そうね」
楽しい。素直にそう思える。
この子達がいれば、私は私でいられる。
その日の夜。
街から戻ってきた後、夕食をすませ、昼間のうちに届いた案件に目を通す。
【華琳】「3国交流…」
それは魏・呉・蜀の親睦を深めようとする案。
それも、必要なのかもしれない。
しかし、これだけでは何か物足りなかった。
【華琳】「ぱーてぃ…」
それは、一刀の世界の言葉。
そうだ。これがいい。
そして、伝えよう。
私は大丈夫なのだと。
伝わるかは…問題ではない。
ただ、誓いたい。
誰よりもあいつに。
そして自分に。
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真・恋姫無双(魏ED)のASです。
次あたりで話の本筋にはいろうと思います。
あと、少し悩んだのが、メイド喫茶にはいるかどうか。
ただ、ボク自身行ったことないので、あえてスルーしましたw
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