涼州
街に並ぶ家屋は綺麗なもので俺は過去の世界での出来事を思い出す
涼州と言えば馬一族か、もしくは自身も体感したあの"反董卓連合"が思い浮かぶ
十常侍暗殺により洛陽へと招喚された董卓が暴政を敷き帝を傀儡にしていると
袁紹により諸侯が集められた連合。
そして連合の力をもって董卓を討ち、帝を救い出す。
連合という数の暴力により蹂躙、董卓は自らの屋敷を燃やし自決し幕を閉じた
自分があの場にいた事すら錯覚してしまうほど今の状況は良くはない
街についた俺は最初した事がある。
服の調達だ、流石に魏に行った「北郷一刀」と同じ服装の人間が存在するのは正体が露見しかねない
この時代での未来の技術は畏怖・尊敬のどちらかになる。
魏の北郷一刀はその尊敬の眼差しを受けていた。
学生服は既に涼州に入る前に脱ぎ隠して持ち歩いているが、こんなものはさっさと処分するに限る。
大通りに構えた商店の中に質屋を探す。
服屋などに売ってしまえば、店頭に並べる可能性があるから質屋を選ぶ
質屋なら安く売るより物珍しい服の事だ、知り合いの豪族、貴族辺りに持ち込むだろうからそこから俺がこの街でバレる事はない。
そう思っていた自分が恨めしい。
今の状況はと言うと茶を基調にした鎧をまとった兵士数名に囲まれている、しかも剣を突きつけられて。
事の始まりはあの質屋だった。選んだ店が悪かった
店主との交渉は捗り、服と馬だけである程度の金にはなった。
服屋で羽織を買い、店を出た所で兵士に囲まれたのだ
「で、俺は特に罪を犯した記憶も犯す予定もないのだが。どうして俺は貴様等に武器を突きつけられてまで包囲されてる訳か説明していただこうか」
事情の説明を求めるが、話しかけられた当の本人達は黙ったままでこちらを睨み警戒している。
そしてその後ろで俺が服を売った質屋の店長が縮こまりながらこちらの様子を伺っている。
店主が通報したか・・・流石に珍しすぎて危険な匂いを嗅ぎとったのか
元々危ない物品が持ち運ばれるとこの様な対処をするのかは最早分からない
「貴殿か、旅の者という者は」
俺の後ろの方から女の声が聞こえ前に歩いてくる、手を上げその動作で兵士達が武器を収める
「すまんな、手荒い歓迎で。私の名は華雄、董卓軍の将軍だ。」
「名などどうでもいい、俺がこの様に警戒されている理由はなんだ」
その通り、警戒されているのだ。華雄は目の前に立ちながら半身に近い状態で俺と喋っている
俺が何をしても反応できるように
「気づかれていたか、残念だが貴殿から警戒を解くことは出来ない。我が主、董卓様がお呼びになられたのだ。
ついてきてもらおう、なに悪いようにはせんはずだ。抵抗などはしないほうがいいのは確かだがな」
確かに、抵抗しようとすれば周りの兵士と華雄が俺を殺しにくるだろう。刀という類稀な武器をもっていようと将軍相手では恐らく
分が悪い。
「いいだろう、連れて行け」
「感謝する」
抵抗はせず周りの兵士に囲まれたまま城へと歩きだす
城内を連れ回され文官などに奇異の目を向けられたが、あまり気にせずいると華雄が立ち止まる。
「武器は取り上げんが、妙な事を考えないようにな。血祭りにあげられたくなければ、だが」
そういい華雄は目の前の扉を開ける
「董卓様。華雄、只今戻りました。」
俺は玉座から目が離せない、そうか、あの子が董卓だと・・・?
洛陽に乗り込み城で助けた侍女と思ってしまった二人組の女の子、それが玉座に座りもう一人は補佐官なのだろう横に佇んでいる。
「初めまして、董卓殿」
「初めまして、旅のお方。私の名は性は董、名は卓 字は仲穎。貴方の名をお聞きしましょう」
あえて名乗らずにいたが、そうはさせてくれないようだ。だが、この世界での名というものの重要性は看過できない。
「先に無礼を働くことを謝罪しておきましょう。私は真名しか持たぬ身ゆえこの場での自己紹介は遠慮させていただく。
そして董卓殿、私を城まで連行した理由をお聞かせ願いたい。まさかとは思いますが、旅人を毎回武力で制圧し城に連れ回す趣味などをお持ちな訳ではないでしょう。」
名乗りを断った無礼より身内がしでかした失態の方が怒りが先に来たのだろう。
眼鏡を掛けた復刊が青筋を立てている
「なっ、ちょっとバ華雄。ちゃんと話し合いの元で連れてきてって頼んだわよね。あぁ、華雄に頼んだ私がバカだったわ。これからはアンタに頼まず霞に頼む事にするから。あと減給ね」
先ほどまで黙って控えていた補佐官が俺の横の華雄に罵声を浴びせ始めた
「おい、賈駆それはないだろう。私はちゃんと連れてくるという事はしたんだからその処置はあんまりだ」
「じゃぁ、どうすれば話し合いを武力行使に出来るのかしらねぇ、月の名前を落とす原因になる行動をアンタがしたのが悪いんじゃない。減給はやめといてあげるけど後で仕事をさせてあげるから、覚悟しなさい」
「ぐっ・・・・・」
先ほどから俺を無視して会話を続けているのがようやく一段落したようだ。董卓が俺を見据え話し出す
「旅の方、華雄さんが失礼を働いたようで申し訳ありません、今後はそのような事が起きない様に致しますので。今回はこの無礼
どうにかご容赦いただけませんか」
別に気にしてはいなかったが、さっさと理由を話して欲しいので特に否定はしないでおく
「では、ご足労いただいた理由をお話しましょう。あなたは・・・・」
ギイィ
話の途中で後方から扉の開く音、入ってきた人数は一人。
そして木の叩いたような心地よい音がテンポ良く近づいてくる
この音は・・・
「なんやなんやぁ、その兄ちゃんが詠の気になっとった男かいなぁ」
「・・・・・・ぁ」
「なんや兄ちゃん、ウチの事知ってんのかぃな」
俺の言葉にならなかった声は幸いにも聞き取れなかったようだ
そうだったな、気さくに話してくれて最初から仲間で居た気がしたよ
霞・・・・・・
賈文和、詠ちゃんの名前ですが。正しくは賈「詡」な様ですが残念な事に下書き時点でこの漢字が私のPCでは出すことができませんので
この作品では「駆」という雰囲気似てるだけの漢字を代用させていただきます。恋姫ではこの漢字だったような気もするが・・・
見放さないで閲覧していただけると幸いです。
|Д´)ノ 》 ジャ、マタ
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第四話 想い出は霞の様に