「流星と共に降り立ちし遣いはその御力により乱世を収めるであろう」
それがひと月程で大陸中に噂として流れた
発信源は商人、この時代商人ほど信頼を持ち欠かすことのできない物
商人の数だけ噂がある、尾鰭の付くもの・噂にもならないような物まで
だがこの占いだけは正確に流れた、なぜか
荒れるに荒れた大陸、民は疲弊し希望は占いに見出される
涼州
董卓を州牧として収める街、いかに善政を敷いていてもできてしまう場所がある
活気と人で満ちた大通り、両側には露天・商店が並び人が絶える事は無い
しかしその通りも永遠に続く訳ではない
貧民街、人々はそう呼ぶ
そしてその貧民街を歩く二人の少女とその付き人
可憐で見るからに大人しそうな銀髪の少女
眼鏡を掛けた三つ編みが特徴的な少女、二人の特徴は明らかに貧民街に似つかない服装
装飾が派手などではなく、綺麗な服装自体が異常な空間だからこそ不自然さが際立つ
そして、その後ろを歩く男数名
これだけを見ると好奇心から来た只の貴族や豪族の子供なのだろうと普通は言うであろう
しかし、その実二人は貴族でも豪族でもない
『領主』と『軍師』その『兵士」なのだ
人は見かけによらない、そんな言葉が当てはまる
領主が民と触れ合う機会が無い訳ではない、だがなぜ貧民街にという疑問が生まれる
理由はひと月前に大陸に流れ始めた噂
「やっと見つけたわよ・・・・管路」
「へ?この人・・?」
「何か御用かしら迷える少女達」
「管路、私達はアンタを探してた、そしてその理由は二つよ聞いてもらえるかしら」
「こんな場所まで来たんだから聞くだけは聞いてあげるわ。賈文和」
心臓を掴まれた気がした。否、気がしたのではない掴まれたのだ。
名乗ってもいない内に名前を当てられるという事がどれだけ異常な事かを理解しているから。
「ありがとう、助かるわ。一つはアンタの本業である占いをしてもらいに来た、むしろコレ
はついでと思っても構わないけれどまずは占いから」
「いいでしょう、内容は」
「漢王朝、コレだけで分かるかしら?」
息を飲んだ音がした、しかしそれが誰のものなのかは分からない
「形あるもの、いつかは滅びる。それが早いか遅いかだけの事、森羅万象の理と違い
こんなものは占いをする意味が無いそれだけよ」
眼鏡を掛けた少女、賈文和は気難しそうな表情を浮かべながらも納得しつつ先を話し出す
「そうね、それについては概ね私も同感だわ。では、もう一つは天の御使いについて」
「へぇ、貴女はそのような占いは信じないくちだと思ったけど、私も鈍ったかしら」
管路は賈文和を初めて見据えてジッと顔を仰ぎ見る
「流星と共に降り立ちし遣いはその御力により乱世を収めるであろう、貴方はそう占った、この意味を聞きたいの」
「あはは、何を言い出すかと思えば占いの結果は事実、しかし何故占術師に意味を求めるの。残念だけど根拠などはないわ、信じてくれとも言わない、けれど流した内容は事実と少し違うわ」
「ふぇ・・・・」
「なんですって、それは何」
言葉はたった一言
「遣いは二人いる」
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第一話 指針か、運命か