No.736446

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY 31 決着 ひとときの安らぎ

やぎすけさん

第一章完結

2014-11-11 00:29:09 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1125   閲覧ユーザー数:1099

前回のあらすじ

アスナを救うため神の体内を進むキリトとデュオ。

そこらに散らばっているモンスターを屠って進んだ先で2人はついにアスナのいる場所に辿り着く。

しかし、そこには邪悪な姿に変貌を遂げた教皇が待ち構えていた。

偉そうなことを言っておきながら、不意討ちまがいの攻撃しかして来ない姑息な教皇にやや苦戦するが、最後はユージオとアリスと3人での複合技によって勝利する。

教皇が消滅した後、キリトはアスナを拘束していたクリスタルを破壊して、ようやくアスナを取り戻した。

その後3人は巨人の体内から脱出すべく、外を目指して走った。

 

 

 

 

 

 

 

STORY ⅩⅩⅩⅠ 決着 ひとときの安らぎ

 

 

 

 

 

キリトとアスナが抱き合っている頃、外側では巨人とベリルが激闘を繰り広げていた。

すでに神のあちこちが削り取られ、ベリルの攻撃で折れた剣はその後跡形も無く砕け散り、左腕も肘より先はもはや残っていない。

 

ベリル「おい、どうした?そんなものか神様(笑)?」

 

ベリルが挑発すると巨人は体を震わせて攻撃し、それを回避したベリルが巨人に攻撃を仕掛けて破壊するということを繰り返していた。

戦闘が激化することを読んでいたベリルは、戦闘を続けながらも街の外周部に向かって移動し、最終的には神を街の隣の平原に落下させていたので奇跡的に街に被害は出ていない。

 

ベリル「そろそろかな?」

 

巨人の攻撃を回避していたベリルが、不意にそう呟く。

すると、巨人は拳を振り上げてベリルに殴りかかろうとしていた。

それを見たベリルは腰を落として構え、スカルリーパーを装備して迎撃体勢に入る。

直後、巨人が拳を振り下ろされた。

迫り来る壁のごとき拳をギリギリまで引き付けたベリルは、引き付けて構えていた拳を思い切り突き出して右ストレートを叩き込む。

空気が破裂したかのような衝撃音とともに、手甲に覆われたベリルの拳が巨人の拳に突き刺さり、そのまま粉々に打ち砕いた。

その時、突然巨人から力が抜け、ぐらりとよろめいた巨体が前に向かって倒れた。

 

ベリル「終わったか」

 

ベリルは「ふうっ」と一息付き、スカルリーパーを収めてから巨人の方を見つめた

それと同時に巨人の胸から赤いクリスタルが弾け飛び、そこからデュオが飛び出す。

その直後に、今度はキリトがアスナを抱きかかえて飛び出した。

2人は着地するとそのままゆっくりとベリルの方へ歩いてくる。

白服の少女を抱えて歩く黒い剣士のその姿は、まるでおとぎ話の王子様のようだ。

そんな3人を見たベリルは、腕を組んで不敵な笑みを浮かべる。

 

ベリル「ずいぶんとゆっくりだったな?」

 

ベリルの言い草に、キリトとデュオは揃って呆れ顔を作って言った。

 

デュオ「お待たせとでも言って欲しいのか?」

 

キリト「言っておくが、こっちだって結構頑張ったんだったんだぞ?」

 

アスナを地に下ろしたキリトが愚痴っぽく言うと、ベリルは肩を竦める

 

ベリル「お前らのことを待ってたってことだよ、坊やたち」

 

相変わらず自分たちを“坊や”と呼ぶベリルに、2人は顔を見合わせてから同時に肩を竦めた。

そしてキリトは急にその表情を一変させ、はにかんだように俯く。

 

キリト「でもまぁ・・・ あんたのおかげで助かったよ」

 

ベリル「気にすんな。こっちはこっちで勝手にやっただけだ」

 

デュオ「それでも、ありがとうベリル」

 

アスナ「私からも、本当にありがとうございました」

 

照れ臭そうなデュオとキリトの隣で微笑んでいたアスナも、ベリルに礼を言った。

それを見たベリルは満足気に微笑むと、突然パチン!と手を叩く。

 

ベリル「さて、それじゃあ仕上げといくか!」

 

そう言って腰のポーチに手を入れ、中から3つの球体を取り出した。

 

デュオ「それは!?」

 

それを見たデュオも腰のポーチから似たような球体を引っ張り出す。

4つの球体が揃った瞬間、それらは一斉に浮き上がり、ゆっくりとアスナの方へ向かって飛んでいく。

やがてアスナの周囲を回り始めた球体は、数周回った後に1つずつ彼女の胸に吸い込まれていった。

そして全ての球体がアスナに飲み込まれると、アスナの身体を淡い金色の光が包み込む。

慌てて目を覆うキリトとデュオだが、ベリルはなんともないようにアスナの姿を見続けた。

数秒後、アスナを覆っていた光が消える。

キリトたちが視線を向けた時、アスナの目がゆっくりと開いた。

 

キリト「アス、ナ・・・?」

 

アスナ「キリト・・・くん・・・?」

 

アスナの一言にキリトは目を見開き、一瞬固まってしまう。

 

キリト「わかるのか・・・?俺のことが・・・?」

 

アスナ「うん、わかる・・・全部思い出したよ」

 

静かな会話の後、アスナは頬を染めながら笑みを浮かべた。

その瞬間、キリトの眼には大粒の涙が溢れ出す。

 

キリト「アスナ・・・」

 

アスナ「ただいま、キリトくん」

 

アスナがそう言った直後、キリトはアスナを強く抱き締めた。

そして、嗚咽交じりの声で言う。

 

キリト「よかった・・・もう、会えない・・・んじゃ、ないかと・・・」

 

幼子のように縋りつくキリトを、アスナはそっと抱き締め、その耳許で囁く。

 

アスナ「大丈夫。わたしはもうどこにも行かないよ」

 

我が子を包む母親の如きその姿は、とても美しく、また優しいものだった。

そんな姿に、ベリルは再び満足そうな笑みを浮かべる。

何も言わずに踵を返して立ち去ろうとするベリルだが、それをキリトが呼び止める。

 

キリト「おい、待てよ」

 

目元をごしごしと袖で拭いたキリトは、腰のベルトに刺していた夜空の剣を抜き、それを名残惜しそうに見てからベリルに差し出す。

 

キリト「忘れ物だ」

 

振り向きキリトから剣を受け取ったベリルは次いでウインドウ画面を開くと、そこから夜空の剣の鞘を呼び出して剣を収めた。

そしてそれを、片手でキリトに向かって差し出す。

 

ベリル「やるよ」

 

キリト「はぁ?大事なものなんだろ?」

 

ベリル「坊やこそ、お嬢ちゃんを守るのにそれが必要なんだろ?だったらその夜空の剣は坊やが持っていきな。ただし大事にしろよ。可愛い彼女や頼れる相棒と一緒にな」

 

ベリルは再び踵を返してキリトたちに背を向けると、そのままゆっくりと歩き去っていく。

 

キリト「おいベリル!また会えるか?」

 

ベリルは止まることなくただ手を上げて挨拶を送り、そのままどこかへ去っていった。

デュオ視点

ベリルの姿が完全に見えなくなった後、ひっそりと静まり返った平原で俺たちは立ち尽くしていた。

何だかいろいろなことがあり過ぎて、途方もない時間過ごしていたような気がする。

 

アスナ「行っちゃったね」

 

キリト「あぁ・・・」

 

隣に立つ2人の呟きに、俺は笑いながら口を開く。

 

デュオ「すぐにまた会えるさ」

 

何か根拠があるわけでは無いが、ただなんとなくそんな気がしていた。

 

キリト「そうだな・・・」

 

俺と同じことを思ったのか、キリトも俺の言葉に賛同する。

 

デュオ「さてと、今日はもう休もう。俺はもうヘトヘトだ・・・」

 

キリト「同感・・・」

 

言った瞬間、緊張感が抜けたためか、急に疲労が身体を襲ってきた。

俺とキリトは崩れるようにして、その場に座り込んでしまう。

そんな俺たちに、アスナが微笑む。

 

アスナ「じゃあ、今日は宿屋に行って休もうか」

 

キリト&デュオ『賛成~・・・』

 

アスナ「宿屋までは頑張って歩いてね」

 

デュオ「了解・・・」

 

ふらつく身体を気力で立ち上がらせ、ノロノロと歩き出す。

 

アスナ「ほら、キリトくんも早く立って!」

 

アスナに引っ張られてようやく立ち上がったキリトだが、その足取りはもはや危ういどころではない。

仕方なく肩を貸してやり、それからしばらく歩いて、どうにか街に辿り着く。

俺たち3人は宿屋を探し、そこで食事を取った後、キリトはアスナと一緒の部屋に、俺は1人部屋に入り―――死んだように―――眠った。

その深夜にキリトたちの部屋が何やら騒がしかったが、また夫婦喧嘩でもあったのだろうか?

それにしてはキリトの悲鳴は聞こえなかった―――アスナの喘ぎ声(?)のようなものは 聞こえたが・・・

 


 
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