第五話「魔法少女だって恋もする」
女の戦いは熾烈を極め、巻き込まれる形となった翔介は学校に盛大に遅刻をすることとなった。その結果、学校帰りに残されてしまうこととなり、夕日が差し込む教室でふたりきりである。
「どうしてだ。納得いかない」
「翔介がいけないんです」
納得出来ないと彼は叫ぶ。叫んだはいいが現実は変わらない。
目の前には反省文と書かれた用紙。それに向かうは翔介と天音。
翔介は自身が反省する点などないと、思っているため反省文が遅々として進まず、真っ白だ。天音は嫉妬という激情で冷静になれず、反省文も「あいつが悪い」と黒くびっしりである。筆跡もおどろおどろしく、見る者を呪いそうなほどに、だ。
その後教師が見に来て、天音の反省文を見てもういいぞと二人を帰した。
二人だけなのもあってか、自然と一緒に変える形となる。
翔介の顔色はよくなく、天音から間隔を開けて歩こうとする。しかし彼女はそれを許さない。すぐに詰めていくのだ。
翔介は冷や汗をかいて。顔を青ざめる。彼の内心は今日だけは一緒に帰りたくないだろう。
「のわるりさんという方について、詳しく聞きたいのですが!」
「え、えっと……その……」
「どういう関係何ですか?」
微笑んだ顔。しかし、翔介はその表情はまったく別のものを感じていた。
有無を言わさぬ迫力に、彼の背中は冷や汗は大洪水だろう。
「友達……かな?」
「本当に?」
「ほ、本当だよ!」
翔介は顔色を悟られぬように、少し早足になる。
(友達……仲間と言うべきなのかな?)
そこで翔介は足を止めた。なんだろうと首を傾げる天音。しばらく沈黙する。
「どうかしたんですか? どこか具合が悪いとか?」
「いや……なんていうのかな。ちゃんと考えないとなって」
翔介の表情は真剣そのものである。天音は愕然とする。
「ま、まさか。翔介のほうから積極的に?!」
(俺はあいつらと戦ってどうしたいんだろう。魔法少女たちの助けをしたいってのもある。ノワールを助けたいってのもある。でも俺自身はどうだ?)
天音は彼の内心を読めるわけではない。よって、彼女は現在進行形で勘違いしている。
時折、私も胸は負けてない。や、ずっと待っているんだから。などの言葉をしては顔を赤くして積極的にアピールしている。
だが、現実は非常であり、翔介の耳朶にはかすりもしていなかった。
彼は真剣に自身のできること、望むことを考え始める。そして口を開く。
「やっぱ好きなモノは分かち合いたいよね」
天音は白目になって口を何度も開閉させる。
「あ、あの……それって……どういう――」
「そうだ? 最近の魔法少女――」
突然天音は勢い良く飛んで、地面を転がる。
「――の人たちは大丈夫なのかな?」
「え? あ、ああ! そ、そう。そうですよね。き、きっとダイジョウブ――だと思います。はい」
天音は視線を忙しなく彷徨わせ、手を大きく動かしながら言った。
彼はその一連の動きを全て見た上で、笑顔で言う。
「そうだよね。なんたって魔法少女だもんね」
(ふ、ふー。誤魔化せた)
内心滝のような汗を流す天音。普通の会話に戻そうと思案した所で、翔介は追撃を加えた。
「赤い魔法少女って――」
「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「――どうしたの?」
天音は顔を真赤にして手を暴れさせた。あまりの早さに残像が生まれ、忙しない千手観音様のようになっていた。
「あ、い、いいいいいいえ。続きをどうぞ」
(翔介のお気に入りだったらどうしよう)
ポジティブ。否、願望の妄想が広がり始める。その中で翔介は言う。赤い魔法少女に恋しているのだ。と、そこで敵が現れて天音たちを襲う。颯爽と魔法少女になって、二人はめくるめく、恋に――。
「リーダーなのかな?」
天音は盛大にすっ転んだ。
~続く~
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恋する乙女は嫉妬に妄想に