No.734952

真恋姫†夢想 弓史に一生 第九章 第二十五話

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。

そのことも含めて、皆さんにお話するべきことがございますので、後書きまでお読みいただければと思います。

2014-11-04 00:46:13 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1746   閲覧ユーザー数:1562

 

~劉備side~

 

 

洛陽内にて、行商人風の男の言い放った言葉に、私は衝撃を受けた。

 

 

「………あの……それってどういう……。」

 

「おらっ!!!! 金目の物全部出しやがれ!!!!」

 

 

私が愛紗ちゃんに代わってその男と話をしようとすると、私たちから見て右側の路地から何やら穏やかじゃない声が聞こえてくる。

 

路地を覗くと、袁紹軍の鎧を着た人が3人、1人の商人風の男を囲むようにして立っていた。

 

 

「な……なんなんですかあなたたちは……!!! いきなり囲んで……何故あなたたちにお金を払わないといけないんですか!?」

 

「俺たちが悪逆董卓を洛陽から追い払ったから、今こうして無事に商売が出来てるってもんだろ? だったら俺たちに、そのお礼ってやつをくれてもいいと思うんだが?」

 

「あなたたちが来なくても、商売なら出来てました!!! むしろあなたたちが来た事で、洛陽に住んでいた人達が避難してしまい、商売あがったりです!!! 逆賊はあなたたちではありませんか!!!」

 

「なんだとこのやろう!!!!!」

 

「双方待たれよ!!!!」

 

 

男たちが熱くなり、場が一触即発の状態になる。

 

その様子を見るに見かねた星ちゃんが、男たちの仲裁をするために声をかけた。

 

 

「あぁ!? 何だお前は!!」

 

「私は趙雲。後ろに居られる、劉玄徳の将だ。その鎧……袁紹殿の所の兵だとお見受けする。一体何があったのか話して頂きたい。」

 

「なんだ……味方ではないか。」

 

 

男たちはこちら側が味方だと分かると、警戒心を解きヘラヘラと笑い出した。

 

その様子に怪訝な顔をする星ちゃん。

 

 

「連合軍の一員である以上、味方という言い方に間違いはないが……まぁ構わない。お前たちはここで何をしていたのだ。確か、袁紹殿の軍が見回る担当は向こう側であったはずだが…??」

 

「へっ……さぁ~てな……。」

 

「………見たところ、恐喝めいたことをしているようだな……。」

 

「恐喝?? 失敬な……。これは正当な要求ではないか。」

 

「一方的な要求を押し通すことのどこに正当性があるというのだ!!!!」

 

「敗戦国の奴らをどうしようと、俺たちの勝手だろうが!!!!!!」

 

「っ!?」

 

「貴様ら……!!!」

 

 

男たちは悪びれもなくそう言うと、寒気のするような笑みを浮かべる。

 

そのあまりに酷い態度に絶句する星ちゃん。

 

愛紗ちゃんはその言葉を聞き、怒りのあまり持っていた武器をその男達に向け、今にも切りかかろうとしている。

 

その殺気に、ヘラヘラ笑っていた男たちも流石に顔をギョッとさせた。

 

 

「愛紗さん!!!駄目です!!!!!」

 

「愛紗さん!!!!抑えてください!!!!!」

 

 

だが、その行動に待ったをかけるように私の後ろから二人の声が飛ぶ。

 

先程まで鈴々ちゃんの傍で怯えていたはずの朱里ちゃんと雛里ちゃんだ。

 

 

「止めるな!!!! こんな奴らを生かしておいて良いものか!!!!」

 

「いくらそう思っても切っては駄目です。今ここでこの人たちを切ったとして、その報告を聞いた袁紹さんは必ず私たちの軍に報復するはずです。兵は、減ったとは言えまだまだ兵の多い袁紹軍を相手にする状況は避けなければなりませんし、場合により連合軍の新たな攻撃目標にあげられてしまうかもしれません。ですので、今ここで私たちが喧嘩を売るのは下策も良いところなんです。」

 

「ですから愛紗さん。今はその怒りを鎮めてください。」

 

「ぐっ………ぐぅぅ………。」

 

 

軍師二人の言葉で、この場で事を交えるのはまずいと思った愛紗ちゃんは不承不承武器を下げる。

 

しかし、そのやりきれない怒りと虚しさは、彼女の表情に色濃く現れていた。

 

 

「…………脅かすんじゃねぇよ…ったく。もういい、興が覚めたから別のとこ行こうぜ…。」

 

 

愛紗ちゃんが武器を降ろしたのを確認した男たちは、先程まで脅していた男を解放し、そのまま路地の奥へと歩いていった。

 

その様子を苦々しく思いながら、愛紗ちゃんは私たちの傍へと戻ってきて溜息を吐いた。

 

 

「申し訳なかった…。少し、我を忘れてしまった…。」

 

「いえ、愛紗さんが怒るのも当然だとは思います。しかし、時が時ですので…。」

 

「あぁ、そうだな……。もう少し気をつけることにしよう…。」

 

「すいません…お願いしますね。」

 

「ところでなんだけど………さっきの人たちの事、袁紹さんに言うべきだよね?」

 

 

苦笑混じりに答える愛紗ちゃんに、朱里ちゃんは申し訳なさそうにしながらそう言った。

 

その会話を傍で聞きながら、二人の会話が切れたのを狙って、先ほどの人たちについてどうしようかと私はみんなに聞く。

 

 

「どうやら袁紹殿は、自軍の兵士の手綱をしっかり握れないほどてんやわんやしているようですし、ここは言いに行くべきかと…。」

 

「鈴々も愛紗にさんせーなのだ!!!!!!」

 

「そうですね……。伝えておけば何かしらの対処をするはずですし、それで良いかと。」

 

「(コクンコクン)」

 

「決まりですな、桃香様。」

 

「うん。それじゃあ、袁紹さんのところに行こう!!」

 

 

私の問いかけに満場一致で答える皆。

 

その返事に頷き、目的の袁紹さんの軍の所へと向かうことにする私たち。

 

その道中、

 

 

「でも、何故あんな素行の悪い連中を袁紹殿は兵として連れて来ているのだろうか。」

 

「……多分ですが……袁紹さんの見栄の所為なのだと思います。」

 

「どういうことだ、朱里?」

 

「袁紹さんは自身の家柄に強い自負を持っています。そのため、今回の連合軍を組むにあたって、他勢力にその圧倒的な財力と資源の豊富さなどを知らしめたいと思ったのではないでしょうか……。そのために、多少のことに目を瞑ってその辺りの兵までも連れてきたのではないかと…。」

 

「………連れて来たのは……仕方がないにしてもだ……何故今頃になって……。」

 

「……洛陽への進軍中あたりから、急に袁紹さんの様子がおかしくなりましたし………。今はそのせいで指揮系統も大きく麻痺していてあのような人たちを統括出来ていないのではないかと…。」

 

「しかし、見栄のために連れてきた連中の所為で結局袁紹軍の評価は下がってしまっては元も子もないではないか…。」

 

「もしかして、袁紹って馬鹿なのか?」

 

「……馬鹿とは言いませんが…作戦という作戦を立ててない時点で問題はあると思います。」

 

「おぉ…。雛里は中々厳しいことを言うのだ…。」

 

「……はぁぅ……。」

 

「ははっ。これは、雛里に愛想をつかされないように、頑張らねばいけませんな、桃香様。」

 

「…………頑張ります…。」

 

 

さっきの男たちが、そもそも何故この軍に参加しているのか気になった愛紗ちゃんが話題を出すと、それに対して朱里ちゃんと雛里ちゃんがその答えになるだろうところを解説してくれる。

 

それを聞き、各々の中で評価を出す愛紗ちゃんと鈴々ちゃんに苦笑しながらも、自分なりの評価をする雛里ちゃん。

 

普段なら言わないような事をサラっと言った雛里ちゃんに、驚く鈴々ちゃん。

 

普段なら言わないような事を言ってしまったことに反省する雛里ちゃんは顔が真っ赤だ。

 

その光景をニヤニヤしながら見て、最後に私に振ってくる星ちゃんはやっぱり少し意地悪だと思う。

 

こうして、洛陽でも平常運転な劉備たちであった。

 

 

 

 

 

 

「何?? 会えないだと??」

 

「はい。麗羽様は只今お忙しいので、お会いになることが出来ません。ですので、言伝があれば代わりに受け取ります。」

 

 

袁紹さんの軍に着いた私たちは、指揮をしていた顔良さんをつかまえて袁紹さんに会えないか訊ねてみた。

 

すると、どうやら忙しいらしく、先ほどのように言われてしまう。

 

少なくとも、顔良さんに伝えておけば大丈夫だろうと考えた私たちは、顔良さんに先程見聞きしたことを全て話す。

 

すると、顔良さんは「すいません、伝えて下さってありがとうございます。」と一つ頭を下げると、奥へと走っていってしまった。

 

何やら忙しそうだと思った私たちは、ここにいても仕方ないため先ほど自分たちがいた場所とは違う辺りの調査に向かうことにしたのだった。

 

 

 

先ほどの通りは大通りに付随する通りだった為か比較的綺麗な所であったが、今私たちのいる区域は酷く荒廃している。

 

所謂ここが洛陽の貧困街という場所に当たるのだろうか…。

 

焼け焦げた家と思わしき建物の前で、生きているのか死んでいるのか分からないほどピクリとも動かない老人。

 

見るに耐えないほど痩せこけた少年とその子供の手を引くこれまた痩せた女性。

 

幸せや笑顔という言葉から一番遠い場所であると暗に示しているようなこの雰囲気に、私は胸が焼かれる思いであった。

 

私の力がまだまだ足りないばかりに、この人たちの笑顔を守ることが出来ない。

 

ならばせめて、この人たちに笑顔を一瞬でも良いから浮かべさせてあげたい。

 

笑顔を持って、明日を生きる活力にしてもらいたい。

 

 

「これは…………酷いですね…………。」

 

「焼け落ちた住居や倒壊した建物など……董卓軍がこの街から出て行く時にやっていったのでしょう……。」

 

「なんて酷いことを……。」

 

 

この惨状を目の当たりにした他の面々も、私同様に苦悶の表情を浮かべる。

 

ならば、やることは一つであろう。

 

 

「ねぇ、皆。この人たちを笑顔にしてこそ私の理想とする世界がその先にあると思うの。だから、私はこの人たちのために出来る限りのことをしたいと思ってる。でも、それは私一人では決めれることではないから、みんなの意見を教えてほしいんだ。」

 

「……あなたは私たちの主なのです。ただ一言命令くだされば、私たちには是非もありません。」

 

「違うよ、愛紗ちゃん。私に出来ることなんてたかが知れてるんだから……だから、みんなと協力して少しでも出来ることを増やしていく。それが今の私に出来ること…。私にはまだ人に命令するなんてそんな人の上に立ってやることなんて出来ないんだよ。」

 

「…………分かりました。ですが、ここに居る皆の思いは桃香様と同じです。命令をする事がまだ力不足だと仰るのならば、私たちに命令ではなく提案をしてください。」

 

「うん!! じゃあまずは、炊き出しからやっていこう!!!!」

 

「「「「「おぉ~!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

こうして私たちは、他の諸侯よりもほんの少しではあるが早く、洛陽の民たちへ炊き出しや仮設住宅の設置を始めたのであった。

 

 

 

 

 

炊き出しを初めてしばらく。

 

先程までこの世の終わりのような表情をしていた多くの人たちの顔には、別の表情が浮かんでいたのだった。

 

私たちが炊き出しを始めるとその効果は絶大なものであった。

 

中には涙を浮かべながら感謝の言葉を告げる人もいたほどで、それだけここにいる人たちは苦しんでいたと言い換えることが出来る。

 

そんな人たちのために少しでも出来ることがあり、その結果笑顔にする事が出来た。

 

微力ながら、目の前の人たちを助ける程度の力をつけることが出来たことを素直に嬉しく思い、住民たちのホッとしたような安堵の笑みに釣られて私も笑顔になる。

 

そんな中、一人の兵士によってその場は緊張の渦に包まれた。

 

 

「大変です!!!!! 敵将発見!!!!!敵将発見!!!!!!!! 至急応援をお願いします!!!!!!」

 

「何だと!!?? まだこの街中に敵将が………。 敵将は何人だ!!!」

 

「敵将は2名です!!!!!」

 

「分かった。ならば、直ぐに向かおう。」

 

「何かあると大変ですから、鈴々ちゃんも一緒に行ってください!!!!!」

 

「分かったのだ。」

 

 

兵士によってもたらされた報。

 

その知らせに表情を厳しいものに変えて直ぐに対応に向かう愛紗ちゃん。

 

愛紗ちゃん1人で敵将2名とやりあうのは不利だと思った朱里ちゃんは、直ぐに鈴々ちゃんにも一緒に行くように告げる。

 

鈴々ちゃんが返事をすると、その言葉を待っていたかのように先ほどの兵士が走り出し、その後を追いかけるように2人と数名の兵士がついていく。

 

その後ろ姿を眺めながら無事を祈る私であった。

 

 

現場に着いた愛紗と鈴々は、その場にいた人物に驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「お………お前は…………。」

 

「にゃにゃっ!? 呂布なのだ!!!!!」

 

 

兵士たちが逃げられないように囲っている中には、かつて自分たち2人と星を加えた3人で挑んで勝てなかった董卓軍の武将、飛将軍呂奉先とその後ろに控えるようにして少女が1人、随分と余裕な表情で立っていた。

 

 

「お前たちそいつから離れろ!!!!! お前たちが勝てる相手ではない!!!!!!」

 

「こいつの相手は鈴々たちに任せるのだ!!!!!!!」

 

 

口早にそう指示を出し、臨戦態勢に入る2人。

 

しかし武器を構えて対峙しても余裕のある振る舞いを崩さない呂布に、心では汗が止まらなかった。

 

 

「……そんなに警戒しなくていい………家族さえ助けてくれたら……手は出さない……何なら投降してもいい………。」

 

「……何だと!?」

 

 

 

そんな2人に向かって、口を開いた呂布から衝撃的な言葉が浴びせられる。

 

確かに前回の時とは違い、交戦しようとする意志のない呂布に違和感を覚えながら、それでも警戒心を解かずに話をする愛紗。

 

 

「……家族の安全さえ保証すれば、仲間になっても良いと言うのか?」

 

「………。(コクン)」

 

「そうか……。私一人の判断では無理だが、桃香様ならきっと受け入れてくれると思うぞ。」

 

「分かった…。」

 

 

愛紗の問いかけに1つ頷く呂布。

 

その真意は分からないにしても、被害が出ないうちにこの場を収めることが出来るのならありがたいと、その要求を受け入れる意思があることを告げる愛紗。

 

この後、呂布を連れて桃香の所まで帰り、事情を説明した愛紗。

 

愛紗から事情を聞いた桃香は、呂布が仲間になることを素直に喜び、受け入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓史に一生 第九章 第二十五話   敗戦国    END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

 

実は作者は今年受験があります。

 

そのための勉強に追われている現在、執筆に当てる時間が著しく減っているのです。

 

そのため、断腸の思いではあるのですが、この小説を第九章が終了した時点で休止することに決めました。

 

 

しかし、あくまで休止であり中止にするわけではありません。

 

来年の3月で私の受験が終わってからは、再びこの小説を書くために戻ってくるつもりではあります。

 

新生活の影響で、それが4月なのか5月なのかは分かりません。

 

ですが、一度書き始めたこの小説をこのような中途半端な状態で終わらせることなど私の誇りが許しません。

 

ですので皆様、私の都合ではございますが、もしよろしければ私が再び書き始めれるその日まで、お待ちいただけるとありがたいと思います。

 

また、第九章はあと二話ほど続くつもりですので、その二話分は楽しんでいただけたらと思います。

 

 

 

 

 

 


 
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