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真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の六十一

雷起さん

得票数28の秋蘭②のお話です。
おまけ壱 『北郷二刃奮闘記』其の二十六 リクエスト:いい大人になるための漢女☆講座~女の子編~ 7票
おまけ参 リクエスト:超英雄大戦(華蝶連者×サン・アルジオン×見捨てない人)16票
おまけ弐 『聖刀くんの日常』其の二十五 リクエスト:いい大人になるための漢女☆講座~男の子編~ 8票
おまけ肆 いい大人になるための漢女☆講座~女の子編~パートⅡ

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2014-10-30 12:29:47 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:2723   閲覧ユーザー数:2175

 

 

第二章  『三爸爸†無双』 其の六十一

 

 

荊州 呉領 赤壁                 (時報:桂花八人目 妊娠一ヶ月)

【秋蘭turn】

 

「貰ったぞ!鈴々っ!!」

 

「にゃっ!?秋蘭お姉ちゃんかっ!?」

 

 私は蜀の楼船に飛び移りながら、一度に十本の矢を放った。

 普通ならば鈴々はこの十本全てを薙ぎ払うだろう。

 しかし今は姉者が先に乗り込んで、五虎将全てを相手に切り結ぼうとする正に直前だ。

 咄嗟の反応では全ての矢を落とす事は出来まい。

 しかも私は六本を鈴々に、残り四本を愛紗と翠に狙いを定めている。

 敢えて鈴々に声を掛け、十本全てが鈴々を狙った物と思わせる策。

 鈴々ならば体に当たる六本のみを落とし、反撃に移る筈。

 私の読み通り鈴々は六本の矢を払い落とした。

 しかし…。

 

「うわぁ………やられちゃったのだ………」

 

 両手足に一本ずつ矢を受けた鈴々は敗けを認め…。

 

「あふっ!」

 

 その直後に一本の矢が私の右の乳房に当たった………先端に当てるとは、流石紫苑だ。

 矢は模擬戦用なので当たっても刺さる事は無く、更に真桜が可能な限り痛くは無い様に工夫してくれている。

 鏃の部分は判子になっていて、当たると『敗』の文字が朱で着く。

 鈴々の手足に私が着けたのと同様に、私の水着の胸の先端も朱に染まっていた。

 痛くは無かったが少し感じてしまったではないか………しかも少し勃ってしまったので乳首を晒している様にも見えてしまう…………紫苑の事だからそこまで考えて狙ったに違いない。

 せっかくだから試合後一刀を誘惑する口実にさせて貰おう♪

 

「秋蘭お姉ちゃんも負けなのだ。ほら、鈴々と一緒に救助隊に加わろう♪」

 

 手を差し出した顔に悔しさは感じられず、実に清々しい。

 

「そうだな………しかし、鈴々。よく私の策を見破ったな。」

 

 二人並んで甲板の縁まで移動しながら問いかけてみた。

 

「秋蘭お姉ちゃんが狙いを外すハズないのに、あの四本は鈴々のどこにも当たらないって気付いたら咄嗟に身体が動いたのだ。」

 

「つまり私が他の誰かも狙っていると判断したのだろう?」

 

「誰を狙ったかまでは分からなかったけど、最悪四人がやられたら鈴々ひとりだけになってしまうのだ。だったら四人を守って鈴々が犠牲になった方が勝率は上がるのだ♪」

 

「私が紫苑にやられてなければ直ぐに次の誰かを狙っていたぞ。」

 

「そこはほら、紫苑を信頼してるから♪」

 

 はは♪完敗だ♪私だって鈴々と同じ立場なら紫苑に後を託す。

 

「ふふ♪鈴々の成長に旨い酒の一杯でも贈りたい所だが、今は酒が呑めないからな………そうだ、鈴々と爛々に私が腕を振るって食事を作ろう♪」

 

「それは楽しみなのだ♪」

 

 私と鈴々は笑って肩を叩き合う。

 そのすぐ後で、姉者が愛紗、星、翠、紫苑と同士打ちに持ち込んだ。

 試合は蜀が防衛を五虎将にのみ任せていたので、我等曹魏が蜀本陣を制圧して勝利となった。

 

 

 

 

赤壁 宿営地

【紫一刀turn】

 

 今日の試合とシスターズのステージが終了して、今はもう直ぐ日が暮れようとしている。

 俺たち三人は奥さん達と子供達と一緒に屋外で晩ご飯を食べていた。

 雰囲気としてはビアガーデンみたいな感じに見えるが、この場にはアルコールが一滴も無いのが最大の違いだ。

 妊婦と乳児のいる母親が呑まないのは絶対だが、それに付き合うと言ってあの祭さんと桔梗と霞が赤壁では呑まないと言い出した。

 あの祭さんと桔梗と霞がだっ!

 それに便乗して他の奥さん達も揃って禁酒すると同意した結果が今の状態。

 表面上は酒好き達に遠慮している形だが、全員が懐妊の確率を僅かでも上げようと狙っているのがバレバレだ。

 おかげで俺たちも酒抜きにされてしまった……………。

 晩ご飯も俺たちだけ特別メニューだし。

 昼は模擬戦だったが、俺たち三人はこれからが実戦だ。

 今晩も弾倉が空になるまで撃ち尽くす様に攻撃命令が下されるのか……………。

 いや!子供達だって妹や弟が欲しいとおねだりしてくるのだ!待っていろ、爸爸たちは頑張るぞっ!!

 そういや聖刀以降産まれたのは全員女の子だよな。

 これから先、もう男の子って生まれないのかな?

 こればっかりは神のみぞ知るってやつだ。産まれてくる子は男女関係なく全力で愛するのみさ!

 

「紫、あっちで秋蘭と鈴々が卓を囲んでるぞ。」

「鈴蘭と爛々も一緒で、その四人だけってのは珍しいよな。」

 

 緑と赤に言われて、俺は弾薬(薬膳)を補給(掻き込み)しながらそちらに目を移した。

 成程、確かに。

 あそこに春蘭や愛紗、いや他の誰かでも居るなら気にならないだろうけど、余人を交えずってのは珍しい。

 

「そういえば正史で張飛の奥さんが夏侯氏だったよな。」

「「ああ、夏侯淵の次男の夏侯覇が蜀に亡命した時に、それが理由で厚遇されたんだっけ。」」

 

 俺たち三人が顔を突き合わせて正史で覚えていた事を捻り出していると、二刃が楽しそうにやって来た。

 

「兄さんたちも鈴々さんと秋蘭さんが話してるの見てたでしょ♪秋蘭さんに次の子が出来たら諱はやっぱり覇にするの?」

 

「「「お前も同じ事考えてたのか。」」」

 

 俺たち以上に三国志に詳しい二刃だから当然か。

 

「あ~、でもここじゃ亡命する理由が無いか。爛々ちゃんとは親戚どころか姉妹だし。」

 

「「「どういう事だ?」」」

 

「爛々ちゃんは張苞だけど、香斗ちゃんに懐いてる姿を見ると張皇后的な要素も有る気がしてたんだよね。」

 

 ああ、そうか。張飛の娘二人は揃って劉禅の后になるんだったな。

 

「で、夏侯覇は張皇后の親戚だから、蜀の車騎将軍になる事が出来たのよ。」

 

「「「そんなに上の地位になってたのか?」」」

 

「はあ~~………兄さんたち疎覚えで正史の事を外史研究会に話してるでしょ。帰ったら正史の事をまとめたって本のチェックするからね。」

 

 う……………二刃にジト目で睨まれた…………。

 

「そう言えば、今日の模擬戦で秋蘭さんが紫苑さんに撃たれて負けたでしょ。あれ見た時に、つい定軍山を連想しちゃった。心配のしすぎだって分かってはいるけど、やっぱりドキッとするよね………」

 

「「「その気持ちは解るよ…………俺たちも戦乱の頃はその手の地名を聞くと心配したもんさ。」」」

 

「そうなんだ………夷陵とか閬中(ろうちゅう)とか………」

 

 閬中か………正史で張飛が部下に裏切られて殺された場所だ…………。

 

「ねえ、前に緑の兄さんが蜀へ入るのに『蜀の桟道』を通ったって聞いたけど、雛里さんも一緒だったんでしょ?落鳳坡はどうやって回避したの?」

 

 いつか訊かれると思っていたが…………おい、緑!どうやって誤魔化すんだよ!

 俺と赤はその場に居なかったから口出し出来ないぞ!

 

「ん?二刃、落鳳坡の話か♪」

 

 って!駕医!?お前このタイミングで現れるかっ!?

 

「あの時は緑一刀が抱きしめたら、雛里がのぼせて意識が落ちたんだよな♪うん、あれからもう十年以上経つのか。懐かしいな♪」

 

 おい!説明するならもっと詳しくしてくれ!そんな説明じゃ二刃が…………。

 

「ふうぅぅぅうううん。兄さんが落鳳坡って地名を付ける原因になったんだ…………」

 

 二刃!何で俺まで睨む!

 

「「「ちょっと俺たちは秋蘭と鈴々の所に行ってる!」」」

 

 ここは二刃の鉄拳が飛んでくる前に逃げるのが賢明だ!

 という訳で俺たちは秋蘭と鈴々の居る卓に逃亡した。

 

「「「鈴蘭、爛々、食べてるか~♪」」」

 

 そしてこういう時は子供を味方に付けるのが最上の策。

 同時に俺たちの心も癒されるので良い事尽くめだ♪

 

「ぷぁぱモグモグ、らんらんモグモグ、たべてモグモグ、よモグモグ。」

「爸爸♪鈴蘭はもうおなかいっぱい♪爛々にごはんあ~んしてあげてるの♪はいあ~ん♪」

「あ~ん♪」

 

 さっきまで口いっぱいにモグモグしてたのに、あ~んした口は空っぽ…………やっぱり鈴々の子だけあるな…………。

 

「どうした、一刀。お前たちもあ~んして欲しいのか?」

 

 秋蘭が笑ってそんな冗談を言ってくる。ここはちょっと乗っておこうかな♪

 

「「「それじゃあ頼むよ。あ~ん。」」」

 

 開いた口に鶏の唐揚げが入れられた。その箸を持つ手付きや仕草が柔らかく、それだけでドキリとさせられる。

 

「「「ん?この味付けは、秋蘭が作ったのか。模擬戦の後でそんな時間よく有ったな。」」」

 

「労ってくれるのは嬉しいが、先に味の感想を聞かせて欲しいな。」

 

「「「旨いよ♪表面がパリッとしてて、噛むと中から味の染みた肉汁があふれて最高だ♪」」」

 

 秋蘭が作る物が旨いのは当たり前。でも、こうして改めて言うのが夫婦円満の秘訣だ。

 

「鈴々にも今度教えて欲しいのだ♪」

 

 鈴々だって料理の腕は上達してるのに、こうして精進を欠かさない姿勢が大事なんだ………………桃香と愛紗は何であんな風になってしまったんだろう…………。

 

「「「鈴々と秋蘭だけで卓を囲むなんて珍しいじゃないか。もしかして今日の試合の健闘を称え合ってる所だった?」」」

 

「称え合うと言うよりも、むしろ私が鈴々を一方的に称えているのだ♪」

「そんな事無いのだ!鈴々だって秋蘭お姉ちゃんが気配を消してあそこまで近付いていたのは驚いたのだ!」

 

 鈴々が驚くのも無理は無い。餓狼爪は言わばスナイパーライフル。それでの接近戦は天下一品武闘会で見慣れているとは言え、船戦の白兵戦で五虎将相手に春蘭と挟撃に出るなんて普通は思わないぞ。

 

「「「先に鈴々が負けたのに、秋蘭が一方的に称えるのか?」」」

 

「一刀、映像では解らなかっただろうが、あの時私は鈴々に六本、愛紗に二本、翠に二本を射たのだ。それを鈴々は咄嗟に判断して愛紗と翠を守った。」

 

「「「ええっ!?そうだったのか!?」」」

 

 てっきり鈴々が身重だから対応に遅れたとばっかり思ってた。

 鈴々は妊娠七ヶ月、紫苑が九ヶ月、星が五ヶ月、愛紗が四ヶ月、翠が三ヶ月。

 対する秋蘭と春蘭は現在身軽。

 五人対二人でもこれなら互角……………………俺たちとしては妊婦がこんな模擬戦をする事にまだ完全な納得はしてないんだけど。

 

「あれは愛紗と翠を狙ってたのかぁ。四人掛りで春蘭と相打ちだったからなあ、二人が秋蘭お姉ちゃんの矢で負けてたらもっと悲惨な結果になってたのだ。今回は蜀の鍛錬不足なのだな。」

 

 状況認識と反省点をちゃんと確認出来てる。

 秋蘭が健闘を称えると言った気持ちが解るな。

 

「鈴蘭は試合の後で媽媽と鈴々媽媽が笑ってたのがステキだった♪鈴蘭も来年試合に出たら媽媽たちみたいに烈夏おねえちゃんや愛羅おねえちゃんと笑って握手がしたいなあ♪」

 

 なんか男同士の友情に憧れる女の子の台詞っぽいけど…………ここは父親の俺たちがもっと頑張らないとダメって事?

 

「鈴蘭。その為にはもっと鍛錬に励まないと駄目だな♪今の腕ではとてもじゃないが模擬戦には出せないぞ。」

 

「ええ~?鈴蘭がんばって強くなるよっ!」

「らんらんも!らんらんも~~!」

 

「爛々が試合に出られる様になるのはまだまだ先なのだ。」

 

「む~~~~!」

 

 ははは♪爛々がスプーンを咥えてふくれっ面してる。可愛いなあ♪

 

「「「それじゃあ爛々は爸爸たちと一緒に鍛錬しような♪」」」

 

「わあ♪ぱぱとたんれ~~ん♪」

 

 二歳四ヶ月の子だからと言って気は抜けないんだよなぁ。

 烈夏や愛羅なんか上の子達に、俺たちもう勝てないんだもん…………。

 

「(一刀、鍛錬もいいが今夜の仕事もしっかり頼むぞ♪)」

 

 秋蘭に腕を引かれ、耳元で囁かれた…………………。

 

「(紫苑に矢を当てられた場所が腫れてしまったみたい…………優しく介抱してね♡)」

 

 わざとらしい演技と解っていても、秋蘭に甘えられるとその激しいギャップに心臓が高鳴る。

 

「鈴蘭は今夜、鈴々と爛々と一緒に寝るのだ♪」

「え?いいの♪」

「わあ♪すずらんおねえちゃんといっしょ~♪」

 

 母親同士の連携もしっかり取れてる訳で。

 

「では、そろそろ♪」

 

 秋蘭が立ち上がると他の卓からも八人立ち上がった。

 成程、今日はこの九人が相手か…………。

 

 

 北郷一刀の底力!見せてやるぜっ!!

 

 

 

 

数日後

揚洲 長江河口付近 砂浜

【秋蘭turn】

 

「先程二刃に診てもらったら懐妊だと言われた♪」

 

 私は朝食前に一刀たちの天幕を訪れ、喜び勇んで伝えた。

 なのだが一刀たちは口角がヒクヒクしている。

 

「「「今朝判ったって…………赤壁に行く前に懐妊してたって事じゃないか…………」」」

 

「ふむ、そうなるな♪」

 

 一刀たちが何を思ったか分かっている。

 この前の夜も頑張ってくれたものな♪

 

「今回は華琳さまより先に伝えたのだ。一刀たちに喜んで欲しくて………」

 

 この意味を一刀たちは瞬時に理解してくれた。

 驚き、そして破顔して私を抱き締める。

 

「「「ありがとう、秋蘭。」」」

 

 耳元で優しく囁くその声に、私は六年の陶酔感が蘇っていた。

 出来ればこのまま暫くこうしていたい所だが、この旅行中は一刀たちの独り占めは厳禁と皆で話し合って決めていた。

 思春の様に出産は例外だが、懐妊の褒美デートは都に戻ってからになる。

 

「皆や子供達が待っている。それに華琳さまにも報告がしたいから………続きは帰ってからだ。」

 

 一刀たちは名残惜しそうに私を見るが、本当は私の方が惜しんでいると分かってくれた。

 静かに腕を放し、私を天幕の外へと導く。

 

「「「一緒に華琳の所に行くのは構わないだろ?」」」

 

 一刀たちの労わりを感じて素直に応える。

 

「ふふ♪よろしくお願いします、旦那さま♪」

 

 自然にこぼれる笑みと共に、六年前に呼んだ懐かしい言葉が出てきた。

 

「「「はは♪懐かしい響きだ♪またメイド服を着てくれる?」」」

 

「ご要望とあらば♪………そうだ、今度は鈴蘭にも着せよう♪」

 

「「「鈴蘭用のを作らなきゃな♪…………春姫と訓にもせがまれて作ってるから、直ぐに用意出来るだろ♪」」」

 

 月と詠がそんな事を言っていたな。お手伝いをする時に着たいと言い出したらしい。

 月は嬉しそうだったが、詠は引きつってた♪

 

「「「ん?何か騒がしいな…………」」」

 

「一刀、急ぐぞっ!!」

 

 子供達がはしゃいでいる騒がしさでは無い!皆の殺気も伝わって来る!

 敵襲!?

 いや、陸に配置した警備の兵が争う気配が無い。

 海から賊が来たのか!?

 

「「「秋蘭は武器を!俺たちは先に行くっ!!」」」

 

「御意っ!!」

 

 

 

 

【紫一刀turn】

 

「「「海賊が来たとでも言うのかっ!?」」」

 

 俺たちは全速力で海岸に向かい、そこで見た物はっ!

 

「「「な、なんだありゃ?」」」

 

 思わず口に出てしまったが、俺たちは“それ”が何かを知っている。

 ただ、俺たちの知る“それ”とは余りにもスケールがおかしかった。

 

「「「た………タコ?」」」

 

 そう、蛸だ。

 しかしその大きさが象くらいは有った。

 

「ご主人さま!お下がりください!危険ですっ!!」

 

 愛紗の声で我に返った俺たちは状況を確認する。

 愛紗達武将は全員が武器を手に大蛸を囲んで牽制している。

 当の蛸は波打ち際で陸に上がろうとしている様だった。

 月や麗羽達が子供達を避難させようとしているが、愛羅や冰蓮が自分も母親の助太刀をしようとするので押さえるのに苦労している。

 

「媽媽と燃秋は烈夏が守るっ!!」

 

 出産直後で戦えない思春を守ろうと、烈夏は凄まじい闘志を燃やしていた。

 

「「「烈夏!ここは媽媽達に任せるんだっ!お前は妹達から離れるなっ!!」」」

 

 烈夏は頷き、愛羅達をまとめて防衛線を築き上げる。

 その後ろに華琳、蓮華、桃香が立って戦況を見守っていた。

 

「「「何なんだ、あの大蛸は!?」」」

 

「何と訊かれても蛸だとしか答えようが無いわね。」

「朝食の準備をしていたら突然海から現れたのよ。」

 

 華琳と蓮華は意外にも落ち着いた様子で答えた。

 

「「「…………ここの蛸はあれが標準とか言わないよな?」」」

 

「あんな大きな蛸は初めてみた……………ハズなんだけど…………」

 

「「「なんだ、桃香?」」」

 

「何でだろう?似たような光景を前に見た様な気がするんだよねぇ…………」

 

「「「はあ!?」」」

 

 こんな光景のデジャヴなんて有り得んだろ。

 

「桃香もなの?」

「え?実は私もなのだけど!」

 

 華琳と蓮華までそんな事を言い出すなんて…………。

 

「一刀くんたち、ちょっと……」

「「「吉祥!?」」」

 

 俺たちの傍にやって来た吉祥が耳打ちしてくる。

 

「(どうやら他の外史の記憶が流入してるみたい。)」

「「「(え?でも俺たちには……)」」」

「(私にも無いわ。きっと、一刀くんたちも私も関わらない外史だと思う。)」

 

 そんな外史も存在するのか…………寂しい気分になってきた…………。

 

「「「っと、それよりも現状をどうにかしないと!」」」

 

「それなら心配要らないわよ♪」

 

 

 

 

【秋蘭turn】

 

 餓狼爪を手にして駆けつけてみれば……………大蛸とは………。

 

「姉者!すまん、遅くなった!」

「おお、秋蘭♪待っていたぞ♪」

 

 待っていた?いつもの姉者なら真っ先に切り込んで行きそうだが……………うん?なんだ?

 大蛸………砂浜………水着姿の我々…………………。

 

「やはり秋蘭もか。何故か大蛸と対峙するのが初めてとは思えんのだ…………しかも近づけば良くない事が起こる気がしてな。」

 

「そこでわたくし達の出番よ♪」

「弓でならば近付かんでも仕留められるからな♪」

「赤壁でのケリを、こやつを仕留める事で着けようと思っての♪」

 

 紫苑、桔梗、祭…………成程、面白い!

 

「その話し、乗った!」

 

 もっと危機的状況かと思っていたが、これは良い余興だ♪

 

「鈴々達が気を引いて逃げない様にするから頼むのだ!」

 

 これだけの大蛸だ。食いでが有るだろう♪

 

「そうだ。蛸は滋養強壮の妙薬だぞ。」

「ほう、そうなのか?」

「そうじゃった、そうじゃった♪これは何としても仕留めて、一刀たちに食わさねばな♪」

「あら、わたくしはツイてないわね。身重でなければ素敵な夜になりそうだったのに♪」

 

 うむ、それは私もだな。

 この大蛸を仕留めたら皆に懐妊した事を告げるとするか♪

 

 

「うっふうううううううぅぅぅぅううううぅぅぅん♪」

「ぬっふぅぅううううぅぅぅぅううううううううん♪」

 

 

 …………………………………………………………え?

 

「タコちゃぁあん♪さあ、わたしを襲ってリアル北斎漫画をご主人さまにお見せするのよぉん♪」

「ほぅれ、ほれ♪この美しい肉体に絡みついてくるが良い♪」

 

 あ…………蛸が死んでしまった…………。

 

「あらやだ。何にもしてないのに逝っちゃうなんて。お姉さん欲求不満だわよ。」

「う~~む。やはり美し過ぎると云うのは罪だのう…………」

 

 

 

 

 

【紫一刀turn】

 

「ね♪心配要らなかったでしょ♪」

 

「「「子供達への教育上の心配が増大したよ……………」」」

 

 

 

 

 

【秋蘭turn】

 

「死んだタコを切っても面白く無いのだ………」

 

「そう言うな、鈴々。これで一刀たちから教わった『たこ焼き』を作るのだから♪」

 

 全員で蛸を解体しているが、獲物が大きい上にこうヌルヌルしては扱いづらいな。

 

「あれ?タコの中から箱が出てきたのだ!」

 

「綺麗な箱だな。おそらく蛸が貝と間違えて飲み込んだのだろう。」

 

 両手で持つくらいの大きさで、見た事の無い装飾がされた箱だった。

 羅馬の方の物だろうか?

 

「一刀たちへ見せた方が良いだろうな。」

 

「う~ん………その役は貂蝉と卑弥呼に任せるのだ。タコを倒したのはあの二人だもん。」

 

「それがいい♪鈴々は二人に渡して来てくれ。」

 

「分かったのだ♪」

 

 鈴々は箱を持って貂蝉と卑弥呼の所へと駆けて行く。

 さて、手早く蛸を下処理しまわないと今日は一日これで終わってしまうぞ。

 

「媽媽、鈴蘭もお手伝いするよ♪」

 

「お、いい子だぞ、鈴蘭♪では私がやるのを見て先ずは覚えなさい♪」

 

 一年前は歪なおにぎりを握っていた鈴蘭も、今では包丁を扱えるくらいまで進歩した。

 子供というのは本当に成長が早い。

 

 一刀たちも今は子供達の成長を喜んでいるが、将来子離れが出来るか心配だな♪

 

 

 

 

おまけ壱

『北郷二刃奮闘記』其の二十六

リクエスト:いい大人になるための漢女☆講座~女の子編~ 7票

 

揚洲 長江河口付近 砂浜             (時報:桂花八人目 妊娠一ヶ月)

【二刃turn】

 

「さっきの大ダコにはビックリしたぁ………お義姉さん達、よくあんなのに向かって行けるなあ………」

 

 誰かを守る為ならあたしだって立ち向かうけど、普通は逃げられるなら先ず逃げるよね。

 

「ははは♪新鮮な食材が向こうから来てくれたんだ♪確保するのは当然だな♪」

 

「食材って………駕医さんも結構ワイルドだねぇ………」

 

「わいるど?」

 

「野性的って意味♪」

 

 駕医さんはこうやってあたしの使う言葉を覚えようとしてくれる。

 ゴットヴェイドーの発音に拘る駕医さんだからなのかも知れないけど………えへへ、愛を感じちゃう………なんちゃって♪

 

「ふ~ん♪駕医先生って野性的なんだぁ~~♪」

 

「り、璃々っ!?いつの間に!!」

 

「まだまだ修行が足りないよ♪二刃♪」

 

 う~~~!ビキニなんかでこれ見よがしにデカイの見せびらかしてくれるわね!

 

「駕医先生、タコを下拵えするのに二刃を借りてくね♪」

「ええっ!?ちょ、ちょっと待って!わあっ肩紐引っ張るなあっ!!」

 

 ああ………駕医さんが笑って手を振ってる………。

 

「もうっ!ちゃんと手伝うから手を放してよ!こっちはあんたと違って引っかかる場所が無いんだから、そんなに引っ張ったらズレるでしょっ!!」

「わたしの場合も弾けて取れるけど?」

「嫌味かっ!!」

 

 璃々ったら悪びれずにニコニコしてくれちゃって………。

 

「あ♪鈴々お姉ちゃん!貂蝉と卑弥呼と何話してるの!?」

 

 え?あ………あれ?鈴々さんが手に持ってる箱………小さいけど某有名RPGの宝箱にそっくりなんですけど。

 

「おー♪璃々に二刃なのだ♪実はタコを解体してたら中からこの箱が出てきたのだ。」

 

 モンスターのドロップアイテムですか…………。

 

「あのタコを倒したのは貂蝉と卑弥呼だから、二人がお父ちゃんたちの所に持って行った方が良いと思って渡しに来たのだ。」

 

「?……………それなら貂蝉さんと卑弥呼さんの物になるんじゃないですか?兄さんたちだってきっとそう言いますよ。」

 

「あのね、二刃。臣下が見つけた宝を主に報告しないのは横領っていうのよ。そうじゃ無くても、『こんなの拾ったよ』って家長には見せるでしょ♪」

 

 …………そりゃそうだよね………。

 

「ご主人さまの所に持って行く前に、箱の中身は確認した方がいいわよねぇ~」

 

「こんな綺麗な箱なんだから、きっと宝物に違いないのだ♪」

 

「箱が綺麗だから中身も綺麗とは限らんぞ、鈴々。我々女と同じ様に中身が大事なのだ。」

 

 言いたい事は判るんだけど…………ここで突っ込んだら負けの様な気がする。

 

「二刃ならば知っていよう。宝箱の罠という物を。」

 

「え、ええ…毒針が飛び出したり、箱の中に怪物がいたりするやつですよね。」

 

「へえ、そんな罠があるのだなぁ。」

 

「わたしとしては箱から男の子が出てきて襲われちゃうって罠なら掛かってみたいわぁ~ん♡」

「むむ、貂蝉!何とけしからん事を考えておる!どれ、その箱は私が開けてやろう。」

「あら~ん、ダメよ~、ダメダメ、卑弥呼。いくらあなたでもわたしの秘密の小箱を開けるだなんて~♪」

 

 さすがにそろそろ逃げたくなって来た………。

 

「ねえ、漢女道の『いい女』ってどんな女性を指すの?」

 

 璃々………そこを訊く?

 

「それはもう、強くて美しく、惚れた相手を一途に想い、その人の為なら命を投げ出す覚悟のある女の事よぉ~♪貴女達はみ~んないい女よ~♪」

「付け加えるなら、強さとは腕力では無い。心の強さこそが『いい女』の条件である。」

 

 言ってる事は格好いいんだけど…………この二人に腕力を否定されても説得力無いよ……。

 

「『強』という字は『したたか』とも読むのよぉ。」

「弱さを強さに変える事こそ、漢女道の真髄なりっ!」

 

「具体的にどうやったら『いい女』になれるのだ?」

 

「漢女道に王道無しっ!!」

「小さなコトからコツコツと♪わたしも今はこんなに美しい肉体を手に入れたけど、昔はガリガリのやせっぽちで『貧弱なお嬢ちゃん』と呼ばれてたのよぉ。」

 

「それじゃああたしはタコの下拵えをコツコツとやりに行きますね~♪」

 

 ここから逃げても決して恥ではないよね…………。

 

「まあ、ちょっと待て、二刃よ♪」

「せめてこの宝箱に何が入ってるか見せてあげるからぁ♪」

 

「え?いや、さっき罠が有るかもって!」

 

「「はい!ご開帳~~~♪」」

 

 きゃあああああああああああああああああああっ!

 毒針!?ミミック!?煙が出てきて全員年寄りにっ!?

 

「むむむ…………まさかこの様な物が入っていようとは………」

「困ったわねぇ…………そうだわ、このお揃いの手鏡は二刃ちゃんと璃々ちゃんにあげるわね♪」

 

「わあ♪ありがとう♪」

「え!ちょっと、璃々!?さっきあんた横領がどうとか言ってなかった!?」

 

「その鏡は二刃と璃々なら使い熟せよう♪」

 

「は?鏡を使いこなす?」

 

「詳しい事は後で説明してあげる♪鈴々ちゃんはわたし達と一緒にご主人さまの所に行きましょう。華琳ちゃんがご褒美にごはん作ってくれると思うわよ♪」

 

「本当に♪?秋蘭お姉ちゃんのごはんに続いて華琳お姉ちゃんのご馳走まで食べられるなんてツイてるのだ♪」

 

「(ねえ、璃々。華琳さんもそんなに喜ぶ宝物が入ってたのかな?)」

「(う~ん、どうだろ?華琳お姉ちゃん個人が喜ぶ物だと金銀財宝って訳じゃなさそうだけど……)」

「あ、そうだ。」

「何か心当たりでも有るの?」

「あたしも華琳さんの所に行ってタコの美味しい茹で方教えてもらおうっと♪」

「そっちなの……………」

「だって、せっかくだから駕医さんに美味しいタコをたくさん食べてもらいたいし♪」

「ふ~ん♪…………ねえ、二刃。蛸って精力増強の効果が有るの知ってる?」

 

「べ、別にそういう意味じゃないんだからっ!!」

 

 

 

 

 

おまけ参

リクエスト:超英雄大戦(華蝶連者×サン・アルジオン×見捨てない人)16票

 

荊州南部 桂林                  (時報:桂花八人目 妊娠一ヶ月)

【エクストラturn】

 

「おらおら!税の徴収だあ!金目の物を出しやがれ!」

 

 町の大通りに役人が数十名現れて、大声でガナリ立てていた。

 確かに役人を示す冠を着けているが、その姿は盗賊と言った方がいい風体だ。

 町の人達はすっかり怯えて、泣く泣く財産や食料を悪の役人が持って来た荷車に載せて行く。

 そんな中で一軒の民家から若い女の悲鳴と争う物音が聞こえてきた。

 

「いやあぁっ!助けて、おかあさんっ!!」

「娘は!娘だけはお許しを!」

 

 母親は悪の役人の足に掴まって娘が連れて行かれるのを必死で阻止しようとする。

 

「税が払えねぇんだ。代わりにこいつを貰ってくぜ!」

 

 一向に力を緩めない母親に、悪の役人はイラついて怒鳴り声を上げた。

 

「この、邪魔すんなババぐばっ!」

 

 母親を足蹴にしようと足を振り上げた悪の役人の顔面に丸太が飛んで来て直撃した。

 

「(ちょっと、お母さん!これから登場するって所で邪魔しないでよっ!)」

「(あら、ごめんなさいね♪聞き捨てならない言葉をあの男が言いそうになったものだから、つい♪)」

 

 町人も他の役人も唖然としている中で、どこからともなく聞こえてくる囁き声。

 因みに丸太は弓で撃ち出された物だ。

 

 しかし!そんな微妙な空気を物ともせず、高らかに声が聞こえて来た!

 

「この様な下衆の跋扈を見落としていたとは!鈍った自分自身に腹が立つわっ!この怒り!貴様らにぶつけて晴らしてやるっ!!」

 

 真っ当なのか八つ当たりなのかよく分からない口上と共に七人の仮面戦士が民家の屋根の上に現れた!

 

「庶人の生活守る為!歪んだ政を正す為!美々しき蝶が今舞い降りるっ!!」

 

「なんだテメェらはっ!?」

 

 知ってか知らずか、悪の役人の少し偉そうなのがお約束を口にする。

 それが合図であるかの様に仮面の戦士達がポーズを決めて名乗りを上げた!

 

「天知る!」

「神知る!」

「我知る!」

「子知る!」

「悪の蓮花の咲くところ!」

「正義の華蝶の姿あり!」

「煌めく知謀!朱華蝶!」

「……恋華蝶♪」

「艶めく踊り子ぉ!貂華蝶!」

「恋の預言者!巫女華蝶!」

「運命の戦士!星華蝶!」

「溢れる勇気!黄華蝶!」

「正義の味方!仮面白馬!」

 

「華蝶の連者!」

「六人揃って!」

「ちょっと待て!私が数に入って無いだろ!」

「……ただいま…」

 

「「「「「参上っ!!」」」」」

「…さんじょう。」

 

「参上っ!!…………チクショウムシシヤガッテ………」

 

 挫けるな、仮面白馬!作者はコピペを直すのが面倒だっただけだ!

 

「華蝶連者ぁ?いかれた仮面を着けたただのバカじゃねえか!」

「た、隊長…………あ、あいつら都で噂の………」

 

 下っ端の悪の役人の方が都の情報に明るかった様である。

 隊長と呼ばれた悪の役人は真っ赤な顔で怒り、逆に下っ端は青ざめていた。

 そしてまた、別の場所から笑い声が聞こえてくる。

 

「「「はっはっはっ♪どうやら貴様は知らないみたいだな!彼女達(二名は意識的に除外)こそは皇帝直属の治安部隊だっ!!少女に狼藉をはたらこうなどと言語道断!縛に着いて悔い改めろっ!!」」」

 

 別の民家の屋根に三人の仮面戦士が颯爽と現れた!

 

「皇帝だって同じことしてんだろ!六十人も美女を囲ってるじゃねえかっ!!」

 

「「「何を言うかっ!貴様らの様に嫌がる相手を無理やりなんて…………無いぞっ!」」」

 

 どうやら桂花との昔の事が一瞬よぎった様である。

 

「信じられるか!大体テメエらは何もんだっ!?」

 

 こちらはそれ程有名では無いので悪の役人が知らないのも無理は無い。

 

「「「俺たちか?…………ふっふっふ、俺たちはな!」」」

 

「アルジレッド!」

「アルジパープル!」

「アルジグリーン!」

「「「仮面の戦士の司令塔!三人揃って!サン・アルジオン!!」」」

 

「惨或児穏!?…………幼児誘拐犯か?」

 

「「「そのネタは前にも聞いたぞ…………まあいい!華蝶連者!仮面白馬!懲らしめておやんなさい!」」」

 

「「「「「応っ!」」」」」

「やっぱり一刀たちは私の事見てくれてるんだなぁ………良かったぁ♡」

「あのぅ………白蓮さん、じゃ無かった仮面白馬さん。私はここで待機ですので、私の分もお願いしますね。」

「任せとけ、朱華蝶!とーーーーーーうっ!」

 

 華蝶連者と白馬仮面が次々と悪の役人をやっつけて行く!

 

「うわっ!こいつらホントに強えぇ!こうなりゃこっちは数で勝負だ!」

 

ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

 

 呼子を聞きつけた悪の下っ端役人が町のあちこちから集まって来た!

 

「「「ふ………何人来ようと同じ事。見捨てない人一号、二号!出番だっ!!」」」

 

 サン・アルジオンが呼ぶと、その背後から民家を飛び越え二つの影が現れた!

 

「「この世に病魔の蔓延(はびこ)る限り!」」

 

「俺と!」

「あたしは!」

 

「「現われるっ!」」

 

「善意の塊っ!!見捨てない人一号!!」

「見捨てない人二号!!」

 

「「只今参上!」」

 

 一号の白い歯と二号の仮面から覗く瞳がキラリと光る!

 

「「「二人は華蝶連者と仮面白馬が倒した悪人の体と心を治療してくれっ!」」」

 

「任せろっ♪サン・アルジオンッ!」

「あ~~………さっきなんで言葉に詰まったか、後でじっくり教えてもらうからね。」

 

「「「え?」」」

 

 見捨てない人二号に睨まれてサン・アルジオンがピンチだ!

 だが今の桂花なら庇ってくれる………………………筈だ………うん、きっと………。

 

「「「おい!ナレーション!ちゃんと断定してくれっ!」」」

 

 サン・アルジオンがメタなツッコミをした時!

 劣勢だった敵から歓声が上がった!

 

「「「何だあれは?」」」

 

 サン・アルジオンが見た物は派手に装飾された山車だった!

 その天辺に山車にも負けないくらい派手な格好をして、顔に歌舞伎の様な隈取りをした髭のおっさんが立っている!

 

 

「儂は始皇帝の生まれ変わりなり!」

 

 

 派手な髭のおっさんが両手を高々と上げてトンでもない宣言をした!

 

「儂に刃向かう者は全員蝋人形………いや、牢にぶち込んでやるわあ!がははははは♪」

 

「「「あれはここの領主…………なんだけど、厨二病をこじらせたおっさんにしか見えないぞ………」」」

「兄さんたち………それブーメラン………」

 

 見捨てない人二号よ!そこで我に返っては負けだ!

 

「二号!あの男の凰羅をよく診てみろっ!」

「は、はい!………………な、なにアレ!?あれも病魔なのっ!?」

 

 見捨てない人一号と二号にはドス黒く巨大な影が男を取り巻いているのが見えた!

 

「「「星華蝶っ!!」」」

 

「心得ましたっ!皆の者!華蝶旋風だっ!!」

「「「「応っ!」」」」

「あ………私も参加しなくちゃダメなんですね…………」

 

 朱華蝶は急いで屋根から降りようと梯子に向かう。

 

「「「ま、待て、朱華蝶!みんなの様子がおかしい!」」」

「え!?」

 

 本来ならば華蝶連者の高速攻撃で敵にダメージを与えるのだが、全員が足を止めて山車を睨んでいた!

 

「儂は始皇帝の生まれ変わりなり~!」

 

 悪の領主は自分に酔いながら山車と共にジワジワと近付いて来る。

 

「何と言う硬い結界だ…………」

「………攻撃が届かない。」

「矢も弾き返される!」

「イヤねぇ~、なんかコンニャクでも殴ってるみたいだわ。」

「う~む、柔よく剛を制すと云った所か…………」

「攻撃どころか、私なんか近付く事も出来ないんだけど…………」

 

 華蝶連者と仮面白馬が歯噛みをすると悪の領主は更に歪んだ笑い声を上げた。

 

「儂は始皇帝の生まれ変わりなり~~♪」

 

 星華蝶はムカついたが、怒りを抑えて黄華蝶に振り返る。

 

「こうなれば奥の手だ!黄華蝶よ!お主と見捨てない人二号の出番だ!雑魚は我々が片付ける!」

 

「うん♪任せて!」

 

 黄華蝶は手鏡を懐から取り出し、見捨てない人二号に向かって走り出した!

 

「見捨てない人二号っ!」

「オッケー!行くよっ!!」

 

 見捨てない人二号も手鏡を取り出し掲げると、二人の手の中で眩しく輝きだした!

 

 

「「レッツゴー!フィーバータイムッ!!」」

 

 

 眩しいエフェクトの中で二人のコスチュームが変化して行く!

 黄華蝶は青く!見捨てない人二号は赤く!

 二人の手にした魔法の手鏡は、仮面を越えた友情パワーで発動するのだ!

 

「全ての人が心の中に!」

「輝く星を持っている!」

「夜空の星は小さいけれど!」

「きっと誰かを照らしてる!」

 

「愛と勇気で百発百中!青天使仮面!」

「みんなの笑顔を取り戻す!赤天使仮面!」

 

「二人合わせて!快刀!双天使仮面っ!!」

 

 変身を終えた二人にサン・アルジオンと見捨てない人一号が笑顔で声を掛ける。但し仮面を着けているので、その表情は余り良く分からなかった。

 

「「「頼んだぞ、快刀双天使仮面♪」」」

「頑張れよ、二人共♪」

 

「「はい♪行ってきますっ!」」

 

 元気に返事をした二人はそのまま攻撃態勢に入った!

 

「天使の矢で浄化してあげるわよっ!!」

 

 青天使仮面の放った無数の矢が光り輝いて悪の領主の結界を切り裂いて行く!

 

「儂は始皇帝の生まれ変わりなり!」

 

 悪の領主から笑顔が消えて驚きの表情を浮かべた!

 

「天使の拳を受けて悔い改めなさい!」

 

 赤天使仮面の氣を込めた拳が真っ赤に燃える!

 貂華蝶と巫女華蝶の拳すらも弾き返した結界が、赤天使仮面の連打によって音を立てて軋んだ!

 その姿は後に『殴りエンジェル』の二つ名で呼ばれる程凄まじい!

 

「わ、儂は始皇帝の生まれ変わり!」

 

 光る拳の乱打と光の矢の乱れ撃ち攻撃で悪の領主の結界を弱めている間に、他の華蝶連者と可燃白馬、もとい仮面白馬が悪の役人達をしばき倒し終わった!

 

「ご主人さまと華佗ちゃんに励ましてもらって羨ましいわ~。ねえ、巫女華蝶、わたし達も♪」

「うむ♪我等の新たな力も見て貰おうではないか♪」

 

 貂華蝶と巫女華蝶もスマホっぽい何かを取り出した!

 どこから取り出したかは敢えて言わないでおこう!

 

「「キュア漢女!ラブリング!L!O!V!E!」」

 

 パステルカラーの背景に包まれ、二人の衣装が光り輝く!

 貂華蝶の三つ編みもみあげの毛先が丸まり、リボンが大きくなった!

 足元がピンクのブーツに変わり、パンツの結び目も大きなリボンに!

 巫女華蝶の角髪(みずら)と髭の毛先も丸まり、鋭角的だった上着の襟や裾も丸みを帯びる!

 足元はレモンイエローのブーツ!褌の結び目が大きな蝶々結び!

 

「はじめての服を着てぇ!あたらしい道を歩いてく!」

「曲がり角の花の色は今日のラッキーカラー!」

 

「「ツイてる私達に全部お任せっ♡」」

 

 基本的な部分は変わらないが、破壊力は桁違いにアップした(見た目が)!

 

(みなぎ)る愛!キュア貂華蝶!」

「日溜りポカポカ!キュア巫女華蝶!」

 

「「愛を忘れた悲しい領主さん!このキュア漢女があなたのドキドキ取り戻して、あ・げ・る~~♪」」

 

「わ、わ、わわわわしははは、し、しししししこ、しこ、しこーーーてーーーー!!」

 

 既に精神崩壊を起こしている悪の領主の凰羅が実体化して、鋭い槍となりキュア漢女に防衛本能のみで襲いかかった!

 

「カッチカチの巫女華蝶ウォーーールッ!!」

 

 巫女華蝶の鍛え上げた筋肉のポージングが凰羅の槍を弾き返した!

 

「さすがね、キュア巫女華蝶!わたしもイクわよぅ~!貴方に届け!マイ・スウィ~~~~ト・ハーーーーート♡」

 

「しこーーーーー!!しこーーーーーてーーーーーっ!!」

 

 悪の領主は凰羅の槍を全て引っ込めて防御に回り、貂華蝶のハートマーク攻撃を防いだ!

 悪の領主は山車の上で膝を抱えて座り込み、ブルブルと震えている!

 ドス黒い凰羅で卵の殻の様に己を包んで完全に引きこもってしまった!

 

「あら~~?ちょっと激しく攻めすぎちゃったかしら?」

「ううむ………あの凰羅の殻は私達の攻撃では破れんぞ。」

 

 赤天使仮面と青天使仮面も攻撃してみるがまるで効果が無かった。

 サン・アルジオンと見捨てない人一号は腕組みをして対策を相談し始める。

 

「「「あんなの間近で見せられたらトラウマ物だろうな………少し同情するぞ。」」」

「どうする?俺の鍼でもあの凰羅の殻は破れそうにないが………」

 

 サン・アルジオンと見捨てない人一号が頭を悩ませていると、背後から歌声が聞こえてきた。

 

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 

「ん?………」

「「「この声はまさか…………」」」

 

 振り返った四人が見た物は先ず光だった。

 太陽とは違う光源を背に独り、ゆっくりと民家の屋根の上を歩いて来る。

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 シルエットしか見えないがその歌声は間違いなくその人物が歌っていた。

 

「「「その格好は一体…………」」」

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 サン・アルジオンが、いや、一刀たちがその人物を見間違う筈がない。

 しかし、その人物が人前で“こんな”格好をするのを見た事が無い。

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 肩の膨らんだ上着にいつもよりフリル多めのミニスカート。

 背中、胸元、髪に大きなリボン。

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 手に持っているのは先がハート型になったキラキラステッキ。

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 だが、頭部両サイドのツイン縦ロールと髑髏の髪飾りがその人物の正体を如実に語っている。

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 そのコスチュームにも驚かされたが、一刀たちはそれ以上に驚愕する点が有った。

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 

「「「……………………………わ、若返っている………………」」」

 

 

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ。」

 

 そう!彼女は一刀たちがこの外史で出会った頃の年齢になっていたのだっ!!

 

 

「新感覚ツンデレ魔王少女!見参っ!!」

 

 

 一刀たちの数歩手前で立ち止まりポーズを決める!

 

「別に貴方たちを援ける為に来たてやった訳じゃないんだから!勘違いしないでよね!」

 

 少し顔を赤らめているのはツンデレだからか、この姿を恥ずかしがっているのか判断が難しい。

 

「「「………………え~と、華り…」」」

「今は名前を呼ばないでっ!!」

 

 やはり恥ずかしい様だ。

 

「さっさとあいつを片付けるわよっ!」

 

 新感覚ツンデレ魔王少女はキラキラステッキをクルクル回して呪文詠唱に入った!

 

「リリカル・マジカル・るるるるるぅ~✩マジカルステッキ・大変身♪」

 

 一刀たちは新感覚ツンデレ魔王少女が更に変身するのかと思ったが、変身を始めたのはキラキラステッキその物だった!

 

「マジカル~~~~荒縄ぁ!」

 

 キラキラステッキはとても丈夫そうな荒縄へと変身した!

 

「とうっ!」

 

 新感覚ツンデレ魔王少女はジャンプをすると一気に悪の領主のもとへと飛んで行く!

 

「風は空に!星は天に!不屈の心はこの胸に!この手に魔法を!魔王少女式捕縛術!結界破壊緊縛ぅ!」

 

 空中で投げられた荒縄が蹲る悪の領主の凰羅に複雑に絡み付いて魔法陣を形成した!

 傍から見ると亀甲縛りに見えるが、飽く迄もこれは魔法陣なのだ!

 その証拠に悪の領主のATフィールド…もとい、結界にヒビが入って霧散した!

 マジカル荒縄はそのまま悪の領主を縛り上げて拘束する!

 悪の領主の顔が紅潮恍惚となっている気がするがそこは無視だ!

 

「さあ、今よ!赤天使仮面!貴女の拳でその男を浄化しなさいっ!」

 

「はい!華琳さん!」

 

「だから今はその名前を呼んじゃダメッ!!」

 

「あ、すいません…………では気を取り直して!我が拳は、我が魂の一撃なり!拳魂一擲!全力全快!必察必治癒!病魔覆滅っ!!」

 

 赤天使仮面の右拳に氣が集まって再び光を放つ!

 

「指圧の心は母ごころっ!!カタルシス・ウェイイィィィィヴッ!!!」

 

 

「おげぶぅおおおおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉおっ!!!!」

 

 

 悪の領主は爆発する様にゲロを吐いて気を失った。

 これは後で掃除が大変だぞ!

 

「赤天使仮面。その男は何か本を持っていないかしら?」

「は、はい!…………え~と………」

 

 見てみると悪の領主の懐からそれらしい物が覗いている。

 赤天使仮面が取り出すと、悪の領主の顔から隈取りが消えていった。

 

「ええ?なにこれ?」

 

「多分、それは妖術書ね。かつて張三姉妹が手にした『太平要術の書』に近い物の様だけど、かなり粗悪な出来損ないといった感じね。」

 

 新感覚ツンデレ魔王少女は赤天使仮面からその本を受け取ると、いつの間にか手にしている火の点いた赤い蝋燭で燃やしてしまった。

 

「うふふ♪直に火で炙ってやるのも面白そうね♪」

 

「…………あの…………顔とセリフが怖いですよ…………」

 

 

 

 こうして悪の領主と悪の役人達は全員捕縛され、町は平和を取り戻した。

 

 ありがとう!華蝶連者!ありがとう!仮面白馬!ありがとう!見捨てない人!

 これからも頼むぞ!快刀双天使!新感覚ツンデレ魔王少女!

 もう二度と見たくないぞ!キュア漢女!

 

 そしてサン・アルジオン!

 三人の生死をかける戦いはこの後で始まるのだ!

 

 

 

 

【紫一刀turn】

 

「「「で、華琳。あれは一体何だったんだ?」」」

 

 俺たちと華琳はこの桂林城の最上階から夜の町を見下ろしていた。

 町中に篝火が灯り、祝いの宴の真っ最中だ。

 

「だから妖術書だと説明したじゃない。」

 

「「「いや、そっちじゃなくて、華琳の変身の方なんだけど?」」」

 

「あら?貴方たちも貂蝉と卑弥呼から聞いたでしょ。他の外史から迷い込んだ道具だって。」

 

「「「璃々と二刃の手鏡と、貂蝉と卑弥呼の携帯みたいなのはな………つまり華琳も何か道具を受け取ったのか?」」」

 

「ええ、これよ。」

 

 華琳が差し出したのは紅い宝石と一冊の本だった。

 その本の表紙には『魔法少女変身マニュアル✩改訂版ストライカーズ』と日本語で書かれている。

 受け取って本を開いて見ると、やっぱり日本語で書かれていた。

 

「「「……………………華琳はこれを読めたのか?」」」

 

「貂蝉と卑弥呼が翻訳してくれたわ♪」

 

 翻訳したからといって華琳が『リリカル・マジカル・るるるるるぅ~』とか進んで言うとは思えないんだが…………マニュアルにある変身の掛け声は『マジカルパワーメイクアップ』?セー○ームーンかっ!!

 

「き、緊縛術が標準装備だったから今回は活用したのよっ!」

 

「「「何を怒ってるんだよ。貂蝉と卑弥呼が安全だと判断したから華琳に渡したんだろ?若返った華琳も見れたし、まあ俺たち的には良かったかな♪」」」

 

 痛い子に見えなくもないが、可愛かったからそこは目を瞑ろう。

 

「そう?…………なんならもう一度見せてあげましょうか♪」

 

 蠱惑的な瞳で俺たちを見る華琳。

 俺たちがそれを拒める筈がない。

 

 

 

 この後、俺たちは『魔法少女変身マニュアル✩改訂版』をしっかり読まなかった事を後悔した。

 桂花、春蘭、秋蘭、稟を呼んでおくべきだったと…………。

 

 

 

 

 

おまけ弐

『聖刀くんの日常』其の二十五

リクエスト:いい大人になるための漢女☆講座~男の子編~ 8票

 

61)北郷聖刀 真名:輝琳  七歳

 

本城 某所 漢女の園

【聖刀turn】

 

 ぼくと祉狼と昴ちゃんの三人は貂蝉と卑弥呼の住んでいる離にやって来ていた。

 部屋の中が明るいのは全体的に白で統一されてるからかな。

 床、壁、天井は白地にピンクの花や水玉が描かれていて、テーブルと椅子は白一色だけど見事な花の彫刻がされている。

 テーブルクロスとカーテンはレース編みで、そこにもピンクの花があしらわれていた。

 汚れやくすみが一切見当たらず、手入れが行き届いていて本当にスゴイなぁ。

 

「ケーキもミルクもおかわりはたくさん有るから、遠慮しちゃダメよ~ん♪」

「うむ♪苺のショートケーキはどうだ?私が心を込めて作ったのだが、お気に召したかな?」

 

「「おいし~~♪」」

 

 祉狼と昴ちゃんは口の周りに生クリームをつけながら喜んでる。

 二人共美味しいケーキを夢中になって食べていた。

 

「うん、本当に美味しいよ♪二人共スゴイよね。母上や朱里媽媽、雛里媽媽のとは違う美味しさだよ♪」

 

「あ~~ら、もう聖刀ちゃんったら、ご主人さまみたいにお口が上手ねぇ~~♪そんなに褒められたら、わたし出してはイケナイ物まで出してあげたくなっちゃうわぁ~ん♪」

「全くだ♪何でも願いを聞いてあげたくなってしまうではないか♪具体的にはお医者さんごっこの患者役を引き受けたいのぉ♪」

 

 二人はピンクのエプロン姿で顔を赤くして照れている。

 本当に美味しいんだから、そんなに謙遜しなくてもいいのに。

 

「特別にお願いしたい事って今は無いかな。父上たちの昔話もこうして聴かせてくれてるし。ぼくが生まれたばかりの頃に、桂林でそんな事が有ったなんて初めて知ったなあ♪」

 

「あらぁ、誰も教えてくれなかったのねぇ。」

「別に隠していた訳ではあるまい。何れ学園の授業で教えるつもりなのだろう。桂林の領主もすっかり改心して、今では領民と共に田畑を耕し、汗を流していると聞く。とても良い街にハッテンしておるらしいぞ♪」

 

 ぼくは父上たちや母上、それに媽媽達をとても誇りに感じながらミルクティーに口をつけた。

 白い磁器のカップに入ったミルクティーの香りが胸いっぱいに広がる。

 けれど、ぼくの心にはほんの少しだけ不安がよぎった。

 

「ねえ、貂蝉、卑弥呼……………ぼくは父上たちみたいになれるかな?」

 

「素養は充分に有るわよぅ♪みんなから慕われているじゃない♪」

「まあ待て、貂蝉。聖刀ちゃんが言いたいのは、自分が慕われているのが御主人様たちのひとり息子だからではないかと云う事だ。そうであろう?」

 

「うん…………今まではお姉ちゃん達と妹達しか居なかったけど、各地から新入生が来たよね。みんな出会う前からぼくの事を知ってて、明兎ちゃん以外はみんな初めから友好的だった。本当は明兎ちゃんみたいな人がもっとたくさん居ると思う。父上たちからこの外史に来たばかりの頃の話を教えてもらう様になってその事に気付いたんだ。」

 

 貂蝉と卑弥呼は腕組みをしてぼくの顔から目を離さず、真剣に話を聞いてくれた。

 

「さっきはお願いが無いって言ったけど……………ぼくは旅をしたい!」

 

「旅ねぇ………」

「確かに聖刀ちゃんの言い分は解る。しかし…………」

 

 二人共困った顔になってしまった……………やっぱりダメなんだろうな…………。

 

「ぼくはこの前の許都や赤壁に行くまで、この房都の近くにしか行った事が無いと思ってた。でも、生まれたばかりの頃に赤壁や長江の河口、それに桂林まで行ってたって判ったら………どうしてもこの目で見てみたくなったんだ!ぼくが普通に旅をしようとしたら許都に行った時みたいに軍隊の行軍になっちゃうから、名前を隠して少人数で行きたい!そうして三国の人達がどんな暮らしをしているのか直に見たいんだっ!!」

 

 

「「良く言ったっ♪」」

 

 

「え?………………………貂蝉、卑弥呼………」

 

「偉いわあ♪聖刀ちゃ~~ん♪わたし達に任せなさぁい♪」

「ふっふっふっふっふっふっ♪必ずや御主人様たちと母親達を説得して見せよう♪」

 

「あ、ありがとうっ!貂蝉♪卑弥呼♪」

 

 ぼくは思わず二人に飛びついてしまう程嬉しかった♪

 でも二人だけに任せっきりなんてダメだ!むしろぼくが説得するのを貂蝉と卑弥呼に助けてもらう位でいなきゃ!

 

「アッアーーー♪卑弥呼!これは夢?幻?わたし聖刀ちゃんに抱かれてるわああぁぁぁぁああああ♡」

「うっほーーー♪貂蝉!私のほっぺを抓ってくれいっ!!いや!例えこれが夢であろうとも!私のピンクの脳細胞をフル回転させて聖刀ちゃんの期待に応えて見せるわああぁぁぁあああああっ!!」

 

「「ねえ~、けーきおかわり~」」

 

 祉狼と昴ちゃんが食べ終わったお皿を持っておねだりをしている。

 

「はいは~~~~~~い♡このお部屋がケーキで埋め尽くされるくらい持ってきちゃうわよ~~~~~ん♡」

「逸その事お菓子の家を造ってしまうか♪がはははははははははは♡」

 

「「わ~~~♪」」

 

 部屋の中が本当にケーキで埋め尽くされたけど、お菓子の家は思い留まってもらった。

 それよりも父上たち、母上達をどう説得するか考えなきゃいけなかったから。

 学園の事も疎かにはしたくない。

 どうしたら旅と両立出来るか、そこから考えてみよう♪

 

 

 

 

おまけ肆:いい大人になるための漢女☆講座~女の子編~ パートⅡ

 

房都 本城某所 漢女の園

【眞琳turn】

 

 私は香斗ちゃん、蓮紅ちゃん、烈夏ちゃんと一緒に貂蝉と卑弥呼へ相談する為にやって来た。

 

「ねえ、貂蝉。卑弥呼。私達が将来聖刀ちゃんと結婚出来る事になったのは知ってるわよね?」

 

 私がそう切り出すと、貂蝉と卑弥呼はいつもの様に笑顔で頷いてくれた。

 

「モチのロンよ~♪」

「聖刀ちゃんは良きオノコとなるであろう♪お主達も聖刀ちゃんに相応しき乙女となる努力をせねばな♪」

 

「今日来たのは、正にその事で相談したかったのよ!」

 

 私がテーブルに手を着いて立ち上がると、他の三人も同様に立ち上がった。

 

「聖刀ちゃんに相応しい女の子ってどういうのかな!?」

「わたしは品行方正で自分に厳しい女だと思うの!」

「烈夏はよく分からないから教えて欲しい。」

 

「あらあら~♪みんな恋する乙女ねぇ~♪いい子に育ってお姉さん改めて感激しちゃったわぁ~♪」

「うむ♪時が経つのは早いものよ。この間までオシメをしていた赤ん坊が、こうして恋の悩みをその胸に抱えるまでに成長したのだからな♪」

 

「私達だってもう十五ですもの。璃々媽媽や二刃お姉さまが結婚された歳よ。」

 

 あの頃のお二人が私には大人に見えていたけど、いざ自分がその歳になってみるとまだまだ子供だと思えてしまう。

 幸か不幸か、聖刀ちゃんが元服するまで後数年は在るのだ。

 今からでも充分に間に合う、いや、間に合わせるの!

 

「うふふ♪恋は盲目♪貴女達には素敵な先輩が大勢いるじゃない♪」

「うむ♪先ずは自分の母がどうであったか聞いてみるが良い♪」

 

「母上に?」「お母様に?」「「媽媽に?」」

 

「ええ、そうよ♪貴女達のお母さんは全員が素敵な『大人の女』よ♪」

「だが、皆初めからそうであった訳では無い。御主人様たちと共に歩み、成長したのだ。きっとお主達が聖刀ちゃんと如何に歩んで往くべきか、その道標を示してくれるであろう♪」

 

 父上たちと母上……いえ、爸爸たちと媽媽に…………。

 確かに私は媽媽からどんなデートをしたっていう話は聞いた事はあるけど、媽媽がどうして爸爸を好きになったのか聞いていない………。

 

「ありがとう!貂蝉♪卑弥呼♪媽媽達の所に行ってみる♪」

 

 私は香斗ちゃん、蓮紅ちゃん、烈夏ちゃんと一緒に走り出した。

 

「「「眞琳ちゃん!誰の所に行くの!?」」」

 

「やっぱり最初は母上の所ね♪母上から聞き出せば他の媽媽達も話てくれるわ♪」

 

 

 もっと詳しく!そう、爸爸たちがこの世界に来て媽媽と出会った所から聞いてみよう♪

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

今回のメインは何と言ってもおまけ参でしょう。

英雄大戦が魔法少女大戦になってますがw

リクエストも頂きましたので『恋姫†夢想』から魔法少女✩曹操も登場です♪

マニュアルを改訂版にしたので『魔法少女』が『魔王少女』にパワーアップしています。

「ツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレ」×8は公式の様なのでそのまま使いましたが、結構大変でしたw

公式自体もパロディの塊でしたが、今回のパロディの元ネタは

「怪盗天使!ツイン○ンジェル」

「ドキドキ○リキュア」

「魔法少女リリカルな○は」

等々です。

 

『本編』

前回のコメントでアイディアを頂けましたので鈴々と絡めました。

夏侯覇は大きくなったら蜀に移籍しちゃうかも?

 

大蛸はアニメ版『真・恋姫†無双』のOVA特別版からのオマージュです。

一刀がデジャヴを感じなかったのもその所為ですw

 

 

『北郷二刃奮闘記』

「いい大人」というよりも、「いい女」講座でしたね。

少し物足りなかったのでおまけ肆にパートⅡを付け足しました。

 

 

『聖刀くんの日常』

貂蝉と卑弥呼の部屋を初の大公開!

ここでも気持ちの悪い物を登場させてしまい申し訳ありません。

 

さて!これで聖刀の舞台が広がりました!

 

 

《次回のお話》

 

次回は

☆月②&詠② 28票

 

【北郷二刃奮闘記】

二刃の妊娠騒動    5票

【聖刀くんの日常】

新入生と       11票

【おまけ参】

騎乗訓練その後                16票

を、お送りいたします。

 

《現在の得票数》

蓮華②   26票

季衣②&流琉②

      25票

桃香②   23票

璃々③   20票

冥琳②   17票

桂花③   17票

二喬②   14票

鈴々③   14票

紫苑③   13票

真桜②&凪②&沙和②(三羽烏)

      12票

華琳④    7票

炙叉②    6票

風②     5票

麗羽②&斗詩②&猪々子②(三バカ)

       5票

音々音③   4票

音々③    4票

華雄②    3票

小蓮③    3票

ニャン蛮族③ 2票

思春③    1票

祭②     1票

 

【北郷二刃奮闘記】

ファッション・トーク 4票

華蝶連者       3票

真桜のからくり話③  2票

ニャン蛮族      1票

 

【聖刀くんの日常】

炙叉          7票

聖刀と祉狼の昆虫採集  7票

聖刀・祉狼・昴の探検隊 5票

四胡とオマケ      5票

黄乱②         2票

聖刀さま♥親衛隊②    1票

聖刀くんの性教育~漢女にならないために~

 1票

 

【おまけ参】

眞琳と蓮紅と香斗の街で「はじめてのおつかい」 14票

親子鍛錬(五虎将編)(三王編)(脳筋編)    13票

恋姫麻雀大会                 12票

いい大人になるための漢女☆講座~ご主人様編~  9票

「女装喫茶」へようこそ             7票

恋姫†酒場放浪記                7票

眞琳の金桂達いじり               6票

 

リクエスト参戦順番→冥琳② 風② 凪② 月② 詠② 沙和② 桃香② 蓮華② 季衣② 炙叉② 桂花③ 真桜② 二喬② 紫苑③ 鈴々③ 璃々③ 華琳④ 思春③ 音々音③ 音々③ 三バカ② 華雄② 祭② 小蓮③ ニャン蛮族③

 

おまけ壱リクエスト参戦順番→華蝶連者 ニャン蛮族 二刃の妊娠騒動 ファッション・トーク 真桜のからくり話③

 

おまけ弐リクエスト参戦順番→炙叉 新入生 聖刀と祉狼の昆虫採集 黄乱② 聖刀・祉狼・昴の探検隊 四胡とオマケ 聖刀さま♥親衛隊② 聖刀くんの性教育~漢女にならないために~

 

おまけ参リクエスト参戦順番→騎乗訓練その後 親子鍛錬(五虎将編)(三王編)(脳筋編) いい大人になるための漢女☆講座~ご主人様編~ 眞琳と蓮紅と香斗の街で「はじめてのおつかい」「女装喫茶」へようこそ 恋姫麻雀大会 眞琳の金桂達いじり 恋姫†酒場放浪記

 

 

【子供達一覧】

1)華琳の長女 曹沖(そうちゅう) 眞琳(まりん)

2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)

3)蓮華の長女 孫登(そんとう) 蓮紅(れんほん)

4)思春の長女 甘述(かんじゅつ) 烈夏(れっか)

5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)

6)風の長女 程武(ていぶ) 嵐(らん)

7)桂花の長女 荀惲(じゅんうん)金桂(きんけい)

8)雪蓮の長女 孫紹(そんしょう) 冰蓮(ぴんれん)

9)冥琳の長女 周循(しゅうじゅん) 冥龍(めいろん)

10)祭の長女 黄柄(こうへい) 宴(えん)

11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)

12)紫苑の次女 黃仁(こうじん) 露柴(ろぜ)

13)紫苑の三女 黃信(こうしん) 崔莉(ちぇり)

14)蒲公英の長女 馬援(ばえん) 向日葵(ひまわり)

15)翠の長女 馬秋(ばしゅう) 疾(しつ)

16)麗羽の長女 袁譚(えんたん) 揚羽(あげは)

17)桔梗の長女 厳逹(げんたつ) 竜胆(りんどう)

18)凪の長女 楽綝(がくりん) 濤(なみ)

19)七乃の長女 張路(ちょうろ) 八倻(やや)

20)天和の長女 張甲(ちょうこう) 九蓮(ちゅうれん)

21)地和の長女 張大(ちょうだい) 四喜(すーしー)

22)人和の長女 張吉(ちょうきつ) 一色(いーそー)

23)炙叉の長女 迷当(めいとう) 直(なお)

24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)

25)秋蘭の長女 夏侯衡(かこうこう) 鈴蘭(すずらん)

26)月の長女 董擢(とうてき) 春姫(るな)

27)美以の長女 孟節(もうせつ) 花鬘(かまん)

28)トラの長女 ベンガル

29)ミケの長女 マンクス

30)シャムの長女 ペルシャ

31)桂花の次女 荀俁(じゅんぐ) 銀桂(ぎんけい)

32)朱里の長女 諸葛瞻(しょかつせん)龍里(るり)

33)雛里の長女 龐宏(ほうこう)藍里(あいり)

34)詠の長女 賈穆(かぼく) 訓(くん) 

35)焔耶の長女 魏覚(ぎがく) 焔香(えんか)

36)春蘭の長女 夏侯充(かこうじゅう) 光琳(こうりん)

37)星の長女 趙統(ちょうとう) 螢(けい)

38)大喬の長女 喬櫂(きょうかい) 愛(あい)

39)小喬の長女 喬順(きょうじゅん) 華(か)

40)亞莎の長女 呂琮(りょそう) 茜(ちぇん)

41)明命の長女 周邵(しゅうしょう) 藍華(らんふぁ)

42)華雄(阿猫)の長女 華剛(かごう) 树莓(しゅうめい)

43)桂花の三女 荀詵(じゅんしん) 丹桂(たんけい)

44)霞の長女 張虎(ちょうこ) 雰(ふぇん)

45)沙和の長女 于圭(うけい) 紗那(さな)

46)斗詩の長女 顔教(がんきょう) 升謌(しょうか)

47)真桜の長女 李禎(りてい) 真梫(ましん)

48)桂花の四女 荀顗(じゅんぎ) 連翹(れんぎょう)

49)猪々子の長女 文獬(ぶんかい) 虎々(ふーふー)

50)稟の長女  郭奕(かくえき) 貞(てい)

51)穏の長女  陸延(りくえん) 毬(ちう)

52)鈴々の長女 張苞(ちょうほう) 爛々(らんらん)

53)流琉の長女 典満(てんまん) 枦炉(ろろ)

54)桂花の五女 荀粲(じゅんさん) 黄梅(おうめい)

55)小蓮の長女 孫仁(そんじん) 蕾蓮(らいれん)

56)音々音の長女 陳守(ちんじゅ) 音音(ねおん)

57)季衣の長女 許儀(きょぎ) 華衣(かい)

58)美羽の長女 袁燿(えんよう) 優羽(ゆう)

59)桂花の六女 荀淑(じゅんしゅく) 來羅(らいら)

60)音々の次女 陳修(ちんしゅう) 音肆(おとよ)

61)華琳の長男 北郷聖刀(まさと) 輝琳(きりん)

62)桂花の七女 荀倹(じゅんけん) 柊(しゅう)

63)璃々の長女 黄慮(こうりょ) 牡丹(ぼたん)

64)思春の次女 甘瓌(かんかい) 燃秋(ぜんしゅう)

65)紫苑の四女 黄薛(こうせつ) 紅葉(もみじ)

66)管輅の長女 管辰(かんしん) 辯天(べんてん)

67)鈴々の次女 張紹(ちょうしょう) 龍々(ろんろん)

68)美以の次女

69)トラの次女

70)ミケの次女

71)シャムの次女

72)星の次女  趙広(ちょうこう) 迦具夜(かぐや)

73)愛紗の次女 関興(かんこう) 愛絽(あいろ)

74)雪蓮の次女 孫静(そんせい) 水蓮(しゅいれん)

75)翠の次女  馬承(ばしょう)

76)恋の次女

77)音々音の次女

78)音々の三女

79)小蓮の次女

80)桂花の八女 荀靖(じゅんせい) 茉莉花(まりふぁ)

81)秋蘭の次女 夏侯覇(かこうは)

B)桂花の九女 荀燾(じゅんとう) 寿丹(じゅたん)

C)桂花の十女 荀爽(じゅんそう) 秦翹(しんぎょう)

D)桂花の十一女 荀粛(じゅんしゅく) 金鐘(きんしょう)

E)桂花の十二女 荀旉(じゅんふ) 橄欖(かんらん)

 

【その他のオリジナル設定】

華佗 真名:駕医(がい) 息子⇒華旉(かふ) 真名:祉狼(しろう)

陳越(音々音の母) 真名:音々

インテリ⇒寇封(劉封) 嫁⇒孟達 真名:太白(たいはく)息子⇒孟興 真名:昴(こう) 

追っかけ⇒波才 嫁⇒楊阜 真名:門風(メンフォン)娘⇒楊豹 真名:和了(ほうら)

尻好き⇒宋謙 嫁⇒張承 真名:真珠(しんじゅ)娘⇒張休 真名:珊瑚(さんご) 

董の兄ぃ⇒牛輔 嫁⇒申耽 真名:菫花(きんふぁ) 娘⇒申儀 真名:朔(さく) 

兄者⇒呂曠 嫁⇒徐晃 真名:雲雀(ひばり)娘⇒徐蓋 真名:朱雀(すざく) 

弟者⇒呂翔 嫁⇒張郃 真名:豹牙(ひょうが)娘⇒張雄 真名:白虎(びゃっこ)

黄乱 真名:明兎(みんと)

馬良 真名:鷲羽(わしゅう)

馬謖 真名:耶麻(やま)

荀攸 真名:素英(そえい)

魯粛 真名:命佐(めいさ)

董雅(月の父) 董陽(月の母) 真名:日(りい)

曹嵩(華琳の父) 曹静(華琳の母) 真名:蝶琳(ちょうりん)

喬玄(大喬と小喬の母)

劉玄(桃香の母)

 

匈奴:呼廚泉(こちゅうせん)

鮮卑:軻比能(がびのう)

氐:千万(せんまん)

羯:石周(せきしゅう)

烏丸:阿羅槃(あらばん)

 

華雄 真名:阿猫(あまお)

高順 真名:杉(すぎ)

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

1・メインヒロインとなるキャラをご応募下さい。

2・『北郷二刃奮闘記』で二刃と絡むキャラを募集しています。

 例:「二刃視点で貧乳党」  という感じでお願いします。

3・『聖刀くんの日常』で聖刀と絡むキャラを募集しています。

 例:「聖刀視点で三羽烏」  という感じでお願いします。

4・おまけ参でのメインとなる子供達を募集しています。

 シチュエーションのリクエストも大歓迎です。

以上の四点にリクエストの集計(TINAMI、Pixiv双方の合計)を振り分けますので、

よろしくお願いいたします。

今まで通り、リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいて大丈夫です。

 

ご意見、ご感想、ご指摘などもご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。

誤字脱字は雷起の反省を促す為、修正後も抜粋して晒しますw

 

 

 


 
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