No.733358

快傑ネコシエーター21

五沙彌堂さん

101、大谷行基の復活と源さんの憂鬱
102、美猫と銀のフリマもしくは源さんの恐怖工房
103、美猫+妖子+銀(17歳ver) の和装
104、美猫と雅の趣味の追求
105、美猫とさつきのなまはげ弁当

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2014-10-29 03:05:46 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:613   閲覧ユーザー数:610

101、大谷行基の復活と源さんの憂鬱

 

大谷行基は通りがかりの狒々に暴行されて負った傷も癒えてとてもご機嫌だった。

デミバンパイアに次ぐ危険な亜人としてライカンスロープの狒々の取り締まりの強化を

国会で法案として成立させ狒々が変化した段階で警察官による射殺が可能になったのだ。

完全に逆恨みであった、亜人の独裁者として亜人に対する恐怖政治であった。

人間は全くそのことに関心を持たず普通の亜人も狒々にいい感情を持ってなかったので

無関心だった。

少数のライカンスロープだけが明日は我が身と震え上がり大人しくなった。

特に変幻自在の高位ライカンスロープは変化に注意しないといけなかった。

大谷行基は白猫銀こと竜造寺銀に恩義を感じていた、古宮慧快が健在の頃は小生意気な

女猫又であったがすっかり丸くなって自分に対する敬意や思慮分別に対して礼儀を尽く

して旧交を温めるのもいいと思うようにすらなっていた。

大谷行基自身最早自分に逆らうものはいないという奢りであった。

源さんこと源三狸はまだノーマークであったので酔ったふりをして

行基の動きをチェックしていた。

「おひぃさんや、大谷行基には特に注意しなされ、あやつはおひぃさんが変幻自在である

ことに気付いておらん、昔の氷の刃が少々丸くなった程度に思っておる、しかし緩い

監視の目がおひぃさんの周りに張られておる、絶対に気付かれてはならんぞ。」

大和警部補にも緩い監視の目が貼られていることを忠告した。

源さんは親友の真祖バンパイアスレート大侯爵から行基について厳しい意見を聞いていた。

「大谷行基という奴は真祖バンパイアでも薄気味悪い、切れ者のガード伯爵でも手を

焼いて煮ても焼いても食えないそうだ、私個人の意見だが奴は不死族の風上にも置けない奴で

自分以外愛せない傲岸なナルシストでヒステリックなファシストだ、

国の権力を握らせてはいけない奴だよ、人の命をおもちゃぐらいにしか考えていない。」

実際、スレート大侯爵は大谷行基に心を許さず面会さえも避けて毛嫌いしていた。

当然部下のガード伯爵が行基とうまくやっていくしかなかったのだ。

行基の狡い所はガード伯爵にうまく取り入って盟友となるまでになったことだ。

ガード伯爵もスレート大侯爵が行基を嫌っていることを隠して上手に付き合っていた。

個人的な感情を殺して国益を優先しているのであった。

行基はガード伯爵の利害と一致するようなことを提案して英国に協力していた。

自分の権力の基盤に英国の中枢の支持を受けていると思い込んでいた。

行基の一番恐れることは自分の支配下にないものが好き勝手にしたり、

別の真祖バンパイアがやって来て、自分の権限を奪うことであった。

その恐れも真祖バンパイアを倒せる日輪の十字架が解決してくれるので、

まさにこの世の春であった。

行基は久しぶりに中央公園のベンチで道行く人を眺めていた。

その行基に悟られぬようこっそり源さんが観察していた。

源さんは真祖バンパイアの能力をきちんと把握して気配すら悟られぬように注意していた。

行基自身魔力を遮蔽して高位ライカンスロープ、高位デミバンパイア以外には正体が

わからぬようにしていた。

今なら不意打ちをすれば、ある程度の魔力のある亜人なら倒せるぐらい無防備であった。

前回の屈辱的な狒々の暴行に懲りずに全く護衛を付けていなかった。

彼はこの国を統括し実権を握り人間社会を支配し、亜人を恐怖で縛る独裁者なのであった。

大谷行基は社会の秩序を人質に自分の身を無防備にさらしているのである。

「殺せるものなら殺してみろ儂を殺そうとすればどんな地獄が待っているか。」

中央公園の時計塔の午後3時の鐘が鳴った。

行基は公園の入り口に待たせてあった車に乗り込み屋敷に戻っていった。

源さんはその姿を見送ると独り呟いた。

「あやつの奢り何れ何とかせんといかんな。」

 

102、美猫と銀のフリマもしくは源さんの恐怖工房

 

源さんは趣味の恐怖の張子づくりに嵌っていた。

本業の提灯の方も順調に売り上げを伸ばしきちんと作っていたが趣味で始めた張子づくり

は固定客も付き人気商品となりこっちの方も量産体制が整っていた。

量産と言っても1つ1つ手作りで微妙に顔を変えて描き変化を付けていた。

傾向としてはリピーターの撫子の学校の女子高生のリクエストに応える形でどんどん

より怖いリアリズムを追及した作品に仕上がっていた。

彼女たちはそれがプリティだというのだが、源さんはよりホラーな作品を量産していた。

工房には乾燥待ちの張子が所狭しと並んでいた。

さつきはまだダメージが残っているようで足がすくんで震えていたが次のフリマも好評

だった恐怖のお面を被って弁当の出張販売をすることになっていた。

今日は更に怖いバージョン5の恐怖のお面が出来たので受け取りに来たのだった。

前回のお面は希望者に抽選で販売したのだった。

「こんな怖いお面を欲しいっていう物好きがこんなにたくさんいるなんて驚きだよ。」

こんな怖いお面は一刻も早く手放したいさつきは正直驚いていた。

そして今回さらにパワーアップした恐怖のお面を受け取りに来たのであった。

「こ、こんにちは。」

「いらしゃい、さつきちゃん今回は前回以上の傑作だよ。」

「これだよ。」

「ひぃっ、す、凄いですね。」

さつきは前回以上のショックを受け足が竦みそうだった。

何とかこらえて意識が飛ばない様に堪えた。

あまりじっくり見ると夢に出そうなのであまり見ないようにした。

ただ、さつきにとって幸運なことは前回のお面で受けたトラウマが一発で

すっ飛んだことだった。

深夜のコンビニで店番の時に被っていればコンビニ強盗が一発で失神するほどの

出来栄えでさつきは今回のお面の威力が少し心配だった。

フリマで弁当を買ってくれる人がいなくなるのではないかと第一側に人が寄り付く

かどうか疑問だった。

源さんの工房で乾燥待ちの張子の顔をちらっと見たがお面に劣らぬ怖いご面相なので

大丈夫かなと思った。

美猫の言った3日で慣れるというのもあながち冗談ではないなあと。

さつきは源さんにお礼を言ってトコトコと帰っていた。

源さんはこの小さな張子に命を吹き込むように顔を描き込んでいった。

源さんの頭の中に何かが閃いた、さらに怖い顔を思い浮かべて張子の顔を描いていった。

さつきは自宅に帰るとお面をフリマ当日まで納戸に隔離した。

下手にその辺においてじっくり見てしまった時のダメージは計り知れないからだ。

 

2週間おきのフリーマーケットの常連になってしまったような美猫だったが

意外と自分のものは何も買って居なかった。

さつきからお昼ご飯を買う位でお金を全然使って居なかった。

今度のフリマこそ何か買うぞと意気込んでいた。

しかしいつも源さんの恐怖の張子の進化をを確認していた。

今度のは前回のさつきのお面より怖くなっていることは想像できた。

さつきがまさかまた恐怖のお面を被ることになっているとは思ってもみなかった。

不思議なことに子供が泣き出した所に出くわしたことが無かった。

きゃっ、きゃっと騒ぐ中学生から高校生くらいの女の子をよく見かけることだった。

いつもなぜか源さんのブースに足を向けているのであった。

さて、今度のフリマは誰と行くかであった。

撫子と妖子はどうも張り合っているようだし雅と一緒に行くと

こっちがハラハラし通しだし、人選が難しかった。

そこで一番無難な銀と一緒にいくことにしようと銀を誘った。

「珍しいわね、美猫からお誘いなんてお姉さん張り切っちゃおうかしら。」

と危険な反応をしていた、人選を誤ったようだった。

頼むから大人しく買い物をして欲しかった。

 

銀は朝からテンションが高かった。

「美猫と二人きりで買い物なんて初めてじゃないかしら。」

そういえばその通りだった。

「今日は美猫を可愛く魅力的にするアイテムを中心に買っていくわよ。」

「まぁ、そればかりじゃなくて銀ねぇの欲しいものも買いなよ。」

とりあえず美猫は銀を少し落ち着かせたかった。

美猫には銀の暴走を止める力が無かった。

二人は例によって源さんの張子ブースに足を向けついでに

さつきの所でお昼ご飯を買うつもりだった。

源さんの恐怖の張子は絶好調だった。

正常に進化を遂げ魔除けとして最恐のご面相を持っていた。

源さんの隣の弁当の出張販売コーナーに何かすごいものが居たようだった、

多分お面を被ったさつきだろうと思った。

美猫は隣のさつきのお面を見る前に心の準備をしてから見てみたが

凄まじい最恐のお面だった。

「さつき、何がお前をそこまで追い詰めたんだ、あたしのせいだったら改めて謝るよ。」

「美猫ちゃんのせいじゃないよ、これはもう私のフリマでの正装だから。」

「わぁ~さつきちゃんそのお面好いわね、欲しいわ。」

銀がとんでもないことをさらっと言った。

「銀さんこれは抽選販売なんで今抽選籤を渡しときますね。」

美猫はとんでもないものが人気商品になっていることに驚いていた。

銀は牛タン弁当2人前とお茶のペットボトルを2つ買った。

「美猫一人前で足りる、もう一人前追加しようか。」

銀は牛タン弁当を一人前追加した。

「抽選あたるといいな、テヘ。」

銀はとてもご機嫌だったが、美猫はとても不安だった。

銀は赤地に胡蝶の柄の一重の着物を見つけ美猫に着せ、ふむふむと言いながら購入した。

着物にあわせて黄緑色の地に梅花の柄の帯を買い、紅染めの組みひもなどを買っていった。

「銀ねぇ、あたしのものばかりじゃなくて自分の物も買いなよ。」

「私は、あのお面があれば充分ここに来たかいがあったからいいのよ。」

「えっ。」

冗談だと思っていたが銀はあのお面を本気で欲しがっていることに美猫は驚いた。

「美猫、そろそろお昼ご飯にしようか。」

公園のベンチでお昼ご飯を取ることにした。

美猫は牛タン弁当をパクパク平らげ、銀は上品にゆっくりと食べていた。

「美猫、もう一人前あるけど全部食べられる。」

「大丈夫だよ。」

さらに美猫は牛タン弁当を平らげお茶をごくごくと飲み干した。

銀はゆっくりとお茶を飲み、美猫に話しかけた。

「美猫食休みが終わったら、午後の部に突入よ。」

銀は食休みの後もテンションが下がらなかった。

美猫に可愛い駒下駄を買った。

「銀ねぇ何か自分のものも買いなよそれに今まで全部お金を出してもらっているし。」

「何遠慮してんのよ、そんなこと気にしないでお姉さんに任せなさい。」

銀は姉御肌であった。

ふと銀が足を止め、

「ほぉ~。」

と眺めている着物が有った。

粗末な刺し子のパッチワークの着物であった。

同じような袢纏と股引と黒い足袋もセットになっていた。

全部合わせるとなまはげの衣装のような着物であった。

銀は迷わず購入し、何かの準備をしている様だった。

さらに丈夫な草鞋と藁の蓑を買った。

張子の包丁と怖いお面があれば見事ななまはげセットの出来上がりであった。

美猫は銀が何をしたいのか想像がついたが人の忠告など聞かないので黙って見ていた。

フリマの終了時間が近づきさつきの被っていた恐怖のお面の抽選会が始まった。

当然抽選に当たったのは銀だった。

銀はウキウキして居酒屋銀猫で収穫物の整理と確認を行った。

美猫に着物を着せ、雅を呼んで喜ばせた。

「ネコ、すごく似合っているよ。なんかイメージ通りだね。」

美猫は耳まで赤くして照れていた。

「で、銀さんはどうしてなまはげ?」

銀は恐怖のお面に例の刺し子の衣装、蓑を纏い、張子の包丁を持って、

「わりーごはいねぃがぁー。」

美猫はあきれて言った

「みやちゃん、悩んでいるよ、どうして銀ねぇは謎の行動をするのかなあ。」

銀はお面を外して、

「このお面初めて見た時、絶対この衣装が似合うと思ったのよ。」

「確かにそのお面には合っているけど、銀さんがわざわざなまはげの格好をする

必要はないと思いますよ。」

雅はまだなんか納得いかない様だった。

「だって一度やってみたかったんだもの。」

銀は少女の様に無邪気に答えた。

「そうだこの衣装さつきに貸してあげたら次回のフリマで人気者だね。」

美猫はかなり無責任なことを言った。

「それ、いいアイデアだわ、早速さつきちゃんに貸してあげようっと。」

銀はさつきにとって有難迷惑なことを言った。

「さつきちゃんフリマでこんなお面被っているんですか。」

雅は驚いたようだった。

さすがに年頃の女の子がこんなお面を被って弁当を売っているなんて

とてもシュールな風景だった。

「前回からなんだかそうなったようなんだ」

美猫は申し訳なさそうに言った。

 

さてさつきは、開き直ったのか源さんの工房へ足取りも軽くむかっていった。

「こんにちは、源さんお面を受け取りに来ました。」

 

103、美猫+妖子+銀(17歳ver) の和装

 

妖子は一目見て心を奪われてしまった、自分はその気は無いと思っていたのだが

フリマから帰って来た銀と美猫、そして雅にお茶とお茶菓子を出そうと座敷に

上がったら、目に入った美猫の着物姿にしばらく呆然としていた。

雅が妖子に相槌を求める様に、

「ネコの着物姿、よく似合っているでしょう妖子ちゃん。」

妖子は思わず興奮して化け狐に変化し美猫に抱き着き、

「すごいです、とてもお似合いですよ美猫さん。」

「妖子ちゃんもそう思うでしょう、私が見立てたのよ。」

銀は自慢げに言ったがなまはげの衣装なので説得力が無かった。

「銀さん、妖子ちゃんにもネコと対になるような着物を

着せてあげるといいんじゃないかな。」

雅は美猫の着物姿にこれほどまでに感動している妖子もお揃いにしてあげたら

いいんじゃないかなと思い銀に頼んでみた。

「雅さんそれはいいアイデアですね、早速妖子ちゃんも着物に着替えましょう。」

銀は妖子を奥の自室に連れて行った。

「みやちゃん、そんなに似合っているのかなあ。」

「自信を持って、似合っているって言えるよ。」

雅も親馬鹿のようなべた褒めぶりだった。

やがて銀は妖子に着物を着せ、連れてきた。

白地に桜の花びらの柄の着物に黒地に金の波の模様の帯を締め、色合い的に丁度

美猫と対になる様な着物であった。

「妖子ちゃんとてもよく似合っているよ。」

雅は着物を見立てた銀のセンスの凄さも同時に褒めたかったが銀本人はまだなまはげ

のままであった。

美猫は妖子の着こなし、銀の見立ての凄さに感動した。

「妖子ちゃん着物の着こなしがあたしなんかよりずっと上手で似合っているよ。」

妖子は物凄く照れていた。

「そうだ、2人の記念写真を撮りましょう。」

雅は自宅にカメラを取りに戻った。

「銀ねぇも17歳バージョンになって綺麗な着物を着てきなよ、せっかくの記念写真

なんだから、なまはげの格好は止めてさあ。」

美猫は銀に着替えを促した。

「でも受けを狙ったりとかふざけるのはだめだよ、みやちゃん絶対怒るよ。」

「みやちゃん、真面目に美を追求しているんだから。」

「わかったわ、私の本気を見せてあげるわ。」

銀はきりっと真剣な顔をして自室に戻った。

雅がカメラを持って戻って来た、本格的な中判デジタルカメラだった。

「あれ、銀さんは。」

「まさかなまはげのままじゃしょうがないから着替えてくるって。」

美猫は銀が17歳バージョンで来ることを隠して雅を驚かすつもりだった。

「お待たせ、雅さんどうですか、この着物似合いますか。」

雅は絶句した久しぶりに見る17歳バージョンの銀だったが壮厳な美しさだった。

水色の地にハスの花の模様の着物に赤の地に白の鶴の柄の帯を締めていた。

雅は言葉が出てこなかった。

一呼吸ついて、

「とても、お美しいです。」

まず1人ずつ写真を撮って、最後に集合写真を撮った。

「銀さん、今までなまはげの格好で油断させといて不意打ちですよ。」

「本当にびっくりしました。」

「私に本気を出す様にと美猫にはっぱをかけられまして、雅さん写真を撮る時は

真面目に美を追求しているからって。」

「とはいっても素人写真でカメラの性能に助けてもらっているだけですから。」

妖子は銀の17歳バージョンを見るのは初めてだった。

銀の美しさに純粋に感動し憧れた。

「銀さんすごいです、美しいです。」

「こうして、銀さんと美猫さんを並べてみるとやはり姉妹だけあって

よく似ておられますね。」

妖子の純粋な憧れに銀と美猫の2人共照れてしまった

「2人共元々竜造寺家のお姫様だって、妖子ちゃんもそう思うでしょう。」

雅も銀と美猫を並べてみるとよく似ていると思っていた。

「僕はいつもの25歳の銀さんも今の17歳の銀さんも両方とも憧れています。」

雅が思わず本音を漏らしたため銀は顔を真っ赤にして照れまくっていた。

美猫が照れ隠しにみんなで着物を着たまま変化して猫又、化け狐になった写真を

雅に撮って貰おうと提案した。

雅もとても乗り気で1人につき10枚ぐらい写真を撮り

最後に集合写真を10枚位撮った。

「お疲れ様、今紅茶と簡単な食事を作ってきますから楽にしていて下さいね。」

雅は紅茶を煎れ、簡単なサンドイッチを作ろうとに調理場に向かった。

 

104、美猫と雅の趣味の追求

 

雅が何か夜なべをして趣味の人形作りに励んでいるようで遅くまで起きている。

この間美猫をモデルにした猫又人形を改修してさらに可愛くしているらしい。

キジコが雅にくっついているようだがさすがに途中で眠くなって寝てしまうようだ。

美猫も好奇心が湧いて美猫猫又人形がどう進化したのか見たくなった。

美猫は雅が猫の写真集が好きで沢山持っているせいもあってキジコのぬいぐるみが

リアルなようで可愛くデフォルメされていたこともあり、猫又人形がこの間の

着物撮影会の結果が反映されてどのように改修されるか興味があった。

美猫は本棚の作家の単行本と雅の趣味と関連していて興味深かった。

猫と鉄道は内田百閒、カメラは赤瀬川原平、人形は澁澤龍彦と関連付けすることが出来た。

では、澁澤龍彦の「少女コレクション序説」はどうか、美猫には難しすぎた。

美猫には雅の猫又人形がどこへ向かっているのか全く分からなかった。

美猫は夜中にこっそり起きて雅の作業を見てみようと考えた。

キジコに話を聞くと深夜2時ごろが一番集中しているようでそれ以降はキジコは寝て

しまうのでわからなかった。

 

美猫は深夜2時に起き書斎の電気がついていることが確認できた。

こっそり起きると書斎に向かって忍び足で近づいて行った

雅は作業に集中しているようで静かであった。

美猫は雅の邪魔をしない様一息ついて休憩するのをお茶とお茶菓子を持って待っていた。

雅が立ち上がって書斎から出るところで美猫は声を掛けた。

「ネコ、どうしたんだこんな時間に。」

「みやちゃんの趣味に興味があってお茶とお茶菓子を持って待っていたんだ。」

「僕の趣味の人形作りかい、あまり褒められた趣味じゃないからな。」

「そんなことないよ、あたしをモデルにしてくれた猫又人形ものすごく可愛かったし。」

「じゃ見てみるかい、ちょっと本人に見せるのは恥ずかしいのだけれど。」

「恥ずかしい事なんかないよ、立派な趣味の一つだよ。」

雅は書斎の中に美猫を入れた。

「わぁ~可愛いこれ、あたしだよね。」

美猫は自分をモデルにした猫又人形がさらに可愛くなっているのを見て一目で気に入った。

さらに銀(17歳ver)の猫又と妖子の化け狐が人形化されていた。

「銀ねぇも妖子ちゃんも可愛い。」

着物も手縫いで再現されてリアルな出来だった。

人形はリアルなようでデフォルメ化され可愛く仕上げられていた。

源さんの張子と真逆の作風だった。

小さな猫のぬいぐるみも増えていた。

カオスな古着屋の最長老猫と西北町駅の猫駅長がいた。

キジコも成長した4か月verが作られていた。

大和警部補の黒猫verまであった。

「すごいよみやちゃん、可愛いよ、わぁ本当可愛い。」

「ねぇ、みやちゃん、人間verは作らないの。」

雅は真っ赤になって照れながら言った。

「流石に人間verは恥ずかしくて作れないんだ。」

美猫は雅が半人半獣もしくは動物に拘って作っているので、

「源さんとか大和さんの半人半獣はつくらないの。」

「ご本人たちには申し訳ないが可愛く作る自信が無い。」

雅はそんな不気味なものは流石に作りたくなかった。

美猫は源さんとか大和警部補の半人半獣を想像したが可愛くなりそうになかった。

「そうだね、失礼かもしれないけど可愛い源さんとか想像がつかないなあ。」

「みやちゃんこれ量産して、フリマに出したら人気でそうだよ。」

「そんなことしたら本人たちに怒られると思うし、ネコだって自分の人形が売られる

のって嫌だろう。」

「そういえば、そうだね自分の分身が誰だか知らない人の手に渡るのって嫌だな。」

「それに量産できるほど僕は器用じゃないよ、一体作るのが精いっぱいさ。」

「ここのところ興が乗ってたくさん増やしちゃったけど銀さんや妖子ちゃんにばれたら

怒られそうだな。」

「そんなことないよ、ものすごく喜びそうだよ、銀ねぇも妖子ちゃんもこういうの

大好きで欲しがりそうだよ。」

「特に銀ねぇは25歳verの猫又を作って欲しいってリクエストしてきそうだよ。」

「銀さんの25歳verの猫又は色っぽ過ぎて可愛くデフォルメするのが難しそうだな。」

雅は25歳verの猫又にかなり誘惑されてダウン寸前だったので一寸苦手だった。

「でもあまり公にすると色々な人からリクエストが来そうだから隠した方がいいね。」

雅の書斎は電球が吊るされ少し薄暗くて幻想的でかわいい人形、ぬいぐるみが

余計にひきたって見えた。

翌日昼間の明りで改めて美猫は猫又、化け狐の可愛い人形をじっくりと見た。

着物、襦袢、足袋、駒下駄まで再現されていた。

ふと疑問に思ったのは体形の違いを再現しているかどうかであった。

着物を脱がして裸にすればわかる事だが脱がせると元に戻せなくなるので

美猫は雅に着物の下はどうなっているのか聞いてみた。

雅は照れながら以前温水プールで見た時の体形を参考に素体を作り、

きちんと下着を再現してから着物を着せていると照れながら答えた。

 

105、美猫とさつきのなまはげ弁当

 

「美猫ちゃんなんてことを銀さんに吹きこんだのよ。」

さつきは、涙目になって本気で怒っていた。

美猫は今回だけは平謝りに謝った。

自分はいい加減なことを冗談で言ったつもりだったが銀は本気にして

さらに悪乗りしていた。

銀は自分のなまはげの衣装をさつきに本気で貸し出したのであった。

今回さらに自分も前回の恐怖のお面を付けて追加購入したなまはげ衣装で弁当販売及び

源さんの恐怖の張子販売を手伝うというのだ。

更にコンビニの店長と相談して弁当の共同販売を行い居酒屋銀猫から仕出し弁当を出品し

コンビニの出張販売の弁当と一緒に販売するというのだ。

題してなまはげ弁当であった。

「あたしに暴走した銀ねぇを止める力はない、さつき忍んでくれ、頼む。」

「あの恐怖のお面だけでも荷が重いというのにさらになまはげのコスプレをして

前回の恐怖のお面を隣に見ながら恐怖のお面を被るってどんな罰ゲームよ。」

さつきは美猫に言いたい放題言えるチャンスであったがそこには全く気付かず

自分がこれからの試練をどう切り抜けるかいや耐え抜くかで頭がいっぱいであった。

 

妖子はなまはげ弁当の中身をどうするかを考えていた。

名前に相応しい弁当に仕上げなければならなかった。

さつきの悩みより高度な悩みであった。

ふと、半べそをかいているさつきと珍しく腰の低い美猫であった。

妖子は2人に相談してみることにした。

「さつきさん、美猫さんお取込みの所申し訳ないのだけれど相談にのって欲しいのです。」

美猫は話題を変えるのに丁度良いタイミングで妖子が来たので助かったような気がした。

「妖子ちゃん、いったいどうしたの相談事って、あたしに解決できるかな。」

「実はなまはげ弁当の献立を任せれたのですがどんなものを作ったらいいか

見当がつかないのですよ。」

「妖子ちゃんもなまはげ弁当の被害者なんだ。」

さつきは意外な所まで飛び火していることに驚いた。

美猫は立場が無かった、さつき以外にも迷惑が及んでいて、妖子も困っていたとは。

「いや、被害者ってわけではないのですが銀さんの期待に答えたいのですがどんな仕出し

弁当を作ればいいのか、まさかご飯の上に怖い顔を描くわけにもいかないし、秋田名物の

具材を使えばいいってものでもないし、これっていう決め手がないのです。」

「普通に幕の内弁当かなんか、いかにも料亭の仕出し弁当って感じのお弁当で

いいんじゃないのかな、なまはげが売っている仕出し弁当だからなまはげ弁当で。」

「強いてやるんだったら、さっき妖子ちゃんが秋田名物の具材を使うって言っていたけど

それぐらいでいいんじゃ無いかな。」

さつきが意外と真面目に妖子の相談に答えていた。

さつきは正直やけになっていた。

フリマ当日隣の恐怖のお面に堪えれば後は私服だろうが制服だろうがコスプレだろうが

一緒だった。

むしろ妖子の問題を片づけることで現実逃避をしていた。

「さつきさん、ありがとうございます。」

「大体なんかなまはげ弁当のイメージが出来てきました。」

さつきは開き直ってきた、妖子の相談ごとに比べればまだ些細なことであった。

「美猫ちゃん、泣き言言って悪かったよ、私はフリマでなまはげを演じきって

見せるから大丈夫だよ。」

美猫は何もしてないというか出来なかった、もうさつきに頑張ってもらうしかなかった。

 

さてフリマ当日、フリマの一角に恐怖のなまはげ弁当&恐怖の張子コーナー

が華々しく登場した。

「わりーごはいねぃがぁー。」

と張子の包丁を振り回しフリマ会場で宣伝活動に励む銀とひたすらお弁当を売る

さつきのなまはげがフリマ会場を席巻した。

用意した仕出し弁当もコンビニで用意した弁当もすぐに売り切れる人気であった。

源さんの恐怖の張子は前回用意した3倍の数が午前中に売り切れた。

メインイベントとなった恐怖のお面抽選会で見事お面をあてたのは大和撫子の母の

大和一葉だった。

一葉は黄昏時に恐怖のお面を付けて我が家へと凱旋して帰っていったため大和龍之介が

撫子と一緒に後日近所の気絶した人に謝って回ったというおまけつきであった。

 

銀は今回のフリマでの大成功からなまはげの増員を考えていた。

当然美猫にもなまはげのコスプレをさせ、源さんに恐怖のお面をさらに作らせる計画

だが、美猫はまだ銀の企みを知らない。

 

 


 
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