No.732950

戦国†恋姫~新田七刀斎・戦国絵巻~ 第25幕

立津てとさん

どうも、最近の更新スピードからしたら結構早め?のたちつてとです
しかし早い分ちょっとばかし短めです
といってもストーリーの切り的にそうしただけですが・・・

いつになるかはわかりませんが段々と物語の核心に近づいていく、かも!?なこの作品をどうぞよろしくお願いします

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2014-10-27 01:53:32 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3338   閲覧ユーザー数:2441

 

 第25話 二刀と七刀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小谷城 大手門

 

「あー、気持ちよすぎてあとちょっとで漏らすところだったわ」

 

先程までズタズタにされ恍惚の表情を浮かべていた少女が何の変哲もなく起き上がった。

斬り刻まれていたはずの傷もいつのまにか無くなっている。

 

彼女は戦場のその向こう、鬼がひしめく場所からこちらへと飛んできた。つまりは『そういうこと』なのだ。

その光景に真琴は言い得られぬ警戒心を抱いた。

 

「お前は何者だ!」

 

刀を抜き、切っ先をローラへと向ける。

先程の仕合に使っていたのとは違う、正真正銘斬れる刃物だ。

 

「ご挨拶ね、浅井長政」

「僕を知っているのなら尚更、名乗ってもらう必要がある」

「北近江にその人ありと云われた浅井の当主なら知ってて当然よ」

「はぐらかすんじゃない!」

 

構えた刀のように鋭い言葉を浴びせかけると、彼女は仕方なさそうに答えた。

 

「もう名前くらいは聞いてるでしょ?私はアレッサンドロ・ローラ・ヴァリニャーノ。しがない宣教師よ」

「まさかお前がザビエルとかいう鬼の――」

「そうね、そうなるわ」

「ッ、義景姉さまの仇!!」

 

感情を乗せた真琴の左下から右上への斬撃。

それをローラは避けたり防いだりすることなく真っ向から受けた。

 

「あはぁん!」

 

腰から肩にかけて斬り裂かれ、喘ぎ声と共にあっけなく吹っ飛ぶローラ。

あまりのすんなりさに驚いたのは真琴の方だ。

 

「なっ、弱い・・・?」

 

逆上していたとはいえ、小手調べの一撃だった。

避けたり防いだりできずとも、体は本能で少しでも危険から離れようとするはずだ。

 

だが、彼女の動きにそれらの一切が感じられない。

むしろ自ら攻撃を受けに来た印象を真琴は得た。

 

「あはぁやっぱり致命傷好きぃ~!」

 

血まみれになりながら笑うローラを見て、真琴は頭痛を覚えそうであった。

 

だが、ローラはひとしきり笑うと先程と同じように何食わぬ顔で立ち上がっていた。

そして真琴は次の言葉に驚愕せざるを得なくなる。

 

「ふぅ、ありがと。じゃあ私は久遠ちゃんに用があるから行くわね」

「ッ!久遠、ちゃん・・・!?」

 

初めて出会った敵の口から出たよく知った名前。

 

「そ、じゃね~」

「あっ待て――――」

 

真琴からの返事を待たずに、ローラは鬼の腕を使い城の内部へと侵入していった。

 

「久遠姉さまが、敵の知り合い・・・?」

「殿ー!」

 

護衛の兵達が真琴の元にやってきたのは、彼女が刀を鞘へと収めた頃であった。

 

 

 

「今日はこの俺、新田七刀斎の為に集まってくれて、ありがとう」

『いや、何言ってんだお前』

 

七刀斎はというと、長刀を構え地面に突き刺したと思うと柄の頭の部分に口を近づけ喋っていた。

 

ちなみに、周りには武装した鬼が七刀斎を引き裂き喰らおうと声をあげているところだ。

 

「俺がこの舞台に立てたのも、皆のお蔭だと思ってる。だから、心を込めて歌おうと思います」

『は?』

 

そして長刀を引き抜くと、どこからともなくギターの音がしてくる気がした。

 

「聞いてください、HE∀ting Sφul」

 

『それ前作だから!!!!』

 

七刀斎の言葉に応じるかのように鬼達が一斉に襲い掛かる。

 

「ほっこり~を~わ~らい~と~ばっされって~」

 

まずは持った長刀で目の前の鬼3体まとめて上半身と下半身のお別れをさせる。

次に長刀を上空へ放り投げその間に刀を二刀流で抜き、片っ端から鬼を斬り捨てる。

 

そしてまた持った刀2本を上空へ。まだ長刀は落ちてきていない。

 

「行くぜ駆っけ抜っけっろー!かっくごっを決っめろ!」

 

それは脇差、小刀と続き、最終的には7本の刀を1度も地面に落とさずに空中で持ち替えて戦っていた。

 

『す、すげぇ・・・ジャグリングかよ』

 

凄まじいのは剣丞にそう言わしめるほどの攻撃スピードだ。

基本的には二刀流で当たるが状況によって持つ刀は1本になったり3本になったりする。

 

空中にある刀の存在も把握し、次に手に持つ刀も知り尽くす。

知った上で刀身の部分よりはるかに小さい柄の部分を掴む。

掴んだ刀の種類によって効果的な攻撃を瞬時に考え、行い、また空中へと放り投げる。

 

こう挙げれば簡単に見えるだろうが、現在七刀斎は神業とも言われるほどの動きを見せていた。

なんせ1歩間違えれば掴み損ねて自分の腕が飛ぶのだ。到底気安くやろうとは思えないだろう。

 

「手にい、れ~る~た、め、にーーーー!!」

「「「「「グオオオオォォォォーーーーーー!!!!」」」」」

 

気付けば周りの鬼達は既にほぼ倒し、残るは浅井の兵と戦っている鬼のみとなっていた。

 

「センキューーーーーーーーーーーーー!!」

 

死体が消え去り、誰もいない地面に七刀斎の声と上空から落ちてきた7本の刀が突き刺さる。

七刀斎はそれを拾いながら一息ついていた。

 

「ふぅ、やっぱこの技やると腕が疲れるな」

『テメェ結局フルで歌いやがって!』

「別にいいいじゃねぇかよ色々溜まってたんだよ」

『コイツ・・・今のがもう1つのとっておきってやつか?』

 

剣丞の問いに七刀斎は「ああ」と答える。

 

「北郷流七刀・蓮華(れんげ)だ」

『蓮華・・・ファって読まないのか』

「7本の刀を地面に落とさず扱うことから、刀が花びらのように見えてこの名前が付いたそうだ」

『へぇー』

「1対1を極めた二刀に対し、1対多数を得意とする七刀・・・この技ならそんな力も込めねぇから、刀の強度が耐えられなくなって砕けるなんてことも無いはずだ」

 

全ての刀を鞘に収めたところで、まだ交戦している大手門前を見やる。

 

「こんだけやれば負けることはねぇだろ。それじゃあ中庭に戻るか」

『・・・ローラは結局何をしに来たんだ?』

「あ?そんなこともわかんねぇのかお前は・・・仕方ねぇなぁ」

 

呆れながらも説明する七刀斎。

 

「あのガキが仕込んだのは金ヶ崎のためのフラグだ。朝倉が鬼に落ちたとなると必然的に越前に攻め入るし、何かしら浅井に織田に対して疑心を抱かせることもしてんだろ」

『あー・・・アイツならやってそうだな・・・』

 

 

 

剣丞達の話の種であるローラは現在、小谷城を抜け、越前へとやってきていた。

 

かつては朝倉氏の下統治されていた越前も、鬼の跋扈を許し、人口建造物などは見るも無残な状態になっている。

まだ一乗谷城や金ヶ崎城などが原型を留めているが、とても人が住んでいるとは思えなくなっていた。

 

「まぁ、浅井長政の信長への信頼度的に、裏切らせるにはもう一押しといったところかしら。あ、ちなみに私は別に織田信長との親交なんてこれっぽっちもないわ」

 

今回のローラの目的は先程七刀斎が言った通り、越前の事態を教えることと、真琴が少しでも久遠に何かを疑わせること。

その2つの目的は完遂したと言ってもいいだろう。

 

「あーあ、ここからまた越前に鬼を配置しなきゃいけないなんて・・・裏方は辛いわぁ」

 

言いながらも楽しそうに口角を上げるローラの周りには無数の鬼。

 

対して目の前にはまだ人が住んでいる村があった。

 

「た、助けてくれぇ!」

「アンタ、ワシらが何したっていうんじゃ!」

「いやだよぉ!怖いよぉかかさまぁ!」

 

跪き、懇願してくる村人達にローラは微笑みかける。

 

「ウッフフフフフフフフ・・・」

 

越前の地獄はまだ始まったばかり――

 

 

 

 小谷城 中庭

 

「ちょええええぇぇぇぇぇーーーーーッ!!」

「グオオオォォォーーーー!!」

 

こちらでは既に市が最後の鬼を殴り倒したところだった。

 

「なんとか倒せましたね・・・」

「ああ、もういない、はず」

 

エーリカと織田の剣丞もそれぞれの武器を収める。

 

今まで多くの鬼と戦っていた疲れからか、彼らには多少なりとも疲労の色が見えた。

だが、ここで久遠から新たな提案が飛び出る。

 

 

「・・・剣丞」

「ん?なんだよ久遠。俺はさっきよりも激しく水が飲みたいんだが」

「水ならいくらでも飲ませてやる!それより剣丞、今晩中に小谷を出るぞ!」

「はあああぁぁぁぁ!?」

 

久遠の突然の言葉にあんぐりと口を開ける織田の剣丞。

いや、織田の剣丞だけでなく他の面々も皆唖然としていた。

 

「お、お姉ちゃんどうしたの!?今は夜だし、戦いの後だよ?」

「畏れながら、私も今は疲れや傷を癒す事こそ先決かと」

 

市だけでなく、詩乃も久遠を諌めようとする。

しかし、彼女の決意は固かった。

 

「疲れや傷は時間と共に癒えるが、その時間は戻らん。越前が鬼の手に落ちたとわかった以上、我には時間こそが何よりも尊ぶべきものだと思えてならんのだ」

「確かに言えますが、真琴どのには――」

「あやつには一文書いておけばよい。伝えてくれるな?市」

「え、あ、うん・・・」

 

よし、と久遠が満足そうに頷く。

 

「ではすぐに出立準備だ!急げ!」

 

久遠が剣丞隊に号令すると、ひよところは「はいっ!」と条件反射気味にせっせと動き始める。

 

「すまんな、お主にも迷惑をかける」

「い、いえ・・・」

 

ただ空に対しては本当に済まなさそうにしていた。

 

「なんだ、妙に慌ただしいな」

 

そこに七刀斎に体を返された剣丞が帰って来る。

 

「七刀斎か、お主にも悪いが――」

「ああ、わかってる。聞いてたから」

 

この事に関して、七刀斎だけでなく剣丞も理解できていた。

 

『なるほどな、あのガキ・・・結構考えてんじゃねぇか』

(久遠の性格上、敵がわかればすぐに行動を起こそうとする。真琴の言及も待たずに、か・・・)

『性格悪いなオイ』

(お前に言われたくないだろうよ)

 

すぐさま出発の準備をする。

といっても剣丞の荷物は植物で作ったスーツケースだけなので準備という準備は無い。

 

「本当に今出るのか?」

「無論だ。こう話す時間すら惜しい」

 

剣丞が久遠に念押しをするが、帰ってくる答えは同じだ。

 

(これで今回の長旅も終わりか・・・)

 

既に準備は終わり、馬も市が人数分用意した。

久遠達一行はすぐさま小谷城を出ると、本来の拠点である美濃までひた走るのだった。

 

 

<pf>

 

 真琴と市の部屋

 

一方真琴が久遠の出立を告げられたのは翌朝のことだった。

 

大将としての戦後処理は忙しく、一晩かけてもまだ終わらない程だったのだ。

よって今真琴はつかの間の睡眠をとり、起きたところを市に教えられたことになる。

 

「なんだって!?久遠姉さまが・・・?」

「うん、お姉ちゃんはあの後すぐに行っちゃったよ」

 

そう言った市が差し出した文を乱暴に受け取る真琴。

中にはこう書かれてあった。

 

【時間が惜しい、一足先に美濃へ戻る。越前攻めの為にもお主も軍備を進めておくように】

 

真琴の紙を持つ手が震えだす。

 

「そ、そうか・・・わかったよ、市」

「大丈夫?まこっちゃん、すごく心配そうな顔してるよ」

「大丈夫だよ、疲れてるだけ・・・」

 

真琴はそう言うと市を部屋に置き、自らは残っている戦後処理をすべく執務室へと向かった。

 

(久遠姉さまがこういう時に時間を重視するのはわかる・・・でも、今回は?)

 

1度膨らみ始めた不安は留まるところを知らず――

 

(僕に質問させる時間を与えなかった、とか・・・まさか・・・)

 

あの人に限って、と首を振る。

 

だがそれで不安が拭えるはずもなく、この日は上の空だった彼女が仕事でミスをする光景が多々見られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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