No.731912

楽しく逝こうゼ?

piguzam]さん


第37話~私こそが、真のリリカル無双だ!!

2014-10-22 20:45:59 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:11768   閲覧ユーザー数:10044

 

 

 

前書き

 

 

ひ、久しぶり過ぎてキャラが分かんないよぉ(;・∀・)

 

 

売りのカオスっぷりとボケっぷりも、こんな感じで良かったのかしらん?

 

 

 

 

 

 

 

 

「良し。ほんなら模擬戦を始める前に、まずはフォワード部隊の皆の紹介や」

 

さて、場所を移して俺達は海が見える演習場へと移動しています。

目的は俺達並行世界組の実力を見る為の模擬戦なのだが、その前に紹介したい人達が居るとの事。

 

「はやてさんはやてさん。フォワードとはなんぞや?」

 

「それはなぁ橘君。機動六課の前線で戦う部隊の事で、管理局でも将来有望の子達の事なんやで♪わかったかなー♪」

 

「おk、把握」

 

乗ってくれてありがとうございます。

はやてさんの紹介に続いて、先程部隊長室に居た4人の少年少女が前に進み出てくる。

まずはニコニコと笑顔を浮かべる短髪青髪の活発そうなお姉さん。

 

「私はスバル・ナカジマっていうの!!なのはさんが隊長を務めるスターズ分隊の所属で、フォワードのポジションはフロントアタッカーだよ!!よろしくね!!」

 

「なんとッ!?イソノ~。野球やろうぜーで有名なあのナカジマさんっすか?」

 

『『『『『ブッ!!?』』』』』

 

「ほえ?イソノって誰?」

 

「あっ、このネタは地球じゃねーと駄目か。いや何でも無いッス、お気に無さらず」

 

「???」

 

突発的にネタに走った俺だが、まさかミッドチルダの人に理解される筈も無く首を傾げられるだけに終わった。

いやまぁこのネタが分かる地球出身側の人達は皆揃って口抑えてる辺り成功っちゃ成功なんだろうが。

しかしこのスバルさん、破壊力B(スゴイ)の見事なモノをお持ちで……冗談だから睨まないで下さいフェイトちゃん。

 

「ちょっとスバル!!小さくてもフェイト隊長と同い年なんだから、タメ口じゃ駄目でしょ!!」

 

「あ、あのそんな。私はまだ9歳なので、気にしないで下さい」

 

と、スバルさんの隣に居たオレンジ色の髪のお姉さんが嗜める様に声を掛けていた。

髪型はコンパクトに纏められたツインテールで、ちょっとツンとした目が、お姉さんの気の強さを物語っている。

ふむ…………成長性A(超スゴイ)ってところか。

そんな気の強そうなお姉さんに注意されてアワアワとするスバルさんだが、コッチは逆にフェイトがアワアワしてた。

 

「すいません。でも、普段からフェイト隊長には敬語で接していますから、ちょっと違和感があって……」

 

ふむ?どうにもこのお姉さんは生真面目な気質らしい。

普通に接して欲しいとお願いするフェイトに対しても背筋を伸ばして上官にする様な受け答えを返す。

フェイトもそんなお姉さんの対応に困ってアワアワと慌てるしかない。可愛いなぁ♪

しかしこれじゃ話も進まねーし、ちょっくら俺が聞きますか。

 

「えーっと、お姉さんのお名前はなんですか?」

 

「え?あっ。わ、私はティアナ・ランスターです。階級は二等陸士で、スバルと同じスターズ分隊に所属してます。フォワードのポジションはセンターガードです」

 

「あー、無理に敬語使わなくて良いッスよ?俺は管理局に所属してない只の一般人、しかも只のガキなんで」

 

「い、いえ。でも、本来なら隊長の皆さんと同じで年上ですし……」

 

「ノンノンノンノン。今はホント、只の9歳児ですからその辺は気にしないで下さい。寧ろそうされると逆に困りますって。ランスターさんの方が年上なんですから」

 

実際俺達はまだ9歳の過去から遡って来てるんだし、そこら辺は臨機応変に対応を変えて欲しい。

そう伝えると、はやてさんやフェイトさんも援護してくれたお陰で、ティアナさんは俺とフェイトには歳相応の対応をしてくれる事と相成った。

よーし次ぃ。

 

「エ、エリオ・モンディアル三等陸士です!!フェイト隊長のライトニング分隊所属で、ポジションはガードウイングです!!」

 

「お、同じくキャロ・ル・ルシエ三等陸士です!!エリオ君、じゃなくて、モンディアル三等陸士と同じライトニング分隊所属、ポジションはフルバックです!!」

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

最後に自己紹介してくれたのは俺達と同い年くらいの男の子と女の子だけど、二人共礼儀正しいを通り越して緊張し過ぎじゃね?

もう何か表情がカッチコチに固まってるし、背筋もピンを超越してギチィ!!って感じに張ってるからな。

というかエリオ君の方は何故にそんな顔を赤らめてフェイトを見てる?隣のキャロちゃんが面白くなさそうにしてるぞい?

 

「二人は私の家族なんだ。良かったら仲良くしてあげて」

 

「え?……か、家族ですか?」

 

と、二人の緊張した様子に苦笑いしてると、後ろに立っていたフェイトさんからそんな台詞が……ってちょっと待てい!?

この二人が未来のフェイトさんの家族って事は……ッ!?

 

「つまりフェイトさんは19歳の時点で二人の子持ちの人妻!?っていうか相手は誰なの凄え気になる!!」

 

「……へ?……あッ!?ち、ちがうのっ!?そ、そうじゃなくて……ッ!?」

 

まさかの衝撃の事実に質問を飛ばすと、何故か慌てて否定するフェイトさん。

どうやら話を聞くと結婚した訳では無く事情があって引き取ったのがこの二人らしい。

それでも大事な家族に変わりは無い、と天使の如き笑顔で聖母の如き台詞を恥ずかしげもなく言い放ったフェイトさんに胸キュンしたのはお約束。

そんな俺に剥れてほっぺをきゅーっと痛く無いレベルで抓ってくる膨れっ面のフェイトちゃんもお約束(笑)

 

「まふぁ、ふぁにはほもあれ、おひゅたりひゃんもよろひふー(まぁ、何はともあれ、お二人さんもヨロピクー)」

 

「「は、はい……」」

 

頬を抓られながらもにこやかに返したらスゲー微妙そうな顔されたッス。

とりあえずフェイトも挨拶するために俺の頬から手を離してくれたので、その隙にはやてさんの傍へ。

 

「すんませんはやてさん。ちょっとご相談があるんスけど……」

 

「ん?どうしたん?」

 

「実は……ゴニョゴニョ……」

 

「ふんふん……えぇ?……まぁ、それぐらいやったら貸したげるけど……ホンマにそれ使うんか?一応ちゃんと戦って欲しいんやけど……」

 

「モチのロンっすよ。マジもマジ。俺もう超マジってゆーかー?もう近年稀に見るマジで気合もマジな感じー?」

 

「似合ってへんから止めた方がええでー?」

 

おうふ、マジ容赦ねー。

俺が今ちょっと用意して欲しいモノを伝えると、はやてさんは怪訝そうな表情で俺を見るではないか。

まぁ確かに、普通は模擬戦では使わない……か?

とりあえず訝しむはやてさんに拝み倒して、俺は目当ての物を貸して頂く。

うんうん、中々良い握り具合だな。

しっかりと使えるかを確認して、俺はそれをコートの中に仕舞う。

ちょうど向こうも挨拶が終わったみてえだ。

 

「それじゃあ、まずはシグナムVS橘禅君、行ってみよかー♪」

 

「了解しました」

 

「うぉーい。のっけからメインイベントかよ」

 

「だってなぁ。幾ら平行世界ゆーても、シグナムを倒したんやろ?そないおもろそーなモンをお預けすんのもアレやん?」

 

どれやねん?

 

「私、好物は最初に食べる質やねん♪」

 

「俺は好物は最後派なんス。つまり貴女とは永遠の敵同士」

 

「ふっ。それも悪くないやろ……所詮は理解なんて夢のまた夢っちゅうこっちゃ」

 

「あの、二人共?どうしたの?」

 

俺達の茶番を見て首を傾げるフェイトさんに「何でも無いよー」とはやてさんと一緒になって返しながら、パキパキと指の骨を鳴らす。

まぁ何を言っても決まったモノはしょーがないので、俺はシグナムさんの後ろを歩いて演習場に向かう。

機動六課ご自慢の立体ビジョンの廃墟の中で、俺とシグナムさんは向い合って開始の合図を待つ。

シグナムさんは既に騎士甲冑を展開済みで、レヴァンテインを構えながら嬉しそうに笑っていた。

 

「ふふっ……橘よ。お前は平行世界の私に勝ったと言っていたな?」

 

「まぁ、ギリッギリでしたけどねー。それが何か?」

 

コートのポケットに手を突っ込んだ自然体のままで答える。

しっかし、この立体ビジョンすげーな。踏んだ感触も本物そっくりだし。

 

「何、先に話しておこうと思ったまでだ……私も一応、あの頃の自分の力は覚えているつもりだ……今出せる全力で相手させてもらおう」

 

ニヤリと狩人を思わせる笑みを浮かべたシグナムさんの言葉にポケッとした顔をしてしまう。

しかし直ぐにその言葉の意味を理解して、俺はクックッと笑った。

世界は違えど、シグナムさんはシグナムさんって事か。

『それじゃあ二人共、始めるよ?』と空から聞こえるフェイトさんの声に頷き、俺はシグナムさんに視線を向ける。

 

「……なら、俺もガッカリされない様に頑張りまッス」

 

「あぁ。お互いにベストを尽くそう……テスタロッサ、始めてくれ」

 

『うん……それじゃあ、試合開始!!』

 

「いくぞ!!橘ァ!!」

 

「かもぉ~~ん。シグナム、ちゃぁ~~ん♪」

 

茶目っ気でそんな風に挑発したら額に青筋。あらやだ怖い。

遂に開始の合図が出され、それと同時にシグナムさんが俺に向かって高速で突っ込んでくる。

あくまで様子見のつもりか、レヴァンティンのカートリッジは動いていない。

まぁ、精々俺の事を下に見てるが良いさ。

その愚考をたっぷりと後悔させてやんよぉ!!

さぁ、俺の並行世界での初試合だ!!初っ端からカッ飛ばしていくぜ!!

 

「はぁ!!」

 

初手において大上段から振り下ろされる一直線の斬撃。

成る程、速さも重さも俺が戦った時よりも更に洗練されてるな……駄菓子、菓子!!

 

「クレイジーダイヤモンドッ!!」

 

『ドラァッ!!』

 

パッシイィィイィィィンッ!!!

 

「なっ!?」

 

些かそりゃ糖分過多甘過ぎる戦法ってヤツだぜぇ!?

俺はシグナムさんが間合いに入ったと認識した時点で、『クレイジーダイヤモンド』を呼び出して防御をさせた。

圧倒的な速度で振り降ろされるレヴァンティンの刃を真剣白刃取りで受け止めたのだ。

ここからクレイジーダイヤモンドで続けて攻撃するのもアリだが、それよりも波紋を既に腕に流した俺の攻撃の方が速い。

まさかの第三者の防御で動きを止められると思ってなかったシグナムさんが硬直してる隙に、俺は構えていた足の力を解放する。

成人と子供の身長差を利用して彼女の懐深くまで入り込み、俺の動きに反応してやっと正気になったシグナムさんは驚く。

勿論慌てて逃げようとするが、それにはクレイジーダイヤモンドを何とかしない限り不可能なので、俺はしっかりと練り込んだ波紋を腕に込めて解き放つ。

 

「コオォォォ……ッ!!ズームパンチィッ!!」

 

ギュオンッ!!

 

「ッ!?(バギョオッ!!)がっ!?」

 

ゴギリ、と数回の鈍い音と共に俺の腕の関節は外れ、拳が間合いの外にいたシグナムさんの胸元に深くめり込む。

胸元に深々と食い込んだ俺の拳で形を変えるアレが何とも眼福です。

よーしよし。最初の攻防でイニシア恥部……じゃなくてイニシアチブを捥ぎ取ってやったぜ。

急所に波紋を練った一撃を叩き込んだ事で、シグナムさんの躰の動きが止まる。

 

「ぐ!?はあぁあ!!」

 

だがしかし、敵も歴戦の強者だ。

『クレイジーダイヤモンド』に掴まれてるレヴァンティンを使えないと判断すると、即座に動きを変える。

俺の攻撃で仰け反る力を利用して宙返りの要領で前に回転し、両足で回転脚を繰り出した。

しかし苦し紛れの攻撃とみたぁーッ!!

 

「これも甘いぜ、シグナムさんよぉッ!!波紋肘支疾走(リーバッフオーバードライヴ)ッ!!」

 

「(ドグシャア)ッ!!……く!?ぐうぅうぅ……ッ!?」

 

頭上から叩きこまれた蹴りに対して、肘を折り曲げた体勢のオーバードライヴで迎え撃つ。

勢いからすれば俺をフッ飛ばす筈のシグナムさんの躰は、逆に後方へと飛ばされる事で終わる。

 

「悪いッスけど、シグナムさんの攻略法はもう頭の中にインプットされてんすよぉぉッ!!」

 

『ドラァッ!!』

 

「くッ!?」

 

デバイスのレヴァンテインを手元から失ったシグナムさんに対して手を抜く訳も無く、追撃にスタンドでパンチを見舞う。

それに対して手に残った鞘で防御を試みるシグナムさんだが、防御魔法が組み込まれてるならいざ知らず、只の鞘では役不足だ。

大型トレーラーをブッ飛ばせる『クレイジーダイヤモンド』のパワーに勝てる訳も無く、シグナムさんの握る鞘はあっさりと彼方に吹き飛ばされてしまう。

「まさかここまでとは」だなんて言葉が、苦悶の表情を浮かべるシグナムさんの口から吐き出される。

おいおい、こんなモン……まだ『クレイジーダイヤモンド』のパワーの一端だぜ?

武器を失ったシグナムさんに対して、俺はニヤニヤしながら攻撃の手を緩めずにラッシュを繰り出す。

 

「剣が無くてザフィーラ並みに戦えるとは思えねぇが、手加減はしねーぜぇぇええええ!!」

 

『ドララララララララァッ!!』

 

ズドドドドドドドドドドドドッ!!

 

「ぐ、あうぅぅぅぅぅううッ!?」

 

武器を失っても闘士は衰えないのか、腕に魔力を籠めて『クレイジーダイヤモンド』のラッシュを果敢に捌くシグナムさん。

しかし全てを捌き切れる筈も無く、何十発ともらって苦しげな声を絞り出す。

 

『ドラァッ!!』

 

「(バゴォッ!!)ぐあぁ!?」

 

最後のストレートパンチも食らったシグナムさんは、すぐ近くの廃ビルの中へと突っ込んでいく。

盛大な音を立ててビルの壁を突き破っていくシグナムさんを眺めながら、瓦礫の上に片足を乗せてヤンキーの様に屈む。

 

「んーーー……ッ!!絶っっっ好調ぅッ!!」

 

某映画の夜に被るとはっちゃける不思議な緑の仮面を被った様なテンションで叫ぶ俺。

馬に乗ってりゃハイヨ-、シルバー!!とか言いたい所だ。

もしくはヒーーーハーーーーッ!!でも可。

リアルに再現された土煙の向こうからシグナムさんが出てくるのをウズウズしながら、俺は瓦礫の上に立って待ち構える。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ふむ……さすがだ。剣の騎士であるシグナムと五角以上に渡り合っている」

 

「そうだねぇ。やっぱりゼンに、いやゼンと『クレイジーダイヤモンド』に近接戦闘のシグナムは相性が悪すぎるよ」

 

「うん。実質2対1になるし、『クレイジーダイヤモンド』の戦闘能力が飛び抜けてるから……ゼンも相手の隙をこれでもかって狙う戦い方をするもん」

 

禅がシグナムと戦いを繰り広げ始めた頃、ステージの状況をモニター出来るヘリポートでそんな会話が繰り広げられる。

今まで禅の戦い方を見てきたフェイト、アルフ、リインフォースにとって、この試合運びは想定内の事だ。

ましてや前回とは違って、今回はスタンド能力も解禁したバトルスタイルの禅が近接で負ける所が想定出来ないくらいに。

 

「う、嘘……?シグナム福隊長が……」

 

「あんな簡単に押されるなんて……それに、あの子の後ろから現れたヒトガタ……なんてパワーなの……ッ!?」

 

「……あれが……スタンド能力……ッ!?す、凄い……ッ!?凄いよキャロ!!」

 

「う、うん!!本当に凄いよ……ッ!!フリードよりも、力が強そう……」

 

『キュ、キュル~』

 

しかし、禅が戦えるとは聞いていても半信半疑だったフォワードのメンバーには刺激が強すぎた様だ。

自分達の隊長であり、訓練においてもその強さを何度も見て、身体に経験させられたフォワードのメンバー達の驚きは計り知れない。

同じ近接タイプのスバルは禅の身のこなしと戦い方に驚愕しながら、シグナムを圧倒するパワーに震えを感じている。

ティアナはクレイジーダイヤモンドの強さ、そして禅の使う戦闘術の特性や非凡な能力を持つ才能に嫉妬を覚えてしまう。

フォワード最年少であり、同い年のキャロとエリオは、自分達と同い年の少年の底知れない強さに純粋に心躍らせ、目を輝かせる。

更にその隣では立体ビジョンを操作していたシャリオ・フィノーニと、機動六課のヘリパイロットを務めるヴァイス・グランセニックが口をあんぐりと開けていた。

 

「あ、姐さんがあんな簡単にフッ飛ばされるとこ、初めて見たぜ……ッ!?っていうかなんだよあのゴツイの!?」

 

「……」

 

過去に武装隊に所属していた縁からシグナムとは長い付き合いのヴァイスだが、過去あんな簡単に初手を取られる姿をヴァイスは知らない。

故に驚きも相当なモノだった。

シャリオに至っては言葉を発する事も出来ない程に驚いている。

それは、八神家の面々も同じだった。

 

「わわわ!?し、シグナムが飛んじゃったです!?そ、それにあのスタンドって改めて見ると、凄い存在感ですぅ……ッ!?」

 

「おいおい……ッ!?幾ら2対1つってもあんな簡単に……ッ!?どんだけ強力な能力なんだよ……ッ!?」

 

「まるで予定調和みたいに的確な迎撃をするなんて……ザフィーラ、どう思う?」

 

「……奴の話を鵜呑みにするなら、元の世界のシグナムと戦った経験からの対応策を持っているんだろう。一方で初見のシグナムは奴のペースを掴みきれてない。その差が現状だ」

 

「……結構なお調子者やと思とったけど、まさかこないな実力があるとは……シグナムが一方的にやられるとこなんか初めて見たで」

 

目の前の景色に驚いて狼狽するヴィータやリインフォースツヴァイ。

そして冷静に状況を分析するシャマルやザフィーラと、ヴォルケンリッターの間では各人の特徴が現れている。

本当なら軽く実力を測る為にシグナムとの対戦を進めたはやてですら、この光景は予想外だったらしい。

目の前のモニターから視線を外して空を仰ぎ、手で目元を覆ってしまう。

 

「……強いね」

 

「うん。近接格闘主体……まだ全部見た訳じゃないからなんとも言えないけど……橘君のスタンドの射程距離に入ったら、対処のしようが無いね」

 

「橘君の短い射程距離をスタンドでカバー。かといってスタンドを警戒しても、彼への注意が疎かになったら一気に襲われる……完全な近接キラーだ。しかも間合いも簡単には開けられないかも」

 

「シグナムさんがこのままで終わるとは思えないけど……デバイスを離しちゃったから、ちょっと苦しいかな」

 

一方でフェイトとなのはは禅の能力に心の中で驚きつつも冷静に試合の流れで禅のポテンシャルの把握に務める。

ある意味では知古の存在である異世界のフェイトやアルフの実力は大体予想が付く。

しかし完全に初見の禅の能力と、完全に機能を復活させたリインフォースのスペックを把握する為に、今はしっかりと冷静に分析しなければならない。

大切な人に怪我をしてほしく無いという、その職務を大事にする二人の気持ちが、目の前の事態を見ても冷静にさせていたのだ。

 

 

 

 

まぁ尤も――。

 

 

 

「……ねぇ、なのは……あれってあれだよね?」

 

「うん……誰がどう見ても……」

 

『じゃあ、ここらではやてさんに用意してもらった業物を……活目せよ!!首領パッチソードのお披露目でぃ!!』

 

 

 

「「……ネギ?」」

 

 

 

禅が突拍子も無い行動を取らなければの話だが――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ぐ、くうぅ……ッ!?……まさかあれ程のスピードとパワーがあるとは……ん?」

 

瓦礫の山から身を起こしたシグナムさんは苦痛に表情を歪めていたが、俺が右手に持ってるモノを見て首を傾げる。

ふっふっふ、この首領パッチソードの見た目に騙されてるんだろうなぁ。

見た目はまんま葱だし中身もまんま葱ですし。

 

「……それは何のつもりだ?」

 

「え?何って首領パッチソー……」

 

「名前の問題じゃない。っというか紛う事無き葱だろうそれ」

 

「あぁ、はい。はやてさんに用意してもらったっす。今日の朝に搬入された新鮮モノだそうっすよ」

 

フレッシュピチピチな葱をバトンぽくクルクルと回しながら笑顔で答えると、シグナムさんの表情が段々と曇っていく。

 

「……デバイスを手放した私なら、それで充分だという事か?……舐めるなよ、小僧」

 

「シグナムさんがいけないんスよ!!そんな舐めたくなるモチモチ肌してるから……」

 

「そっちの意味では無い!!っというか舐める気だったのか貴様!?」

 

レロレロレロレロしながらニヤリと笑うと、シグナムさんはズザッ!!と大仰に後ずさった。

ほんのジョークのつもりだったのにそこまで本気にされると超ショックなんですけど。

まぁ兎に角、俺の武器が只の葱だと思って侮ってる今がチャーンス。

回していた葱を剣道でいう八相の構えにして腰を低く屈め、白い根の方を先端にしながら弾丸の如く飛び出す。

 

「舐めてんのはシグナムさんでしょうが!!そんな風に言うのは、この首領パッチソードの真の力をとくと味わってからにしやがれっつーんスよぉ!!」

 

「高々野菜如きで……ッ!!(気配も無く現れるヤツのスタンドには対処が難しい!!やはり本体を直接狙うしか……ッ!!)」

 

葱を構えて突貫する俺に対して、シグナムさんは迎撃の態勢を取る。

ふん、この俺が『只の』葱を使うわけが無えだろうが!!喰らいやがれ!!

 

「コオォ……ッ!!波紋!!」

 

呼吸から作り出され、体内で練った波紋のエネルギーがターコイズブルーの色を発しながら葱へと伝わる。

その波紋を纏った葱を振り降ろすと、シグナムさんは葱を腕でガードしたと同時にもう片方の手でパンチを繰り出した。

ガードされた葱はフニャンと折れ曲がり、先端の白い茎がシグナムさんの顔へと向く。

やはり攻撃力が皆無と分かってか、シグナムさんはニヤリと笑みを浮かべる。

しかぁし!!それこそが、俺の狙い!!

 

「はあぁ!!」

 

「弾けろ!!首領パッチを超えて!!」

 

パァンッ!!

 

「なッ!?――ぐうぁああああああああああああああああああッ!?」

 

シグナムさんの拳が当たるかといった距離に差し迫った瞬間、シグナムさんは拳を止めて両手で顔を覆って蹲った。

しかも苦しそうな声をあげながら地面を転がるといったオプション付きで。

おっしゃ!!目論見どおり成功だ!!

狙い通りに動きを封じる事が出来て、俺はニヤリと笑う。

え?何をしたのかって?葱に波紋をINして葱の先端を少々破裂させーの。

中に詰まった汁をシグナムさんの美しい瞳に炸裂ボンバーさせーのしただけですが、何か?

 

「いやー、葱の汁って目に入ると、スッゲー痛いんスよねぇ」

 

「め、目がぁぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁあああああああ!!」

 

今のシグナムさんみたいにリアルラピュタ王(笑)をやっちゃうくらいには。

最早俺の言葉を聞いてるのは分からないシグナムさんの背中を『クレイジーダイヤモンド』の足で踏んづけて固定。

そのまま暫くして目の痛みが何とか治まってきたシグナムさんの耳元に優しく囁く。

 

「さぁシグナムさん。潔く降参して下さいや?じゃねえとここから更に追撃をかけなきゃいけないッスから」

 

「あ、が……ッ!?……こ、これしきの事でぇ……ッ!?」

 

「ありゃ?まーだ戦る気かよ?……んー……鼻ん中に再び首領パッチソード炸裂か、このまま服の中レロレロされるか、この葱をケツにブッ刺されてからの首領パッチソードるのと、ドレがお好みで?」

 

「こ、こここ降参する!!わ、私の負けだ!?」

 

ツラツラと考えていた追撃方法をニヤニヤしながら語ればアラ不思議。

両手を上げて降参してくれたではないか。

若干涙目になってるのは、多分葱の汁で目がまだ痛いんだろうなぁ(ゲス顔)

シグナムさん自身が降参宣言をしてくれたので『クレイジーダイヤモンド』の足を背中から退けて、皆の居る方向へと目を向ける。

 

「おーい。終わりましたよー?」

 

「「「「「……」」」」」

 

にこやかにネギを振り回しながらそう叫ぶが、平行世界から来た組以外の面々は口をポカンと開けたマヌケ面を浮かべていて反応がない。

何ともまぁ、女の人が浮かべて良い表情じゃないなオイ。

しかし、大人になったフェイトさんはそんな顔でも可愛らしいんだから困っちゃう(笑)

 

「……~~ッ!!」

 

「(パァン!!)穴と言う穴にツンとした刺激臭がダイレクトヒッツォォオオオオオ!?」

 

そしてそれを瞬時に察知して俺のネギを電撃爆散しちゃうフェイトちゃんにも困っちゃう(戦慄)

 

「う、うぅ……申し訳ありません。主はやて……この様な醜態を晒してしまうとは……」

 

「い、いや。ええよシグナム。さすがにあれは鬼畜すぎるわ……」

 

「そ、そうですよシグナムさん。まさかあんな方法で戦うなんて、誰も予想が付きませんから……」

 

そして、目が回復したシグナムさんに連れてかれる形で、俺は皆の場所に戻った。

何やら側で話してるが、まだ視力の回復してない俺にはどんな状況かなんて分かりません。

只まぁ、シグナムさんの声が若干グズグズという泣きそうな声になってるっぽい。

俺の方はというと、大分痛みは引いてきたけど、まだチクチクします。

こんなえげつない技を自分で食らう羽目になるとは……すんません、シグナムさん。

 

「ご、ごめんね!?ゼン、本当にごめん!!」

 

「あがががが……ま、まぁ、俺がそもそもの原因だから気にすんなって……ぺっ、ぺっ」

 

「う~……未来の私ばっかり見てるんだもん……つい、カッとなっちゃって……ごめんなさい」

 

「だ、大丈夫だよ。禅君は、ちゃんと君を見てるから(過去の私にこんな事言うのも……なんだか、自画自賛みたいで恥ずかしい)」

 

「そんなつもりは無え……とは言い切れない自分が憎い」

 

「だ、大丈夫か、ゼン?」

 

目を水で洗いながら、側でむくれるフェイトの機嫌を治す為に言葉を掛ける。

隣でタオルを持ちながら心配してくれるリインにお礼を言いつつ、穴という穴に入った葱汁を洗い流す。

微妙に見える様になってきた視界に、しょぼくれたフェイトの姿が見えてきた。

あぁもう、そんな反応されたら堪らないじゃないですか。

 

「フェ~イト?そんなにショボくれんなって言ってんでしょーが?」

 

「(ビク)あ、あの……き、嫌いに……なった?……わ、たしの……事……嫌いに……ご、ごめんね……ひっぐ……」

 

と、にこやかに話しかけた筈なのにフェイトちゃんってば涙腺崩壊待ったナシ。

宝石の様な瞳に大粒の涙を溜めて本気で泣きそうになってる。

これはさすがにイカンと思った俺は慌ててフェイトを抱きしめながら波紋を篭めた手でゆっくりと頭を撫でる。

「わ!?」とか言って顔真っ赤にして手で目を覆ってるフェイトさんが居るがとりあえず放置。

というか指の隙間からしっかりこっち見てるし。

 

「な、泣くなってばよぉ……俺がフェイトを嫌いになる訳無えだろ?今回の事は……っというか、フェイトが泣く時は大概俺が悪いんだしよ……な?」

 

「ぐ、ぐす……でも……私、ゼンに酷い事しちゃったよぉ……」

 

「何にもしてねぇよ。っというかアレだぜ?嫉妬してくれてるって事はそれだけフェイトが俺を思ってるって事だろ?気にしなくて良いって」

 

「で、でも……」

 

っと言いいますか、リインにキス事件の時とかもっと凄い☆O☆HA☆NA☆SHI☆を俺にしてるんですが……。

ええい、これだけ言っても分かんねぇのかい。

ならば態度と行動で示してしんぜようではないか!!

抱きしめていた体勢から少し体を離して、俺は首を傾げるフェイトの前髪を上げ……。

 

「ぬっふっふ……」

 

「え?え?ゼ、ゼン?」

 

「では、頂きまーす♪この可愛らしいオデコにぃ……(チュッ)」

 

「はひゅッ!!!?」

 

「わ!?わ、わわわわわわ……ッ!?(お、おでこにキキキ、キスゥ!?)」

 

「「あーーーーーッ!?」」

 

「「「「「おおおおおおッ!?」」」」」

 

その卵肌なおでこにチュッと軽くキスした。

すると抱きしめていたフェイトは珍妙な悲鳴をあげて額まで真っ赤に染まってしまう。

外野も騒いでるが気にしてる暇は無え。

口付けしたおでこから顔を離してフェイトの顔を覗き込むと、フェイトは真っ赤な顔色でカチコチに固まっていた。

そんな可愛らしい天使に、俺は柔らかい笑顔を浮かべる。

 

「あ、あわ……ッ!?」

 

「フゥ……前にも言っただろ?そういうのは全部俺にぶつけてこいって?幾らでも受け止めてやるよ」

 

「う、あ、ぁ……ッ!?あうあうあうあうあう~~~……ッ!?」

 

笑いながら目を見つめてそう言うと、等々フェイトはあうあう言いながら煙を吹き出してしまう。

どうやら恥ずかしさでオーバーヒートしてしまったらしい。

っていうか前にキスした時も色んな人に見られてたのに、今回は不意打ち過ぎて駄目だったっぽい

ちとポンコツってるフェイトの愛らしさに身悶えそうですよ僕は。

とりあえずフェイトが悲しそうじゃ無くなって事無きを得た訳なのですが……。

 

「う~!!(フェイトが嬉しそうなのは良いけど……やっぱり、モヤモヤする!!後でたっぷりと撫でてもらうから覚悟しときなよ、ゼン!!)」

 

「……(テスタロッサばかり……ずるいではないか)」

 

羨ましそうな目でこっちを見てる二人はどうしましょうか。

アルフは子供フォームで犬歯を覗かせつつ唸りながら、リインはひたすら羨ましそうな表情で見てくるもんだから俺も冷や汗が止まらない。

 

「……あ、あ~。さ、さて。ほんなら気を取り直して……次は、リインの……これじゃこっちのリインと混ざってまうな。えっと、リインフォースの実力を見せて欲しいんやけど……」

 

「は、はい……ゼ、ゼン。ちょっと良いか?」

 

と、物欲しそうな二人の対応をどうしたもんかと悩んでいた所ではやてさんがリインをご指名。

幾ら平行世界で厳密には主が違うとはいえ、それで区別する事をしない心優しいリインは、はやてさんの言葉に応える。

……が、何故かそこで頬を赤らめた、何かを思う表情を俺に向けてきた。

 

「ん?どったよ?」

 

「そ、その……だな……して、くれないか?」

 

「え?」

 

何を?と聞き返す前にリインは目をギュッと瞑って恥じらいながらも、言葉を紡いだ。

 

「あの……この模擬戦の後で……私にも、テスタロッサにしたみたいに……キス……を……」

 

「」

 

その可愛らしいお願いに、今度は俺が呆ける番でした。

両手を前で組んで、その魅惑のボディをもじもじと恥らう様にくねらせるリインしゃん。

それは、正に老若男女関係無しに虜にしてしまう程の破壊力を内包してます。

その様子を見てたエリオ君は顔を真っ赤に染め、何か見知らぬお兄さんとはやてさんは鼻血流して恍惚の表情を浮かべてるし。

完璧にリインに見惚れてるエリオ君にちょっとムッとしたが、彼の傍で黒い波動に満ちてるキャロちゃんが居るのでそっとしておこう。

触らぬ何やらに何とやらってヤツです。

っておいはやてさん何だそのグッドサインは?何嬉しそうに鼻血垂らしとるんじゃワレ。

 

「う、うぅ……さ、さっき、何でもお願いを聞いてくれると言っただろう?……ちゅんとッきいてもらうからなッ」

 

ちょっと混乱して返事し忘れていると、リインは真っ赤に染まったお顔で念を押してから騎士甲冑に着替え、演習場へと飛んで行ってしまった。

……しもたー。そういえば約束してたんだったぜ……まぁ普通にするから良いけど。

 

「ふがふが……ほ、ほんなら、フォワード部隊の皆は待機で、隊長、福隊長陣で行こか。さすがにリインフォースの相手は私等の方が良えやろ」

 

「り、了解しましたッ!!今度こそ、主の役に立ってみせますッ!!」

 

「同感だな。はやてが行くならアタシ等も行かねーと」

 

「ふ、ふふふふ……いよいよです……ッ!!あのけしからんムチムチおねーさまに下克上を!!時代はスレンダーだという事を証明するのです~!!はやてちゃん、ユニゾンですよ~~!!」

 

そして、鼻にティッシュを詰めて復活したはやてさんの号令に、俺の知ってるメンバー達がバリアジャケットや騎士甲冑を展開して演習場に向かって行く。

公衆の面前で鼻にティッシュとか、はやてさんもう女捨ててね?

っていうか……そうか……リインと戦うのか……可哀想に。

リインとバトルという恐怖体験を皆より先に味わってる俺は、死地に向かう皆に何とも言えない目を向けてしまう。

そんな中でなのはさんも、俺達が知ってるのと少し変わったバリアジャケットを装着して、フォワードの皆に話し掛ける。

 

「じゃあ皆。この後演習が終わったら今から始まる模擬戦について、自分なりのレポートを纏めてね?」

 

「「「「は、はい!!」」」」

 

戦闘態勢に入ったなのはさんはこの場に残される生存者達に、この模擬戦をしっかりと見る事を要求し、フォワードの人達もそれに応える。

俺はそんなやりとりをしてる横で、まだあうあうあ言ってるフェイトをアルフに任せて、さっきの光景を見て少し頬を赤らめたままのフェイトさんに近づいていく。

まぁ所詮模擬戦な訳だけど……さすがに見捨てるのは忍び無いので、フェイトさんには注意しとくか。

 

「フェイトさん。ちょっと良いっすか?」

 

「はぅ!?……お、落ち着いて私。さっきのは私であって私じゃ無いから……すぅ、はぁ……良し……ど、どうしたのかな?」

 

「へい。ちょいとお耳をお願いします」

 

不意打ちに声を掛けたのがマズかったのか、フェイトさんは素っ頓狂な悲鳴をあげて飛び上がる。

しかし何度か深呼吸をして落ち着いたらしく、少しどもりながらも俺の言葉に応えて耳を近づけてきてくれた。

 

(率直に言いますけど、模擬戦が始まったら直ぐに最速でこの場所ギリギリまで飛んで離脱した方が良いッスよ?)

 

「え?」

 

(ホントは皆さんにも伝えた方が良かったかもしれませんけど、正直なとこ俺の世界でいうフェイトクラスのスピードが出せないと、伝えても意味が無いんで……多分未来のフェイトさんなら同じ位速いと思ったんで、伝えたかったんス……)

 

「え?え?ど、どういうこと?」

 

「それじゃあフェイトちゃん。行こう?」

 

「あ。う、うん……」

 

「良いッスか?全速力ッスよ?もし怪我しても俺が完璧に治せますけど……俺はフェイトさんが傷付くのを見たく無いッスから……」

 

「ッ!?う、うん……あり、がとう……」

 

「いえ……フォースと共にあらん事を」

 

なのはさんに促されたフェイトさんは、俺の知ってるフェイトとは大分変わったバリアジャケットを装着して、なのはさんに続いて死地に向かう。

最後に俺の方を首を傾げて見てきたので、真剣な表情で今出来る最大のアドバイスを送った。

俺の心配する真摯な思いが通じたのか、頬を赤く染めたフェイトさんは恥ずかしそうにワタワタしつつ、演習場へ飛行していく。

っというか最後のネタには無反応なのがチョッピリ悲しかったり。

 

「……女垂らし(ボソッ)」

 

そしてそんな俺を冷めた目で見てくるランスターさんの視線に心のダメージが蓄積してます。

つうか小声で何か不名誉な事を言われた気がするぜ。

 

「……えへ♪……えへへ♪」

 

お~い、フェイト~?そろそろ戻ってこ~い。

未だに見てるこちいが幸福な気持ちになる様な笑顔で恥ずかしそうにしてるフェイト。

心の傷が癒されていくなぁ……でもそろそろ、元に戻ってもらわねぇと。

幸せいっぱいのフェイトを支えて羨ましそうな顔してるアルフにも、注意してやらねぇとな。

 

「フェイト?聞こえるか~?」

 

「……ゼンが、私に……キス……えへへ♪」

 

……このままでも良くね?可愛いし。

 

『……よう考えたら、これがリインフォースとの初めての試合になるんやね……』

 

『そう……ですね……私達の世界の違いが禅の存在なら……私は、あの山の公園で空に帰っていた筈ですから……』

 

と、可愛らしい笑顔で嬉しそうに両頬に手を当ててるフェイトに骨抜きにされてた俺だが、聞こえてきた声に慌てて意識を戻す。

声の発生源は、皆と同じで管理局の制服に身を包んだ眼鏡のお姉さんの手元の立体ビジョンのコンソール付近。

つまりアレはモニターの役割も果たしてるんだろう。

俺の視線に感づいて微笑んできた眼鏡のお姉さんに会釈しつつ、会話の内容に耳を傾ける。

 

『せやな……あの時は、碌に話も出来ひんかったけど……世界が違っても、リインフォースはリインフォースで……幸せにしとって、良かった……』

 

『……主……』

 

『あはっ、ごめんな。湿っぽくしてもうて……さぁ、戦おうか!!』

 

『……はい!!主にお見せ出来なかったこの世界の私の騎士働き!!僭越ながら、この場にてお見せします!!』

 

『うん!!』

 

スピーカー越しに聞こえる楽しそうなはやてさんの声と、万感の思いを載せたリインの力強い返答。

あぁ、やっぱり世界は違ってもはやてさんにとってリインは大事な家族なんだな。

そしてリインにとっても、大切な主だからこそ、あんなに張り切って――あ。

 

「それでは皆さん!!始めて下さい!!」

 

心に過った一種の胸騒ぎを口に出す前に、メガネのお姉さんが模擬戦のスタートを切ってしまう。

その合図と同時にシグナムさんやヴィータや、そして……。

 

「はぁぁああ!!」

 

俺の忠告を忘れたフェイトさんが一斉に突撃して近接攻撃を、ってフェイトさぁーん!?逃げろって言ったでしょぉお!?

余りの絶望っぷりに頭を抱えるが、それでフェイトさんが止まる筈も無く、バルディッシュのサイスフォームで果敢に斬り掛かる。

しかも反対側からシグナムさん、真正面からヴィータも同時に仕掛けるが――。

 

「盾よ」

 

バッヂイィイイッ!!

 

「ッ!?」

 

「おわ!?」

 

「く!?……なんて硬さだ!!」

 

苦も無くリインが唱えたシールドによって簡単に防がれてしまう。

その堅牢さに驚く3人だが――。

 

「進め」

 

ドゴォオオオ!!

 

「あぅ!?」

 

「ぐううぅ!?」

 

「うわぁ!?」

 

リインを覆い尽くす程に巨大なシールド魔法が素早い速度で体当たりした事で、3人共元の位置へとフッ飛ばされてしまう。

そのリインの余りのチートっぷりに、演習場に居る皆もフォワードメンバーもあんぐりと口を開けて呆けてしまっている。

何せリインが呼吸をする様に使った魔法って、ザフィーラの防御魔法を軽く上回ってる様な代物だ。

まぁぶっちゃけ、リインに勝てる存在なんてどの世界探しても居ないんじゃね?

何せ既に俺たちの世界じゃ次元世界最強の座に君臨してる訳だし。

戦場に立つ皆さんに心の中で手を合わせて合掌しま、しょ?……あっるぇ~?

何か、リインの片手が空に翳されてるんですけど?っていうか急に暗くなったなぁ?太陽に雲が掛かったんでしょうか?

うん。そうだよね。何かリインの翳した手に向かって『太陽が落ちてきてる』なんて幻影だよね?俺の見間違いだよね?

葱の汁で目が悪くなったかな~と思ったけど……そんな事は無かったらしい。

だって太陽の背後に魔法陣見えるし?ぶっちゃけ太陽の色がリインの魔力光の紫だし?

 

『見てますか、主はやて……これが、貴女の騎士の力です』

 

オワタ。

その言葉を認識した瞬間、俺とアルフは明後日の方向へと駈け出した。

アルフは汗をダラダラと顔に垂らしながら、涙目で。

俺はポンコツったままのフェイトをお姫様抱っこしながら。

無言で示し合わせた様に駈け出した俺たちの向かう先はこのデッキから一望できる青いオーシャン。

1ミリたりとも足の動きを緩めずに走る俺たちの背後から、ランスターさんの「ちょ!?何処に行くの!?」という脳天気な言葉が投げ掛けられる。

 

 

 

 

そんな脳天気さんに送れる俺達の言葉は、これ一つ。

 

 

 

「「逃げるんだよォォォーーーーーーーッ!!!」」

 

 

 

腹の底からそれだけ言って、俺達は母なる海へと己が身を投げ出した。

 

 

 

――そして。

 

 

 

『ちょ、リ、リリリ、リインフォース様?それは洒落になら――』

 

 

 

『いきます、主―― STAR light Breaker !!!』

 

焦るはやてさんと嬉しそうなリインの言葉を耳の端に受けたのを最後に――。

 

 

 

ジュッ。

 

 

 

ジョーズニヤケマシター!!

 

 

 

と、ウルトラ上手に焼かれた音と、はやてさんの断末魔が聞こえた。

 

 

 

リイン様、パネェっす。

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

 

ヒロインとのイチャイチャもこんな感じだったぜ。

 

 

最近ジョジョじゃ(マジカルオーシャン)暗い話だから、ここらでイチャイチャを、糖分を……ッ!!

 

 

 

 

 


 
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