No.731794

恋姫外史終章・いつまでも一刀第35と2/3話

アキナスさん

ある月夜のできごと・・・・・・

2014-10-22 02:12:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3496   閲覧ユーザー数:2756

「ん~~、眠れねえなあ。ちょいと酒でもいただいてくるか」

 

深夜、妙に目が冴えてしまった一刀は廊下を通り酒蔵へと向かっていた。

 

その途中、中庭の方で風を切る音が聞こえた。

 

一刀がそちらに目を向けると、そこには月の光が辺りを照らす中、中庭で一人武器を手に稽古に励む霞の姿があった。

 

相手をイメージしてのトレーニングらしく、攻撃しては防ぎ、攻撃しては防ぎの繰り返しである。

 

「・・・・・・ふむ」

 

一刀は少しの間霞を見つめていたが、結局当初の目的どおり酒蔵へ向かうのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふう」

 

武器を下ろし、一息つく霞。

 

「頑張ってんな。こんな夜遅くまで」

 

背後から声が聞こえ、霞が振り向くとそこには一刀が徳利に杯二つを持って立っていた。

 

「休憩しないか?」

 

「・・・・・・せやな」

 

一刀たちは近くの木の下までやってくると、ほぼ同時に座り込んだ。

 

杯に酒を注ぎ、霞に渡す一刀。

 

「ほらよ」

 

「おおきに」

 

手渡された杯をくいっと煽る霞。

 

「くぅ~~~!うまいな~~」

 

「体動かした後の一杯は格別だからな」

 

「そやな。ところで一刀はこんな夜遅くに何しとるん?」

 

「ああ、何だか眠れなくてな。酒でも一杯引っ掛けようかと思って歩いてたらあんたの姿が見えたんで、せっかくだから付き合ってもらおうと思ってな。迷惑だったか?」

 

一刀の発言に霞は首を横に振った。

 

「にしても、深夜に一人で、争奪戦に向けての秘密特訓か?」

 

「そんな大層なもんやない。第一、ウチの出番はないやろ」

 

霞は杯に目を落とし、自嘲気味に言った。

 

「ウチな、恋にも華雄にも勝てへんのや」

 

「ふむ・・・・・・」

 

「恋に関しては正直諦めとるんや。董卓軍に限らず、国中探しても勝てる人間はおらんと思うし」

 

「まあな」

 

「せやけど、華雄に関しては別や。戦績はウチが上やった・・・・・・華雄が行方不明になって、帰ってくるまでは」

 

「・・・・・・」

 

「それからは嘘のように連戦連敗。ウチ、自信無くしてもうて・・・・・・」

 

「ふ~ん・・・・・・」

 

一刀は杯を置くと、よっこいせと言いながら立ち上がった。

 

「なあ?俺と手合わせしてみねえか?」

 

「?」

 

「あんたが自信を失くすほど弱いかどうか、確かめてみたくなった」

 

「・・・・・・」

 

「どうだ、やるか?」

 

「・・・ええやろ」

 

霞もまた、杯を置いて立ち上がった。

 

「得物は?」

 

「そうだな・・・取ってくるから待っててくれ」

 

そう言うと、一刀は駆け足で武器庫へと向かった・・・・・・

 

 

 

 

 

武器庫を物色して見つけたそれなりの剣を片手に、一刀は戻ってきた。

 

月明かりに照らされた中庭で、立ち合いが始まる。

 

先手を打って飛び出したのは霞だった。

 

「そらそら!」

 

「よっ!とと!?」

 

開始早々目にも留まらぬ連撃を繰り出す霞と、それを危なっかしく受け止める一刀。

 

「受けるだけじゃ勝てへんで!」

 

「調子に・・・乗んな!!」

 

剣で霞の攻撃を防ぎつつ、一刀は霞の腹部目掛けて蹴りを放った。

 

「ぐっ!?」

 

当たる瞬間後方へ跳んで直撃を避ける霞。

 

しかしその間隙を縫って今度は一刀が攻勢をかける。

 

「オラオラ!!」

 

斬撃の連続が霞に襲い掛かる。

 

一刀の連撃を受け止め続け、霞の腕は徐々に痺れてきていた。

 

(このままやとあかん!)

 

霞は一刀の攻撃を受け止める際、踏ん張らずわざと吹き飛ばされる事によって距離を取った。

 

大きく息を吐き、前傾姿勢で構える霞。

 

(次で決めたる!)

 

(上等!)

 

霞の思惑を察した一刀も、示現流蜻蛉の構えで迎撃の態勢を取った。

 

一瞬、既視感のようなものが霞の脳裏によぎる。

 

奇しくもその構図は、前外史において二人が初めて立ち合った時と全く同じだったのだ。

 

 

 

ゆるやかな風が吹き、一枚の木の葉が一刀たちの中央へと舞い落ちてきた。

 

 

 

その木の葉が地面に落ちた瞬間

 

 

 

二人は同時に大きく踏み込み、

 

 

 

パキィン!

 

 

 

「「チェリオーー!!」」

 

 

 

渾身の一撃を放ったのだった・・・・・・

 

 

 

 

勝負は霞に軍配が上がった。

 

「負けちまったか・・・・・・」

 

仰向けに倒れ、星空を見上げる一刀。

 

敗因は、武器だった。

 

一刀の本気の一撃に剣が耐え切れず、互いの武器がぶつかった際に剣が折れてしまったのだ。

 

霞は勝ったにしては浮かない顔で、一刀の隣までやってくるとゆっくり腰を下ろした。

 

「一刀。二つの剣はどうしたん?」

 

「あ?そんなの俺が聞きてえよ・・・・・・ちょっと待て。俺の武器の事知ってるって事は、思い出したのか?」

 

「ん」

 

頷く霞。

 

「今のは無しや。武器見つかったら再戦するで」

 

「・・・・・・おう」

 

二人は星空を見上げ、約束を交わしたのだった・・・・・・

 

 

 

翌日、一刀は宝物庫にいた。

 

歴史的価値があるものなどを除いて、華美なだけのお宝を売り払って国庫の足しにするつもりなのだ。

 

「どれもこれも豪華で悪趣味だねえ。ま、高く売れるならいいか」

 

次々と物色していく一刀。

 

「・・・・・・ん?」

 

一刀はふと、宝物庫の片隅に目を留めた。

 

そこには、一振りの剣がたてかけてあった。

 

見覚えのある龍の装飾がほどこされた長刀。

 

それはまさしく、一刀がこの外史にやってきた時紛失していた武器の一つ、怒龍刀であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

話はこの外史に一刀が降りてくる途中まで遡る。

 

流星と化し外史に向かう途中の一刀。

 

その際、意識を失っていた一刀は二本の剣を降りてくる前に手放してしまったのだ。

 

早期に手放してしまった斬鋼剣は別の外史へと。

 

そしてこの外史に来てから手放した怒龍刀は、一刀が墜ちた所から三十kmほど離れた地点に墜ちていた。

 

それを所用を済ませて帰る途中だった都の貴族が見つけ、貴重品と見るや貢物として帝へ献上したのである。

 

 

 

 

 

という訳で、怒龍刀片手に宝物庫を出た一刀は、すぐさま霞に再戦を申し込んだ。

 

 

 

 

結果は一刀の勝利で終わり、霞は

 

 

 

 

「酒飲まなやってられんわ!!」

 

 

 

 

塞ぎこみこそしなかったもののやけ酒をあおり、付き合わされた一刀共々二日酔いになるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

今回の話で董卓軍の面々は全員記憶を取り戻しました。

 

そして、次回から王位争奪戦がスタートします。

 

ちゃんとした終わり方になればいいけど・・・・・・(汗)

 

では次回に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蒼龍寺超秘奥義!暹氣龍魂!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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