【 礼に対する報恩 の件 】
〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗
周囲は異様な物音に驚き………注目した!
肉を切り裂く音では無く、固い物を遮る音!
そして……そこに立っていた人物は、一刀達がよく知る人物だった!
一刀「大洪……! 左校……! お前達なのか!? お前達なんだな!!」
華琳「あ、貴方達………!!」
『大洪』は剣を構えて……厳しい顔で順慶を睨みつけ対陣する!
大洪『てめぇ……俺達の命を奪っても、まだ旦那を狙うのか!』
順慶「ふふっ! どんな手品を使ったか知りませんが、邪魔者は消えて貰いますわよ!! それに、貴方達の命など関係ありませんわ! 行くてを阻む雑草を刈り取っただけですもの!!」
順慶が構え、制空圏を作り上げると同時に攻撃を開始する! 既に……常人には分からない速度で動き、唸りを上げつつ拳を大洪に叩き込む!
大洪『前と同じだと───思われたくないねぇんだよ!!!』
その拳を左手で簡単に受け止め……剣で反撃するが、瞬時に避けられる。
しかし、順慶の顔に驚愕の顔が浮かぶ!
順慶「ど……どういう事ですの!?」
この世界の英傑が束になり、攻められても……易々倒せた順慶。 それが……名も残らぬ無名の将如きに、対等以上に闘う事になるなんて!?
順慶は……軽く目眩がしていた。
ーーー
左校『御遣い様……ご無事で何より!! 皆で心配しておりました!』
一刀「お前達! 無事で───!?」
一刀は、二人の生還を喜ぼうとしたが……左校は悲しげに顔を横に振る。
左校『いえ……我々は筒井に命を奪われた身。 既に、この世の住人ではありません!』
一刀「──────! そうか……やはり……俺のせいで……」
青い顔で落ち込む一刀に、左校は両肩に手を乗せ……一刀に話掛ける。
左校『我々は、御遣い様を守る事が出来て……本望です! しかし、御遣い様が日々悲しんでいる姿に……いても居られず……何か出来ないかと模索していたところ、このような機会に運良く恵まれました!!」
一刀「お、俺を……皆を恨んでいないのか? 妬ましくないのか!?」
左校「恨み事があれば、こんなところに出て参りません! 詳しくは言えませんが、ある方のお力添えにより……《式神》として参陣した次第です! つかの間とはいえ、御遣い様の力になれる事、皆……喜んでいますよ! ほらっ!』
左校が手を上げると、曹操軍の周囲へ光の柱が無数に立ち昇り、そこにも光り輝く鎧を着用した者が千人現れる。
左校『御遣い様や華琳様達が、我々に行ってくれた恩義に報いるのは今だ! 総員──敵を討ち払え!!!』
『『『御意!!!』』』
大洪、左校配下の元青州兵達が、傀儡兵達に立ち向かっていった!!
★☆☆
〖 鶏洛山付近の森林 にて 〗
果心「ふすふす………どうやら、上手く召喚出来たようですね」
果心居士は、祭壇の前で祈りを止めた。
周囲は人が一切入らないように、結界を二重三重に張り巡らし、ただ一心に『天帝』の祭壇に祈りを捧げていた。
ーーーーー
于吉と同じ管理者としている果心は、于吉の術を破るのは至難である事を自覚していた。 于吉のような妖術と言うものが、使えない事は無いが……同質の術では、まともに相手にならない! 他に何か手はないかと………。
そこで考えたのは……この世界で颯馬や一刀に力を貸してくれる『亡き者達』を、一時的に『力ある式神』として戦場に送り込む事だった!
意識ある使い魔として自動的に動いてくれれば、術に掛ける力も少なく済むし、果心自体も動ける。 それに、それぞれの理由があれば、更に強くなってくれるのが式神! これなら……大丈夫だと踏んだのだ!!
しかし、この世界の人の絆に自分の力を足した『式神召喚法』だが、一抹の不安がある。 颯馬は別として、北郷一刀の事は殆ど知らない。 果たして、北郷一刀に力を貸す『亡き者』達は居るのだろうか………と。
ーーー
果心「北郷一刀に恩ある亡魂達よ! 今一度、彼に力を貸さんと申す者あれば、『天帝』の使者である我に申告せよ!!」
だが……祭壇を拵え祈り始めると、直ぐに申し出が殺到してきた! 例えるなら、『○物バーゲンセールに挑む掛かる女性の方々』のような状態。
『自分の力不足で、北郷様に迷惑を掛けた! 今こそお役に立ちたい!』
『あの方のお陰で、家族が守れた! 恩返しを!!』
正直……頭が痛くなる状態だったが、ある一団に目が入った。
『……………………………』
兵数千人規模だが、キチンと整列し順番待ちをしている。 その規則正しさが気になり声を掛けると、大洪、左校が率いていた青州兵だった。
『俺達は……御遣い様達を救い出せたので悔いは無い。 しかし、我らの前に何時も泣きながら御遣い様が謝れるのは……非常に辛いのだ! 何とか出来ぬものかと……相談させてもらいたいのだ!』
『旦那の良い所だか、あんまり執着し過ぎても、旦那も俺達も悪影響しか出ねぇ! この世で一発ドデカい手柄を立てて、双方綺麗に別れたいと思ってな? あの世も綺麗なネェチャン居るから不満もねぇもんでぇ……』
『何だその言いぐさは! 御遣い様を、自分の女のような扱いをするとは! 恥を知れ! 恥を───!!』
ここは相談室では無いのだが……と溜め息をつく前に、果心居士は思い付く。
この者達を式神に召し抱えよう! そして、残りの者達を『甲冑』に変えて強化してみよう! そうすれば……于吉の術にも対抗出来るし、この者達の思いにも応えられる!
果心「臣、果心言上仕ります! 忠義尽くし報恩の志を持つ烈士達を、何故とぞ一時期ながら……我が式神と召し抱える故、御許可の採決を願い奉ります!」
果心は祭壇に願った後、左校達を並ばせ……呪文を詠唱する!
果心「天帝の臣たる果心が命じる! 北郷一刀に仇なす輩を速やかに討ち払え! 神将招来!! 急急如律令!!!」
果心の詠唱が終わると、光輝く鎧を着用した神将達が現れた! 無論……大洪達の変化した姿だった。
果心「くつくつ、貴方達に力を与えました。 この世に悔い無きよう……力を尽くしなさい!!」
『おおぉぉぉ! 我々の導き手……北郷一刀様達を救い出すぞぉぉぉ!!』
こうして、『大洪』『左校』達は向かったのだ。
順慶達に対抗できる力を手に入れて…………!
ーーー
果心居士「くつくつ……北郷一刀。 貴方もまた……この世界の主人公として恥じない活躍をされている様子。 管理者としても……颯馬殿の味方としても非常に頼もしく思いますよ……」
果心居士の祈りは続く。
また……北郷一刀では無く、別の者に力を貸したいと言う者が現れた。
果心「ほんとうに……不思議な世界だ事………ふすふす」
◆◇◆
【 生きていた…颯馬 の件 】
〖 司州 河南尹 鶏洛山砦付近 にて 〗
颯馬を中心として、光秀と凪、愛紗、小太郎の周りを傀儡兵が固めた!
光秀「凪! 周辺の白装束を掃討して下さい!」
凪「はいっ!」
凪は集まっている傀儡兵達に向かい突進し、拳撃で討ち倒す!
光秀「愛紗! いつまでも腑抜けた様子を晒しているのです! 早く此方に! 小太郎! 貴女も早く!!」
小太郎は……まだ泣いていた。
小太郎「颯馬様が……居ない世界なんて……執着などありません! このまま力一杯闘い、颯馬様の後を追います!!!」
光秀は溜め息をついて……小太郎に言った。
光秀「………いい加減に分かりませんか? 本当に颯馬が死ねば、私や凪が冷静に対応できると思います!? 私だって……もしそうなれば……小太郎と同じ行動を起こしますよ。 ……自慢じゃありませんが………」
その言葉に……一拍置いてから……小太郎が大声で応えた!
小太郎「え……えぇぇぇ!!!!! ま、まさかぁぁ!?」
光秀「早くして下さい! とりあえず、ここを鎮静化しないと!! 理由は後で話しますから!!」
小太郎「うぅ~! わ、分かりました! 私も加勢します!!!」
──────ザザザザザッ!
鹿介「光秀殿! 大丈夫ですか!!」
光秀「鹿介殿! いい所へ!! 白装束の掃討をお願いします!!」
鹿介「承知した! 山中鹿介! いざ、参る!!」
★☆☆
少しの間を置いて……辺りの傀儡兵は全滅した。
周辺を見渡した後、鹿介が口を開いた!
鹿介「案外……あっけなかったようですな? しかし……何故、皆さんは緊迫した表情をしていらっしゃるのです!?」
そんな鹿介に、小太郎は……大輪の笑顔で応えた!!
小太郎「鹿介様! 喜んで下さい!! 颯馬様が、颯馬様が生きているとの事です!! 光秀様が……そのように!!」
鹿介「光秀殿! ……そ、それは誠に………?」
光秀「私や凪を見れば……一目瞭然かと」
光秀が冷静に応えると、鹿介は自分の頭を軽く叩き……自分の慌て振りを恥じた。 だが、疑問箇所も出てくるもので……光秀に問い質してみる!
鹿介「───やられました! しかし、颯馬殿に刺さる刃は、確かに身体を貫き通し、呼吸も心拍も止まっておいでです! このような状態では、普通助かる訳も無い筈ですが────!?」
その質問に応える為、光秀が颯馬に刺さる短刀を手にする。 思わず目を背ける幾人かの将達。
光秀「………今から颯馬に刺さる短刀を抜きます。 絶対に声を出さないように!! ……僅かでも手元を狂わせれば、颯馬は亡き者になりますので!!」
物騒な申し出に、全員口を一文字にして……様子を見守る。
「「「「「 …………………… 」」」」」
光秀「いきます! ────はっ!!」ズボッ!
颯馬「………ぐっ! はぁはぁ!」
『──────────!!』
短刀を引き抜くと同時に───息を吹き返す颯馬!!
思わず顔を見合わす将達!!
小太郎「そ、颯馬様!! 颯馬様!!!」
凪「小太郎様! 今は颯馬様の傷の手当てを! この出血では、本当に命取りへ成りかねません!!」
小太郎「わ、わかりました!! 颯馬様! 少し痛いですが我慢して下さいね!!」
颯馬「はぁはぁ! わ、わかった……うぐっ!!」
★★☆
颯馬の手当ても終わり………皆が辺りを警戒しながら喜びあった!!
鹿介「颯馬殿……! 良かった! 本当に良かったぁぁ!!」
小太郎「一体……これは……どういう事で………?」
小太郎の疑問は尤もな事。 颯馬は愛紗に刺された! それなのに、どうしてどうやって……あの状態で生きていられたのか?
颯馬「光秀……頼む!」
光秀「分かりました……私も詳しくは知りませんが……少しだけ」
光秀は、寝ている颯馬の頭の傍に寄り添い、訳を説明し始めた!
光秀「………颯馬は分かっていました。 敵の策略が、颯馬と北郷一刀に絞られると。 久秀殿が、月様に洛陽攻めで漏らした言葉が気に掛かり、貂蝉から話を伺っていたようです……」
◆◇◆
【 颯馬の秘策 の件 】
〖 洛陽 宮殿内客室 颯馬回想 にて 〗
俺は、とある理由で貂蝉を呼び寄せた。 今回の話は、貂蝉と二人で話さないと意味が無いとも思っていたんだが。
この部屋は、宮殿内の客の控え室。 始めて、宮殿に通され月様達と入った部屋がここだったり、反董卓軍の裁判で北郷殿達を閉じ込めたのも、この部屋だ。 結構利用進度が多い部屋で重宝している!
貂蝉「あらぁ~ん! 私と二人きりになりたいなんてぇ……期待していいのかしらぁぁん!」
颯馬「真面目に話をしたい。 ………月様より話を伺った。 久秀殿の背後に……別の大きな企みがありそうだな!」
貂蝉「………えぇ! 前に話をした『不定者』側の管理者が、久秀ちゃん達の背後に居て、この世界を崩壊させようと企んでいるのよぉ!」
颯馬「その条件……とは? この大陸に要石みたいな楔があって、そこを外すと崩壊するとか、あの月様の持つ銅鏡を破壊すると駄目だとか?」
貂蝉「前の外史は、ご主人様の存在が問題だったけど……今回の条件は三つ! 月ちゃんの所持している始まりの銅鏡、ご主人様……北郷一刀の命、そして……天城颯馬、貴方の命が失われた時なのよぉぉぉん!!」
颯馬「俺も……銅鏡に招かれた為、世界崩壊の楔を背負わされたか!」
貂蝉「ごめんなさい……ねぇぇ。 まさか……このような結果になるなんてぇ、私も後で気付いて………『いやっ! これでいい!』───えっ!?」
颯馬「悩んでも仕方が無い! それに、条件の一人が俺ならば……俺を餌にして策が組める。 他の者に……こんな危険な真似は出来ない!!」
貂蝉「ますます惚れ直したくなる男ねぇん! ご主人様を知る前だったら……間違いなくぅぅぅ………!」
颯馬「俺は! 光秀一筋だ!!」
貂蝉「そんな所もス☆テ☆キィィィ!!」
颯馬「と、兎も角!!! 俺と北郷殿で……一番交わる情報を探る! それに軍勢や交友関係、過去の出来事等、思い出す事を書き出す! 貂蝉! 竹簡と筆を貸してくれ!!」
貂蝉「ちょっと待ててぇん! あぁぁん! 違うモノ握ちゃたぁぁぁん!!」
颯馬「だからぁ!! そこから出すな! 手前の竹簡と筆を取れ! その前に手を洗ってこい!!!」
貂蝉「えぇ……何時も綺麗にしているのにぃぃん!!」
手を洗ってきた貂蝉から受け取り……色々と書き込んでいく…………!!
颯馬「──────────出てきた。 やはり『愛紗』だ。 過去の敵対行動、北郷殿への高い忠誠心、秀でた武力、それに……一番、俺に接している曹操軍側の将! 間違いなく、愛紗を利用して俺を殺しに掛かる!」
貂蝉「もしかすると、久秀ちゃんや順慶ちゃんの意見を聞いて、向こうの陣営に引きずり込むように画策しているかもねぇん?」
颯馬「どちらにしても、俺を殺すように仕掛けてくるはず。 愛紗を使えば、曹操軍の関与を疑われ……下手をすると内乱に発展する! そこを晋軍に突かれれば……義輝達が居ても壊滅の憂き目が! すると……月様も!!!」
貂蝉「そうすれば……勿論ご主人様もね? 邪魔者を全部消して、自分達は高見の見物。 多分……順慶ちゃんも久秀ちゃんも……生きては居ないわよ? あれほどの力を多様しているもの。 寿命も一年持つか持たないかも?」
颯馬「んんん……! 愛紗に攻撃を限定させて、俺を仮死状態にするような技とかないのか……貂蝉?」
貂蝉「手品みたいな事は……于吉ちゃんが見破るものね? 少し危険だけど、これを教えてあげるわぁぁぁん!」
颯馬「それは………?」
貂蝉「数ある外史の中にある剣術流派『一文字流斬岩剣』! これなら奥義『血栓貫』を使えば仮死状態になれるわよぉぉ!」
颯馬「す、凄い名前だな! しかも奥義か!?」
貂蝉「『この世に斬れぬ物は無し!』の流派よぉん! 勿論! この剣術使っても、月ちゃん達の絆やご主人様への赤い糸は切れないわぁあ!! それに、奥義と言える部分は観察眼なのよぉぉぉ!!」
颯馬「どういう意味だ?」
貂蝉「遣い手の身体の中で、重要器官を全部見抜き、そこを外さなければならないの! でないと……ただの自殺になっちゃうからなのよぉん!」
颯馬「じゃあ……無理……」
貂蝉「大丈夫! わ☆た☆し☆が……見て確かめて上げるぅぅ! はいはーい、上着を脱いでぇん! 裸じゃないと確認できないわぁぁん!!」
颯馬「お、お手柔らかに─────!!」
◆◇◆
【 颯馬の預けた秘策 の件 】
〖 司州 河南尹 鶏洛山砦付近 にて 〗
光秀「…………と、こんな技を利用した秘策だったんです!」
鹿介「ちなみに──────存じている方は?」
光秀「提案者の颯馬と教授した貂蝉は別として、愛紗、私、凪、信廉殿の六人ですよ! 先に申し上げますが、本来……私達にも秘密だったんです。 それが……その……ちょっと、私が慌ててしまいまして………」
凪「凄かったです。 天城様が弁明しているところを平手打ちで……」
光秀「や、止めて下さい!! あ、あれは勘違いでぇ!!」
小太郎「…………勘違いで颯馬様を叩き、秘密を漏らすように強欲したんですかぁ!! 幾ら正妻と言えど、やって良い事と悪い事があるが……!?」
鹿介「暴力を振るうのは…私も納得いきません! しかし、事情を知っている筈の愛紗が……何故これ程取り乱すのです? 貴女も武で生きていた武人だでしょう! 人を斬る行為に、これ程まで狂乱する筈が!?」
愛紗「わ、私も刺した後……演技をしようと思いましたが……今まで味わったことが無い身体の感触に戸惑い、何故か心が苦しくなって………面目次第もありません…………」
その場の全員が思う。
『早く返さないと……また一人『恋する乙女』が増える。 これ以上は駄目、絶対駄目!!』
??「成る程───そんな事でしたか!」
全員が……声をした所を注目すると……于吉と傀儡兵数千人が立っていた。
★☆☆
鹿介「某達が話をしていても、決して警戒を怠った事は無いのに……!」
于吉「私の妖術の前には無意味ですよ! 遺体を回収しようかと思えば……まんまと騙されました。 ですが、この人数で、そちらの人数で対応できますか? まぁ、対応されては困るのですが……。 私も結構忙しい男でして!」
光秀「何度見ても不快な顔です! 私達が颯馬を見捨て逃げると思うのですか? 私達は……少なくとも私は、颯馬を残して逃走するなどしません!」
小太郎「ちょっと! そこでどうして貴女ばかり強調するんですか! わ、私も残ります! 颯馬様のお嫁さんである私が、夫を残して逃げる尻軽娘だなんて……思われたくありません!!」
凪「私も天城様には身命を捧げています! そこで外されるのは……非常に『異議アリ』と申し上げます!!」
鹿介「某もそうです! 勝手に外さないで下さい! でも、愛紗殿は逃げて下さいね! 貴女は部外者! 今から逃げれば……北郷殿や曹操軍の皆さんと合流できます。 皆さんも、帰りを待っていますから!!」
愛紗「いえっ! この場所で退くなどしたら……皆に何を言われるか!! 緊急存亡の時、私も最後まで踏みとどまります!」
于吉は口を三日月の形に変えて……嗤う。
于吉「………誰も逃がしません。 天城颯馬が生きているのは、ここに居る全員知っているのですから! まぁ、一人居ませんが……ここに居なければ問題などありません!! 合流される前に倒せば……それでいいだけですよ!」
『……………………!』
颯馬を囲み、将達が円陣を組む! 誰一人も……天城颯馬の為に死を覚悟を決めた! 颯馬は、ふらつきながら起き上がろうとするが……光秀に制され寝たまま。 声も出せる状態でなく……衰弱も激しい!
まさしく……絶対絶命の危機だった!!!
于吉「さて! それでは───やぁ!!」
『ちょぉぉおとおぉぉ───待つでぇ御座るよぉぉぉ!!!』
于吉が背後の傀儡兵に命令を与えようとした時、鶏洛山の砦から……大音声が挙がった!!
★☆☆
鶏洛山の砦から、一人の将が飛び出した!
忠勝「本多平八郎忠勝! 只今───推参!!! でやぁ!!」
傀儡兵「──────!」
忽ち(たちまち)、傀儡兵の中に飛び入り暴れ廻る!!
ーーー
于吉は………信じられないような顔をしている!
于吉「な、なんですかぁ!! そこも私達が占拠した場所です! 万が一に備え二万の傀儡兵を出現させて守備しておいたのに!!!」
義輝達が出て行った後、于吉は砦を占拠した。 また、逃げて籠城されても困る。 新たな傀儡兵を呼び出し、守備につかせたのだ。
華雄「すまんな………。 お前の野望を阻ませて貰う為だ! 私達が背後の山背から攻め込み、一人残らず討ち取った!!」
于吉「あ、あれだけの兵を────────!?」
稟「そう何回も……私達を出し抜いて貰っては、沽券に関わります!」
風「…………………ジィ~。 松永さんは居ないようなのですねー!」
鶏洛山砦から……華雄、稟、風の三人が数万の兵を引き連れ現れる!!
于吉「そんな事はありません! 洛陽には兵士は留守部隊しかいない! 予備兵など居るわけが無い!! わ、私が何回も確認したです!! 間違いなどない!!」
于吉は、水晶球を使い何度も確認していた。 敵の兵力の数値を!!
失敗すれば、此方の予定が狂うのだ。 だから……執拗に何度も何度も!
風「にゅふふふ! ですが……居るんですよね~?」
風はドヤ顔で背をそり返る。
稟「何進大将軍や陛下の嗜好品を売りさばいて金に換え、その金で傭兵を雇ったんです! その数……約三万!!」
華雄は、金剛爆斧を────于吉に向けて言い放った!!
華雄「そいつ等を引き連れて、戦場に来てみれば……この有り様! だから、お前達の見えない場所から攻め込んだって訳だ!! いい加減、観念するんだな!」
だが、于吉に余裕があった。
自分達の兵力は、洛陽軍より遥かに多いと!!
于吉「………観念? 馬鹿な事を! 私達の方が、まだ兵力数は上なんですよ? 総勢百三十万の軍勢に対して………たかだか三十万少しに三万の援兵! この差を────どう埋めるのですか!?」
しかし、稟達には不安は無い! 既に策は発動している!!!
稟「────聞こえませんか? 北側から人馬の進撃音が!」
風「南から聞こえませんかね~! 勇猛な兵士さん達の怒声がー!」
微かに聞こえる『異質な音』に、于吉の顔が青ざめた!!!
于吉「──────ま、まさかぁ!」
華雄「我々の援軍だ! 第一陣、六十万の援軍がな!」
于吉「そんなぁ─────馬鹿なぁぁぁ!?」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
これが………颯馬の秘策となります。
よくあるパターンですけどね。
皆様の予想は……どうでしたでしょうか?
明日から忙しくなる為、急遽……書き上げ投稿致します。
話は……もう少し続きますので、次回も宜しくお願いします。
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義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
10/20 果心の会話や左校の会話を修正しました。