No.730436 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-10-16 16:39:57 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1670 閲覧ユーザー数:1506 |
挨拶回りをしている途中、リィンは酒場で休憩しているトヴァルを見つけて話しかけた。
~温泉郷ユミル~
「とにかく、お前さん達を無事に助け出せてよかったよ。お嬢さんや皇女殿下もずいぶん心配していたしな。」
「ええ……本当に助かりました。まさか、あんな場所まで助けに来てもらえるなんて……さすがは遊撃士、ですね。」
「……ああ、それなんだが。実はお前さん達の場所は俺が突き止めたんじゃなくてな。」
トヴァルはリィンを見つけるまでの経緯を思い出すかのように目を閉じて考え込んでいた。
「と、いうと……?」
「一昨日、俺のARCUS宛てにいきなり通信があったんだ。一方的にお前さんとあの竜のお嬢さんのいる場所をこと細かく教えてくれて、そのまま切れちまってな。念のため調べに行ってみたら案の定、お前さん達がいたわけだ。」
「それは……かなり気になりますね。正体不明の通信……いったい何者なんでしょう?」
自分達の居場所を知っていた人物が正体不明である事にリィンは真剣な表情でまだ見ぬ人物を警戒していた。
「見当もつかないな……聞き覚えのない声だったし。いや、どこかで聞いたことがあったような、なかったような……まあ、こっちのほうはこれ以上考えても仕方ないか。今は、まさに起こってるエレボニアの内戦の方が問題だろう。」
「……ええ、そうですね。トヴァルさんたち”遊撃士協会”の皆さんはどう動いているんですか?」
「俺達も、俺達なりに色々と動いてはいたんだが。今じゃ帝国ギルドも本格的に分断されてる状態でな。せっかく復活した帝都方面のギルドからも情報が入って来ねぇんだ。サラのやつも含めて、みんな無事だといいんだが……」
「……やっぱり、内戦の状況はかなり深刻みたいですね。」
エレボニア帝国内の状況が非常に深刻である事を改めて知ったリィンは重々しい様子を纏った。
「ああ……一般市民も巻き込まれているようだしな。まあ、唯一の救いはメンフィル帝国領に避難して来た戦災者達をメンフィル帝国が受け入れている事だな。戦況としては、貴族連合が完全に主導権を握っているが……正規軍の方も、一部では激しく抵抗を続けてるらしい。」
「そうですか……」
「それと、ちょとばかりキナ臭い情報も入って来てる。幾つかの猟兵団(イェーガー)や、”身喰らう蛇”の連中が各地で動き始めているらしい。」
トヴァルの話を聞いたリィンは”結社”に所属している人物―――”怪盗紳士”ブルブランと”蒼の深淵”クロチルダを思い出した。
「猟兵団に”身喰らう蛇”―――例の秘密結社ですか。」
「ああ、猟兵団については元々貴族派が運用していたがより大規模に雇い入れたらしい。”結社”の方は、どうせまた色々と引っ掻きまわすつもりなんだろう。どうやらクロスベル方面もかなり深刻な状況みたいだし……ふう、心配事が多すぎて胃に穴が開きそうになるぜ。」
「……………………」
「っと、悪い。余計な心配をさせちまった。とにかく心と身体を休めるのを第一に考えるといい。この先、お前さん自身がどうするかを見極めるためにも。」
「トヴァルさん……本当に色々とありがとうございます。」
「なに、人生の先輩からのささやかなアドバイスってやつさ。そうだ、せっかくだから温泉にでも行って来たらどうだ?”鳳翼館”だったか……ゆっくりつかれば、身体も頭も芯からほぐれるんじゃないか?」
「はは、そうですね…………」
その後郷を歩き回っていると足湯の付近にいるエリスとセリーヌに気付いて二人にエリス達に近づいた。
「エリス、セリーヌと一緒にいたのか。」
「ええ、外は冷えますから温かいミルクをご馳走しようかと。」
「ふう、お構いなくって言ってるんだけどね。アタシはここの湯気に当たってるだけで十分だわ。」
エリスの話を聞いたセリーヌは呆れた表情で答えた。
「そういうわけには。なにせ、兄様を救って頂いたご恩がある方でもありますし。」
「救って頂いた……?(そういうことになっているとは初耳だな。)」
エリスの言葉に首を傾げたリィンはトリスタでのヴァリマール撤退の事である事を察し、ジト目でセリーヌに視線を向け
(べ、別にアタシが言ったんじゃないわよ?なんだか勝手にそう受け取ってるみたいで。)
視線を向けられたセリーヌは慌てた様子で小声で答えた。
「ええと……兄様?どうかなさいましたか?」
「いや、なんでもないさ。」
「……でもホント、恩人とか言うのはやめてちょうだい。どっちかっていうと、アンタには借りもあるワケだし。」
「借り……?」
セリーヌが言った言葉が気になったエリスは不思議そうな表情でセリーヌに視線を向けた。
「あっと……何でもないわ。イイ感じにぬるめであるし、ありがたくご馳走になるわね~。」
「???」
「………………」
セリーヌの様子にエリスが首を傾げている中、何かに気付いたリィンはセリーヌに視線を向けて小声で尋ねた。
(そういえば、前にエリスが旧校舎に入り込んだ時に猫を追いかけていたらしいが……まさか…………)
(べ、別に危害を加えようとして連れ込んだ訳じゃないわよ?アンタが”試しの扉”に中途半端に反応していたからじれったくなったというか……)
(あのなぁ……!)
(へー……ついに本音が聞けたわねー…………)
(ふふふ、どうやら改めて”躾ける”必要がありそうですね……)
(……リィン様達が怒っている理由は判りませんが、さすがに自分の目的の為にエリスさんを利用するのはどうかと思うのですが……)
(……そうね。)
リィンがセリーヌを睨んでいる中、ベルフェゴールは顔に青筋を立てて笑顔でサディスティックな笑みを浮かべているリザイラと共にセリーヌを見つめ、眉を顰めているメサイアの念話にアイドスは静かに頷いた。
(あ、あのガーディアンは本来、関係ない人間は襲わないんだって!その証拠に、あの子を前にしても微動だにしてなかったでしょ?エマにも散々怒られた上、アンタを溺愛している魔王達によって酷い目に合された事に加えて脅迫までされたし、悪かったとは思ってるわよ……)
(くっ、だからって……)
旧校舎での出来事を思い出したリィンが唇を噛みしめている中、リィンの様子に気付いたエリスは不思議そうな表情でリィンに視線を向けた。
「えっと……?とにかく私、セリーヌさんには本当に感謝しているんです。郷にいらっしゃる間はお世話させていただきますから何でもおっしゃってくださいね?」
「い、いや~……ホントお構いなくでいいから…………それと。何と言うか、悪かったわね。」
「?はあ……?」
(まあ、一応反省している事に加えてベルフェゴール達も何かやったみたいだから、勘弁しておくか。それにしても……凄いなうちの妹は……それに比べて……)
そして住民への挨拶回りを再会したリィンは教会の礼拝堂で祈りを奉げているアルフィン皇女を見つけ、近づいた。
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第306話