No.729943

戦国†恋姫 の続きを妄想してみた。その2

一人でも需要さえあれば、それで満足。
今はこれで精一杯ですが、一人でも多くのひとに楽しんでいただけたらうれしく思います。
というわけで、さっそく続きを書いてみました。
皆さまからのアドバイスを心よりお待ちしております。

2014-10-13 23:54:04 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2061   閲覧ユーザー数:1853

 剣丞はただただ走り続けた。大通りにある一発屋京支店まで距離はある。だが、関係ない。今の剣丞にとって大切なのは、己の命ではなく愛する者。だから、彼は走り続ける。

「はぁ…はぁ!はぁはぁ…っう!!待ってろ…おきよ!!!」

 剣丞は息が切れても、足を止めなかった。全てを捨ててきた男は、唯一手に入れた安らぎを守るためにただ走った。何時か、エーリカに言われた…過酷な運命を背負っていると。だが、そんなことは百も承知だ。愛する妻たちと離縁させられ、義理の娘を人質に取られ、この町で腐っていた俺を彼女は救ってくれた。そんな彼女を失うわけにはいかない。今度こそ…今度こそ

「俺が…守る」

 剣丞が目的の場所にたどり着いたときには、松平幕府の兵たちは回収した税を荷台に乗せ、暴れまわっていた。煌びやかな服装をした集団が、村人たちを殴り、蹴り、剣で脅し金を、米を、女を…奪っていく。そんな地獄のような光景だった。

「おきよ…おきよちゃんは?」

 剣丞は必死に周りを見渡した。だが、彼女の姿は発見できない。そんな時だった。

「いやぁああ!!!離してぇ!!剣丞ぇ~!剣丞!!!」

 引き裂くような絶叫がこだまする。それは、聞き間違えるはずがない。彼女の声だ。

「おきよちゃん」

 剣丞は声のした方へ走っていく。そこにはおきよを羽交い絞めにしている武将の姿があった。

「おらぁ!いい加減に大人しくしやがれ!」

「いや!いやぁ!離して!!」

「お前は松平さまが作る江戸城下の遊郭で遊女になってもらう。俺達松平の優秀な子孫を残すための道具となれるのだ、ありがたく思え。」

 その言葉を聞いたおきよは顔を青くした。遊女…にされる。そうなれば、体を穢されて、子を…。そうなっては…

「剣丞に…愛してももらえない…。い、いやぁ!!そんなのいやぁ!剣丞以外の子どもなんてお断りよ。」

 暴れるおきよを一人の武士が頬を張る

「きゃぁ」

「大人しくしろ!運命を受け入れるんだな。この世界は俺達松平衆のものだ!貴様ら愚民どもはただただ黙って管理されてりゃあいいんだよ」

 おきよは涙をボロボロと流しながら武士をにらみつける。

「おお…怖い怖い。」「「「ぎゃははははっはは」」」

 大笑いする松平幕府軍の兵士たち。そんな彼らをただ黙って見つめるしかない人々。これが、今の世の中だった。

「待て!その子を離せ」

 その時、剣丞が彼らの前に飛び出した。

「なにもんだ、ぎゃぁああ」

 剣丞は剣を抜き去り、そのままの勢いでおきよを殴った武士を斬り倒し、あっけにとられた武将から隙をついておきよを取り返した。そして、そのまま武将の右腕を斬り飛ばす。

「ぎゃぁあああ」

 剣丞はおきよの手を引き、彼らから離脱する。彼らの間合いの外に来ると、剣丞はおきよの手を離し、背中に庇いながら剣を松平軍に向けた。

「剣…丞。剣丞ぇ」

 おきよは剣丞の背中にすがりつく。剣丞もおきよの手を左手でそっと握る。剣丞は慈愛に満ちた声でおきよを気遣う。おきよも緊張の糸が切れたのか、剣丞を力いっぱい抱きしめた。

「ごめんね。遅くなった。おきよちゃん。少し、離れていてくれ。どうやら、このまま帰してくれそうにない。」 

 剣丞の声に気がついた女性がおきよに声をかけ、そっと剣丞から離す。だが、おきよの右手は剣丞から離れない。剣丞が振り向くと、彼女は大粒の涙を流して、死なないでっとつぶやいた。こくりと頷いた剣丞からゆっくりと離れていく。おきよが安全な所へ行ったのを確認すると、剣丞は改めて殺気を松平軍へと向けた。 

「お前ら…覚悟はいいな。」

 剣を構えながら近づいていく。だが、彼らの顔からは余裕が見て取られた。頭がやられたからと言って、彼らは天下を取った者の軍であり、さらに相手は一人という事実が心を増長させていた。

「「「「ぎゃははっははは」」」」「馬鹿じゃのぉ!たった一人でワシら5人と戦うつもりか!?」

 剣丞は音もたてず、一人に近づき斬り伏せる。ぎゃっという断末魔をたてて、男は倒れた。そこで、ようやく彼らは悟った。この男は武士…それも、前大戦の生き残りだと。

「やっちまえぇ!」

 武士の一人が掛け声をかけ、一気に襲いかかってきた。だが、剣丞はあわてることなく、間合いを見切りながら一人の武士に狙いを定め、一気に間合いの中に飛び込んだ。そして、「チェストぉおお!!」乾坤一擲…斬り倒した。

「さあ、あと三人だ!」

 さすがに歩が悪いと悟った松平軍は一旦引くため、剣丞めがけて石を投げつける。鞘で軽くたたき落とすが、そのすきに彼らは逃げ始めた。

「覚えていやがれ!この借りは、ぎゃぁああ」

 その男の言葉は最後まで続かなかった。男は、背後から一刀両断に斬られていた。

「な!?」「敵前逃亡は…反逆…とみなす。」

 男を斬った影は、ゆっくりと剣丞に振り返る。そこにいたのは…

「…ご主人様」「お前は…小波!」

 自分の妻の一人、服部小波であった。小波はそのまま、ゆっくりと剣丞に近づき…抱きついてきた。

「小波…」

「ご主人様…。」

ドスン…

「ぐぅ…」

突如、剣丞の腹部に痛みが走った。痛みどころではない。激痛と言えるものだった。ゆっくりと、見下ろすとそこには無表情で自分に刃をつきたてる小波がいた。

「こ…なみ?」

「さようなら…新田剣丞。我が、主…松平葵様の命により…ここで死ね」

 彼女のものとは思えない…冷たい言葉とともに、刃が引き抜かれ、剣丞はゆっくりと倒れこんだ。

「こ…な…み…。なん…で…」

 おきよは茫然とその様子を見ていた。だが、ゆっくりと彼の体から出ていくものを見るうちに、かれが刺されたということに気がついた。慌てて剣丞のもとに駆け寄り、抱き起こすも剣丞の息は絶え絶えだった。

「剣丞!剣丞ぇ!!しっかりして!剣丞ぇ」

 愛おしい人の名を叫ぶおきよ…だが、それも空しく剣介の意識は薄れていく。薄れいく意識の中…剣丞の頭にはこれまでのことが映像のように流れ込んだ。ここで死ぬのが、運命なのか?運命には逆らえないのか?いや…違う。彼は、答えを知っている。運命なんて知ったことではない。誰かにそれを決まられるなんて以ての外だ。運命は己の手で変えられるもの。それはかつて、伯父から教わったことだ。人誑し、節操無、そうやって馬鹿にし続けた伯父は…いつも笑っていた。その笑顔には時々、哀しみが浮かんおり、その度に伯父は剣丞にこう語りかけた。

「いいか、剣丞。世界にはどうしてもつらいこと、苦しいことが転がっている。人生もそうだ。俺の手から零れ落ちたものなんて多すぎて数えられん。ん?また、あのホラ話かって?まぁ、聞けよ。いいはなしだからさぁ?えっと、どこまで話したっけ?えっ…あぁそうだったな。零れ落ちる度に、俺は心を殺した。だが、それも結局限界に来た。俺の心は壊れかけたんだ。だが、そんなときに支えてくれたのはや華琳や桃香、雪蓮に蓮華…そう奥さん達さ。彼女らに支えられ、俺は戦場を生き抜けた。守りたいものを守るために戦えたんだ。剣丞よ…これだけは覚えておけ、お前が何時か、全てを失ったと思ったとしても、それは勘違いだ。人間、一度手に入れたものは決して失うことはない。この世から失せても、それは思い出や絆に昇華してその人を支えてくれる。この世に残っているものならば、必ずその縁はつながっていく。俺が長い闘いの中で手に入れた世界の真実ってのはそれくらいだ。ん?どした。聞き飽きただぁ?あはははは!娘たちには好評かなんだがな!えっ?俺の娘?あぁ、そうだな。何時かあわせてやろう。正史の意思が…外史がお前を必ずあの子たちのもとへと導く。そんときは、俺の秘密を教えてやるよ。」

 伯父の教えを聞き流すことはできなかった。彼の言葉の一つひとつには決して聞き逃してはならないという重みがあった。今なら分かる。伯父は…あの人は、偉大な剣士だったんだ。誰かを守るために戦う、認められない運命に歯向かう、そんなことを平気でやってのける偉大な剣士だったんだ。

「俺も…俺も…守りたい。俺の、大切なものを。」

 だが、彼の意識はさらに霞んでいく。自分の名を叫ぶおきよの声が聞こえる中で、剣丞の脳裏に伯父の言葉が蘇る。あれは、いつのことだったか。そう、あれは…伯父と剣道場で鍛錬をした時だ。伯父にボコボコにやられ、倒れ伏した剣丞にこう告げた。

「なぁ…剣丞。運命とは、河の流れとは違うものだ。運命とは、これすなわち俺達を形作る粒、一粒一粒といったところだ。己が宿命を運命とするのならば、運命とは己の生きた道そのもの。誰に命じられたわけでなく…な。では、お前の運命とは何だと思う?」

「俺の運命。運命?」「俺達、北郷に連なる者の宿命。それは守ること…だ。」

「どういうこと?伯父さん」

「ははは!まぁ、大人になれば分かる。大丈夫だよ。」

 そういいながら、伯父は剣丞の頭をガシガシと撫で、今日の稽古はここまでと告げた。

「運命とは…俺達を形作る粒子一粒一粒…。人を守りたいと思う心…それが集まって…俺になる。俺は、俺は…守るもの。」

 だが、この体たらくでは…。

「良くその答えにたどり着いた。剣丞。この場だけは、俺が戦おう。だから、少し休め。」

 何故だか分からないが、冥府から引きずり出す声だと直感で解った。あぁ…生きている。心底安心できるその声に包まれ、剣丞の意識は消失した。

 

つづく?

あとがき

みてくださり、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。

皆さまからのリクエストやご感想をお待ちしております。


 
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