「「エーリカぁああああああああ!!!!!!!」」
燃え盛る本能寺の中、一組の男女の叫び声がこだまする。剣を一人の少女に向け、走っていく。少女はそれを受け入れるように両手を広げて微笑みを浮かべている。
「剣丞殿…久遠様…さぁ、終わらせましょう」
少女の名は、ルイス・エーリカ・フロイス。自身を外史から解放するために、日ノ本の国を混乱に陥れた哀しい女。狂気の果て、滅びの運命を受け入れた者。
あの刃を受け入れれば、この世界から解き放たれる…解放される。最後の最後であの少年に救われるとは…運命とは皮肉なもの。少女は利用し続けた少年の顔をじっと見つめる。運命のまま出会い、運命のままともに過ごし、運命を捻じ曲げて自分を救ってくれようとしている。
もはや、救いがないのは彼のはずなのに…どうして、こうも…
「愛おしいの…でしょうか…」
消え入るような声でつぶやくと同時に、少女の胸に剣が突き立てられた。
「(剣丞殿…いずれ、どこかの外史で…。
そのときは、この想いを…)」
彼女意識は光の中に消えていった。
そして、時は少し流れ。連合軍が逆臣明智を討ってから1年の歳月が流れた。時代は穏やかさを取り戻し、人々の心には笑顔が戻った。
あの時までは…
時代の中で一人じっと潜伏し、天下を狙う少女が動き始めた。松平軍大将、松平葵は京都の公家と通じ、足利幕府から政権を謀略の果てに奪取。足利幕府将軍足利一葉姉妹は良人である剣丞の元にいた為、事なきを得たが、京に残されていた足利幕府の臣や一族は松平により捕らえられ、都より追放された。
松平葵は再建途中の京都を容赦なく焼き払い、江戸へと遷都した。自身を新皇と名乗り江戸幕府を新たに開く、各地の勢力を吸収。新田剣丞を国逆者として指定。その討伐を命じた。剣丞の妻たちも家族を人質にとられ、葵の命令を着飾る得なくなり、剣丞の討伐に乗り出した。
新田剣丞は妻の一人である織田久遠に離縁を告げ、一人国を出奔した。愛する人を巻き込まないために…
剣丞は早すぎる葵の行動に違和感を覚えた。彼女の背後に得体の知れない大きな影がついているのではないか…国を救った英雄から、一気に国逆者となった剣丞の行方は誰も知らない。剣丞が去って数ヵ月後、尾張は江戸幕府に降伏し、日ノ本の国の殆どは松平のものとなった。
それから半年後、物語の歯車は再び動き出す。剣丞は名を『田中与四郎』と名乗り、茶人として荒れ果てた京の都に潜伏していた。天性の人誑しである彼は、都の人々と仲良くなり京の一角に廃材を利用した小さな小屋を建ててもらい、一人で住んでいた。剣丞は鍋を火にかけながら、味噌汁を作っている。
「あ~ぁ~…なんで、こんなことになっちまったのかね?結菜の手料理が恋しいよ…。」
国に置いてきた妻の一人の名をつぶやきながら、つい愚痴をこぼす。鍋にお玉を入れ、適量をすくい取りおわんに移す。
「さて、できたっと…。いただきま~…」
お椀と雑穀米、自家製の漬物を机に置き、手を合わせたときだった。
「だんなぁ~利休のだんなぁ~!」
ドタバタと転げ込むように数人の大人と少年たちが扉を開けて入ってきた。
「おいおい…どうした?そんなに慌てて」
剣丞はお椀を置いて、彼らに近づいていく。
「利休の旦那!たいへんでさぁ~!幕府の野郎どもがぁ…」
「市場で…暴れてるんです!年貢を出せって!!」
剣丞は何!っとつぶやく
「馬鹿な!年貢はもう納めたじゃないか!?」
剣丞の言う通り、実は今年の年貢は幕府に殆どを取り上げられていた。荒れ果てた田畑を開墾し、一年がかりで育てた米の7割を取られているのだ。
「もう…あいつら無茶苦茶だぁ!!」
泣き始めた父親たちに代わり子供たちが剣丞のすそをつかみすがりつく。
「先生ぇ…先生は、元お侍様でしょ!あいつらをやっつけてよ!」
「先生は…先生は強いんでしょ!?弱いものの味方のお侍なんでしょ?」
「先生!利休先生!!!このままじゃ、父ちゃんたちが兵役に取られちまう!
助けてよ…先生ぇーーー!」
泣き叫ぶ子供たちの頭をなでながら、剣丞は思考する。
「(あいつらには恐らく俺のことは割れていない。だが、ここで暴れたら俺は死ぬ…俺はただの武士でしかない。久遠たちのような一騎当千のちからも…無い!どうすれば…どうすればいい!?どうすればいいんだ!一刀伯父さん!)」
そんな時、一人の男性が血相を変えて駆け込んできた。
「な、なんだぁ!?」
「あぁ!一発屋の親父さん!!」
彼は京都の一角に格安の食事どころを作るために来た一発屋の主人であった。剣丞とも面識があったが、剣丞の身を守るため彼のことは口外せずかばい続けてくれた恩人の一人だった。
「け、剣…いや、利休先生!お助けください!!!」
「親父さん。いったいどうされたんですか!?」
剣丞は慌てて子供たちとともに、親父さんに駆け寄った。
「む…すめ…が。娘の…おきよが…幕府の連中に…年貢の代わりに連れ去られたんです!!」
「何!?」
「おきよちゃんが!?」
「あいつらぁ~!慰み者にするつもりか!!!」
剣丞は頭が真っ白になった…この町で唯一、自分を癒してくれた娘…おきよちゃん。この町で再会したときも、変わらず接してくれた。全てを奪われた自分に、笑顔をくれた。この半年で急速に近づき、親公認の仲になった恋人。その彼女が…
「ふざけんな…葵。
俺から…なにもかもを…奪い取る…つもりか」
剣丞は家に上がり、押入れを開ける。その奥から取り出したのは一振りの剣と白く輝く服だった。それを無言で羽織り、剣を腰に挿す。
「…みなはここにいてくれ。俺が、おきよちゃんを取り返してくる!」
剣丞は草履ではなく、ブーツを履き、家から出て行った。
「「「「「先生(利休の旦那)!!」」」」」
「剣丞君…すまない。娘を…頼む!」
剣丞は頷き、市場のほうへ駆け出した。
その様子を家の影からじっと見守る男がいた。剣丞を見つめる男の瞳には、年を感じさせない強い意志が宿っていた。
「剣丞…お前は、再び修羅の道を自ら歩むのか…?かつての俺と同じ、終わりの見えない道を…。
それがお前の決めた道ならば、俺はそれを見守ろう。お前の師として…父として…」
剣丞はただただ走る。この一年半必死に鍛え続けたのは何のためか?
「(やらせない!これ以上…大切なものを、奪われてたまるか!!!)」
新田剣丞を…天の御遣いを新たな戦場に誘うために、歴史の歯車は動き始める。
あとがき
お久しぶりです。覚えている方はおられないでしょう…たぶん
本作品の剣丞の偽名である、田中与四郎とは千利休の本名?らしいです
このSSは急な思いつきで書いたものであり、連載化するかどうかはまだ分かりません。
また、久しぶりに文章を書いたものでなかなかうまくかけませんでした。
皆様からのアドバイスやコメントを心よりお待ちしております。
では、またいつかお会いしましょう。
よんでいただきありがとうございました。
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戦国恋姫、プレイし終わりました。
いまさらカヨ!っという突っ込みは甘んじて受けつつ…
お久しぶりです。または、はじめまして…