第43話 その時の妖精郷
アスナSide
「さて、キリトのことに関しては各自で考えておくことにして、まずは今後の対処と決戦に向けての準備ってところだな」
「イベントかクエストか、どちらかで展開されるにしても大規模戦闘になるのは間違いないからね。
アイテムの補充と改めての情報収集、対ボス戦や対キリトくん戦を想定した作戦も考えないといけないし…(ぶつぶつ)」
ハクヤ君が言うように幾らキリトくんが動いてくれているとは言っても、わたし達は自分達で出来ることをしないと。
資金は後々のことに残しつつもアイテムの補給は十分に行い、武器や防具などの調整、
どんなボスやMobが居るのかとか他にも可能な限りの情報収集も行って、
それらに対する作戦やフォーメーションを練っておかないと…。
それになにより、キリトくんという最強の頭脳兼戦力があちらに居る以上、生半可な作戦は通じないはず。
可能な限りプレイヤーを集めて各系統の指揮官に任せつつも大規模な連携を取っていくのが良いかもしれないわね。
「ダメね、副団長モードになってるわ。こうなると無理矢理戻すしかないわね、てい!」
「うっ、あれ?」
「集中し過ぎよ、アスナ。考えるのはいいけど、いまはみんなで考えましょう」
「あはは、そうでした~…」
考え事に集中していたらリズに頭を叩かれてそれが途切れた。
いけない、折角みんなが揃っているんだから彼女の言う通りみんなで話し合わないと。
「……アスナの様子から見るに基本方針は決まっているのだろう。まずはそれを聞かせてくれないか?」
「そうだね。まずは戦闘に向けてのアイテムなどの補充を行い、武器や防具の整備をリズとルナリオ君に、
矢と投擲アイテムの補充はシノのんとハジメ君、ティアさんにお願いします。
次のMobについては、
狼型のMobも基本的な戦闘方針に変更はなしです……ただ、神話の通りなら死者の軍勢、
アンデッドのMobも出現すると思いますから、そこは注意してください。
ボスに関しては神話の情報を参考にしますから、情報を纏めておきますね。
その情報を元に戦闘時の作戦を考えることもありますのでご理解ください。
それと、これが本題なんですけど……キリトくんの対策ってなにかありますか?」
ハジメ君に促されて考えていたことを話したけれど、肝心なキリトくんを抑える術を考えついていない。
果たしてどうしたものかなぁ…。
「いや、アスナちゃん。キリトに関しちゃどうするか決まってるだろ」
「どうするんですか?」
「
「「「「「「「「「「あ~」」」」」」」」」」
シャインさんの言ったことにみんな揃って納得。特に3番目の『一目散に逃げる』は必須事項だよね。
というわけでキリトくんへの対応はそれでOKとして、次は大規模戦闘対策かな。
そのことについて話そうと思った時、わたし達全員の前に3つのウインドウが同時に展開され、
1つのウインドウの下に2つのウインドウが並んでいる。
『グランド・クエスト[神々の黄昏]が発生しました。2つの勢力に別れて進行していきます。
クエスト締切は午前0時までとなり、それまでに選択されない場合はランダムでどちらかの勢力に配置されます。
クエストは翌日、午後12時より開始されます』
『クエスト[神々の黄昏・防衛戦]を受注しますか?[OK/NO]最高神オーディン達と共に邪神の軍勢の侵攻を阻止しましょう』
『クエスト[神々の黄昏・侵攻戦]を受注しますか?[OK/NO]邪神ロキ達と共に最高神の軍勢に立ち向かいましょう』
「ママ、これは…」
「うん。始まるってことだね…」
ウインドウを見つめることで室内が静まり返る。
「これを見てみんな解ると思うけど、前にキリトくんが予想したグランド・クエストっていう形で始まるみたいだね。
だけど、わたしはまず各種族の領主さんやギルドマスター達と会議をしようと思うの、どうかな?」
「良いと思うわ。相手が相手だし、可能な限り大きな勢力と手を組んだ方がいいもの」
「そうね。それなら『月夜の黒猫団』や『MTD』、旧『聖竜連合』や旧『血盟騎士団』のメンツに声を掛けるのも良いわね」
「俺もウチのギルドの奴らに声掛けておくぜ!」
シノのんが賛成してくれて、カノンさんとクラインさんも知り合いに声を掛けてくれると言ってくれた。
これなら色々なギルドに声が掛かっていくかもしれないね。
「あたしもテイマー仲間に聞いておきます」
「それじゃあ俺は商人仲間に聞いておこう」
「僕は音楽仲間に声を掛けるね」
「ならボクとリズさんは鍛冶師仲間っすね」
シリカちゃんは他のテイマーに、エギルさんは商人に、リンクちゃんは音楽の、
ルナリオ君とリズは鍛冶師の仲間に声を掛けてくれるみたい。
支援組も潤う可能性が高くなったから、早急に話し合いの場を用意しないといけない。
「わたしは各種族領主、ギルマスにメッセージを一斉送信します。
みんなも知り合いに声を掛けたり、アイテムや装備の準備をしてください」
「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」
わたし達は各々準備に取り掛かることにした。
わたしはまず9種族の領主に緊急会議を行いたいというメッセージを一斉に送信して全員から同意の返信があって、
場所はイグシティにある会館を使用することになった。
また、各ギルドに関してはSAO時代からの関連では『月夜の黒猫団』、『風林火山』、『
旧『聖竜連合』に旧『血盟騎士団』などのギルドの他、合計すれば200人以上の参加が見込まれる。
その大半がウチの学校の生徒というのは嬉しいことかもしれない。
さらにシリカちゃんのテイマー仲間、エギルさんの商人仲間、リンクちゃんの音楽仲間、
鍛冶師2人の鍛冶師仲間など、バックアップにも恵まれそうな感じになりつつある。
装備の調整はルナリオ君とリズがやってくれて、アイテム補充もみんなで分担して終えて、
神話のことをある程度知っているわたしとティアさん、リーファちゃんとシノのん、ヴァル君、
それにネットに直接アクセスすることの出来るユイちゃんを加えて、みんなに北欧神話の中でも重要な事柄を伝えた。
それに確認事項として『アルヴヘイム・オンライン』の現在の運営企業である『ユーミル』に問い合わせてみたけれど、
企業側から得る事が出来た回答は「企業が用意したクエストではないため、詳しくは解らない」であった。
それ以降は企業の方も連絡が殺到しているからか、連絡が取れなくなったのは仕方が無いかもしれない。
ただ、もう1つ分かった事、それはユーミル側もカーディナル・システムの『クエスト自動生成機能』の存在を知っているということ。
多分、レクトから委託されたあとでどこかのルートから知ったのかもしれない。
そしてほとんどの準備を終わらせ、現実世界でも夕食とか就寝の準備を終えてから、
わたしはユイちゃんとシャインさんとティアさんを連れてイグシティの会館へと赴いた。
――午後9時 アルヴヘイム『イグドラシル・シティ』会館
「みなさん、本日は急な会議への参加、ありがとうございます。
ギルド『アウトロード』サブマスターのアスナが会議の進行を務めさせていただきます」
まず行うことになった種族領主との会議。領主の護衛兼補佐として2名ずつの随員がされている以外は変わったことはない。
唯一あるとすれば、それはキリトくんではなくわたしが座に就いているくらいかもしれない。
「既にみなさんに通達した通り、今回の議題はグランド・クエストの『
このことでみなさんお察しいただけていると思いますが、わたし達がどちらの勢力に付くかになります」
「それで私達を自分達が付く勢力に取り込もうということだね?」
「ええ、そういうことです」
サクヤさんの単刀直入な問いかけに肯定する、こういうのはその意思を伝えるのが一番だものね。
問題はどのタイミングでカードを切るのか、そしてここには居ない彼について、なんだろうけど…。
「では我々の疑問にも答えてもらいたい………キリト君は何処だね?」
モーティマーさんが早速聞いてきた。やっぱり、それを聞いてくるよね……ま、問題ないのだけど…。
「キリトくんはロキの軍勢に加わりました。それに対し、彼を除くわたし達アウトロードはオーディンの軍勢に参加します。
どういうことか、お分かりいただけますよね?」
「【漆黒の覇王】1人に対し、【黒白の覇王妃】が【
【
そのほかの実力者達を率いる、というのか…」
「それはまた、いったい何があったワケ?」
モーティマーさんの護衛で来ていたユージーン将軍が驚きながら呟く中、
アリシャさんはいままでにないことだからか心配そうに聞いてきた。
「これといって何かがあったわけではないんですけど、キリトくんはやるべき事があってロキの軍勢に付いて、
わたし達はわたし達らしく在る為にオーディンの軍勢に付こうと思っているだけですから、
心配はご無用ですので安心してください。それに、彼はこういうことに限っては無駄なことはしない主義ですし」
「そうか。まぁキミ達がそれで良いと言うのなら私は気にしないでおこう」
「了解。こっちも気にしないでおくヨ」
サクヤさんとアリシャさんの言葉に他の領主さん方も頷いているから、この件はこれで大丈夫だね。
さて、あとはみなさんがこっちに付いてくれるかということだけど…。
「それでは本題として、みなさんのご決断をお聞かせいただけますか?」
昼頃にメッセージを送ったのは各種族で会議をしておいてもらうため。
夜のこの会議に向けてある程度の方針を決めておいてほしかったから。
だからこそ即決させないようにメッセージを送っておいた。ここに集まった9種族領主の決断はどうかな…?
「私、シルフの領主を務めるサクヤが宣言させていただく。シルフは義によってオーディンの軍勢に参加させてもらおう」
「ケットシー領主、アリシャ・ルーが宣言するネ。ケットシーも義によってオーディン軍に参加するヨ」
一番馴染みの深いサクヤさんとアリシャさんが進んで参加の意を表明してくれた。
「では、ウンディーネ領主であるアリアが宣言します。ウンディーネ、義によってオーディン勢力に加わらせていただきますね」
「プーカ領主であるアタシ、フェイトもプーカのオーディン側への参加を宣言します」
「ノームの領主のガイアースが宣言する。ノームもオーディン軍に参加させてもらうぞ」
続けてアリアさん、フェイトさん、ガイアースさんも
「サラマンダー領主を務めるモーティマーが宣言する。我らサラマンダーは義によってオーディン軍へ参加しよう。
だが、利によって数部隊をロキの軍勢に参加させることが決定している。それは理解していただく」
「インプ領主、クラウド。オーディンの軍勢に参加しよう。ただ、俺達も数部隊をロキ軍に参加させる。
こっちも利がある方が良い、そこのところは頼む」
「それは、あくまでもオーディン軍に付き、相手軍の利益も得るための処置ですよね?」
「どちらの軍勢でどのような結果になるか分からない以上、手は打っておきたいのでね」
「会議ではそっちに付くよう決まったけど、俺は領主だから念の為にな」
モーティマーさんとクラウドさんもこちらへ付くことは表明してくれたけど、ロキの方にも部隊が付かせるなんて…。
でも、判断としては間違ってないし、保険を掛けておくのも大切だからね、まぁ納得かな。
「レプラコーン領主のコテツじゃ。
ワシらレプラコーンは勢力こそオーディン側に付かせてもらうが、商売に関してのみ話は別にさせてもらう。
両軍どちらに対しても装備のメンテナンスやアイテムの売買は行うぞ」
「はい。それに関しては理解していますので、異を唱えることはしません」
コテツさんの宣言は勢力こそこっちであるけれど、
鍛冶師や細工師の多いレプラコーンの商売人としての実務に支障をきたしたくはないということは重要なのはわかる。
SAOの時で支援組の大変さと大切さは学んだもの。あとはスプリガンだけだけど…。
「スプリガン領主、グランディだ。オレ達スプリガンは………キリトへの恩義によって、ロキの軍勢に付かせてもらうぜ」
しまった! まさかキリトくんへの恩からだなんて……ううん、グランディさんの表情を見ればわかる、
彼はキリトくんから要請を受けたのかもしれない。
「そういうわけで、オレはアンタの旦那を助けるから、安心しな。
まぁオレとしては面白そうな夫婦喧嘩になりそうだからってのもあるけど」
「「「「「「「「そうなのか?・そうなんですか?・そうなのかい?」」」」」」」」
「違います! 夫婦喧嘩なんかじゃありません!」
「知っているさ。キリトからそう言えば場が和むと言われたからな、本当にいい感じに解れたみたいだが」
こ、この人は、というかキリトくんてば、直接会って話していたのね…。
そんなことを話すくらいなら、もう少しわたし達に詳しいことを話してくれてもいいのに…。
「オレ達が敵対すると決まった以上、ここに留まるのは良くないから撤退させてもらうぜ。
ま、お互いに頑張ろうや……じゃあな」
そういうとグランディさんは護衛の人達を連れて帰っていっちゃった。
キリトくんのことでもう少し聞きたいことがあったけど、仕方が無いか…。
「それでは、この場でウインドウのOKボタンを押してしまいましょう。その方がヘタな勘繰りも必要ありませんし」
異論無し、というように領主さん達が頷いた。
わたし達は立ち上がると閉じていたウインドウを開いて、[神々の黄昏・防衛線]のOKボタンを押した。
すると、わたし達のHPバーの隣に樹の刻印が入った
どうやらこれがオーディン軍の証みたいだね。
「これにて会議は終了となります。みなさんはこのあと、領地内のプレイヤーに布告すると思いますのでそちらはお願いします。
わたしはこれから他のギルドと対面してきますので。本日はありがとうございました」
こうして種族領主会議は終了した。
9つの種族の内、5種族が完全な参加、1種族が事情ありの参加、
2種族が敵勢力への部隊派遣での参加、そして1種族が敵勢力にいく結果になった。
でもわたしはこれもキリトくんの思惑通りなのかもしれないと、そう思った…。
種族領主との会議のあと、今度は大規模ギルドのギルマスとの会談も何度か行った。
『月夜の黒猫団』や『風林火山』、『MTD』は勿論、旧『聖竜連合』や旧『血盟騎士団』の元団員など、
『
あとはこのALOからプレイしている人達で領地に属さないレネゲイド、つまりソロプレイヤーやギルドへの呼びかけだ。
大規模な多種族合同のギルドも既に結果は出していて、全てがオーディン側に付くみたい。
物語的な視点で世界を守る正義の軍団の方が見栄えが良いというのが観衆の考えかな。
ただ、そこまで大きくないギルドは半々に別れる形になっていて、ソロプレイヤーも似たような感じかも。
とはいえ、大半のALOプレイヤーがオーディン側に付くのはありがたい。
あとは道具や装備の準備を整えて、明日の午後12時の開戦までに可能な限り話を詰めておくのがいいよね。
「「「「ただいま(です)…」」」」
「「「「「おかえり(なさい)~」」」」」
全ての会議や会談を終えたわたし達は自宅に帰りついて、既に帰っていたみんなが声を掛けて迎えてくれた。
それから疲れたままソファに深く座り込む。
「は~、疲れちゃった…」
「お疲れさまでした、ママ」
「ありがとう、ユイちゃん。シャインさんとティアさんもご同行ありがとうございました」
「おう。アスナちゃんもギルマス代行おつかれ」
「キリト君に負けないほど立派でしたよ」
「みんなお疲れさま。紅茶淹れてきたから飲んで一息吐いて、ユイちゃんにはジュースね」
ソファに深く座って話しをしていたらカノンさんが飲み物を淹れてくれて、わたし達はそれを飲んだ。
ふぅ、体力的には疲れなくても、精神的には疲れるから大変ね……紅茶は美味しくて癒されるけど。
「それで、会議とかはどうなったんですか?」
「9種族の内8種族はオーディン軍に付くことになったけど、1種族がロキ側に付くことになったわ、ちなみにスプリガンね」
「スプリガンが……もしかして、お兄ちゃんの手回しですか?」
「うん、多分そのはずだよ。一手やられちゃいました」
気になった様子のリーファちゃんの言う通りだと思うから、そう返しておいた。
実際、なんだか思うように進み過ぎているような気がするもの。
キリトくんが手回しをしているのか、それともしていないでこうなることが分かっているのか、難しいところだし…。
「大規模ギルドとかはどうなりましたか?」
「そっちもオーディン側だけど、中小規模のギルドやソロプレイヤーの半分はロキ軍に付くかもしれない。
そこら辺の情報はアルゴさんとか情報屋から買おうかなって思うの」
「それが手っ取り早いですね」
ヴァル君としても大きなギルドは警戒しておいた方が良いと考えてたみたいだから、これで少しは気が休まるかな。
明日からは本格的な戦いになるだろうし。
「それじゃ、楽な姿勢のまま聞いてくださいっす。
ボクとリズさんの伝手でソロで鍛冶師をやってる人とかはこっちに引き込めたっす。
戦闘も出来る人達なんで戦力としても十分なはずっすよ」
「まぁまぁな人数にはなってるから、安心しなさいな」
「商人仲間からも人手を借りれたからな、期待してくれていいぜ」
ルナリオ君とリズ、それにエギルさんからの報告。これで後方支援は大丈夫そうかな。
「レネゲイドの音楽仲間に声掛けたから、戦闘時での援護はバッチリだよ!」
「同じく、テイマーの人達にも声を掛けましたから、こっちも大丈夫です!」
リンクちゃんとシリカちゃんの報告は戦闘支援組だね、こっちも安心できそう。
「リズとルナリオが装備の調整はやってくれたから戦闘用意はバッチリだ」
「……回復用のポーションや結晶なども補充しておいた」
「矢に投擲アイテムの類もね」
ハクヤ君、ハジメ君とシノのんの準備報告も聞いて問題無し。
「ソロプレイヤーや中小規模ギルドへも全員で声掛けて出来る限りは協力を取り付けた。
『スリーピング・ナイツ』も参戦してくれるってさ」
「シウネー達が!?」
「そうだよ。それにアルゴさんも協力してくれることになってる」
クーハ君からは戦力報告を受けた、シウネー達やアルゴさんの協力まで得ることが出来たなんて、これは嬉しい誤算ね。
みんなからの報告は多分これで終わりのはず、そろそろ終わって良い頃かな。
「報告は以上かな?……分かりました、それでは今日は時間も時間なのでそろそろ解散にしましょう。
明日午後12時が決戦の開始ですが、可能な限り早めにダイブして最後の準備などを整えましょう。それでは、解散」
「「「「「「「「「「おつかれ(さまでした)」」」」」」」」」」
既に時刻は12時過ぎ、夏休みとはいえあまり時間を取らない方が良いからね。
リーファちゃんは部活が明日から休みだったし、クラインさんもだと思う。
それでも明日に備えて英気を養ってもらおう。
こうしてわたし達は解散してログアウトした。
アスナSide Out
明日奈Side
ログアウトしたわたしは自室で目が覚めた。
あのままALOでユイちゃんと一緒に眠っても良かったはずだけど、わたしもユイちゃんもそんな気にはなれなかった。
キリトくんが居ない、彼の声が聞けない、それがどうしてもわたしの心に影を落としたから。
どれほどの間、グランド・クエストが続くのかは分からない、
だからキリトくんとどれだけ接することが出来ないと考えると、どうしようもなく寂しいと思っちゃう…。
その時、携帯端末に通話が掛かってきた、相手は…!
「も、もしもし…?」
『夜遅くにごめん、いま大丈夫?』
「う、うん、大丈夫だよ、和人くん」
まさか、和人くんから掛かってくるなんて…。
「えっと、なにかあったのかな?」
『いや、特に用事はないんだけどさ……ただ…』
「ただ…?」
『明日奈の声が聞きたくて』
「ふぇっ…///」
か、和人くんが、こういうこと言うだなんて…/// ホントに、どうしちゃったんだろ…///?
『どうした、なんか声が上ずってるけど…』
「う、ううん、ちょっと驚いたの/// 和人くんが甘えてくるの、珍しいから…」
『あ~まぁ、そうだよな、うん……でもさ、明日奈にちゃんと甘えるって決めたし』
「そ、そっか、そうだよね、あははは…///」
これは、照れる、凄く照れるよ~///
目の前に彼が居るわけじゃないのに、顔が紅くなるのが抑えられない///
それにとにかく、嬉しいよ~///
「で、でも、いいの///? わたし達、今回は別の勢力だけど…」
『なんで? 違う所属だっていっても俺達が恋人同士で、婚約者で、夫婦であることに変わりはないだろ。
違う勢力だからって話しちゃいけないってことにはならないし』
「あっ……うん、そうだよね」
わたし、なにを思い違いしていたんだろう。
そうだよね、別れたどころか喧嘩すらしてないのに、話しちゃいけないって思いこむなんて…。
『明日奈、話しちゃいけないって思いこんでいたんじゃないのか?』
「えへへ、実はその通りです」
『やっぱりな。ま、それも可能性の内にあったから心も解しておこうかなと思ったんだよ』
「もぅ、ホントにキミには敵わないなぁ…///」
全部見透かされているような気がするけど、心地の良い見透かされ方だから良いかなって思える。
それからいつも通りに談笑するけど、もしも第三者が居れば愛を囁き合っているように見えるかも///
『厄介事への対処は既に済ませてあるから、明日奈達は気にしないでくれよ。
明日からの戦いを楽しみにしているから、俺を愉しませてくれよ』
「うん、頑張るからね。勿論、和人くんも頑張ってね……人手が必要な時は手を貸すから、その時には言ってね」
『ああ、なにかあった時は頼むよ』
もう話しも終わり、自然にそういう雰囲気になって彼の方からそう言ったからしっかりと答える。
ちゃんと話すことが出来たから、明日は戦える、そう思える。
『おやすみ、明日奈。大好きだよ』
「おやすみなさい、和人くん。わたしも大好きだよ///」
挨拶と愛の言葉を交わして、わたし達はどちらともなく端末の通話を切った。
「……~~~~~っ//////」
どうしよう、どうしよう、胸がドキドキするのが止まらない///! 本当に和人くんってば…。
「ずるいよぉ~…///」
そうして枕に顔を埋めていれば心地良い眠気が来て、瞼が重くなってそのまま意識が遠のいていった。
良い夢が、見られる、かも…。
明日奈Side Out
To be continued……
グランド・クエスト[神々の黄昏]
このクエストはオーディン率いる北欧神勢の防衛側、ロキ率いる邪神勢の侵攻側に別れて行われる。
防衛側は世界樹イグドラシルを防衛しながら敵勢力の全ボスモンスターを討伐することを目的とする。
侵攻側は世界樹イグドラシルへ侵攻してそれを倒すことを目的とする。
都市や街、宮殿などは防衛拠点として機能するが敵に奪われることもあるので注意すること。
また、全てのモンスターが世界樹を目指すわけではなく、都市や街や宮殿を目指して侵攻する場合もある。
防衛側は各防衛拠点を利用して世界樹の防衛を行うこと。
侵攻側は目標である世界樹へ向けて侵攻し、目標地点の制圧を行うこと。
あとがき
今回はあのあとアスナ達がどんな行動を取ったかという話になりました。
サクヤとアリシャ以外の領主はオリキャラです、モーティマーも名前だけでしたからね。
キリトと敵対することで色々と悩んでいるアスナでしたが、普通に接してきたキリトに吹っ切れました。
さて、次回からついに『神々の黄昏』が始まります、戦闘だらけになりますが頑張ります!
企画参加もここで打ち切らせていただきますね、みなさんのアバターも活躍させたいと思います。
それではまた・・・。
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第43話です。
今回までは黄昏に入る前段階になります、アスナ達が取る行動とは?
どうぞ・・・。