No.729198

超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス

さん

今回の話はどうして紅夜が狂ったのか簡単なお話です。
そして、日本一やガストのキャラが曖昧なので違和感あるかも……(後でmk2やらないと)

2014-10-10 22:32:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:546   閲覧ユーザー数:537

ーーーその男はずっと耐える道を選んだ。

 この世の全ての負を一身に受け止める事。そうすることで得られる平和。信頼している女神達が作り出す栄光が男にとって決して落ちる事がない太陽の如き光だったからだ。

だから歯を食い縛った。悪意が満ちる世界にただ一人、居座ってゲイムギョウ界から降り注いでくる負がモンスターとなっても殺戮し続ける事でこの世界がパンクしないように戦った。

 例え、腕が捥げても、足を喰われても、頭を角で貫かれようが。何度贓物が混じった血の反吐と吐いたか分からない幾度も感じた痛みで感覚が壊れているかもしれない。罪遺物と呼ばれた不老不死の体は本人の意思関係なく再生させる。まるで破滅へ導く様に男を戦場へ駆り立てる。

 

 その果ては地獄。人々の負を模ったモンスターを殺し、負に戻った物を吸収する。

 それはつまり、他人の記憶の闇を見る事であった。

 

 

                     『みんな死ねばいいのに』

 

 

 もし男が機械のような神であったのなら有象無象の声は届かないだろう。

 しかし、男は人であった。神でありながら人でもあった中途半端な存在であった。

 

 

           『どうして俺がこんな目に合うんだ!』

 

 

 故にその怨嗟を聞いてしまう。人であったからだ。自分がただの人間だと疑うことすらなかった時期があったからこそ、ただ困っている人たちを救おうと善良に働いていたからこそ、それを受け止めてしまう。

 

 

『死ね』

 

 

 誰もが心に巣食う闇。その怨念失念憎悪嫌悪殺意害意敵意妄想色欲暴食憤怒妄想怠惰傲慢強欲虚飾嫉妬といった負の念は地獄に落ちていき、その中途半端な男は流さずに見てしまう。そうした結果、一体どのようなことが起きるのだろうか。

 

 

「---あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁああぁぁぁぁああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 

 答えは明白。まるで激しい痛みを及ぼす毒がたっぷりと染み込まされた針の山を体中のありとあらゆる穴の中に入れられているようなこの世の者とは思えない地獄の拷問。相棒の龍による必死の呼びかけも虚しく男の記憶、感覚、経験に刻まれる。吐くより早く負は男の体に入り込み体の中で暴虐の限りを尽くす。

 正気や理性を一瞬で吹き飛ばす大質量の思念と目の前で吸い込み切れなかった負はモンスターとなって冥獄界に顕現し、目の前の男を噛み殺す為に牙を向きだす前にその牙もろとも砕かれる。何故なら目の前の男は狂ったからだ。口から汚物を漏らしながら、光の無い闇に輝くオッドアイは目の前に映る物に破壊の限りを尽くす。そうしなければ自身が本当にどうなってしまうか分からない。自分では抑えきれない制御できないその負の意志を少しでも解放する為に力の限り暴走する。

 

 

「---、……め…が…み……」

 

 

 狂気と殺戮の最後に男はただ一つの望みが生まれた。まだ足りないと、女神の存在が絶対であるために誰かが人間達を真の絶望に叩き落とす必要がある。その絶望が晴れたその未来に本当の女神の名の下に訪れる平和があると確信が生まれた。

 地獄の中で男は血涙を流しながら天を見つめる。闇の渦巻くその向こうにある筈の光を幻想しながら、世界の救済を叫ぶ、それこそが自分の生きている価値だと言わんばかりに、その狂いに狂った故に生まれた終末思想に相棒であるドラゴンは危機を感じ、ブラッディハードになることを封印した。同時に救いと滅ぼすが同じになってしまっているこの速すぎた相棒を誰でもいいから止めてくれ、そう切に願った。

 

 

 

 

 地獄を思い出し、目が覚めると蜘蛛の巣のように亀裂が走った地面の上だった。紅夜は直ぐにこの世界に来た目的とそこに至った過去に頭痛を覚えながら、ここに落したあの黒コートに怒りを滾らせながら這うように移動を開始した。

 

「俺には、まだ、やる、こと…が」

 

 微かに残る自我は既に諦めている。もう自分はあの時間には戻れないと結論を出している。

 誰かの為と働いて感謝され充実感に浸っていた毎日。彼女達と出会い世界を知り、その理不尽を変えたくて支配者を打ち倒して作り出した世界。

 その先に選んだ末が常識では見えない者が見える。この地に住まうモンスターの負が聞こえる。そんな選択が来たとしても、それは仕方がないことだと受け止めるしかない。なにより、そんなことはどうでもよかった何者か不明であるが、それを壊そうとする輩がいのが問題であった。

 冥獄の神は静かに燃やした自己意志は周囲のモンスターを分解させ吸収しながら進む。真面に立って歩けないだが、絶望の象徴を謳われるその悍ましく禍々しき名を持つ神は己の矛盾に傷つきながら進むしかない。

 

 何度壊れた事か、津波の様に押し寄せる大質量の思念は魂までを穢していく。

 吸収できない負はモンスターとなって顕現され、襲い掛かった。

 罪遺物という不死性を持つ肉体故に喰われても引き裂かれても砕かれても痛みと共に意識は覚醒される。

 通常では考えらない想像を絶する地獄の中で継ぎ接ぎだらけの魂は既に限界を迎えていた。崩壊しないのは最後の結ばれた糸に女神との温かな記憶が束ねられ最後の一線を踏み越えることはない。

 

 

 ただ、運命の相手コロシテクレルを求めて、生きた死体のように動きに力が入る。

 その表情は漸く訪れた光に溢れた未来を見つけた様に悦喜に満ち溢れて、瞳に涙が落ちる。

 

 鮮明に覚えている。

 お互いに戦い合っていた女神達が肩を並べ、共に満開の星空の下で共に未来を語り合った時を。

 黎明の果てのように決して届かず一瞬の瞬きのあの時間を場所は、どんな負にも吞まれず穢されず確かな形で記憶として残っている。最後の希望は弱弱しくも生気に満ち溢れて炎で闇を照らしている。

 

「……は、はは、待ってろ。絶対に、絶対に…」

 

 助けてやる殺してくれ。

 復讐者でも聖人にも取れるような深い呟き。

 闇を抜け、バーチャフォレストを出た。憎たらしい程の青空をそのオッドアイの瞳が映す。

 大陸を流動する負の流れが、ギョウカイ墓場を目指して川の様に流れる女神でも見えないそれを見つめ、表情を歪める負の声が一層激しく脳裏を叩く。

 

『紅夜……大丈夫?』

 

 相棒が心配そうな声で話しかけてくる。生気なく頷くと足と手を軽く動かす。

 問題はないと呟き立ち上がった。酷く喉が渇いて、フラフラと近くに合った湖に倒れ込む。

 冷たい水流に顔から突っ込み、息が出来ない。背中に背負っている機械剣紅曜日と二つの魔銃の重量もあって、徐々に光が遠くなっていく。口から泡を立てながら、態勢を整えようと体を動かそうとすると悲鳴が聞こえた。

 

「キャァァッァア!?困っているセンサーに特大反応がキター!と思ったら水死体!?」

 

 薄らと見えたのは胸のファスナーが空いたライダースーツを身に纏い赤いマフラーを首に巻いている誰か。不思議と負が聞こえずらい人物だった。躊躇なく湖に飛び込み、無意識に伸びていた腕を掴まれて強引に引っ張られる。細い腕から想像もつかない程に鍛えられた肉体から生み出される力は重量な紅夜を湖から脱出するには十分すぎる程だった。

 

「---ねぇ、生きてる!ねぇ!?」

 

 荒く吞み込んでしまった水を吐くと、近づく影。凹凸の無い体つきであるが男性のような気もしないそんな少女は紅夜の背中を見て目を開いた。先ほど、高い場所で突き落とされ地面に体を叩きつけた紅夜は一度潰れたトマトのようになっている。肉体の再生は完了しているが、鮮血を吸い込んだ黒いコートは先ほど水に浸かった事も合って、生々しい匂いを漏れ出している。

 

「ちょ!?これ血!?がすとー!!ちょっと来てぇぇ!!瀕死の重傷者一名ー!!!」

「叫ばなくても分かっているですの。がすとは医者じゃないですの」

 

 瞳だけを動かすと小動物を被ったような帽子が特徴的な幼い顔つきをした少女がこちらを見ている。周囲にお金の良い音を鳴っているのが幻覚として聞こえる。体を動かそうとすると、白い帯が解け、隠されていた物が姿を現した。

 

「そんなことどうでもいいから!この人、なんか……なにこれ包帯が外れ……!?!?」

「……日本一、これはなんですの?刺青にしては……生々しすぎるですの。あと趣味が悪すぎですの」

「そんなこと言っている場合じゃないよ!どうにかできないの!?」

「だからがすとは医者じゃないですの。がすとじゃお手上げですの」

 

 世界の呪いを見た二人は冷や汗を掻きながらそれを見つめた。見つめ返された。

肩がビクッと震えるが、直ぐに持ち直す。もし彼女達が一般市民だったのなら、それを見た瞬間発狂して逃げるだろう。それは負を抱える人が見れば見る程、悍ましい物へと映る。

 日本一と呼ばれた少女は紅夜の体を躊躇なく抱えると周囲を見渡す。森を抜けた向こうにプラネタワーが見えた。

 

「えっと……、確かあっちがプラネテューヌだったね。よし、これも正義のヒーローの務め、今すぐに病院に連れて行って上げるからね!!」

「………物凄い速さで走って行ったです。……報酬は後で請求してやるですの」

 

 抵抗する気力が抜け落ちている紅夜は疾風の如く駆け抜ける少女を見つめた。大丈夫だとか、もう心配ないとか叫んでいる。

 四年ぶりの人の温かみだと感じながら負の合唱の中で彼女だけが静かで心が安らぎ、四年ぶりに眠気に負け瞳を閉じた。


 
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