No.728772

『舞い踊る季節の中で』 第150話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 絶対的な力の差に、一刀は歯噛みする。
 それでも希望が無いわけじゃない。
 それはほんの僅かな希望。

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2014-10-08 20:00:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3843   閲覧ユーザー数:3039

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割編-

   第百伍拾話 ~逆刃刀に舞いし想いは不殺に非ず~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、初級医術

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

【最近の悩み】(蜀編)

 

「貴殿に何も話す事など(・・)ありません。

 どうか、今すぐ入って来た扉から、鍵をきちんとかけてお帰り下さい」

「……えーと、少しぐらい話を聞いてくれても」

「私は軟禁中である身。貴殿と話している所を誰かに見られては、劉璋様の身に危険が及ばないとは限りません。

 分かりませんか? 迷惑だと言っているのです」

「あははは……、ごもっとも」

 

 俺が部屋に入るなり驚いた顔をしたものの、俺が何かを離すよりも早く、俺の行動を封殺する。

 そう言えば、俺がハングライダーで空を飛んだ時も逸早く冷静に戻ったのも彼女だったよな。状況把握と判断の素早さに舌を巻くも、この素早さが戦の時に出なくて良かったと胸を撫で下ろす。

 それにしても、仕方ないとは言え、随分と嫌われたものだなぁ。まぁ彼女の事務的な態度からすると嫌うとか嫌わないとか言う事じゃないんだろうけどね。

 仕方ない、流石に其処まで言われたなら、ここは大人しく退散しておくべきか。俺としてはもともと事を荒立てるつもりがある訳でもなし。 あっ、そうだ。嫌われついでに一つだけおせっかいを。

 

「そうだ、その劉璋さんだけど、さっきこっそりと会って来たけど。一応、元気そうだったよ」

「……えっ?」

「半刻ほどだけど、なんやかんやと雑談できるくらいには、という意味でだけどね。

 やっぱり落ち込んでた。たくさんの人を泣かせちゃったってね。君の事も心配していた」

 

 まぁ、これくらいは独り言と言う事で。別に話したって言う程の事でもないしね。

 そう思いながら、外に誰もいない事を確認した上で部屋を出て、彼女の言うとおりきちんと扉に鍵をかけ直した時。

 

「……あ、ありがとうございます」

 

 小さいけど、確かにそう聞こえてくる。

 さっきのような事務的な口調でも、感情の籠らない固い声でもなく。

 なんと表現して良いのか分からない複雑な感情混じった声が俺の耳に確かに届く。

 うん良かった。そう素直に思える。彼女の今の状況を考えれば、複雑になるのは仕方ない。それでもその声の 中に、彼女の安堵する気持ちが伝わっているのを確かに感じる事が出来たから。

 

 「それにしても、またもや収穫(ゼロ)か……」

 

 このままじゃ、当ても無く街をうろつく羽目になりそうだし、どうしたもんだか。せめて一つ、二つは欲しいよな。

 心の中で溜息を吐きながら、広い城の廊下を歩いていると。欄干の柱の影に何かが落ちている事に気が付く。……ああ、きっと落として蹴飛ばすか、誰かとすれ違って避けた時にでも落としたんだな。運悪く木の枝が伸びているのも気が付きにくい原因なんだろうなと、枝と欄干の柱の影に手をのばすと。

 

「数字のタイトルとは変わってるなぁ」

 

 何かの政策や戦略の仮番号か何かかな? まぁいいや、後で桃香達にでも渡しておけば。 そう軽く考え、中身を確認もせずに手にして。他に誰かいないかなぁと人影や気配を頼りに長い廊下に足を向ける事にする。

 

 

 

 

 

 

次項より本編:

一刀視点:

 

ひゅっ

 

 空気を鋭く切り裂きながら突き出される戟を、敢えてギリギリで避わしざま、その戟の柄にそっと横から手を添えると共に外へと軽く押しだす。そこに先程地面から蹴り上げた縄が戟に絡み付くと同時に、突きから横へと動きが変化した戟が俺を襲いくる。

 ……が、それを間一髪で戟の下を潜るようにして避わしざま、檄に絡まった縄の先端を踏みつけてやる。

 分かっている。こんな事をしても意味などなさないことは。 幾ら呂布の持つ戟に絡ませた縄を足で踏みつけた所で、この世界の将達が持つ超人的な力の前では抗う事などできない。例え、これが足で踏むのではなく手でしっかりと持っていたとしても、平気で縄を持つ相手ごと戟を振り抜く事が出来る。

 それでも予想外に受けた力に、ほんの一瞬だけど呂布の戟が僅かに動き鈍らせる事が出来る。

 俺の力ではそれが精一杯。けれどそれで十分だ。その一瞬の分だけ、身体を更に呂布へとずらし込める。呂布の力が最も威力が失う呂布の真正面ともいえる彼女の攻撃圏内の更に内側へと。

 

とん。

 

 それは、あと数センチで鼻先が触れ合う程の距離。互いの呼吸が掛かるほどの距離で視線が交わされるも、それもほんの一瞬の出来事。既に呂布は踏み込まれた俺に対応すべく動いている。

 だけど、いくら超人的な力を持とうとも、筋肉や関節などの人体の構造に逆らった動きができるわけじゃない。鈍った戟をそのまま振り払おうと込められた余分な力が、更に呂布の動きのリズムを少しだけ狂わせる。

 

ぶおんっ!

とん。

 

 大気を引き裂くかのように振るわれる戟。

 でもその一撃は、本人も気づかないような些細なリズムの狂いが原因で、必要以上に込められた力みが生み出す髪の毛一筋ほどの隙を利用し、横から迫る檄を何とか体の外側へと踏み込みながら右手で上へと受け流す事が出来た。

 だけど、これでせっかく踏み込んだ呂布の懐から再び外へと出されてしまう。そしてそこは同時に呂布の攻撃が最も威力を発する攻撃圏内。此処では一歩間違えればどころか、数ミリ間違えるだけで致命傷を受けてしまう。試したくはないが、おそらく不用意に戟の先端に掠っただけでも骨が砕けるであろう呂布の攻撃の中で、俺が出来た事と言えば無理やり作り出した日用品の丘を利用して、呂布の攻撃を必死にしのぐ事だけ。

 何度も何度も懐に踏み込んでは、今みたいに外へと押しやられる。

 最初の一撃以降、有効打と言える攻撃など、何一つ当てることもできず。彼女の身体に触れることのできたのは、なんの力も入っていない、脅威にはならないと判断されたものだけ。

 それだけの圧倒的な強さを呂布は確かにもっている。目の前に立てば、一瞬でその強さは噂以上だと理解できるほどの力の持ち主だと。

 おそらく今の思春と霞と明命が総掛かりでも、勝てるどころか撃退されかねない。そこへ病み上がりの雪蓮が入った所でその結果はそう変わらない。だからこそ彼女の相手ができえるのは俺だけ。

 

ししゅっしゅっ。

かかっ。

 

 振り向きざま、牽制に投げ付けたのは扇子の中骨を少しだけ加工したもの。

 今のも弾かれたけど、竹で出来たそれは、物が物だけに大した殺傷力は無い。だけど投げ方一つで十分に相手を傷つける事が出来る。 近距離なら、心臓や内臓までには届かなくてもそれなりに深く刺す事は出来るし、皮膚や腱を裂くと言う事ならば十分に用を成せる。

 むろん、態々そんなものを使うのにはそれなりに理由がある。重い投擲用の獲物では持てても数本程度だし。重い分、無駄に力が入ってしまう。それでは呂布を相手に長期戦を仕掛けるなど不可能。これならば手に馴染んでいる分もあって鉄扇に隠して放つ事もできるし、服のあちこち隠し持っていても動きにさして支障が出ない。

 

ぶわっ。

 

 いったん距離が開いてしまった以上、呂布の攻撃県外へと距離を開けるため咄嗟に地面から拾い出し再び投げ付けたのは、テーブルクロスかタペストリらしい大きめの布。 回転を付けられた布は、飾り布の分、布の外側が重くなっている事も手伝って、まるで一枚の板かのように呂布に襲い掛かる。

 

ずざざっ

 

 それが一瞬にして、宙に浮いたまま四つへと切り裂かれる。

 破れさった布の向こうから覗く呂布の眼差しは、たしかに静かに俺に問いかる。

『……もう終わり?』と。……だろうな。さっきからこんな攻防の繰返しでは、声に出して言わないだけで、そう感じるのも無理はない。 だけど生憎と今は此れが俺の精一杯。これ以上の物を見せろと言っても、今は無理って言うもの。

 当り前と言えば当たり前の事。此れがこの世界の人間離れした能力を持つ将との力の差。つまりは俺の本来の実力でしかない。

 

 はぁ……はぁ……。

 

 今のままなら、はっきり言って思春達の方がよほど勝てる可能性がある。

 俺が此処まで追い詰められている理由はとても簡単な事。

 目の前の相手、つまり呂布には俺の手品が通じない。それだけの事だ。

 

 

 

 北郷流裏舞踊には、北郷流裏舞踊は通用しない。

 

 

 

 相手の動きや感情を逸早く察する事も……。

 目に見えない場所の動きを当り前のように視る事も……。

 其処からほんの数秒、いやコンマ以下の未来を幻視する事も……。

 『 』と一緒になる事さえも、彼女は俺と同じ、……いや、俺以上のレベルで……。

 そうなれば後に残るのは純然たる力の差だけ。

 俺が爺っちゃんに勝てないのとは別の意味で、呂布に勝てる要素がない。

 

 どがっ!

 

 ならば今度は自分からと言わんばかりに、空気を引き裂きながら強く振り下ろされた呂布の戟を斜め前へと飛んで躱しながら、数呼吸分とはいえほんの少しだけ身体と気持ちを休ませる事の出来た俺は、再び呂布の猛攻の中へと身体を投げ入れる。

 真正面からの実力勝負をしては、あっという間に決着がついてしまう。それだけの実力の差があってなおも俺が今まで生き残れているのは、幾ら呂布が強くても、その持つ武術が古く単純な事。いいや、今のこの世界の戦い方に特化した姿だと言う事だ。

 一対多数、または多数対多数を前提にした戦い方。一撃一撃に重みを持ち。相手の攻撃を受けた反動を利用して更に打ち崩すと言う一見して乱暴な武術。何百、何千、何万と言う人間がぶつかり合う中で、一人一人を相手に槍や鉾を何振りも振るってはいられないこの時代の戦い。ましてや将と呼ばれる人間は超人じみた身体能力持つ故に、そういった戦い方が型にはまるのだろう。

 むろん彼女達のような将と呼ばれるレベルとなれば、攻撃は洗練され、純化され、常人では幾ら策を弄そうとも勝てるものでは無い。ましてや目の前の呂布は、明命達曰く。天下無双の最強の武人。身体能力だけでは無く、振るわれる攻撃の一つ一つが、彼女達だけではなく蜀の愛紗達も含めて、俺の知る中の誰よりも上回っている。

 

 とん。

 ずざさっ。

 

 地面を転がりながらも、再び呂布攻撃範囲より脱出する。

 呂布はと言えば、逃げ様に仕掛けた事が原因ですぐさま追撃が出来ずに、攻撃を振るった姿勢のまま踏み止まっている。悪あがきじみた事が成功してなかったら、追撃でやられていたのは間違いない。

 ……まったく、こんなの反則だ。そう心の中で舌打ちしながらも、それでもこうして悪態をついていられるのは、俺の読みが呂布の読みと反応に打ち勝てた証し。

 そう、圧倒的な実力差があってなおも、こうして戦っていられるもう一つの理由がこれだ。

 彼女の持つ北郷流裏舞踊。それは正確では無い。

 似て非なるもの。彼女のそれは、北郷流裏舞踊のように、ある目的のために磨き続けられてきたものでは無く。原始的で拙いとさえ言える物。

 でもその分、相手を知り『 』を取り込む事に関しては北郷流裏舞踊より純粋なもの。

 彼女のそれは、長い年月をかけて人の意志と想いや思惑と言うものに穢され歪められていない分、北郷流裏舞踊より強力とさえ言える。

 だけど、それは別の言い方をすれば、人類の歴史の差。 嫌な言い方をすれば、人を殺すと言う事において、この世界と俺の世界は二千年近く歴史の差がある。

 武術だけでは無く、戦い方から思考方法まで、様々なものにおいて先人達の知識と血と涙の蓄積の差。

 それが、今こうして俺を生かしてくれているんだ。彼女が幾ら此方の動きが分かろうと、一瞬先の未来が見えようと、それは彼女達が積み重ねた知識と経験が見せる幻視。

 未来であって未来では無い。既知では無く未知。

 彼女達にとって、想像だに出来ない戦い方で此方の狙いを読み切らせない事。

 

「………まだやるの?」

「はぁ……はあ……、当たり前だろ」

 

 こっちは息が切れかけてきていると言うのに、息一つ乱す事無く訪ねてくる呂布に、何を当たり前の事をと言わんばかりに応えてやる。

 息を整えさせてくれると言うのなら大歓迎だけど、そうそう甘えた事は言っていられない。

 呂布がそんな甘い相手じゃないって言う事もあるが、此方には此方なりの理由がある。呂布にあまり時間を与えては、今まで此方が必至に仕掛けてきたものが無駄になっちまう。

 実力差が明確である以上、受けに回っていたら勝ち目なんて出てくる訳がない。待ちに待っていたら、幾ら知識が在ろうとも経験の差が出るだけだ。

 この戦いは俺が始めた戦いである以上、俺が決着を付けないといけない。

 だから俺は自ら前に出る。舞うかのように……、相手を魅せるかのように……。

 

「……ん、分かった」

 

 悪いな呂布。卑怯かもしれないが君達の弱点を突かせてもらう。

 絶対的な身体能力。それが君達のこの世界の将が持つ共通の弱点だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 


 
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