No.728038

ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長

『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。

2014-10-05 12:06:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:481   閲覧ユーザー数:459

 

 

 

 story27 それぞれの決意

 

 

 

 それから数日後―――――

 

 

 

『各車!一列縦隊!』

 

 蝶野教官の無線を合図に大洗の戦車は広大な訓練場で縦に一列に並ぶ。

 

 最初とは違って、錬度が高まっているので、戦車同士でぶつかり合う事は無い。艦部のメンバーが乗る九七式中戦車の『タカチーム』も最初から動きがいい。

 ちなみにタカチームのチームマークは、鷹が翼を大きく広げ、くちばしにパイプを挟んでいる姿で、ぶっちゃけ言えばアヒルチームのチームマークと構図が似ている。

 

『そのまま一列横隊!』

 

 すぐに大洗の戦車は横に一列に並び替え、行進する。

 

『全車停止!砲撃用意!!』

 

 それから全戦車は停止し、標的がある丘に狙いを付ける。

 

「装填!」

 

 如月は装弾機に乗せた砲弾を砲尾のスイッチを押して薬室に装填する。

 

『砲撃始め!!』

 

 蝶野教官の合図と共に全戦車の主砲や一部の戦車の副砲より砲弾が次々と放たれる。

 

 丘にある標的に数発砲弾が命中するが、いくつか外れている。しかし約一つだけ明後日の方向へと飛んでいっている。

 

『カメチーム。正直砲手代わった方がいいんじゃないかしら?訓練開始から今日まで的はおろか、設置している丘にすら一発も命中していないわよ』

 

 教官のツッコミに恐らく河島はショックを受けているはず・・・・

 

『かーわーしーまー。後で話そうか?』

 

 威圧感のある声で二階堂が言うと『ヒィィィィィィィ!?!?』と河島の悲鳴が上がる。

 

 ちなみにクマチームは主砲、副砲と共に命中している。

 

 タカチームも初心者ばかりでありながらも訓練開始からそこそこ錬度が高い。 

 本当に初心者ばかりなのか疑いたくなる。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

『おつかれさまでした!!』

 

 そうして練習が終わって倉庫まで一同が蝶野教官に頭を下げる。

 

「おつかれさま!日に日に錬度が上がってきているわね。最初の頃とは段違いだわ」

 

 確かに最初と比べれば・・・・・・まぁ段違いだ。

 

「その調子で、次も頑張ってね。まぁかなりの強敵ではあるけどね」

 

「・・・・・・」

 

 その言葉で皆に緊張が走る。

 

「あなた達の次の試合の相手校である神威女学園は、私も教えた事のある学校なのよ。教えた当初は再開したばかりとあって最初の頃のあなた達のようだったわ」

 

 今の神威女学園の戦績を考えると、信じ難いものだな。

 まぁ、最初は必ずそうなるものだ。

 

「でも、今となってはあの黒森峰にひけを劣らない学校になったわ。今までの学校とはレベルがかなり違うだろうけど、頑張ってね!」

 

『はい!』と全員返事を返す。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

「いよいよ明後日ですか」

 

「あぁ」

 

 如月と早瀬達は話しながら学園の敷地内を歩いて校門を出る。

 

「神威女学園。去年の事を考えると、サンダースやアンツィオの様には行きませんね」

 

「そうだな」

 

 

「如月さんと西住隊長は、次はどう出るつもりですか?」

 

「さぁな。向こうの情報がほとんど無い以上、作戦の立てようが無い」

 

 あの中島ですら、白虎に関すること以外神威女学園の情報が集まらなかったらしく、殆どが未知数の中で今回はぶっつけ本番で戦うことになる。

 

「とにかく、その時はその時だ。今悩んだところでどうする事も出来ん」

 

「それは・・・・まぁ」

 

 

 

 

「Hey!最近戦車道を始めた艦部をよろしくネー!!」

 

「部活復権に掛けて頑張ります!!」

 

「もし艦部に興味がございましたら!いつでもいらしてください!」

 

「今なら新入部員に特別待遇があります!」

 

 と、通学路で艦部の比叡と榛名がリヤカーを引っ張ってその上に金剛と霧島が乗り、まるで選挙活動の如くメガホンを使って大声で部活を宣伝していた。

 

 

「あれって・・・・」

 

「必死ですね」

 

 その様子を見ていた早瀬と坂本は苦笑いを浮かべる。

 

「部活存続にここまでするんですね」

 

「そうだな。バレーボール部も必死に部活の存続を図って努力いたな。結局廃部になってしまったが」

 

 部活を存続させようとする必死さは伝わるも、やってる事は迷惑極まりなかった。

 しかも一人はバレーボールを頭に被ると言う意味不明な事をやっていたな・・・・

 

 

 

「あなた達!!過度な部活勧誘は禁止よ!!」

 

 と、風紀員のそど子・・・・・・いや違う。園が艦部のメンバーに注意を呼びかけるも、「ダッシュネー!!」と金剛の言葉と共に艦部はすぐにリヤカーを引っ張ってその場を逃走する。

 

 

「本当に必死ですね」

 

「そうだな」

 

 その光景を見送って、再び歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 その日の夜―――――

 

「・・・・・・」

 

 神楽は実家の敷地内の庭に敷いた座布団の上に正座して月を見ながら両手で持っているお茶が入った湯呑みを口に運んで飲む。

 

 白い花の様な模様が描かれた黒い和服を身に纏い、白銀の髪が鈍く月の光に鈍く反射する。

 

「しかし、宜しかったのですか?あの子に会いに行ったりしても」

 

 後ろには家政婦が立っており、神楽に問う。

 

「私が何をしようと、今の当主は私よ。文句を言う輩は居ないでしょう」

 

「・・・・・・」

 

「あなたが陰であの子に接触して援助をしていた件を別にどうと言うわけじゃないわ。引き続きあの子を支えてやるのよ」

 

「・・・・・・はい」

 

「・・・・あの子を気に掛けているのは、あなただけじゃない」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

「もう下がって良いわ」

 

 神楽の言う通りに、家政婦は頭を下げてその場を離れる。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 深くゆっくりと息を吐くと、湯呑みを隣に置いて、ゆっくりと立ち上がって庭を歩いていく。

 

 

 肌に触れる夜の風が心地よく感じながらしばらく歩き、敷地内のある巨大な倉庫に着くと、扉を開けて中に入る。

 

 中には数台もの戦車が並べられて設置されており、その奥に置かれている一台の戦車を見つめる。

 

「・・・・・・」

 

 それは大日本帝国陸軍が作り出した『一式中戦車チヘ』であり、他の戦車とは違って弾痕や掠り跡など、外見はかなりボロボロであるが、歴戦の猛者を思わせる雰囲気があった。

 

(おじいさま・・・・)

 

 内心で呟き、目を瞑ると少しして開ける。

 

「・・・・・・」

 

 そのまま後ろを振り返り、倉庫を出る。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 その頃―――――

 

 

「・・・・・・」

 

 黒森峰女学園の寮の一室、そのベランダの縁に両肘を置き、焔は夜空を見上げる。

 

(大洗は二回戦目も突破、か。初心者ばかりの学校と侮っていたけど、指揮する者が伊達に副隊長と名乗っていたわけじゃないわね)

 

 鼻で笑うと、首を鳴らす。

 

(それに、あいつもあいつでよぅやるわね。少なからず斑鳩の血を受け継いでいるだけはある、か)

 

 後ろに振り返って部屋に戻るとそのままベッドへと倒れ込むように横になる。

 

(次は早乙女のやつと対戦か。まぁ、私にはどうでもいいけど)

 

 焔はそのまま電気を消して、布団を被って眠りに付く。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

「・・・・そうか。やっぱりな」

 

「・・・・・・」

 

 二階堂は中島からの報告を聞き、静かに唸りながら腕を組む。

 

「戦車道の突然の復活にある程度怪しくは思っていたんだが、そういう事か」

 

「・・・・・・」

 

「まぁ、お前らの気持ちは分からんでもないな」

 

 と、首を左へと向けると、空気が重い生徒会メンバーが立っていた。

 

「・・・・否定はしないよ」

 

 と、いつもにも増した真剣な顔で角谷は口を開く。

 

「ですが、これしかもう方法が無かったんです!」

 

「この学校を救うには、それしか・・・・」

 

 河島は両手を握り締める。

 

 

「・・・・この事は誰にも言ってないんだよな」

 

「えぇ」

 

「学園内には伝わってないけど、たぶん学園艦に住む人達には伝わってるかもしれない」

 

「・・・・・・」

 

「二階堂先輩・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 二階堂の何時にない真剣な顔に角谷以外は息を呑む。

 

 

 

 

「はぁ・・・・全くお前らは、水くせぇぞ」

 

 二階堂は呆れ顔でため息を付き、頭を掻く。

 

「そんな一大事を俺達抜きで解決しようと思ったのか?」

 

「・・・・・・」

 

「それは・・・・」

 

「先代だから、俺は蚊帳の外、か。俺も甘く見られたものだな」

 

「い、いえ、そういうわけでは・・・・」

 

 河島は少し戸惑う。

 

「それに本当に偉くなったもんだな、杏?」

 

 不敵な笑みを角谷に向ける。

 

「いいや。まだ二階堂ほどはないよ」

 

 角谷も不敵な笑みを向け返す。

 

 

「だったら、頼る事も考えろよ。俺だってお前たちと同じぐらいこの学校を愛してんだからな」

 

「二年も留年したら、そう感じるのかな?」

 

「違いないな」

 

「カッカッカッ!」と笑いを上げる。

 

「情報面なら中島に任せな。こっちも何とか手を考えておくよ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 河島と小山は二階堂に深く頭を下げる。

 

「だが、まずは勝ち進まねぇとな!」

 

「はい!」

 

「もちろんです!!」

 

「あぁ」

 

 角谷は机に置いている袋より干芋を取り出して食べる。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 帰宅してしばらくは考えられる範囲で作戦を考えた。雲を掴むような考えだが、何もしないよりかはマシだ。

 十二時を回った所で私はため息の様に大きく息をつくとベッドに腰掛ける。

 

(いよいよか・・・・)

 

 内心で呟くと、この間の早乙女神楽がやって来た日の事を思い出す。

 

(必ず・・・・勝ってみせる)

 

 決意を胸に、如月は電気を消してベッドに横になって布団を被り、眠りに付く。

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択