「眩しいな、おい」
俺はは不意に射した明るさに目を覚ました。
瞼を開く。すると目に飛び込んできたのはマンションの一室ではなく、抜けるような高い青空である。
開発された都会では感じられない、砂っぽい乾いた風が俺を撫でる。
周囲に広がっていたのは、荒野。遠くに山が霞んで見えるだけで何もなく、あるのはただっ広い大地だけだ。
「フ~ム、どうなってんだ、こりゃ?さっき鏡から出る光に飲み込まれるようにして……目覚めるとそこは広大な大地であった。オ~ウ、イッツファンタジー♪……言ってる場合じゃないな。
兎に角、こんな状況で一度言ってみたい事があったんだよな。では早速―――――」
俺は大きく息を吸い込み、そして―――――――
「なんじゃこりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
真・恋姫†無双 愉快な殺し屋さん 第一章 殺し屋、大地に立つw
いやいや、ありえねっすよ!何だよ、この状況は!
あれか!?テレポート!?あの鏡はテレポートをさせる魔法の鏡なのか!?魔法の鏡って言ったら普通は真実の姿を写す『ラ○の鏡』だし!テレポートつったらキ○ラの翼だろうが!
落ち着け~、落ち着くんだ、俺!
Don't think!Feel!考えるんじゃない!感じるんだ!
そう……視覚、嗅覚、触覚、これら全てを動員させよ!
視覚:この平原、日本にここまで広い土地が残っているわけがない!次!
嗅覚:都会の汚れた空気では無い。公害で汚染してない空気!こんな広い土地を持ったそんな場 所、日本に無し!次!
触覚:この肌に感じる感覚、慣れしんだ世界の欠片も感じねえ!
結論!ここは日本じゃない!証明終了!QED!――――――――――
「自分で自分を追いつめてどうすんじゃ!アホ~!」
俺の叫びはそれはそれは響き渡りましたよw
「いや、待て!この状況を考えろ!戦場では状況把握が出来ない者は蜂の巣だぞ!そう、今の状況で問題は――――――」
今の状況:何をしていいのか分からない=不安が沢山w
人の気配が皆無=めっちゃ孤独w
日本じゃない=憎き師匠と出くわさないw
情報が全くない=危険が一杯w
「………………………………」
そう、今この状況において問題は――――
――――――――――――無し!ノ~プロブレ~ム!モ~マンタ~イ!
「ひゃっほう♪何この状況!?めっちゃパラダイスじゃないっすか!きっけん~に満ち溢れて~る
我がじ~んせい!ヤッハ~♪そう、俺はいつだって平凡な日常(?)を過ごしながらも―――――」
―――――常軌を逸した日々に求めていた!そこに痺れる、憧れるぅ♪
「ジュル……おっと涎が。あははは、これじゃまるで危険人物じゃないか♪間違いなく取扱い注意の危険人物だろうけどね!」
今、他人が俺を見たら一目散に逃げ出すであろう自信が俺にはある!……自慢にならないがw
状況はまるで分からないけどとにかく、ここで立ち尽くして山と空をいつまでも見つめていてもどうにもならないだろうと結論付け歩き出す。
さ~て、鬼が出るか、蛇が出るか♪冒険の始まりだw
「よう、お嬢ちゃん。珍しい服着てんじゃねえか。金と一緒に身ぐるみ全部置いてけや」
「断る」間0.2秒
今話しかけてきたおっさんを中心にして、その左右にチビとデブが立っている。
口笛を吹きながらやっと人に会えたと思ったら、こんな雑魚三人。
見た感じ実力は、あれだスライム級。いや、人型なんでゴブリンか?雑魚は雑魚だがw
興味無いのでスルーして歩きだす。
ちなみに三人とも俺の反応に絶句して大口を開けてポカンとしている。
真ん中のおっさんが逸早く我に返ったようで俺を引き留めようとする。
「おい、お嬢ちゃん。状況わかってんのか? 死にたくなかったらさっさと言うとおりにするべきだぜ。怖くないぜ。むしろイイコトしようってんだよ、俺達は。グフフフ♪」
「そうそう、俺達が天国にイカせてやるよ。ウヒヒヒ♪」
「な、なんだな。ムフウ♪」
うわお、殺してやりたいほど下賤な笑みだこと。(おっと自重、自重)つうか俺を女だと思っているしw
ここは親切に教えてやるとしますか。
「あ~、俺って男だよ?ほれ」
そう言って俺がTシャツを捲り上げると、そこには彼らが期待していた双丘はなく、真っ平らな平原がありましたとさw
そうすると彼等は先ほどとは比べ物にならないくらい大口を開け呆けている。
「んじゃ、そう言う事で~♪」
今度こそ俺が立ち去ろうとするとリーダー格の中年男はおもむろに腰に差してあった刀を引き抜き、俺の眼前に突きつけてくる。
「だ、騙しやがったなぁ!俺の胸のトキメキを返せ!ゴルァ!」
「知るか!いい年こいたおっさんが、胸のトキメキ言うな!キモイわ!」
ああ、くそ!こいつ等、殺気を出しやがった。もう俺の身包み関係なく俺の事を殺すつもりだよ、この三馬鹿トリオめ。俺の容姿云々は冤罪だっつうの!しゃあない、こんな雑魚に殺す価値一切無し!適当にボコッて捨てとくか。
俺はやれやれと首を振る。
その態度に男は苛立ち、ついに痺れを切らして剣を振り上げた。
それに反応し俺も拳を振るう。
「――――待ていっ!!!!」
――――――――――――誰?
どこからともなく響いた声が男の手を止めた。
だが、俺の手は止まらなかった。と云うより止める気も無かった為、声を意図的に無視したw
「ゴフッ!」
俺の拳はリーダー格のおっさんの鳩尾に深々と刺さった。
倒れるおっさんを尻目に近くにいたチビの元に駆ける。
「たった一人のか弱き女性相手に三人がかりで襲いかかるなど……その所業、言語道断!!」
誰が何か言ってるがやっぱり無視w久遠は急に止まれませんw
「ガフッ!」
チビの顎にアッパーカットを決め、チビが空中で縦に高速回転している間にデブの頭上に跳ぶ。
「そんな貴様らが如き下郎に名乗る名など、無い!!」
「ブエエェ!」
声が言い終わるのと同時に○イダーキックを受けてデブが倒れチビが地面に落下した。
振り返るとそこに立っていたのは露出の多い白い振袖を着て、特殊な形の刃の槍(ロンギヌス!?)を持った青髪の女が槍を掲げこちら側―――正確には今ぶっ倒れている三馬鹿に向けていた。
『………………』
気まずい空気が場に流れた。
たぶん彼女は俺を助けるつもりだったんだろう。
しかし、掲げた槍が振るわれることなく終わった為どうしていいかわからないのであろう。
俺自身どうしていいか全く分からない。
場が無駄に時間を歩んでいく中、救世主がやってきた。
「星ちゃーん」
「星ー!」
ふと声のした方を見ると二人の少女――――長い栗色の髪を持ち、頭に変な人形を乗っけた眠たそうなポケポケ少女と、黒髪の眼鏡をかけた理知的な女性(女教師タイプっつうのかな?)が、
こちらに向かってくる。
「ぬ、風に稟か」
「こちらが山賊に襲われていた人ですか?」
「災難でしたね、お姉さん、ここら辺は比較的に山賊は少ないはずなのですが……。」
「貴女のような女性が一人で出歩くのは危険ですよ」
ま、またか……とりあえず本日二回目の訂正をさせてもらおう。
俺は無言でTシャツを脱ぎ上半身裸になる。
それで彼女たちも間違いに気付いたのであろう。気まずそうに顔を背ける。
「ま、まぁ、怪我が無いようでなによりですー」
「……どうも」
俺はいそいそと服を着ながら彼女たちを観察する。
星―――それが彼女の名前なんだろうな。
風、稟と呼ばれた少女たちとはともかく、彼女は相当強い。それは長年培ってきた眼で分かる。
だが、それ以前に俺の経験に槍を持った人間などいやしない。稽古ではあるが、実際に槍を使う奴なんかいない。あんな嵩張る物を使う位なら誰だって銃を使う。携帯性、殺傷性と共に段違いだからな。文化が離れた会話の通じん原始的な民族ならともかく彼女のような女性が使う物か?
ここは本当に俺の知る世界か?なんか日本どころか地球ですら無くなった可能性も出てきたよ、ママンw
いきなり彼女たちが『ここは惑星エデン。あなたは光の勇者様ですね。共に魔王を倒しましょう!』って言われたらどうしよう!?
まあ、ふざけた妄想してるより彼女たちから情報を聞き出した方がいいか。
俺は星と呼ばれている少女に声をかける。
「あ~、星さんって言うんだよね?ちょっと聞きたい事が―――」
『―――ッ!!!』
俺の心情としてはただ単に名前を呼んだだけなのであるが―――
三人は目の色を変え、まるでとんでもない無礼をされたかのように驚いた。
星(?)に至っては持っていた槍を目にも止まらぬ速さで喉もとに突きつけてきた。わあ、ビックリw
「貴様っ! いきなり我が真名を呼ぶとはどういう了見だ!!」
「訂正してください!」
「訂正なさい!」
「………ほっ?」
明らかに憤っていたが、俺にはその理由が分かるからない。
しかし見ると、風という少女も同じく稟と呼ばれた女性も目を見開いて驚いている。
それより真名って何?
初めて聞く単語に俺はいささか戸惑うがそんな事より目前の少女だ。
このままだと本気で突く気だね。怖い怖いw
「あ~…よー分からんが、すまん。訂正する」
「……結構」
謝罪をして名を呼んだことを訂正すると、案外簡単に槍を引いてくれた。ラッキーw
「なんなんだ、その真名ってのは?」
「貴様、真名を知らないとはどこの貴族の世間知らずだ?」
「真名とは、最も貴ぶべき生き様の象徴。己が認めた者、親しい間柄の者にしか呼ばせぬ、神聖な尊い名前のことです」
「そうではない人、知らない人に不躾に呼ぼうものなら、手討ちにされても文句の云えぬ程のとんでもない屈辱になるんですよー」
なるほど。日本にはそういったものは無いが、ここにはそういった風習があるのだろう。
って事は、俺はこの少女ににとてつもない恥を掻かせたことになるってことか。
それも、手討ちにされても文句の云えぬ程の侮辱を。
それなら――――
「すまなかったな。先ほどのは良く分からんから謝罪した。ならば改めて心より謝罪させてもらおう。――――トオッ!」
俺が空中に跳ぶと風と稟と呼ばれている少女がビクッと怯える。そりゃそうだ。
そのまま一回転前転して土下座のポーズを決める。
その勢いのまま地面に着地する。そのためズザザザと額が地面を擦る。すっげ~痛いわw
これぞ桐生 久遠の108の処世術の一つ、No.38『ジャンピングスライディング土下座』!
「悪かった!心から謝罪する!もうしません、勘弁してください!生まれてきてすいません!」
「分かった!お主の気持ちは理解したからそこまでせずともよい!」
さすがにいたたまれなくなったのか彼女が俺を力づくで立たせる。相変わらず凄い威力だぜ。
ただ、野外でするもんじゃないね。砂がめっさ痛いw
「んで、その真名がダメならなんて呼べばいい?」
まさか名前を呼ばずに会話するわけにもいかない。
俺はとりあえず何と呼んだら良いかたずねる。
「私の名は趙雲と呼べ」
「はい。程立と呼んでくださいー」
「今は戯志才と名乗っております」
「ほいほい、んで俺の名は桐生 久遠。よろしく」
「変わった名前ですねー」
お前らには負けるがなw
程立はともかく、戯志才は明らかに偽名だろうが。「今は」と言っているし。
それ以前に明らかに日本名じゃないだろ。日本語で話してるのに―――――
――――――――――マテ、今、彼女は自分の名を何と呼んだ?
「あ~、槍を持った麗しいお嬢さん、アナタ、イマジブンノナヲナントイッタ?」
「何を急に変なしゃべり方をしているのだ?ならばもう一度名乗ろう。私の名は趙雲」
―――――――――――趙雲?チョウウン、ちょううん………趙雲!?
「趙雲っておい!?おいおいおい!お前の名が趙子龍と同じだってのか!?」
「!?何故お主が私の字を知っている!?」
――――――字?字って、確か明で使われた人名の一種だよな?
…………え、いやいやまさかね~♪そんな訳ないよね~♪でも俺の予想って悪い方向に超高確率で当たるんだよね~…」
コホンと一息つけると趙雲に聞く。外れることを期待して。
「今って……ひょっとして後漢の時代?」
「?……何を当たり前の聞いているのだ?」
ビンゴオオオオオオオオォォォォ!!!!!
俺のいる場所はとりあえず地球だった。ワ~イワ~イ♪
……大昔の。ワ~オワ~オ♪
しかも趙雲が女性という事はパラレルワールド、即ち異世界wワ~ンワ~ン♪
って事は俺のいる世界、ここは―――――
ザ・三国志ワールド!!!……マジで!?
あ~、これは夢だ。ほ~ら、目覚めると自室のベッドの上……の訳ないよね!
うん、現実逃避って分かってる!どんなふざけた事実でもここにあるのは間違いなくリアル!
ちょっと夢見てました!すいませんでした!
そう、ここが三国志の世界であろうと……あろうと……特に問題ないね♪
今、この状況を満喫し~ようっと!
先ほどからの特殊な状況にやや混乱していた俺であったが、
「―――久遠殿、私と手合せせぬか?」
俺の混乱に拍車をかける女(KYと読む)が、そこにいた。
「いきなり何?」
「だから手合わせ願いたい、と言っている」
「……なんのために?」
俺の質問の答えに趙雲は槍を一度頭の上でぐるりと回すと構え直し、その切っ先を俺へと向けた。
「誰よりも強くありたい。武人ならば誰だって思うことだ」
ただ、戦いを求めている―――そういう人間が、稀にいる。
強さの果てを見てみたい、それだけの理由で戦い続けられる人間がいる。
何を疑いもせず、命を賭ける事を恐れず、出会ったすべての者に戦いを挑む。
俺は彼女にかつての自分の危うさに近い物をを見た。
目的の為なら己が命に執着を持てないかつての自分を―――――
「そうか。まあいいよ、やろう」
「かたじけない」
俺と趙雲は互いに間合いを取る。
程立と戯志才は巻き込まれないよう距離を取る。
「槍相手に素手とは――――それでよいのか?」
「他に武器を持ってないしね。それに―――」
「?」
俺は口元の端をニッと吊り上げる。
「お前程度ならこの程度で充分ってことさ」
「――――ッ!!!」
侮辱されたと理解するや否や、趙雲の眼に一抹の怒りが宿ったことを見てとった。
「………この趙子竜も、舐められたものだな」
「あはははは。舐めたら何味なんだろうね、君は?」
再度挑発する。これで怒ってくれれば動きが単調になって儲けもんなんだがね。
「………最早言葉は不要だ」
「だね。んじゃ、いざ尋常に―――――――」
――――お前の言うとおり、もう言葉は不要さ、趙雲。
趙雲は槍を構え、俺は全身に気を通す。
俺はその凛とした立ち姿に、ただ純粋に美しいと思った。
本当に今日はいい日だな、おいw
『―――――勝負!!!』
「………はっ!!!」
趙雲は声とともに一瞬で間合いを詰め、俺の胸元目掛けてその槍を放つ。
だがこの程度ならカウンターを狙える速度だ。
俺は左足を軸にして右足を回転させるように引き、半身になってその槍を避け趙雲の鳩尾に掌打を打ち込む。
だが、避けられるのを予知していたのか、後ろに跳び、俺の攻撃を避ける。
「成程、そうくるか」
「おいおい、勝負の最中だぜ?何、手加減してるんだよ」
「まずは手の探りあいだろう?いきなり突進するのは猪のすることだ」
「まあな、だがこっちは遠慮なくいかせてもらうぜ!」
「ふっ、是非もない」
地面を蹴り趙雲の懐に入る。
だが趙雲は当然それに反応して槍で斬り上げるが、それを避け蹴りを入れるも槍で防がれる。
一進一退の攻防―――――それも徐々に均衡が崩れてくる。
優勢なのは、当然俺!……と言いたいが、違う。趙雲の方だ。
実力そのものが拮抗している中で、素手と槍の間合いの差が徐々に表に出てくる。
俺自身はあの神速の槍を掻い潜らなければならないのに対して、趙雲は俺の攻撃の間合いから攻撃できる。これは戦いにおいて重要なアドバンテージだ。
「どうした!戦いの前の大口とは打って変わって静かじゃないか!お主の力量はこの程度か?」
「はっ!こっから世紀の大逆転劇が始まるんだよ!瞬きするんじゃねえぞ!」
「ふっ!減らず口を!」
趙雲の言う通り、マジでヤバイ。徐々に押されてる事に対して起死回生の一手が見つからない。
このままじゃジリ貧だっつうの!くそっ!どうすれば……
――――――何か、何かを忘れてる気がする……何だ?俺は何を忘れて……
「もらった!」
「しまっ…」
ザシュっと俺の横腹を趙雲の槍が突く。
「―――――――ッゥ!!!」
俺は激痛に跪く。
鮮血が飛び散るも、致命傷には至らない。どうやら腹の端っこだっだようだ。だが――――
痛い、痛い痛い、イタイイタイイタイ、いたいいたいいたいいたい!!!
激痛が俺の体を蝕む。俺の周りには俺に傷をつけられるほどの敵はいなかった。
あまりにも久し振りの痛み―――――
――――そうだ。思い出した。
これこそが痛み、その先にあるもの―――――死。
それは忘れかけていた俺の始まりに全てだったもの。
そうだ、勝負とは勝つか負けるかじゃない―――――
ようやく思い出せたモノに俺の心は歓喜の声をあげる。
勝負とは―――――殺すか、殺されるか。あまりにも簡単で単純明快なモノだったじゃないか!
途端、俺の体に強大な気が走る。知らず内に殺さない為に内包していたものが肉体の奥底からあふれ出る。
痛みはもうない。傷は瞬時に塞がった。するべき事は唯一つ――――
目の前の敵を全力で殺す!
「……ここまでか?」
趙雲にとって結果は呆気ないモノでしかなかった。
致命傷とは到底言えない傷で俺が動かなくなってしまったからである。
「どうやらここまでのようだな。いや勝負であった。では」
趙雲は俺に背を向け歩き出す。
「……待て」
趙雲はピタリと動きを止め怪訝そうな顔をしながらこちらに振り返る。
「……まだやるのか?これ以上やっても結果は見えて………ッ!!!」
途端、彼女は槍を構える。彼女の武人としての本能だろう。油断すればどうなるか、
彼女はそれを肌で感じている。
俺はゆっくりと立ち上がり趙雲を見据える。
「悪いな。さっきまでの俺はヘナチョコといってもいいほどだった。うん、謝る♪
今から本気でいく。だから―――」
俺はさっきまでの構えを解く。ブラブラと構えとも呼べない形で前に進む。
「―――――――だからどうか死なないでくれ」
そして、先ほどと同じように趙雲に向かって突進する――――
(趙雲視点)
「――――ッ!何が……起きた?……ぐっ!」
横たわる自分、覚えのない手の痛み。
やがて彼女は理解する。
力の限り殴られただけなのだと―――――
一瞬、気を失う前の記憶。
彼女が覚えているのは、本能で迫りくるものに槍を構えたこと。
だが、無理に構えたため衝撃を槍が吸収できず、手を痛め、吹っ飛ばされたのである。
私は彼を見据える、そこにいるのは先程とは別人であった。先程の彼には幾ばくの甘さがあった。
だが、いまそれはない。常に刃が首に当てられ、死刑執行を待っている気分だ。
体が震える。恐怖などでは断じてない。これはなんだ?
そうか。これが――――これこそが私の求めていたものか!
最早、これは武人の力比べなどではない!勝つつもりではなく殺すつもりで!さもなくば自分が殺される。高揚した心は痛みを麻痺させる。
恐怖はない、これこそが武人としての本懐なのだから!
神が目の前にいたら感謝しよう。
よくぞこれほどの敵を我が前に送り出してくれた!、と。
(久遠視点)
敵さんも覚悟を決めたか、そうだな、それでいい。
次の一撃で俺かお前、どちらかは命を絶たれるであろう。
仮に俺が死んだらそれまで、お前が死んでも同情はしない。
同情することこそ最大の侮辱だからな。
じゃあ、逝こうか!派手に咲かせようぜ!俺かお前、どちらかの死に花をな!
俺達はそのまましばらく、一定の間合いを保ちながら見合っていた、
―――――――そして!!!
「星ちゃん、お兄さん、もうお開きみたいですよー」
程立のおっとりとした響きを含む一言によって、戦いの空気は唐突に打ち切られた。
二人してずっこけましたよw
堪んねえよ、こん畜生めw
見れば遠くに砂塵と曹の旗。それが地響きを立てながら、こちらに向かってきている。
ってか曹ってまさか…
「官軍か………」
「……死合ってるところを見られると、少々面倒なことになりそうですね」
戯志才に暗に諭されて、趙雲は槍を引いた。
「なあ、趙雲」
「……なんだ?」
わあ、怒ってらっしゃるw
まあ、あれだけ心を躍らせての寸止めプレイですからね。気持ちは分かる。
「これでよかったと思うよ。お前ほどの武人が歴史に名を残さず逝くのは大きな損失だ」
「……それは、暗に勝っていたのは自分だと言いたいのか?」
「さあね?神のみぞ知るんじゃないか?」
「ふっ、だが私はまだ本気を出しきっていないのだが?」
「実は俺もだ、見てろよ?ヌウゥゥ、剛○波!」
ドゴオオォォォォォォォ!!!
俺の手から発せられる気の波動が大地を抉る。
これを使わなかった理由は3つある。
1.彼女が武と武でで正々堂々争うのを望んだため(これも武だけど連発したら一方的だし)
2.これ使うと疲れるw
3.本気の戦いは久しぶりだったんで存在を忘れてましたw
以上3つの内2つはどうでもいい理由だったw
ちなみにこの技は師匠が好んでで使う。
いきすぎた破壊活動が目にあまるが。
三人は呆気にとられて、俺と趙雲は少しの間、顔を見合わせる。
やがて示し合わせたかのように二人で笑った。
「フフッ………久遠殿」
「あん?何だよ、趙―――」
趙雲は俺の口に人差し指を押し当てる。
「私の名は趙雲。字は子竜。……真名は星だ」
『!?』
「それって……いいのか?真名で呼んでも?」
「当然だ。これ程の武を魅せられたのだ。不思議ではあるまい?」
「そっか。フム、俺のところでは真名の概念がないから何も送れんが……まあ、いいか。
形としては何もできんが俺達は親友って事で♪よろしく、星」
「うむ」
すっと手を差し出し星もその手を握る。
友情成立!生まれて初めて親友が出来ましたw
言ってて悲しくなってきました~w
「ほんの少し前に殺し合いをした二人とは思えないほどの急展開ですね~」
「ふっ、殺し合いから始まる友情もなかなか乙なモノだよ。程立ちゃんや」
「気安くちゃん付けしないでください」
「ショッキィング!こ、これが娘が思春期に入った父の気持ちか。パパは悲しいですよ!」
「何を言ってるか分かりませんが、急ぎますよ。星、風!」
「うむ!それでは御免!」
「ではでは~♪」
「ああ!再び相見える日が来る。その日まで達者でな!」
その言葉を最後に、星、程立、戯志才の三人はこの場を去って行った。
「ああ~、マジ多すぎだっつうの…」
俺の周囲をとり囲んだのは、騎馬の群れ。たった一人を囲むには、ずいぶんな大人数だこと。
「華琳さま!こやつは………」
「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男と聞いているわ」
「どうします?連中の一味の可能性もありますし、収縛しますか?」
騎兵を合間を縫って出てきた三人の―――またも女だよ。特に真ん中の女は、俺にしてみれば妹と言っても過言ではないような幼げな少女。
彼女を中心に、なにやら俺にとっては穏やかでない会話を繰り広げているみたいだし。
あの曹って旗が俺の考えている通りならば、まさかこの一番幼い子が……うっそ~んw
「そうね……見るからに普通の民間人ではないようだし、とりあえず連れて行きましょう。半数は残って辺りの捜索を続けなさい。残りの者は一時帰還するわよ」
「はっ!!」
一難去ってまた一難……本当、最高だぜ。この世界はよ!
―――――――そして俺達は出会ってしまった。運命の二人が、
―――――――後の覇王……ではなく、
―――――――我が相方に相応しい愛すべきお馬鹿さんとw
続くw
どうも、既に展開が無茶苦茶なモノを書いてる奇人作者こと紅い月です。
当初、予定に入れていた星とのバトル、主人公の戦闘能力の一片をみせるシーン。だが、ギャグテイストかなり少ない……w
しかし1話目でまだ冒頭いかず。そもそも真はボリュームが多いのにどれだけ書けばいいんだ?
まず、前回のレス返しをやっときます。
>ブックマン様
ええ、どことなく完璧超人なんですよ。
トラブル大好きっ子で、精神ががどことなく破綻してて、一般常識を限りなく守らない人ですがw
>水薙 零様
はい、同じオリキャラ連載仲間同士よろしくです。
楽しみにしてもらえるのはとてもうれしいです。
本郷 一刀が一般人だった為、限りなく特殊な主人公にしてみましたw
>クォーツ様
非常に楽しんでもらえてよかったです。
通じるものと言うよりは武将と対等。はい、この言葉を受け久遠に頑張ってもらいました。
まだまだ彼の能力の一角にすぎませんが、彼にはしっかり働いてもらいますw
というわけで、魏のルートになりました。
何がというわけかは知りませんがw
彼の持ち味は王でもなく、軍師でもない、かと言って前線キャラとい云う訳ではなく、
そう、彼を最も活かすのは夏侯惇との漫才しかないだろうと!w
その為の魏ルートですw
次回、二人は運命の出会いをはたしますw
今回笑えるシーンが少なかった為次回は頑張ります。
次回も読んでもらえるととてもうれしいです。
それでは、また次回!
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紅い月です。こんにちは
お送りしますは愉快な殺し屋さん 第一章。
主人公独特のハチャメチャっぷりを楽しんで読んでもらえたら幸いです。