咎を受けし御使いの最後の旅~二人の御使いと二人の劉備~
流星
華琳の元に及川が来て半年が過ぎた。正直な話、及川の出した政策は確かにいいものだ。だがしかし、どう言う訳か驚きが無い。桂花は驚いていたし、喜雨も評価していた。栄華はさすがに顔をしかめていたが、強く反論しないあたり不服にも認めざるを得ないと言ったところか。
華琳「それにしたって・・・なんでこんなに違和感があるのかしら。」
及川は正直信用ならない。自分で引き入れといて何を言っていると思われるだろうが、彼女がそう思うのもいた仕方が無かった。
及川は司馬懿と行動を共にし始めてから、どうも行動が怪しくなった。陳留の街も何処となく及川をたたえる声が多くなってきたし、燈、喜雨を取り込み始めているとみて間違いないだろう。
華琳「問題は天の御使いを処断すると私の覇道はそこで終わると言う事ね。」
天の御使いとして自分で引き入れた者を違いましたで処断したのでは示しが付かないどころか、華琳自身の民からの評価は完全に落ちるとみて間違いなかった。
ならば何が出来るか。及川が何をたくらんでいるにしても思い通りに事を運ばせないことが大事だ。
だが、それは難しい。理由の一つは司馬懿だ。彼女の知謀は荀彧を越えている。自身ですら勝てる気がしないのだから当然と言えば当然だ。
唯一の救いは自分の腹心と言える人材が多いことだろう。夏候姉妹は言うに及ばず、栄華は確実に及川を嫌っている、下に見ている、存在を認めていない。柳琳は元々優しい子だが身内や古い知り合いを裏切る人物では無い。華侖は元々華琳や春蘭寄り。この時点で曹一族は味方と言える。問題は香風、燈、喜雨、季衣辺りだろうか。香風はちょくちょく居なくなる。燈、喜雨はどちらかと言えば及川寄り、季衣は兄ちゃんと慕っているし、仲間になる時、どうやら及川のとりなしがあったようだ。
華琳「はぁ、頭痛いわ。どうしてこうなったのかしら。」
本日何度目になるか分からないため息を付く。
華琳「管路の占いによると天の御使いはその知識と武を持って天下を太平に導くと言われてるわ・・・占いなんて胡散臭いけど・・・武?知識と・・・武?」
此処に来て華琳は管路の占いのおかしい点に気付いてしまった。もしも管路の占いが本当なら及川にも武が備わっていなければならない。だがしかし、その武は最初に出会った時から皆無であることが分かっている。
華琳「私とした事が・・・大きな失策ね。」
理解した。及川が御使いでは無い事を。だが遅い。もはや民は及川が天の御使いだと信じ切っている。自身の居る州には確実にその噂が広がっている。もしその男を処罰するなら、覇道を諦めるしかない。そんな事彼女に出来る筈がなかった。
華琳「はあ・・・もうあいつが来てからため息が止まらないじゃない・・・って・・・あれ・・・何?」
華琳は深いため息をもう一度付くと窓の外を見上げた。それはもう一つでも流星が落ちないかと思ったのかもしれない。するとその内なる願いが届いたのか、一筋の流星が流れて行ったのだ。
華琳「こんな真昼間に?すごい勢いで・・・見えなくなったわね・・・なんだったのかしら???え?戻って来た!?あっち行ったりこっち行ったりなんなのあれ!?あ・・・落ちたのかしら?」
華琳は確かめに行きたい衝動にかられたが、明らかに探しに行けない距離であることは明確だった。
華琳「・・・懐かしい?あの流星を見て私・・・懐かしいって思ったの??」
華琳は混乱していた。明らかにおかしい感情に頭が追いついてこなかった。その日珍しく、彼女は仕事を翌日に回さざるを得なかった。
とある街。とある櫓の上。
???「・・・」
一人の少女がそこで目を閉じ精神統一をしていた。
???「凪ちゃ~ん。真桜ちゃんが呼んでるの~。早く終わらせるの~~。」
凪と呼ばれた少女、楽進文謙。それを呼んだのは于禁文則。そして真桜と言うのは李典曼成である。
楽進「ああ、すぐ行く。」
于禁「あ・・・凪ちゃん凪ちゃん!!空、空!!」
楽進「ん??」
楽進が空を見上げるとそこには一つの流星が遥か西の彼方に飛んでいった。
楽進「昼間に流星か。不吉・・・なのか?何処となく懐かしく思えたのだが・・・」
その少女が訝しげに空を眺めていると、すぐにその流星が戻って来たのだ。
于禁「あの流れ星へんなの~。迷子かな~?」
楽進「そんなわけあるか・・・」
呆れながらもその流星から目をそむけられない彼女は少しだけ・・・ほんの少しだけ意識を集中させる。ただの気まぐれだった。集中すれば他人の氣を多少であれ感じ取れる位彼女の実力は高かった。
楽進「・・・・・・・・・ま、まさか・・・」
それがまさか彼女にとって大きな分岐路になる。ここで感知してなければ彼女はきっと・・・
凪「・・・・・・・・・隊長。」
所変わって、此処は寿春付近。
荀攸「流星?すっごーい。西の果てに飛んでったなぁ・・・・・・あ、戻って来た。戻って来た!?」
荀攸は現在自身が仕える主君をさがす旅をしている最中。陳留周辺はもとより眼中になし、袁家は袁紹で懲りてる。孫家はちょっと排他的。ならばと荊州の桜楼村の劉三兄弟とやらを見に行ってみようと荊州に向けて歩を進めている最中だった。
荀攸「あっち行ってこっち行って、何がしたいのあの流星・・・あ、落ちた。あっちって荊州の方よねぇ・・・なんだか面白そうな予感!」
そんな事を言いながら荀攸は白黒猫耳を揺らしながら荊州への足を速めるのだった。
荀攸「で、何処だここ?」
迷った。
森の中で迷った。
迷いに迷って早半月だ。はっきり言ってこのまま迷って死んでしまうんじゃないだろうか?食料は森で取れるし、野営装備はしっかりしてるとは言え、さすがに迷い過ぎだ。
明らかに深い森の中に居るのだが、道が途中で無くなったのだ。実は彼女が通ってた道は熊の獣道。それも3メートル級の。それに気付かず小川に出てしまったのだ。
熊「GUOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
荀攸「あ、これ死んだわ。」
熊「GUOOO・・・・OOOooo・・・」
荀攸「ん??」
熊「・・・・・・」
ずぅぅぅん。
荀攸「あれ?熊が死んだ?」
その熊は所々怪我をして息をしていなかった。
???「大丈夫か?」
荀攸「あ、ありがとうございます。」
???「いや、ええんや。所でおたく・・・こんな森ん中で何知てるん?」
そこに居たのはなんと淩統だった。
叢雲「この辺りは主級が跋扈しとるから危ないんよ?ウチが守っとる村が近くにあるから付いてきんさい。」
荀攸「あ、ありがとうございます。」
その日の夕方には桜楼村に到着し、劉三兄弟はある人と共に旅に出てしまった事を知り、迷った自分を大いに責めまくったのだった。
あとがき
凪「隊長が体調を崩されたので代わりに私が来ました。あとがきコーナーです。」
沙和「う~ん、20点。」
真桜「ウチからすれば10点やな。」
厳しいね、俺は頑張りを認めて40点かな。
凪「何の話だ?」
沙和「え?ダジャレじゃないの??」
真桜「まさか天然?凪、そらないわ・・・」
いや、凪だからこそだろう。一刀に報告する事が増えたな。
凪「報告!?何をだ!?!?」
沙和「気付いてないの~。凪ちゃん残念な子なの~~。」
真桜「てか、報告ってなんやねん?」
凪『何だと沙和。私が何時残念になったんだ?』
沙和『そんなの今のやり取りを見れば明らかなの~~』
ああ、お前らがサボったら報告するように言われてるんだ。ちなみに裏で絡繰いじって打ち合わせ聞いてなかったのも、化粧に時間かけ過ぎてメイクさん困らせたのも報告するからな。
真桜「ジーザス・・・真面目にやるからそこんところ報告せんといて!」
まったく仕方ないな・・・
凪『沙和、そこに座れ。私がどうして残念なのかじっくり聞こうじゃないか。』
沙和『話しても無理なの~、凪ちゃんの残念頭じゃ理解不能なの~~。』
凪『なんだと!もう一回言ってみろ!!』
ところで真桜エモン。
真桜「なんやユウヤ。」
あの二人どうして喧嘩してるの?
真桜「ああ・・・凪は沙和のおしゃれを下らない呼ばわりして、沙和は凪の隊長ぞっこんをおちょくったんや。」
それで現在喧嘩中か・・・
真桜「そや。ま、気にせんと始めようや。」
そんな事をやっていて時間が足りなくなりました。
真桜「え!?」
報告させてもらいます。それでは次回。
真桜「次回は変態の出番やで!しゃべりは似てるけどウチとは違うんや!!」
それではまた次回~~
真桜「で・・・本気で報告するん?」
真桜の事はちょっと軽くしておいてやる。
真桜「おおきに。」
凪『大体沙和は化粧が濃すぎなんだ!隊長はそう言うのはお嫌いなんだぞ!』
沙和『凪ちゃんの味覚はおかしいの。隊長にあんなの食べさせるなんて頭やっぱおかしいの!!』
ねえ、殴ってきていい?
真桜「まあ、ほっとき。しばらくすれば隊長が二人を仲直りさせるに決まっとる。」
さいですか・・・
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さて・・・チョイ短めかな?
では本編どうぞ。