第41話 穿たれる神
アスナSide
「それじゃあ、わたし達Aグループはこれから『アースガルズ』の主要都市であるこの『ユーダリル』で情報収集を行います。
わたしとユイちゃんとエギルさん、ヴァル君とシリカちゃんとピナの2組に分かれて行動しましょう。よろしくお願いします」
「「「「よろしく(おねがいします)」」」」
「きゅ~」
キリトくんの指示を受けてアースガルズでの情報収集をするためにユーダリルに来たけど、まずは聞き込みからだよね。
わたしとユイちゃんのガードはエギルさんお願いして、当然だけどヴァル君にはシリカちゃんとピナをお願いする。
「1時間後に街の入り口に集合しましょう。それでは行動開始よ」
「「「「「了解!(きゅ~!)」」」」」
わたしの言葉にビシッと返答するみんな。
キリトくんが一緒じゃなくて、それに久しぶりのリーダー職なので副団長モードが出ちゃったかな?
ともかく、情報収集開始ね。
――1時間後
ユイちゃんとエギルさんの3人でプレイヤーやNPCに聞き込みを行ったあと、わたし達は集合場所の街の入り口に向かう。
エギルさんのお陰?で不埒なプレイヤーから言い寄られることもなく、無事に情報収集を終えることが出来たのは良かった。
そして街の入り口に着いてから5分くらい経つとヴァル君とシリカちゃんとピナも到着しました。
「お待たせしてすいません。こちらも終わりました」
「気にしないでいいよ。それより情報はなにか見つかった?」
「はい。それらしい話を聞くことが出来ました」
真面目なヴァル君が遅れてきたことに律儀に謝ったのを受け取ってから成果の有無を訊ねてみると良い反応が返ってきた。
これはなにか掴めたのかもしれないね。
「ならまずはわたし達の方から。
これは7人のギルドプレイヤーから得た情報なんだけど、彼らはイグシティからビフレストを渡ってここに来たらしいの。
幸いにもビフレストはアースガルズと繋がったままみたいだからね。
アースガルズに到着した彼らはアルヴヘイム中で起こっている異常の情報収集を始めて、
手始めに大門のところに居るヘイムダルのところに行ったみたい。
そこで彼が『角笛が響き渡る時は近い』って言ったらしいの。
どのタイミングかは分からないけど、ラグナロクが近いということだと思うわ」
「確か、そのヘイムダルが角笛を吹く時こそラグナロクが発生する時なんですよね?」
「神話の通りなら、そういうことなんだろうな」
「ですがそれはあくまでもラグナロクが起こることをヘイムダルさんが角笛で世界中に伝えるだけのはずです」
シリカちゃんは予め伝えておいたラグナロク発生のタイミングについて確認してきて、エギルさんが頷いて応える。
だけどユイちゃんの言う通りで彼はあくまでも見張り番であり、敵がアースガルズに攻めてくるのを角笛を鳴らして伝えて、
それから『
だから問題なのはこのALOだとどういうタイミングでそれが起きるかと言うことだね。
取り敢えずそれは置いておこう。まずはヴァル君達の報告も聞かないとね。
「では今度は僕達の報告を。僕達はNPCから情報を得ることが出来ました。
なんでも、近々
「ゲーム?」
「はい。アスナさんならご存知だと思います……バルドルへの物当てゲームですよ」
「そんなっ…!」
それは、その
いえ、言語モジュールを搭載しているとはいってもやってはいけない道理がこの世界にはないのよね。
「あの、その物当てゲームがなにか問題あるんですか?」
「この場合は問題があるからアスナが驚いていると考えた方がいいと思うぞ」
「そうですね。問題が無ければママもヴァルさんも気にしませんし」
事情を知らないシリカちゃんが疑問を浮かべて、
だけどわたしとヴァル君の苦みのある表情に気付いたエギルさんが指摘をしてユイちゃんが同意する。
「そうだね。これもみんなに説明しておかないとね……ヴァル君、お願いしてもいいかな?」
「分かりました。僕もキリトさんやティアさんみたいに詳しいわけじゃないですから、簡潔に説明します。
バルドルは北欧神話の神であり、ヘイムダルと同様に光の神であると同時に彼と最も美しい神でもあります。
彼は母親である女神フリッグの加護で万物によって傷つくことがなくなりました。
傷つかなくなったバルドルを祝い、神々は娯楽として彼に様々な物を投げつけたんです。
そんな中で1つだけ彼を傷つけられる物があって、それがヤドリギの枝です。
そしてロキが策を弄してヤドリギの枝でバルドルを殺し、光が失われた世界はやがてラグナロクを迎える…こんなところですね」
「うん。十分かつ簡潔な説明をありがとう」
確かにキリトくんとティアさんの知識量は異常だけど、ヴァル君も読書が趣味なだけあって本が関連すれば十分だと思う。
ユイちゃんもシリカちゃんもエギルさんも感心した様子で、ほ~と言いながら頷いている。
「これで大筋は理解してもらえたと思うけど、
この物当てゲームでヤドリギがバルドルに当たるようなことがあれば、間違いなくそれがラグナロクの始まりになるわ。
それにクエストにしてもイベントにしても、どっちかだったところで防げなければラグナロクは確実に始まってしまうわね」
「特にイベントだとしたらドラマ形式だからハッピーエンドとは限らない、だったな?」
「はい。以前にリーファさんが言っていましたから…」
エギルさんの言うようにイベント型のストーリーはドラマ形式で自動進行していくのでハッピーエンドとは限らず、
それについては随分前にリーファちゃんから聞いたんだよね。
「どちらにしてもわたし達が出来るのはその遊戯に介入してバルドルをロキから守ること。
そうするには正確な時間も知る必要があるけど、そこら辺の情報はどうかな?」
「あたしとヴァル君でしっかり聞き込んでおきました! 2日後の午後12時にアースガルズの中央で行われるそうです」
「お手柄だね、シリカちゃん。これだけ情報があれば大丈夫そうだし、一度家に戻りましょう」
情報としては十分な物が集まったので、報告も含めて情報を整理する必要がある。
帰宅を提案してみんなも同意してくれたのでわたし達は一度22層の自宅に戻ることにした。
ただ、帰る直前に知れたことが1つ……雪に覆われていないからか、アースガルズはいまのところ飛行可能ということだ。
「あれ…?」
「ママ、どうかしましたか?」
「ううん、なんでもないよ。行こうか」
一瞬、キリトくんを感じ取った気がしたけど、気のせいかな。
わたし達は結晶を使って改めて自宅へと転移した。
アスナSide Out
シャインSide
「さて、早速『ミズガルズ』に到着したわけなんだが、まずはプレイヤーやらNPCやらに聞き込みでもするか。
簡単に3組に別れるか……俺とティア、クーハとリンクちゃん、ハクヤとハジメとルナリオの三組だな。どうだ?」
俺の案に全員が頷くなり短く返すなりして反対はない。
ヨツンヘイムにある主要都市にして唯一の街でもあるミズガルズにキリトの指示の元でやってきたわけだ。
ここも前のように雪と氷に覆われているが世界樹の根は根付いているし、街もしっかりと機能している……寒い以外は…。
「隊長! 僕寒いです!」
「ティア、全員に耐寒魔法を頼む」
「くすっ、分かりました」
リンクちゃんの元気な訴えに苦笑しながらもティアに耐寒魔法を頼み、彼女も笑みを浮かべて応じてくれた。
街中とはいえこの寒さは堪えるからな~、他のプレイヤーも厚着したり、俺達と同じように耐寒魔法を掛けているし。
「それじゃあ手っ取り早く情報収集を済ませよう。1時間後にこの中央広場に集合。よろしく頼むぜ」
「「「「「「ああ(はい)」」」」」」
軽く号令を掛けて俺達は組み合わせごとに別れて周囲に聞き込みを始めた。
――1時間後
片っ端から聞き込みをして丁度1時間が経った頃に集合場所の中央広場に戻ってきたら、
同じタイミングでクーハとリンクちゃんが、ほんの僅かに遅れて男3人も集まってきた。
さすがに寒い中で報告し合うのは気が引けるので俺達は近くの宿に入り、そこの一室を借りて報告し合う。
「まぁ取り敢えずの報告なんだが、俺とティアが入手できた情報はそこまでのものじゃなかった。
ただ、少数だが大型の狼型Mobが出現しているってのは聞いた。
多分、ハジメやルナリオがニブルヘイムで遭ったっていう狼型Mobの大型ってことだと思う」
「成果としちゃ十分だろ。知っているのと知ってないのとじゃ雲泥の差だし」
「そうっすよ。いままで居なかったモンスターが急に出てきて対処に遅れることもあるわけっすから」
確かにハクヤとルナリオの言う通りかもな…。
いきなり出現しているモンスターが変化すれば、慣れている俺達はともかく慣れていない奴らはそうとも限らないんだよな~。
俺達の場合はSAOが命懸けだったからあらゆる状況に対応しなくちゃいけなかったわけで、まぁ武術のお陰でもあるか…。
「俺達としてはそんだけだが、お前らはどうだった?」
「……私達の方も似たような情報だが、狼型Mobではない。
ニブルヘイムとムスペルヘイムに繋がる大公スィアチの館、その周辺に人型の邪神……霜の巨人族の出現が確認された」
ハジメから受けた報告に俺とティアは表情を一気に変える。
霜の巨人族っていうのは神話でいうところのラグナロクの時に攻め込んでくる奴ららしい。
一度はヨツンヘイムから撤退した奴らが再び出現したということはこれも予兆の1つなんだろう。
一方で事情を知らないクーハとリンクちゃんは首を傾げていたので説明すると、2人も表情を真剣なものに変える。
「じゃあ最後にオレ達から……って言いたいんだけど、どっちかっていうとリンクから」
「えっとね、僕が聞いた話なんだけどちょっと気になって…。
ワルキューレの人達がみんな揃って居なくなっちゃったっていうのを聞いたの。
NPCから聞いたんだけど、『戦いの為に英雄の魂を導きに行った』って、そう言ってた」
「英雄の魂を導く、エインフェリアのことでしょうね。だからこの街に居たワルキューレ、ヴァルキリー達が姿を消したと」
つまりそれも今後に訪れるラグナロクへの戦力を集めるためってことか…。
ロキの側は着々と戦力を送り込んで、オーディンの方は戦力を蓄える、なのかね?
「報告はこんなところみたいだし、一応外に出てみようぜ。
狼型のMobにしてもどんな戦いをするのか改めて知っておいてもいいだろうし、外に出たら何か分かることがあるかもしれないし」
「そうですね。もう少し情報を探るのもいいでしょう」
「んじゃ、装備を整えていきますか」
俺の提案にティアもハクヤも乗り、外への偵察を行うことになった。
全員で装備を確認したあと、街から出て外の狼型Mobや他のモンスターとも戦闘を行い、ある程度の戦い方は分かった。
それから俺達は転移結晶を使ってキリト達の家に転移した。
シャインSide Out
カノンSide
「まずはイグシティでの情報収集にするけれど、あたし達は少人数だから別れずに行動しましょ。
央都のアルンにも行かないといけないし、迅速に行くわよ」
「こういうところはNPCが一番情報を多く持ってるし、手当たり次第って感じですよね?」
リーダー役なんてやったことがないからどうしようかと思ったけど、
リズちゃんとシノンちゃんだからそこまで気遣わないでいいし、いつも通りに姉貴分らしく振る舞えばいいわね。
それにしてもここも寒いわね……厚着してきて良かったわ…。
「それじゃあカノンさん、リズ、行きましょうか」
「ええ。2人ともよろしく」
「「はい」」
あたし達は3人揃ってNPCやプレイヤーへの聞き込みを始めた。
――1時間後
イグシティを粗方周ってNPCやプレイヤーへの聞き込みが終わったところで一度情報を整理することにした。
「集まった情報だと“バルドルにはヤドリギから作った武器が効く”というのが一番有力な情報、なのよね?シノンちゃん」
「そうですね。『ミストルティン』、または『ミスティルティン』とも呼ばれていて、
形状は矢とも剣とも言われていますし、投げつける様から槍だと言われていることも…。
それに神であるバルドルの名前が出ているということは、ラグナロクが起こる原因の出来事が起こるかもしれません」
「つまり、その武器を作らせなければ、ラグナロクは起こらないってことよね?」
「その可能性はあるわね」
リズちゃんの言う通り武器さえ作らせなければ、または原因そのものさえ潰してしまえばいいわね。
まぁ問題はそれを防ぐにはどうすればいいか、よね。
「これ以上はここに居ても仕方が無いし、今度はアルンに行きましょう」
「そうで……あれ、キリト?」
アルンへの移動を促した時、同意しようとしたシノンちゃんがキリト君の名前を呟いて首を傾げた。どうしたのかしら?
「どうしたの、シノン?」
「いや、あそこにキリトが…」
リズちゃんが聞くとキリト君が居たとのこと。
あたしも彼女もシノンちゃんが指差した方を見てみたけど、そこにはキリト君どころか似ている人すらいなかった。
「どこにもいないわよ」
「ホントだ……気のせいかしら…?」
「誰かと見間違えたのよ、きっと。それにほら、クロ…じゃなくて、ルクスっていう前例があるし」
「それもそうね」
「そのルクスっていう人がどうしたの?」
聞いたことがない名前に疑問を持ったので2人に聞いてみると、笑みを浮かべてから話してくれた。
『ルクス』という少女はあたし達と同じ『
あるクエストで彼女と出会ったそうだけど、その時の彼女の姿はなんと女性型アバターでありながらキリト君のそっくりさんだったみたい。
その時のアバター名は『クロ』といってキリト君に憧れていたそうで、
なんと我流ながら《二刀流》を扱い、戦闘スタイルや装備、果ては言葉遣いまでも彼を真似ていたなんて。
ただ、いまでは過去にあった悲しい出来事を乗り越えてクロのアバターをやめ、
SAOのデータをコンバートしたシルフの剣士、ルクスになっているとのこと。
「へぇ~、そんな娘が居たなんて知らなかったわ。でもそっくりな人でもキリト君似ならもうちょっと噂になると思うんだけど…」
「本人は別に有名になるつもりはなかったみたいで……というか、キリトを語る偽物とか言われたら、狙われるでしょ」
「なるほどね…」
確かにキリト君は良い意味だけじゃなく、悪い意味でも有名だものね。
悪い、というか……相手の勝手な妬みとかが主だけど、それの犠牲にはなりたくないわよね。
「ともあれ、アルンに行きましょうよ。情報収集はまだまだだからね」
あたしは2人を促してアルンへと向かい情報収集を再開した。
ただ、あたしは1つ気になっていたことがある、それはシノンちゃんが見たというキリト君似の人。
シノンちゃんは非常に眼が良い、つまり命中率が高く、GGOの影響や癖もあって人を見抜く力が強い。
そのシノンちゃんがいくらキリト君に似ていたからといって見間違えるだろうか、そう心の中に残っていた。
結局、アルンでも情報収集を行ったけど、得られた情報はアルヴヘイム中で同じ現象が起きていて、
狼型Mobが闊歩している以外のことは掴めなかった。
アルンでの行動が終わってからあたし達は転移結晶を使ってキリト君達の家に転移した。
カノンSide Out
キリトSide
偽善者、途中までは仲間なのに後半で裏切る人物、RPGによくある物語の真の黒幕、それが俺自身の自分への評価だ。
現に俺はみんなに以前のヘルヘイムでの出来事は話さず、アスナとユイにだけ伝えて、
なのにみんなが信じてくれていることに縋っている……無様だな、俺は…。
とはいえ、みんなの信頼に応えるだけの働きはしないとな。
「久しいな、とでも言えばいいか? ロキ」
「ああ、そうだねキリト。キミも解っていると思うけれど、神々の黄昏は近いんだ。
僕達も準備は整っているから、あとは引き金を引くのみだよ」
「アースガルズとムスペルヘイムを除き、世界は闇と氷に閉ざされた。
あとは光が輝きを失い、完全に世界を闇が覆い尽くせばいいだけか。
死者は甦り、巨大なる人は暴れ狂い、氷と闇が世界を飲み込み、炎が世界樹を焼き尽くす…」
「それこそが黄昏……とはいえ、それも未来を残す為の途中経過に過ぎない…。
とはいえ、すまないね。後始末は全てキミに任せてしまうことになりそうだ」
言葉の掛け合いだけで俺はある程度のことは察することができた。
どうやら物語の大まかな流れは神話と同じようだから。だからこそ、ロキの言葉の意味も解るというものだ。
「“光”を穿つ。そうすれば、あとは奴を止めるだけだ」
「奴のことはキミに任せるしかないね。“光”を穿つ為の武器、まずは世界樹にある枝を取ってくるといい。
その次にアースガルズは『ヴァルハラ』の西部に生えている枝もね。その2つを手に入れたらここにおいで、僕が武器の形にしよう」
「分かった。またあとで…」
ヘルヘイムでのロキとの会話も終え、俺はすぐさま転移結晶を使いイグシティへ転移した。
転移してすぐに俺はイグシティの端に向かい、世界樹の枝の上を歩き始める。
本来ならば飛行するのが早いのだが、現在はそれも不可能であるため足で移動するのみだ。
世界樹には3体のネームドボスが存在するが、俺が行く地点にそいつらは居らず、ただ行き止まりがあるだけ。
だがそここそが目的地であり、その場所に着いた俺は端に生えている1本の枝を剣で斬り落として手に入れる。
そして念の為に街へと引き返したところでカノンさん達の姿を視認した為、すぐに姿を隠した。
なにやら俺が居たところを指差して話している様子からするに姿を少し見られたようだ、少し注意しないと…。
3人には悪いなと思いつつも再び結晶を使い、今度はユーダリルへと転移する。
ユーダリルへと転移してきた直後、俺は見覚えのある最愛の女性と娘の後ろ姿を確認し、
これまたすぐにこの身を隠してその場から離れた。
こんなに近くに居たら絶対に気付かれる、最低でも50m以上は離れなくては!
そう思いながら全速力で、周囲にも確認され難い速度で街の外へと出た。
ついでに飛行しているプレイヤーを見かけたので飛行可能だと改めて認識したので即座に翅を展開して高速で飛行する。
向かった先は以前にも訪れたオーディンの住む宮殿『ヴァーラスキャールヴ』より少し離れたところにある、
戦士達の魂が集まる宮殿『ヴァルハラ』のすぐ西側にある森だ。
そこに生えている樹の枝をこれまた剣で斬り落として手に入れる。
「これで必要な物は揃ったか……さて、ロキの元へもう一度行くか」
結晶を取り出した俺はヘルヘイムに転移する。
ヘルヘイムに転移した俺はロキと再び対面し、彼に手に入れた2つの枝を渡した。
武器が完成するのは実行日ということなので改めてくることになった。
そして最後に俺達がどのタイミングで“光”を穿つかを聞き、俺はみんなの元へと戻った。
自宅へと帰ってきた時には全員が既に戻っており、全員の報告が行われた。
俺が話したのはロキが物当てゲームに参加してバルドルを狙っていることだけを伝えた。
『ミストルティン』やそれ以外の情報に関してはみんなが集めた情報と一致するからな。
取り敢えず、午前の情報収集はこれで終了となって、午後からはリーファが、夜にはクラインも合流して各地を調べて周ったり、
知り合いのプレイヤーから情報を貰うことに時間を使った。
そして1日が空けた2日後の午後12時、その時がきた…。
キリトSide Out
アスナSide
わたし達が調べて周った時にヴァル君とシリカちゃんが手に入れた情報、物当てゲームの時間が来た。
12時前に集まっていたわたし達はユイちゃんが調べてくれた平原の中央座標に向かって、そこに降り立った。
そこにはプレイヤーのアバターとはかけ離れた容姿をしている美しい美男美女や屈強な姿の男性や賢そうな女性などが集まっていた。
NPCを示すカーソルがあるから彼らがみんな神々であることはすぐに理解できた。
当然だけど見物はプレイヤー達も居て彼らも面白半分で行く末を見守っている。
そして遊戯が始まり、神々が1人ずつ適当な順番で中央に立っている美しい男の神様に物を投げ始めた、アレがバルドルね。
「アスナ」
「どうしたの?」
「あそこ。あの青年がロキだよ」
キリトくんが声を掛けて来て指差したところにいた美しい青年のことをそう言った。
驚く中でキリトくんは周囲に散らばっているみんなに目配せをしてロキへの警戒を強めた。
「一番近いのはハクヤとハジメとヴァルか…。
それに、あそこに居る弓を持って瞼を閉じたままのが、おそらくは『ヘズ』だろうな」
「ヘズっていうと、ロキに唆されてバルドルを射るっていう盲目の…?」
「ああ。あっちにはルナリオとシャインにクーハが居るし、問題はなさそうだな。俺達はイレギュラーに警戒するのがいいだろう」
確かにこれなら余程のことが無い限りはバルドルの死を防げるかもしれない……だけど、どうしてか不安を取り除けない…。
傍にキリトくんが居るのに、余計に不安が増してくる。
「キリトくん……なにを、考えているの…?」
「この先の混沌を」
「混沌…? それって「動くぞ」あっ…!」
思わず問いかけたけど応えてくれた彼。でもその意味がいまは良く掴めなくて、
もう一度聞き直そうとしたところでロキとヘズが動いた。
ロキは剣を取り出すとそれをバルドル目掛けて投げ出した。
そこに異常な速さで躍り出たヴァル君が剣を弾いて、ハクヤ君とハジメ君がそれぞれの武器でロキに斬り掛かった。
続いてヘズが弓で矢を射かけるとそれをクーハ君が前に出て弾いて、ルナリオ君とシャインさんがヘズを囲んだ。
これで神話でのヘズの暴挙とALOならではのロキの画策は止めることができた。
見物人のプレイヤー達は驚いているけど、パフォーマンスのように思っているのか拍手をしている。
あとはイレギュラーさえ起きなければ無事に…。
「ごめん、アスナ。ユイのことも頼む……信じてくれると嬉しい」
「え、キリトく、あっ!?」
キリトくんが力強く押したことでわたしは尻もちをついてしまう。
その間にキリトくんは体勢を低くしたままに高速で駆け出した。
手を動かしてウインドウを操作していて、次の瞬間には彼をフードつきのローブが顔ごと覆っていた。
さらに武器は剣から槍に代わり、その槍は神々しくも禍々しい輝きを放ってる…
「ま、待って!」
わたしの言葉も空しく、そのままバルドルの背後についたキリトくんは槍を振り回した後、強烈な一閃を放った。
「がはっ!?」
その槍の一撃はバルドルの心臓部分を貫いていて、一瞬の後にバルドルの姿はポリゴン片になって砕け散った。
その直後、彼は再び何処へともなく駆け出し、同時に大きな笛らしき音色が響き渡った。
アスナSide Out
To be continued……
あとがき
今回は視点変更が多かったですね、もう少し視点変更を少なく出来ればと思います。
みんなが情報収集をする中でなにやら怪しい行動をするキリト、葛藤しながらも己の信じた道を進みます。
穿たれたのは光の神であるバルドル、それは黄昏を起こす引き金を引いたということ・・・。
なぜキリトがバルドルを倒したのか、なにが目的なのかは物語の中で明かしていきますので待っていてください。
次回からついに『
それでは次回で・・・。
追伸
前回で説明した企画ですが、やってほしいという声もありましたので折角ですからやってみようと思います。
では企画への参加方法を説明しようと思いますね。
アバター名、妖精種族、使用武器または使用魔法の種類、簡単な容姿の説明などをコメント欄、またはメッセージにお書きください。
それと1か2の数字を選んでくださいね・・・この数字、結構重要ですから。
こんな感じです。物語に登場しますのでよろしくお願いしますね。
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第41話です。
今回は情報収集回になりますので退屈かもしれませんが、是非お楽しみを。
どうぞ・・・。