No.720126

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第286話

2014-09-21 12:53:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1784   閲覧ユーザー数:1621

 

~トールズ士官学院・講堂~

 

「……凄かったな……」

「ええ……まささかあそこまで気合いが入っていたなんて……」

「とても魅入ってしまいましたわ……」

Ⅰ組の出し物の様子を見守っていたリィンの感想にアリサは頷き、セレーネは呆けた表情で呟き

「これがⅠ組―――いえ、”貴族”の”本気”かもしれないわね。」

「ええ……正直、”白き花のマドリガル”ともいい勝負をすると思います。」

「ま、エヴリーヌ達が”本気”を出せば勝てるよ♪」

「フン………まあ、悪くなかったとだけは言っておこうか。」

プリネの感想にツーヤは頷き、エヴリーヌは不敵な笑みを浮かべ、ユーシスは鼻を鳴らした。

 

「し、しかし正直、自信がなくなってきたな……」

「ええ……私達の歌や演奏がどこまで通用するのか……」

マキアスの言葉に頷いたエマが不安そうな表情をしているとサラ教官とレーヴェが近づいてきた。

「ほらほら、肚を括りなさい。君達のステージだって決して負けてないと思うわよ?」

「変に力を入れずに練習通りやれば、お前達にも十分勝機がある。」

「サラ教官……レオンハルト教官……」

「大丈夫……きっといいステージになるよ。」

「インパクトとノリの良さ、心に残る演出は負けてねえ。そのへんは自信を持っていいぜ。」

サラ教官とレーヴェの激励にアリサは驚き、エリオットとクロウは仲間達を元気付けた。

 

「うむ!芸術の魔神たるこの我がいるのだ!心配無用だ!」

「どんな理屈ですか……」

「フフ……でも、ボク達も一緒に頑張ってきたんだから、勝てるよ、きっと!」

「うん!この日の為にわたしたち、一杯頑張ったものね!」

「ま、”盗獅子”のワタシがいるんだから、観客達の心は全部盗んであげるわ♪」

力強く頷いたアムドシアスの言葉にフィニリィは呆れ、ペルルとミルモは微笑み、ヴァレフォルはウインクをし

「ふふふ、こうしてみると”魔神”は変わり者が多いですね。」

「ちょっと、それは貴女にも言える事よ?」

「アハハ……改めて思いましたけど、私達の世界出身の人達からすれば”ありえない組み合わせ”のメンバーですね。」

「そうね……とても小さな形だけど、”光と闇関係なく”みんなが共に協力し合う演奏……絶対に成功させないとね。」

静かな笑みを浮かべるリザイラにベルフェゴールはジト目で指摘し、苦笑するメサイアの意見に頷いたアイドスは優しげな微笑みを浮かべた。

 

「フフ、ならば迷うまい。」

「あとは全力を尽くすのみか。」

「泣いても笑っても本番だ……Ⅰ組の舞台装置が撤去されしだい、セッティングを開始するぞ……!」

ガイウスとラウラの言葉に続くようにリィンは仲間達に号令をかけ

「了解(ラジャ)。」

「ワクワクッ、盛り上がってきたねー!」

「わたくし、心臓が凄くドキドキしてきましたわ……!」

リィンの号令にフィーは頷き、ミリアムとセレーネはそれぞれ興奮し始めた。

 

「リィン君達、失礼するね?」

リィン達がⅠ組の舞台装置の撤去を待っているとトワとジョルジュが入ってきた。

「トワ会長……ジョルジュ先輩も。」

「なんだ、陣中見舞いか?」

「はは、似たようなもんかな。」

「えへへ……サプライズ込みだけど。」

「―――失礼するよ。」

トワが無邪気な笑顔を浮かべて答えるとアンゼリカが入ってきた。

 

「……!」

「へ―――」

「ア、アンゼリカさん!?」

「フフ、何とかギリギリ間に合ったみたいだね。パトリック君達の舞台も中々の物だったね。」

自分の登場にリィン達が驚いている中、ドレス姿のアンゼリカは静かな笑みを浮かべてリィン達を見回した。

 

「先輩……来てくれたんですか!」

「”殲滅天使”の護衛と案内をしているって聞いたけど。」

「しかしなんつーか……お前、そんな美人だったか?」

「まあ、今まで男みたいな格好していたしね。」

「アンゼリカ先輩に失礼ですよ、クロウさん、エヴリーヌお姉様。」

「まあ、気持ちはわかりますが……」

クロウとエヴリーヌの意見を聞いたプリネは呆れた表情で指摘し、ツーヤは苦笑しながらドレス姿のアンゼリカを見つめた。

 

「フフ、私としてはスーツの方が好みなんだが。――――レン君から学院祭に”公務”として向かうから、”ログナー侯爵家”の長女として……そしてメンフィル皇女の秘書として恥ずかしくないフォーマルな格好で来いとのお達しだったからね。これが、その時の為に用意したドレスだ。」

アンゼリカの話を聞いたリィン達は冷や汗をかき

「フフ、確かに礼儀には適っている装いでしょうが……」

「アンゼリカさんが着るとちょっと迫力がありすぎますね。並みの相手がかすみそうなくらいに。」

ラウラとアリサは苦笑しながらアンゼリカを見つめ

「ふふっ、でもとっても素敵です。」

「はい!殿方が今のアンゼリカ先輩を見れば、きっと見惚れてしまうでしょうね。」

エマとセレーネは微笑みながらアンゼリカを称賛した。

 

「なんの、君達の艶姿に比べたらさすがに負けるというものさ。」

「きゃっ……」

「ア、アンゼリカさん!」

するとその時アンゼリカがエマとアリサを抱きしめ

「ん~、やっぱり女の子はいいねぇ♪レン君とずっと一緒だったから、癒しは足りていたけど、まだまだ足りなかったんだよね♪……という事で次は君達の出番だよ♪」

「え”………キャッ!?」

「あ、あたし達もですか!?」

「ア、アハハ……」

更にプリネやツーヤ、セレーネも抱きしめて満足した表情をしていた。

 

「……やれやれ。」

「相変わらずみたいですね……」

「もう、アンちゃんってば……」

その様子をユーシスやマキアス、トワは呆れた表情で見守っていた。

 

「満喫、満喫。―――お次はこちらだっ!」

そしてプリネ達から離れたアンゼリカはフィーとミリアム、エヴリーヌを抱きしめた!

「うーん、これはまたあったかくて気持ちいいなぁ♪」

「あははっ!くすぐったいってばぁ。」

「……不覚。」

「は、離して……!苦しい……!」

「アン、程々にしておきなよ。」

「つーか、完全にセクハラだらかな?」

その様子を見守っていたジョルジュは苦笑しながら諌め、クロウはジト目で指摘し

(はは……)

(……良かったね、ちゃんと来てくれて。)

(フフ……いい風が吹いてくれたようだな。)

リィン達は微笑ましそうに見守っていた。

 

「―――君達のステージ、楽しませてもらうよ。だが、気負う必要はない。今の君達を――――Ⅶ組の全てをステージにぶつければいいさ。」

「ああ、楽しんでくるといい。」

「頑張ってね、みんな!」

「はいっ…………!」

影で自分達を支えてくれた心強い先輩達の激励にリィン達は力強く頷いた。

 

そしてついに運命のステージが幕を開けた…………!

 

 

 


 
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