少女ベティーは船の客室のベッドの上で枕元に小さな聖母マリアの小さな銅像をおき―これはクラブの女性から手渡されたものでした―毎晩、これからどうなるか分からない自分の未来を不安に思い、ただひたすら幸せが来るようにと聖母マリアの銅像に向かってきちんと正座をして目を瞑り両手を合わせてお祈りをしていました。
ある日突然夜中に少女ベティーが飛び起きてクラブの女性を呼びました「お姉さま!」―少女ベティーはクラブの女性のことをいつもそうお呼びになられていました―「どうしたのベティーちゃん!眠れないの?」見ると少女ベティーは、ベッドの上に真っ白なネグリジェ姿の爽やかな面持ちで直立不動で立ち上がって右手の人差し指を天井に向かってまっすぐ上げてこうお答えになられたのでした「今夢の中に全身から眩しい光を出しているマリア様が現れてこうおっしゃったの・・これから先きっと役立つことがあるから文章を学ぶように少しづつでいいからって」
「まあそうなの、それじゃこれを使うといいわ」そう言うとクラブの女性は自分の手荷物の中にある聖書を取り出すと少女ベティーに手渡したのでした。でもまだどう見ても2歳か3歳の子供の少女ベティーに聖書を読める訳などありませんでした。
結局クラブの女性が聖書を朗読して少女ベティーに聞かせることとなりました。
しばらくすると突然少女ベティーが疳の虫が疼いたように大声で激しく泣き出しました。
「ベティー、本当のマリア様に早くお会いしたい、なのに悪魔が邪魔をするの!」そう言ってずっと泣き止みませんでした。頬っぺたはりんご病のように真っ赤に燃えていました。
困ったクラブの女性は、「悪魔なんていません!大丈夫だから心配しなくていいのよ!」と必死で少女ベティーを宥めあやしたのでした。そしてしばらくしてからやっと少女ベティーを大人しくベッドに寝かしつけることに成功したのでした。
その時、少女ベティーとクラブの女性の二人のすぐ横を真っ黒な悪魔の形のシルエットがスゥ~ッと横切ったのでした。
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2011-10-28 21:58:51 に投稿した作品をまた再びアップしました。><