No.719610

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第284話

2014-09-20 08:07:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2104   閲覧ユーザー数:1863

 

~校門~

 

「エリス、待たせたな。」

「リィン兄様。」

リィンに声をかけられたエリスはリィンに近づいた後何かに気付いて目を丸くした。

「兄様……どうしたんですか?少しお疲れみたいですけど……何かあったんですか?」

「はは……エリスにはわかるか。ステージの練習に加えて昨日、色々な事があってさ。」

「色々って……」

リィンの話を聞いたエリスはまた自分の知らない所でリィンが危険な目にあったのかと推測し、心配そうな表情で黙り込んだ後やがて口を開いた。

 

「……あの、兄様。午後のステージもあるでしょうしどうか少しでも休んでください。私は一人でも大丈夫……というより、ご迷惑でなければ兄様の面倒を見させて欲しいです。」

「はは、大げさだって……」

「あ……」

自分を心配するエリスにリィンは優しげな微笑みを浮かべながらエリスの頭を優しく撫でた。

「昨日も十分、睡眠は取ってるし気力も充実している……下手に休むより、エリス達に学院祭を案内してやりたいんだ。ステージの準備があるから昼過ぎまでで悪いけどさ。」

「兄様……」

リィンの話を聞いたエリスは頬を赤らめて嬉しそうな表情をした。

 

「コホン、わかりました……それではお言葉に甘えさせていただきます。」

そしてエリスがリィンを見つめて言ったその時

「よかった……どうやら間に合ったみたいですね。」

「姉様。」

「エ、エリゼ?殿下達と共に学院祭を見て回るから後で合流するって話だったけど……」

エリゼが2人に近づいてきた。

 

「フフッ、エクリア様達が代わりにリフィアを見てくれるとの事ですから、予定より早く合流できたんです。」

「そっか……それじゃあ、早速行こうか、エリゼ、エリス。」

「「はい、兄様。」」

リィンの言葉に頷いた双子の姉妹はそれぞれリィンを中心に左右に並んで歩き始めた。

「ふふっ……まずはどこに連れて行ってくださるんですか?」

「そうだな、まずはⅡ組がやってる屋内庭園なんかに―――」

―――こうして、リィンはエリゼとエリスを一通り案内しながら学院祭を見て回った。

 

「き、君達は……!」

3人が学院祭を見て回っているとお付きの執事を連れたパトリックが声をかけて来た。

 

「パトリック……それにセレスタンさんも。」

「あ……確かハイアームズ家の。」

「……お久しぶりです。」

「エリス嬢……!やっぱり来ていたのか!シュバルツァー、水臭いじゃないか!僕と君の仲だというのに妹御が来るのを黙っているとは!」

3人に近づいたパトリックは嬉しそうな表情でエリスを見つめた後リィンに視線を向けた。

 

「悪い―――って、そんな仲だったか?」

(…………なるほど。フフ、エリスも隅におけないわね。)

パトリックに話しかけられたリィンは反射的に答えかけたがパトリックの変貌に気付いて驚き、パトリックの様子を見てある事を察したエリゼは微笑みながらエリスに視線を向けた。

(えっと、もしかしてパトリックさん、エリスさんの事を……)

(間違いなく恋しているのでしょうね♪)

(ふふふ、決して叶わぬ恋ですから、見ていて不憫ですね。)

(……とても彼の事を可哀想だとは思っているようには見えないわよね……?)

同じように見守っていたメサイアの念話の続きにベルフェゴールはからかいの表情で答え、静かな笑みを浮かべて呟いたリザイラの言葉を聞いたアイドスは冷や汗をかいた。

 

「ご機嫌よう、リィン様。そちらの方達はお噂の妹君達でいらっしゃいますね。」

「初めまして、リフィア皇女殿下専属侍女長のエリゼ・シュバルツァーと申します。」

「ほう……では貴女がかの”聖魔皇女の懐刀”ですか。お若いながら、皇族に仕える貴族の子女としてとても優秀なお嬢様だと聞いております。」

エリゼが名乗ると執事は感心した様子でエリゼを見つめ

「恐縮です。」

「坊ちゃまの話によると確か以前エリゼ様に夕食をご馳走になったとか。―――ありがとうございました。お礼が遅くなり、大変申し訳ございません。」

「いえ、お気になさらず。」

ある事を思い出した執事はエリゼに会釈をした。

 

「そしてそちらのお嬢様はエリゼ様の容姿ととてもよく似ておられますが、もしかして……」

「はい、エリゼの双子の妹のエリス・シュバルツァーと申します。パトリック様におかれましてはご無沙汰しております。」

「様だなんて他人行儀な呼び方はやめてくれたまえ!丁度いい、これを機に僕と学院祭を回って―――」

そしてエリスに見つめられたパトリックが答えた後エリスに近づこうとしたがリィンがエリスの前に出てパトリックを阻んだ。

 

「シュバルツァー……何のつもりだ。妹御との交流くらい深めさせてくれてもいいだろう。」

「悪いが妹は、社交界デビューをまだ済ませていない身だからな。余計な虫がつかないようにするのも兄貴としての役割でね。」

「兄様……」

「フフ……」

パトリックと睨みあっているリィンの様子をエリスは驚きの表情で見つめ、エリゼは微笑んでいた。

 

「ぐっ、だから何で君は妹のことになるとそんなに問答無用な感じになるんだ……」

「フフ、仲睦まじい兄妹の交流。邪魔するのは無粋の極みかと。準備もあることですし、退散した方がよろしいでしょう。」

「―――それともう一つ。パトリック様、エリスには既に将来共になる事を誓い合った殿方がいますので、その方に誤解されるような事をされるのは困ります。」

「エ、エリゼ!?」

「ね、姉様!?」

「おや。」

微笑みながら言ったエリゼの言葉を聞いたリィンとエリスは驚き、執事は目を丸くし

「!!!???な、ななななななななっ!?しょ、将来共になる事を誓い合った殿方ってま、まままま、まさか……!エ、エリス嬢!今の話は本当なのか!?」

パトリックは混乱した後表情を青褪めさせてエリスを見つめて尋ね

「………………はい……………………」

「そ、そんな………………………………」

エリスが嬉しそうな表情で頬を赤らめて頷くとパトリックは悲痛そうな表情をしたまま石化したかのように固まり

「坊ちゃま…………」

パトリックの様子に気付いた執事は憐みの目でパトリックを見つめ

(アハハハハハハッ!確かにエリゼは嘘は言っていないわね♪エリスに横恋慕していたあの子にとっては大ショックでしょうね♪)

(ふふふ、ですが早めに叶わぬ恋である事を知れてよかったのではないですか?)

(アハハ…………ちょっと可哀想な気もしますけど、エリスさんはリィン様を心から愛している上既に身体も重ね合っている仲ですから、パトリックさんの入る隙間はないですものね……)

(まあ、相手が悪かったとしか言いようがないわね。)

ベルフェゴールは腹を抱えて笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアとアイドスは苦笑していた。するとその時正午を知らせる鐘の音が聞こえて来た。

 

「この鐘は……」

「正午の鐘……もうそんな時間なのか。」

「くっ、残念だがそろそろ舞台の準備がある。シュバルツァー、刮目してみているがいい!Ⅰ組とⅦ組、どちらが上か決着をつけようじゃないか!」

「ああ……望むところだ。お互い全力を尽くしてベストを目指そう。」

リィンはパトリックと睨みあった。

 

「フッ、勝つのはあくまで僕達だがな。――――エリス嬢、どうか僕の勇姿をその目で見届けてくれたまえ!それを見ればきっと君の心も変わるだろう!それと後夜祭ではぜひ僕とダンスを―――」

「坊ちゃま、講堂へ急ぎますよ。―――失礼します。リィン様、エリゼ様、エリス様。」

そして二人は去って行った。

 

 


 
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