キャノンボールファスト当日
試合はIS学園ではなく市のアリーナで行われる
会場は超満員で、IS産業関係者や政府関係者、その人たちの警備や一般で見に来た人たちなど様々である。最も一般の人は女性がほとんどのようだ
また、今回中学生は参加しない。そのため観客席にいる。もちろん、蘭もそこにいる
現在、レースに参加する生徒たちは準備をしている
レースの順番は、最初に2年生、次に1年の専用機組、訓練機組。最後が3年である
一年生の専用機持ちが多いため、このようになっているようだ
「そろそろ2年生のレースが始まるころだけど……楯無さんが優勝だよな?」
「そうとは限らないよ。専用機を使っていないからって弱いとは限らないでしょ」
「それはそう……でも、個人的には、お姉ちゃんに勝ってほしい」
控室で一夏はシャルロットと簪と話していた。2年生のレースを見ながら準備をしている最中である
「一夏、調子はどうなのよ?」
そこに鈴が乱入してくる
「まあいつも通りやるさ。いざとなったら力を使わせてもらうけどな」
「それは私も同じよ、精々吹っ飛ばされないようにしなさい」
「大丈夫、僕ならかわすから」
「私は、撃ち落とす」
「できるものならやってみなさい」
言葉だけ聞いていると仲が悪いように感じる
だが、ここにいる人達は相手を認め、高みに行こうと考えている
2年生のレースを見学しているうちに一年生の専用機組はレースの準備をするように教員から指示を受ける
時間がたつのが速いと思いながらそれぞれ最終調整に入る
一年生の専用機持ちが全員スタートラインに立つ
「私は負けない……お前たちには」
箒は静かに呟く。一夏達を見ながら
「あら、箒さん随分と張り切っていますわね。ですが……彼らは確かに強敵ですわ」
「……どれだけ強くとも関係ない。勝つのは私だ」
セシリア、ラウラも決意表明をしている
そして、スタートの合図が出される
真っ先に出たのは、箒であった
(ふふ、この紅椿の実力を見せてやる!)
そのまま先陣を切ると思われていたが、ラウラがぴったりと背後に張り付いていたラウラが前に出た
「甘いな! お前は未だに過信しすぎだ」
今度はラウラがトップになる。それを許すわけはなく、セシリアは加速しながらラウラを狙っているが、うまくいかないようだ
そしてそんなトップの争いとは離れている4人は、焦る様子もなくほぼ並びながら進んでいる
やる気がないように見える人が多いだろう。しかし、実際は違う
今前に出ても争っている3人に巻き込まれてしまう為、余計なエネルギーを使用してしまう
だから今は確実に進み、2週目以降に勝負を仕掛ける
4人はそう考えながら動いている
勝負を仕掛け始める2週目に入ろうとした瞬間
(誰か……来る!)
(あの3人は……気づいていないみたい)
(まずいわ、3人に狙いをつけている)
(……私が止める)
簪が呟き、薙刀を振るう
振った時に発生させた風圧が箒たちを襲い、彼女たちを吹き飛ばした
「何を……!」
何をする。そう言おうとした時、彼女たちがいた所にレーザーが降り注がれていた
レーザーが発射された砲口を見上げると一人の少女が一夏達を見下していた
以前、学園祭の時に公園に現れた子と同じである
「あれは、サイレント・ゼフィルス!?」
気が付いたセシリアは、彼女を倒すべく一気に飛び出した
侵入者がやってきたと同時に観客はパニックを起こしている
スタッフに加え、チェルシーとナターシャも協力し、観客たちに落ち着くように指示を出している
中学生たちも慌てそうになっていたが、
「皆! ここで慌てたらもっと大変なことになるから落ち着いて!!」
蘭の一声で皆冷静になる事が出来た
けど何人かは不安そうにしている
「でも……あの侵入者に勝てるの?」
「大丈夫よ、一夏さんたちなら勝てる。私は信じているから」
蘭の強い意志を持った瞳に反対の意見をいう者は誰一人としていなかった
(蘭も気合が入っているな、それにしても……)
彼女の近くにいたガイは今やってきた侵入者を見上げている
それは近くにいたチェスターとリーガルも同じように見上げているのだろう
(……あいつの目的は何だろう……それに、他にもいる気がするな)
彼らは周りを警戒しながら、それぞれのパートナーの様子を見ていることにした
アリーナでは、すでに戦闘が始まっている
セシリアは侵入者に対してむきになっているように見える
少なくとも一夏にはそう見えた
「いつものセシリアじゃないな……あの侵入者……多分、亡国企業の一人だと思うんだが、何かあるのか?」
事前に楯無から情報をもらっているため、一夏も相手が亡国企業ということを理解している
「相手が使っている機体は、イギリスから強奪されたものなんだ。それに、セシリアの機体とは姉妹機だから余計に気にしているんだよ」
一夏の質問にはシャルロットが答える
代表候補生であるシャルロットはもちろん、鈴や簪も相手が亡国企業であることは知っている
それぞれ国から情報をもらっているからだ
シャルロットの答えに一夏は納得する。そして助太刀するべきかを考えている
「セシリアの思い通りにやらせてもいいかもしれないけど……冷静になっていないからあのままじゃ勝てないわね。あたしが行くから一夏達は援護をお願い」
鈴がそのまま飛び出し、一夏とシャルロット、簪は彼女の提案に頷く
侵入者の前に鈴が立ち、構える
「一応聞いておこうかしら、あんたの名前。亡国企業の侵入者」
「ふん、貴様のような奴に答えるつもりなど」
言い終わる前に彼女は切りつけられると同時に遠くに吹き飛ばされていた
相手は何が起きたのか、わかっていない様子である
「今軽くやったけど、次から本気でやった方がいいかしら? 侵入者さん?」
侵入者は悟った。先ほど対処していた相手とはまるでレベルが違うということを
「いいだろう、貴様から片づけてやる」
相手は構え直し、鈴の方を向く。既にセシリアのことは忘れているかのように
「ちょっと鈴さん、邪魔を……」
「駄目だ、セシリア。今のお前は冷静じゃないからあいつには勝てない」
いきなり出てきた鈴に怒りを覚えたが、一夏の言葉に反論できなかった
確かに彼女は、侵入者の姉妹機に対して冷静でいる事が出来なかった
それだけでなく、相手の操作技術にも嫉妬していた
自分ができないことを軽々とやってのける相手に対して……
「へえ、偏向射撃。そんな事が出来るんだ……けど、それであたしに勝てるとでも?」
鈴はまるで何度もこの攻撃を受けたことがあるかのようにかわす
侵入者もこれには、苛立ち攻撃の量が増えるが逆に質が荒くなり、余計にかわしやすくなっていた
(何だ、これなら参加者はもちろん、セシリアたちでも大丈夫かもしれないわね)
「あらあら、エムってば随分苦戦しているわね」
観戦室でスーツを着た一人の女性がアリーナでの行われている試合を見ている
「正直、こうなるとは思っていなかったわね。少しこれからどうするかを考えないと……」
「それならおとなしく捕まるというのはどうかしら? 亡国企業のスコールさん?」
「ええ、抵抗はしてほしくないものですね」
彼女の下に楯無と虚がやってきた
勿論、ローエンとメルも一緒である。スコールには見えていない
「随分と舐められたものですね。私があなたたちごときに遅れを……」
スコールと呼ばれた女性は二人を見て発言を止めた
(この子達、油断できないわね)
少なくともきちんと自分の実力を判断したうえで発言しているということが
「そうね、悪くない提案かもしれないわ。でもそれだと困るから抵抗させてもらうわ」
そう発言しながらナイフを虚に投げつける
楯無は専用機を持っていることは彼女も知っている
だからこそ、ISを持っていない虚に狙いをつけることにした
だが虚は懐に隠していた小刀を素早く取り出して飛んできたナイフをはたき落とした
「随分と失礼な挨拶ですね。亡国企業での流行ですか?」
「あら、やるわね。ISを持っていなさそうだから油断したわ」
「ふふふ、そのまま油断しているままでもいいのよ?」
お互いに相手の様子を見ながら構えている
だが、スコールと呼ばれる女性は自分が不利であることを理解している
単純に1対2であるからだけではない
先ほど、あいさつ代わりとはいえ簡単に対処されているため、心の中では少し動揺している
(あんな簡単に防がれるとは思っていなかったわ、とにかくISを展開させて一気に……)
スコールは冷静に考えながら作戦を立て終える
作戦を実行しよう、スコールがそう思った時
「亡国企業のスコール、君に用事がある……これは失礼、何かお話し中だったかな?」
ドアから赤を中心とした鎧を着ている、40代くらいの男性が入ってきた
何処かの帝国の騎士のようにも見える
口調は穏やかの者だが、彼が部屋に入った瞬間、この部屋の空気がガラリと変わった
「どなたかしら? 私はあなたのことを知らないのだけれど?」
冷静を装いながらスコールは質問をする
「君に伝言だ。撤退しろ、君の上司、エターナルがそう言っていたよ。私は、エターナルとは縁があってね。あまり勝手な行動をすると困るという風にも言っていたか」
「そう、ならば撤退させてもらおうかしら。更識さんたちもそれでいいかしら?」
「……ええ、今彼女を捕えようとしたらそこにいる騎士様が、邪魔をするのでしょう?」
虚も同じように頷く
今でてきた彼を相手するのは、かなり厳しい
楯無と虚は気づいた。この人物は世界樹大戦の人であると
パートナーが誰かは分からないが、実力者であること
自分達のパートナーと共に戦っても無事では済まないのは間違いない。それほどの実力を相手からは感じている
「物わかりのいい少女たちだ。そこで苦戦している彼女にもそう伝えるように」
「ええ、逃げ切ってからそういたしますわ。では」
スコールはISを素早く展開させると同時に閃光弾と徹甲弾を天井に向かって放つ
強烈な光によって目をくらませ、その隙にスコールは逃走した
逃げたことを見届け、去ろうとする騎士に対して楯無は質問をする
「名前くらい教えてもらいたいものですが……」
(いえ、彼の名前なら私が知っています)
「成程、君のパートナーはコンダクター殿か、ならば彼から聞くといい」
その発言と同時に彼は姿を消した
(ローエンさん、一体あの人は……?)
(あの方は私たちの住む世界にある帝国の一つで、騎士団長を務めている男です。名前は、アレクセイ・ディノイア。かなりの強敵です。そして、どうやら彼が16人目の参加者のパートナーですね)
メルの質問にローエンは答えた
あのローエンにそこまで言わせるほど強いのか……そう思うしかなかった
スキット
観客について
大会が始まる前、観客席でガイは近くにいたリーガルとチェスターと話している
「それにしてもこんなに大勢の人が集まるとは思ってもいなかったぜ。ISでレースするだけだろ?」
「まあ確かにそうだが、その結果やISがどうなっているかを知りたがる人は多いからな」
チェスターの質問にガイが答える
「世界各国から軍事関係の人間だけでなく政治関係の人間も来ているのか。ISが世界にどれだけ影響を与えているかというのが、良くわかるな」
「ISはこの世界において最強の兵器とされている。どの国が力を持っているのかを知りたいのだろうな」
「それだけじゃない、優秀な人材を引っこ抜くためにも見に来ている感じがする」
リーガルとガイの呟きにチェスターは少し不満そうにしている
「けどよ、参加している生徒たちはそんなこと考えないで、楽しく競い合えばいいと思う」
「それは私も同意見だな。生徒達には大人の事情についてあまり気にするべきではないと思う。そろそろ始まるようだ」
「さあ、どんな戦いになるのか、純粋に楽しみだ」
ガイはものすごく楽しみに観戦しようとしている
それにつられ二人も観戦することにした
アレクセイを登場です。本編でもかなり強かったため、こちらでも強めです。
これでテイルズ側から16人登場したことになります。
感想・指摘等あればよろしくお願いいたします。
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キャノンボールファスト大会当日です。