No.718331

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第272話

2014-09-17 00:20:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1566   閲覧ユーザー数:1435

 

 

10月23日――――

 

学院祭1日目、Ⅶ組のメンバーはそれぞれ学院祭の出し物を堪能して、1日目の学院祭が終わると全員で寮に戻った。

 

同日、19:00――――

 

~第三学生寮~

 

「うん、これでバッチリだね!」

「そうね、最後の曲の導入も気が利いてる感じだし……」

「なかなかのサプライズになってくれそうだな。」

「だろ?」

エリオットやアリサ、マキアスの言葉を聞いたクロウは笑顔になり

「あんだけ練習した上、更に練習したんだからエヴリーヌ達の勝ちは決まったも同然だよね。」

「フフ、そうですね。」

「後は本番で練習通りの演奏をするだけですね……」

「ええ……お父様やエステルさん達もきっと驚くでしょうね。」

エヴリーヌの言葉を聞いたセレーネは微笑み、ツーヤとプリネは静かな笑みを浮かべた。

 

「フン、奇策に近いというのがこの男らしくはあるが……」

「というか完全に不意打ちだと思うけど。」

「フフ………まあよかろう。学院祭の主旨にも合っているだろうしな。」

ジト目で見つめるユーシスとフィーの言葉を聞いたラウラは苦笑し

「あとは俺達がどこまで観客のテンションを上げられるか……」

「まあ、ここまで来たらもう気合いあるのみだろう。」

リィンの言葉にガイウスは静かに頷いた。

 

「んー、盛り上がってきたねぇ!あれ、いいんちょ。なんか元気ないねー?」

「どうしたの?体調が悪いとか?」

その時不安そうな表情をしているエマに気付いたミリアムとアリサは尋ね

「……………………」

リィンは静かな表情でエマを見つめた。

 

「いえ……大丈夫です。……そういえば、クロスベル方面でまた動きがあったみたいですね。」

「ああ……あの噂か。」

「IBC―――”クロスベル国際銀行”。その銀行が、各国から預かる国外資産を凍結するという噂ね。ディーター・クロイス市長。自治州代表の一人にしてIBC総裁も兼任する資産家……実は一度お会いしたことがあるわ。」

「ええっ!?」

「そうなのか……」

「まあ、ラインフォルトグループ会長のご息女ですから会う機会は会ったでしょうね。」

アリサの話を聞いたツーヤは驚き、リィンは目を丸くし、プリネは納得した様子で聞いていた。

 

「ええ、母のついでだけどね。ラインフォルトの提携先でもあるし、導力ネットやARCUSについても仲立ちをしてくれていたわ。その時会った時は、ここまで乱暴なことをする人には見えなかったんだけど……」

「もし、IBCが各国の国外資産を本当に凍結したら……帝国のみならず、大陸全土でも混乱は避けられないでしょうね。」

「恐慌が起きるかも。それも結構大きいヤツが。」

「しかも銀行からお金を引き出せなくなりますから、民の生活にも支障がでるしょうね……」

エマの話に続くようにフィーとセレーネはそれぞれ推測し

「ねえ、プリネ。メンフィルも影響あるのかな?」

「…………少なくともゼムリア大陸にあるメンフィル領には影響が出てしまうでしょうね……まあ、いざという時の為に溜め込んである国庫に莫大な資産がありますから、それを切り崩せば早期に解決は可能ですが……」

エヴリーヌに尋ねられたプリネは真剣な表情で考え込みながら答えた。

 

「フン、公爵家も資産の一部をIBCに託してはいるが……」

「んー、でもわかんないんだよねー。このまま両帝国と共和国を怒らせたら自治州自体が消えちゃいそうなのに。」

「……それも覚悟の上か、それとも別の狙いがあるのか。」

ユーシスとミリアム、ガイウスはそれぞれ考え込んでいた。

 

「しっかし、この状況でお前らの家族は来れんのか?お偉いさんが揃い踏みだろ?」

「それは……確かに厳しいかもしれません。学院の理事である以上、顔くらい出すと思ってましたが。」

クロウの指摘を聞いたマキアスは考え込み

「うーん、ウチは姉さんはともかく父さんはちょっとわからないな……」

「私の所も……祖父はともかく母は厳しいでしょうね。」

エリオットとアリサは困った表情をしていた。

 

「ふむ、オレの所は弟が遊びに来るくらいだが……」

「俺の所も帝都から妹が来るくらいだから問題ないな。……ただ、リフィア殿下お付きのエリゼはちょっとわからないな……一応予定では明日の学院祭にリフィア殿下も顔を出すからその時にお付きとして同行するそうだけど…………ラウラとユーシスの所も、一応来る予定なんだろう?」

「うむ……ただ知っての通りあのような立場になったからな。状況次第という所であろう。」

「フン……俺の兄もわからんな。自由の利く立場のはずだが最近、色々動いているようだし。」

リィンに尋ねられたラウラは考え込みながら答え、ユーシスは真剣な表情で答えた。

 

「さっき連絡があったけど全員、いらっしゃるそうよ。」

その時サラ教官とレーヴェが食堂に来た。

「サラ教官……レオンハルト教官……」

「それ、本当なんですか?」

「ええ、今日のうちに改めて学院に連絡があったの。実際、クロスベルの状況はすぐに帝国内に影響が出る程危機的なものではないし……それよりは、各行事に参加して関係者を安心させたいみたいね。」

「そ、そうですか……」

「なるほど……少し安心しました。」

サラ教官の答えを聞いたマキアスとラウラは安堵の表情をし

「ちなみにメンフィル帝国の方はどうなんでしょうか?」

「無論メンフィルも同じ考えだ。既にリウイ陛下、イリーナ皇妃、ペテレーネ神官長、リフィア殿下、そして専属侍女長であるエリゼとエクリアはトリスタの町の宿に先程到着し、チェックインを済ませた所だ。」

セレーネの質問にレーヴェは静かな表情で答えた。

 

「ええっ!?リ、リウイ陛下達がこのトリスタに!?」

「わあ……!リウイお兄ちゃんたち、もう来ているんだ♪」

「アハハ……宿の人達が大騒ぎしていないといいのですが……」

レーヴェの話を聞いたリィンは驚き、エヴリーヌは嬉しそうな表情をし、ツーヤは苦笑し

「フフ、そうね。レーヴェ、レンとアンゼリカさんも来るのよね?」

ツーヤの言葉に頷いたプリネはレーヴェに確認した。

 

「ああ、当日リムジンでトリスタに来ると聞いている。それとリウイ陛下の話ではもしかしたらエリウッド公爵夫婦も明日の学院祭に来訪されるかもしれないとの事だ。」

「エ、エリウッド公爵夫婦って言ったら……」

「確か自殺したはずだったが、何故か記憶喪失になった挙句異世界に流されて公爵家の当主に見初められて正妻になったマキアスの親戚か。」

予想外の人物が来訪するかもしれない話を聞いたエリオットは目を丸くして、静かな表情をしているユーシスと共にマキアスとツーヤを見つめ

「ね、姉さんが学院祭に来るんですか!?」

「それはあたしも初耳です。手紙には学院祭に来たいような素振りは書いてなかったのに……」

マキアスは血相を変えて立ち上がり、ツーヤは目を丸くし

「まだ確定事項ではないがな。」

レーヴェは静かな表情で答えた。

 

「それよりも明日のステージ、せいぜい気合いを入れなさい。Ⅰ組のオペレッタだったけ?さっきリハーサルを覗いたけど恐ろしく気合いが入ってたわよ?」

「あれ程の出来映えなら正直優勝してもおかしくないだろうな。」

「え……」

「ま、まさか今日もリハーサルをやってたんですか!?」

サラ教官とレーヴェの話を聞いて仲間達と共に血相を変えたエリオットは信じられない表情で尋ねた。

 

「学院長に直談判した上で特別に許してもらったみたいね。甘ったれ貴族クラスと思いきや、なかなか大したガッツじゃない。よっぽど君達に勝ちたくて仕方ないみたいね。」

「まあ、Ⅰ組は今の所Ⅶ組に全ての分野において敗北し続けていたのだから、”貴族”の”誇り”とやらをよほどお前達に思い知らせたいのだろうな。」

サラ教官とレーヴェの推測を聞いたリィン達は黙り込んだ、

 

「ど、どうしましょう……」

「僕達ももう一度くらいリハーサルをした方が……」

「ええ……念の為にした方がいい気がしてきました………」

「―――いや、こっちはもう現時点の”ベスト”が掴めてる。これ以上は蛇足ってモンだぜ。」

それぞれが不安そうな表情をしている中クロウは静かな笑みを浮かべてリィン達を見回した。

 

「そうだね……今から焦って練習を繰り返すと混乱する可能性があるかな。」

(うむ、確かにそれは一理あるな。それに”焦り”によって練習中に怪我等をすれば本末転倒だからな。)

エリオットの話を聞いたアムドシアスは納得した様子で頷き

「確かに……ラクロスにしても試合前日は休むものだし。」

「ふむ……それならばジタバタしても仕方あるまい。今夜はゆっくり休んで英気を養い、明日に備えればよい。」

「ああ……きっと良い風が吹くだろう。」

「というかエヴリーヌはこれ以上練習するのなんて嫌だし。」

「もう、エヴリーヌお姉様ったら……」

エリオットとクロウの話を合図にⅦ組の面々はそれぞれ落ち着きを取り戻した。

 

「ふふっ、なんだ。落ち着いてるじゃないの。ここで焦って練習しようとしたら説教してやろうと思ってたのに。」

そして口元をニヤニヤさせながら言ったサラ教官の発言を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。

「あのですね……」

「焚き付けようとしたのは教官でしょうに………」

「サラ……仲間外れでスネてる?」

「す、すねてないもん!」

フィーの指摘にサラ教官が答えたその時鐘の音が聞こえて来た。

 

「あら、これって……」

「こんな時間に鐘が………?」

「……………………」

「いや、ちょっと待て……こんな鐘の音……今まで聞いた事あったか?」

鐘の音を聞いたリィン達が戸惑っている中レーヴェは目を細めて黙り込み、ある事に気付いたクロウは疑問を口にした。

 

「確かに、いつも学院で鳴っているのと違うような……」

「あ―――」

「まさか…………」

「あの時、ローエングリン城で鳴っていた……!?」

「……間違いない。同じ音だ。」

「ああ、だから聞き覚えがあったんだ。」

「ええっ!?じゃ、じゃあまさか……!」

「馬鹿な……だが、この響きは確かに……」

「ええええっ……!?どういうコト……!?また、お化けが出たの!?」

その時レグラムに特別実習に行き、”ローエングリン城”で起こった不思議な出来事を思い出したリィン達A班は血相を変えた。

 

「それって、もしかして……」

「ラウラの故郷のお城であったっていう……?」

「……どうやら妙な話になってきたみたいね。―――どこで鳴っているか何となくわかってきたわ。気になるでしょうから君達もついてきなさい。」

その後外に出たリィン達は学院に急行すると何かの結界に包まれた旧校舎を見つけ、旧校舎に向かって行った。

 


 
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