No.717398

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第五十二話

お待たせしました!

 今回は拠点第二回目という事で、登場する

 のは風と稟です。

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2014-09-14 19:43:26 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:6235   閲覧ユーザー数:4509

 

「ぷーーーーーーーーっ!!」

 

「はぁ、またですか…はーい、稟ちゃーん、とんとんしますよ、とんとーん」

 

 久々に洛陽に来ていた稟は今日も盛大に鼻血を吹いていた。

 

「ふがふが…すまない、風。何時も何時も…」

 

「それは言わない約束ですよ、おとっつぁん」

 

「おとっつぁん?」

 

「こういう時はそう言うのが天の国のお約束だとお兄さんが言ってたので、ちょっとやってみた

 

 だけですよー。でも稟ちゃん最近随分と鼻血の回数が多いですけど大丈夫ですかー?」

 

「い、いや、その…何と言えば良いのか『原因はこれですかー?』あっ、ちょっ、風!?」

 

 風が素早く稟から取り上げたのは…。

 

「おやおや、また八百一ですかー。しかもこれは輝里さんの新作ですねー。すっかり稟ちゃんは

 

 これの虜ですねー」

 

 そう言われた稟はバツの悪そうな顔で眼を伏せる。

 

「そ、そうは言うがな…潁川郡にいるとなかなか新作をすぐに買う事も出来なくてな…輝里殿に

 

 頼んでも『八百一はあくまでも著作物として制作している物だからちゃんとした店でのみでの

 

 販売しか受け付けない』と…だが洛陽にいれば輝里殿の書いたばかりの物がわずか数日で大量

 

 の本となって売っているし…つい財布の紐も緩むという物ではないかと」

 

「すると財布の紐のついでに血管も緩んで鼻血大放出という事なのですねー?」

 

 風にそうツッコまれると何も言えなくなる稟であった。

 

 

 

 ちなみに何故輝里の書いた物がわずか数日で本となるのかというと、これまた一刀の知識によ

 

 ってもたらされた紙の作り方と活版印刷によるものなのであった。

 

 当然、この時代には既に紙すきの技術はあったのだが、まだまだ大量に製造出来るような物で

 

 もなかったのだが、一刀が知っている紙すきの技術により質の高い紙が大量にしかも今までよ

 

 りも遥かに安価に製造出来るようになった為、紙の使用量が飛躍的に伸びたのである。

 

 さらに活版印刷により、同じ内容の文章を大量に作る事が可能になり、本の製造数も一気に伸

 

 びたのであった。

 

 当然、そうなれば八百一の部数も増えて、しかも製造のお膝元である洛陽においては本屋に並

 

 ぶ早さも地方とは比較にならないのは当然といえば当然なのであったのだが(ちなみにそれで

 

 も他の本は本屋に並ぶまで早くても二週間近くかかる為、八百一業界のスピードが半端無いの

 

 も事実なのではあるが)。

 

 ・・・・・・・

 

「それにしても稟ちゃんの鼻血は異常ですねー。今はこうやって風がとんとんしてますから良い

 

 ですけど、風がいない所でそういう事があった場合どうしようもなくなりますよ?」

 

「うっ…私とてこのままで良いとは思ってないが」

 

「…もしかしてそれで何とか耐性をつけようとして八百一読みを繰り返しているのですかー?」

 

 風がそう問いかけると稟の眼が泳ぎ出す。

 

「はぁ…完全にそれ逆効果じゃないですかー。とりあえずしばらく八百一は禁止に…」

 

「わぁぁぁ!?それは勘弁してくれ、風!私の人生の潤いが…」

 

「それで稟ちゃんの人生が潤う前に、出血多量で人生に終わりが来ると思うのは風の気のせいじ

 

 ゃないですよね?」

 

「うっ、それは…しかしだな…その…」

 

「はぁ…仕方ありません、何とか本を読んでも稟ちゃんの鼻血が出ない方法を探してみるしか無

 

 いですねー」

 

 

 

「…それで俺の所に?華佗じゃなくて?」

 

「華佗さんは鼻血の止め方は知っていても出さずに済む方法までは知らないんだそうです。なら

 

 ばお兄さんならきっと知ってると思いましてー」

 

 いきなり俺の執務室に稟を連れてやってきた風がそのような事を聞いてくる…ていうか、俺が

 

 そんな事を知っているわけも無いのだが。

 

「でも出さない方法なんてそういう本を読まない事位しか俺にも思いつかないけど…」

 

「一刀殿までそのような事を言うのですか!?この本は我が人生に潤いをもたらすまさに神の書

 

 とも言うべき物で…」

 

 それから稟は滔々と語り始めたのだが…言ってる事はただの腐女子発言であったりする。

 

「風、一体どうしたら…」

 

「ぐぅ…」

 

「寝るな!」

 

「おおっ!?稟ちゃんのあまりの壊れぶりにもはや風もどうしようも無いと思い寝てしまったの

 

 ですよー」

 

 そこまで堂々と匙を投げられるといっそ清々しい…わけは無いな、うん。

 

「本来なら個人の趣味に関してどうこう言うつもりも無いのだけど…それが原因で出血多量で死

 

 ぬなどという展開は良くないのは確かだ。俺も付き合うから何とか考えてみよう」

 

「いやですよー、お兄さん。急にこんな所で交際を申し込まれても…風は何時でも良いですけど」

 

「…何の話だ?」

 

「…そういうのをお兄さんに求めた風がバカでした(怒)。とりあえず稟ちゃんの事を考えます」

 

 そう言って風は何だか怒っていたけど…俺、何か悪い事したのだろうか?

 

 

 

「ええーっ…そないな事ウチに言われたかて分かるわけ無いやん」

 

 まず向かったのは真桜の所であった。彼女の絡繰で何か…とか思ったけど、普通に考えて無理

 

 に決まってますよねー。

 

「でも…そうや!これなら、もしかすれば…」

 

「おっ、何かあるのか?」

 

「じゃじゃーん!この『瞬間手動撲殺装置』を使って鼻血を出す前に…」

 

「待てぇい!それはただの鈍器だろうが!」

 

 実際、真桜の持っているのは棘付きの大金槌であった。

 

「ただの鈍器とは聞き捨てならんなぁ~。見てみぃ、これを!」

 

 そう言って真桜は柄の所にあるスイッチを押すと、棘が出たり入ったりしている。いや、それ

 

 でどうしろと?

 

「ふっふっふ、つまり棘を出したまま殴るか殴ってから棘を出すかが選択できるっちゅう代物や。

 

 どうや、参ったか!」

 

「参るか!」

 

「むぅ、ならこれでどうや!」

 

 真桜がそう言って違うスイッチを押すと、棘の先の小さな穴から何やら変な色をした液体が出

 

 てくる。

 

「で、それは何だ?」

 

「ふっふっふ、不潔極まりない水や!これを傷口に流し込む事によってかすり傷でも致命傷にな

 

 るかもしんないという超高度な技術や!」

 

「とりあえずこれは没収及び破壊」

 

 こんな物が世に出回るとろくな事にならないので破壊した俺は、恨めしそうな顔で睨む真桜を

 

 無視してその場を後にした。

 

 

 

「はぁ…鼻血を止める方法、ですか?」

 

「そう、何かこう気功みたいな方法で無いかな?」

 

 今度は凪に聞いてみる事にした。もしかしたら気合い的な何かでうまくいかないかと思っての

 

 事だったが。

 

「確かに気合いが満ちればある程度制御する事は出来るかもしれませんが…」

 

「おおっ、そうか」

 

「しかしそれにはある程度の鍛錬という物も必要ですし…」

 

「だそうだが、どうだ稟?」

 

「よろしくお願いします!」

 

 稟もそれに何かしらの希望を感じたのか、気合の入った表情で答える。今度はうまくいくと良

 

 いのだが。

 

 ・・・・・・・

 

「無理だな、これは…」

 

「稟ちゃんの体力じゃ確かにこれは無理ですねー。当然、風もですけど」

 

 そう呟く俺達の眼の前で行われていたのは…。

 

「稟様、この程度でへばっていては道の一割も進みませんよ?」

 

「そ、そうは言いますが…私にはこれ以上無理です…ガクッ」

 

 凪の猛烈とも言える鍛錬に付いて行く事など到底出来るはずも無い稟が息も絶え絶えに倒れこ

 

 む姿であった。凪もあそこまでの鍛錬があったからこそ、あそこまでの技を身につけたのだろ

 

 うけど…もう少し加減という物も考えて欲しいものだな。

 

 

 

「ふむ、それで妾の所へ来たという事じゃな?」

 

「待て待て、何時何処でそのような話に?どう考えても突然現れた命が俺達の事を部屋に引っ張

 

 り込んだだけのようにしか見えないんだけど?」

 

 しかも何だか前にもこんな事があったな…確かその時も八百一が絡んでいたような?

 

「まあ、そのような細かい事など気にするな。皇帝という大きな仕事の中ではとても小さな事で

 

 はないか?」

 

 もはや開き直りとしか思えない命の発言に俺も風も言葉が出ない。

 

「まあ、それはともかく…稟の鼻血癖は妾の耳にも入っておる。それが原因で体調を崩すような

 

 事となれば漢にとっても一刀にとっても損失は大きいからの。それを抑える方法があるなら妾

 

 も協力するぞ。そもそも鼻血の原因は何なのじゃ?」

 

 …どうしよう?八百一が原因だなんて命に言ったらその場で八百一禁止の勅令が発せられるの

 

 は間違いない話だし…別に俺はそれが無くても良いのだけど、輝里や稟がな…。

 

「彼女は少し人より興奮状態になりやすいようで…」

 

「ほぉ、何時も冷静沈着に見える稟がのぉ。すると常に冷静さを保ち続けるか興奮状態になって

 

 もすぐ冷静さを取り戻せる方法があれば良いという事かの?」

 

 よし、何とか八百一から話をそらせた。

 

「そうなんだけど…命は何か方法を知っているのか?」

 

「知らん」

 

 知らんってそう簡単に…だったらわざわざ話に首を突っ込んでくるなよと言いたいのだが。

 

 

 

「妾は知らんが、一刀の国では座禅とかいう方法で心を落ち着けるのではなかったのか?前に

 

 及川にそう聞いた事があるぞ?」

 

 座禅ねぇ…厳密に言えば少し違うんだけど、確かにあの境地に達する事が出来れば鼻血を抑え

 

 る事も可能になるかもしれないな。とはいうものの、俺は座禅なんか前に学校の体験学習みた

 

 いなので一・二回やった事があるだけで、姿勢を崩したら叩かれたという記憶のみの為、指導

 

 する事なんか出来るはずもなく…そもそも、どういう風に姿勢を崩したら叩かれるのかという

 

 のも良く分からない。

 

「一刀殿、その座禅とかいう物を是非教えていただきたい!」

 

 しかし稟が何だか乗り気なので、一応知ってる事のみを再現してみる事にしよう。

 

 ・・・・・・・

 

「あの、一刀殿?本当にこれをやっているだけで良いのですか?」

 

「姿勢を崩さないようにね」

 

 半刻後、とりあえず俺の知ってる座禅の組み方をしてもらったのだが…どうしよう?一つ問題

 

 が起きてしまった。本来なら最初に気付くべき話だったのだが…。

 

 何が問題かというと、彼女の服装が…座禅の足の組み方をした結果、彼女のスカートの前面が

 

 開いて…ぶっちゃけパ○ツが丸見えになってしまっている事だ。ただ前から見えるだけならば

 

 背後に回れば見えないはずなのだが、スカートがまくれすぎて背後からでもチラチラ見えてし

 

 まう。あまりにもチラチラし過ぎて余計に気になってしまう。ちなみに稟本人は眼をつむって

 

 いるのでその状況に気付いておらず、風は少し離れた所で見ているのでこれまた気付いていな

 

 かったりする。ううっ、どうしよう…此処は正直に言うべきか、それともこのまま堪能するべ

 

 きか…って、それは違うだろ。

 

 

 

「どうですか、お兄さん?稟ちゃんは静かになってますかー?」

 

 当然それに気付いていない風は何時もの調子でそう問いかけてくるが…集中出来ん!

 

「ああ、一応静かにはなっているけど」

 

「ほほぅ、どれどれ…おおっ、確かに。それじゃ一応確認を…稟ちゃ~ん、寝てませんよねー?」

 

 風がそう聞いてると僅かに稟が頷く。しっかり耳に入っていた上でこの静けさ…意外にこれは

 

 うまくいったりするのか?

 

 俺がそう思って稟の方を改めて見ると…何故か風が不機嫌そうな顔で俺を睨む。

 

「どうした、風?」

 

「どうしたもこうしたもありません、稟ちゃん稟ちゃん、眼を開けてください」

 

「どうしました、風?」

 

「稟ちゃん、その格好、下着が見えてますよ。しかもそれをさっきからお兄さんがジロジロ見て

 

 ますし」

 

「………え、ええええええっ!?」

 

 稟は己の痴態を確認するなり顔を赤らめて俺から距離を取る。

 

「ま、待て、稟。俺は別にそんなつもりは…」

 

「でも絶対見てましたよね?お兄さんは絶対に稟ちゃんの下着を見ましたよね?」

 

 風が俺にそう詰め寄っているその後ろで稟は何だか身をよじりながら何かを呟いていたりする。

 

「お、おい、稟の様子がおかしいぞ?」

 

「そんな言葉で誤魔化せられません!風が聞きたいのはそれじゃないんです!!」

 

 その様子に危険を感じた俺は風にそれを告げるが、何故か怒り心頭の風はまったく耳を貸そう

 

 としない。

 

 

 

「…ああ、まさか一刀殿にこのような仕打ちを。そうか、もしかしてこの座禅そのものがそれを

 

 目的に…幾らお仕えする主とはいえ、いきなりそこまでは。でも、きっと一刀殿は嫌がる私に

 

 詰め寄って全てをモノにしようと…そして一刀殿の膂力に抗う事など出来ない私は一刀殿に全

 

 てを蹂躙されていって…そしてついに私の操を…」

 

「り、稟ちゃん、止めてください、それ以上は…」

 

 さすがにその声が段々と大きくなってきたので、途中から風も気付いて稟の妄想を止めようと

 

 声をかけようとするが、まったく稟の耳に届いていない。

 

「そして、そして、私は…私は…」

 

 これはもう鼻血エンドだ…と思ったその時。

 

「あれ、一刀殿?何故そこに?あっ、私は何もされてない」

 

 何故か鼻血を出す事も無く、稟は普通に正気に戻っていた。

 

「いや、本当に何もしてないけど…ところで鼻血は大丈夫か?」

 

「えっ……………そういえば出てませんね」

 

 稟自身も不思議そうに自身の身体を見ている。

 

「どういう事か分かるか、風?」

 

「さぁ…風にもさっぱりです。何時もなら今頃は血の海に沈んでますしね…まさか座禅とかいう

 

 ものの効果とかだったり?」

 

「そうか、ならば納得がいきます!さすがは一刀殿、天の国には素晴らしい療法が存在するので

 

 すね!これでもう二度と鼻血に悩まされる事は…一日一回の座禅があれば私は無敵だ!」

 

 稟はそう言って何やら一人で盛り上がっているが…座禅ってそんな効果あったっけ?

 

 まあ、本当にこれで稟の鼻血が治まるのなら問題は無いのだが。

 

 

 

 しかし数日後。

 

「ぷーーーーーーーーっ!?」

 

 結局の所、稟の鼻血はまた見事な放物線を描いていたのであった。

 

「な、何故です…私は座禅で克服したはず…」

 

「ほらほら稟ちゃん、とんとんしますよ、とんとーん」

 

「結局、元通りか…それじゃこの間のは何だったんだ?」

 

「多分ですけど、お兄さんでは稟ちゃんの妄想が鼻血を出すまでに至らなかったというだけの事

 

 なのではないかと思いますねー」

 

 ああ、そうか納得…ってそれはそれで少し寂しい気もするが。

 

「ああ…まだまだ私は修行が足りないという事ですね…こうなったら座禅の回数を増やさねば…」

 

 稟はそう呟いていたが…多分無理だろうな、これは。

 

「まあ、今回は稟ちゃんがお兄さんの事をそこまで想っていなかったという事が判明したので、

 

 風はそれで満足ですけどねー。でも、風も一度座禅をしてみましょうかねー。当然お兄さんの

 

 前でですけど…稟ちゃんでもあそこまで反応してたのですから、風が同じ格好をすれば間違い

 

 なく…ふふふ」

 

 風のその呟きが俺に聞こえる事は無かったのであった。

 

 

                                    続く(のですー)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的な物

 

 mokiti1976-2010です。

 

 投稿が遅れまして申し訳ございません。

 

 最初に違う話を書いていたのですが、まったく書く事が

 

 出来ず…それを破棄して書いたのが今回の話です。

 

 ちなみにこの話は三日で書けましたが(オイ。

 

 とりあえず次回は拠点第三弾…でも誰にするかは決まって

 

 いません。どうしようかな?

 

 

 それでは次回、第五十三話でお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 後日、風が座禅で誘惑に成功したのかどうかは

 

    不明です(エ。

 

 

 

 

 

 


 
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