No.715924

ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長

『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。

2014-09-11 15:27:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:549   閲覧ユーザー数:525

 

 

 

 story22 変わった認識

 

 

 

 次の日、戦車倉庫に来ると既に整備が終えていた三式とルノーB1がそこにあった。

 

 更に昨日見つけた長砲身を取り付けられたⅣ号も三式の隣に置かれている。

 

「あの状態で一晩で整備を終えるとは」

 

「さすが自動車部」

 

 如月と早瀬は三式とルノーを見て言葉を漏らす。

 

 

「いやぁ、私達だけじゃこうまではいかなかったよ」

 

 と、三式を見ていた如月達の元に自動車部の部長であるナカジマがやってくる。

 

「三式はオイル交換と懸架装置の整備だけで済んで、Ⅳ号も砲身を付け替えるだけで済んだけど、ルノーは根本からやったから大変だったよ。ちなみに一徹してね」

 

 見れば少し目の下にクマが出来ている。

 

「これも整備部のメンバーのお陰だね」

 

「整備部か」

 

 そういえば最初から自動車部と共に戦車のレストアと整備をしてくれていたな。

 まだ部員を見ていないが・・・・

 

 

 

「私達を呼びましたか?」

 

 と、如月達の元に四人組のメンバーがやって来る。

 

「ちょうど君たちの話をしていた所だよ」

 

 ナマジマは四人組の方に視線を向ける。

 

「そうなの」

 

「それで、あなた方が整備部ですか?」

 

「そうね。まぁ全員じゃないけど、主に私達だけで自動車部の手伝いをしているの。あっ、私は部長の『佐藤(さとう)虚(うつほ)》』よ」

 

 と、茶髪の三つ編みをしてメガネを掛け、髪の色に似た瞳を持つツナギを着ている女子生徒が名前を言う。

 

「私は『佐藤本音(ほんね)』だよ~。ちなみに部長は私のお姉ちゃんだよ~」

 

 と、隣に茶髪でキツネのマスコットが付いたゴム紐で二つ結びにしたホワホワとした雰囲気と気だるそうな感じを醸し出している。

 

「私は『秋月(あきづき)南(みなみ)』よ」

 

 佐藤の反対側の隣に茶髪のミドルヘアーを後頭部で纏めてメガネを掛けたつなぎ姿の女子が口を開く。

 

「『黛(まゆずみ)薫子(かおるこ)』です」

 

 秋月の隣に居る赤みのある茶髪のショートヘアーでメガネを掛けている、ツナギを来た女子が口を開いて頭を下げる。

 

「そういえば、整備部って何人居るんですか?」

 

「16人よ。基本戦車の整備には六人で行うの」

 

「そんなに居るのか。ん?後二人は?」

 

「あぁ。あの子達なら――――」

 

 

 

「「ぶっちょー!!言われた物を持って来ましたよ!!」」

 

 と、倉庫に二人の女子がドラム缶を一缶ずつ担いで?やって来た。

 

 瓜二つと言うほどに顔がそっくりで、片方は髪型を右の方にサイドポニーをして、もう片方は反対側にサイドポニーにしている。なので着ているツナギといい、髪型以外では見分けが付かない。

 

「そこに置いておいて。そしたら作業を開始するわ」

 

「「りょうかーい!!」」

 

 と、二人は担いでいたドラム缶を三式とルノーの間に置く。

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 少なからず、その光景に如月と早瀬は驚く。

 

「え、えぇと・・・・今あの子達ドラム缶を一缶丸々担いでいた・・・・ですよね?しかも中身ありの?」

 

「あぁ、そうだな」

 

 さすがに如月も驚きを隠せれなかった。

 

 

「やっぱり初見だと驚くよね。それにしても双子ってここまで似るものなのかしら」

 

 と、佐藤(姉)は首を傾げる。

 

「・・・・・・」

 

「あの子達は見ての通り双子の姉妹でね。サイドポニーを右の方にしているのが姉の『双海(ふたみ)愛(あい)』で、左の方にしているのが妹の『双海(ふたみ)舞(まい)』。見ての通り姉妹揃って馬鹿力の持ち主よ」

 

「う、うむ」

 

「そのお陰で助かる所が多いのよねぇ。重い機材とかが多いから」

 

「そ、そうなんですか。そもそも、整備部って主にどんな活動をしているんですか」

 

「整備部って言うのは、主に学園艦の様々な機器類や機関部の整備を主にするの。部活って名目だけど、ほとんど科目に近いかな」

 

「マジですか?」

 

 思わず言葉を漏らす。

 

「まぁ戦車の整備は初めてだったけど、実を言うと顧問は昔戦車道の戦車の元整備長だったのよ。顧問教えがあってこそ私達と自動車部は戦車の整備が出来るのよ」

 

「なるほど」

 

 

「あぁそれと、しばらく時間は掛かるだろうけど、あなた達が見つけた戦車は組み立て中よ」

 

 と、佐藤(姉)が見る視線の先には、学園艦の倉庫内で見つけたパーツ状態だったポルシェティーガーと戦車砲が無い戦車が倉庫の隅に置かれている。

 

「気長に待っているよ」

 

「期待しても良いわよ。早く投入できるようにこっちも頑張るから」

 

「そうさせてもらおう」

 

 如月は隅に置かれている戦車を見る。

 

 

「あと、古い倉庫から見つかったあの戦車だけど・・・・・・運び出す事が出来ないからあそこで修理するしかないわね」

 

「まぁ、そうですよね」

 

 あの戦車の重量と大きさだと、恐らく運び出せる機械が無いだろう。と言うよりあるのか?

 

「あっちはあっちで結構時間が掛かると思うわ。場所も場所だし、何よりこっちと並行してやるとね」

 

「そうですか」

 

 まぁほぼパーツ状態の二両の戦車と殆ど痛みが無いとはいえど、動かすことが出来ず、環境が最悪な状態で未完全な戦車の整備となると、かなりの時間を有する事になる。

 

 

「それと、あの倉庫でもう一両の戦車を見つけたわよ」

 

「え?まだあったんですか?」

 

 そういえばあの戦車と焦げ茶のあれに気を取られてよく見て無かったな。

 

「あの超重戦車の後ろにあったわ。あれだけは何とか運び出せたわ。軽かったし」

 

 と、佐藤が指差す方向には、一両の土地色の戦車が置かれていた。

 

「『九七式中戦車チハ』・・・・」

 

 早瀬がボソッとその戦車の名を口にする。

 

「しかも新砲塔仕様とはな」

 

 ある意味戦車を知るものであれば有名な旧日本陸軍の戦車の一つ。

 ってか、五式と四式、三式、八九式、あの超重戦車といい、日本戦車が多いな。

 

「保管されていた場所が場所だからほとんど傷みが無いから、僅かな整備で完全な状態に整備しているよ。まぁ蜘蛛の巣だらけだったけど」

 

 見れば取りきれていない蜘蛛の巣が九七式に付いている。

 

「それはそれでいいんだが――――」

 

 

「もう乗員はいないですよね」

 

 三式はともかく、新規に加入した生徒がいないのでもう乗員がいない。恐らく九七式は次の試合には出せないだろう。

 

 

「まぁ、どうであっても最善を尽くすのが、プロのメカニックってものよ」

 

 佐藤(姉)は怪しくメガネを反射させてメガネをクイッと上げる。

 

(プロ、か?)

 

 内心で一瞬そんな疑問が過ぎる。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 それからし日曜日の午前中の練習後の休憩で――――

 

 

 如月はⅣ号の近くにイスに座っている西住の元に来る。

 

「如月さん。おつかれさまでした」

 

「あぁ。おつかれさま」

 

 私は西住の近くに来ると、柱にもたれかかる。

 

「どうでした?新しいチームは?」

 

「・・・・歯に絹を着せないで言うと・・・・散々だな」

 

 如月は首を軽く横に振るう。

 

 今日の練習で猫田が呼んだオンラインゲームの仲間である『ももがー』と『ぴよたん』が加わる事になった。ちなみに二人も如月の事を知っていたらしく、リアルで私と会って興奮していた。

 その三人で『アリクイチーム』として三式に乗って練習に参加したのだが・・・・あれは酷かった。

 

 練習前にある程度基礎知識を教えておいたので、最初こそ走り出しは良かったが、行進中に動きが鈍り出したと思えば突然バックをし始めてウサギチームのM3と衝突するは、突然前進してⅢ突とぶつかるはと、滅茶苦茶だった。

 まぁ、三式はチハ系にあるクラッチが入りにくい欠点があるので、仕方ないといえば、仕方無い。私も最初はあれに手こずった。

 

 射撃も素人同然で、命中率は悪かった(ぶっちゃけ言うと全くと言うほど当たっていない)。

 三式は野砲をそのまま流用したので拉縄(りゅうじょう)と言う紐を引っ張って発射する特殊な機構なので、砲手と撃発手のタイミングが合ってないのが原因の一つと思われる。

 

「まぁ、自走が出来て、射撃が出来るぐらいになればいい。それで撃破出来ればラッキーと割り切る」

 

「は、はぁ」

 

 西住は苦笑いする。

 

「なぁに、次の試合までにはせめてそこそこなレベルまでには仕立て上げるつもりだ。貴重な戦力だからな」

 

「ははは・・・・・・」

 

 

「それはそうと、ルノーには結局誰が乗るんだ?」

 

「今のところ乗員がいないので、臨時に各チームより1名ずつ集めて構成します」

 

「ふむ」

 

「あんこうより優花里さん。カバさんよりエルヴィンさん。ウサギさんから大野さんで臨時的にGチームとして次の試合に出撃させます」

 

「変わった構成だな。まぁ、一人が抜けても行動に支障は無いチームであれば、こうなっても仕方無いか」

 

「そうですね・・・・・・」

 

 と、表情に少し暗みが表れる。

 

 

 

「どうした?」

 

「あ、いえ、ちょっと」

 

 と、西住はⅣ号を見る。

 

「何か・・・・・・今まで私の中にあった戦車道のイメージと、随分と違うなーって思って」

 

「西住流戦車道と、ここの戦車道とか?」

 

「はい」

 

 軽く縦に頷く。

 

「実家に居た時は、戦車が当たり前にあって、戦車道を中心に、私の生活や色んなモノが形作られてきたけど――――」

 

「・・・・・・」

 

「ここだと私が居て、如月さんが居て、みんなが居て、全員で戦車道を作っていってる。そんな感じがするんです」

 

「・・・・・・」

 

 如月は静かに聴き続ける。

 

「如月さんは意外かと思いますけど、実家に居た頃は私・・・・・・戦車道が嫌でした」

 

(・・・・・・そうだったな)

 

 出会った頃を思い出し、そんな感じがあったな。

 西住流に疑問を持ち始めたその時から・・・・

 

「でも――――」

 

 と、イスから立ち上がると、Ⅳ号の近くまで歩く。

 

「大洗に来て、みんなと戦車道をやって・・・・・・今は『楽しい』って。

 そう感じるんです」

 

「・・・・・・」

 

「変な話ですよね。10年以上も戦車と付き合っているのに、やっと好きになれそうなのって」

 

「・・・・・・」

 

 如月はもたれかかっていた柱から真っ直ぐに立つ。

 

「そうでもないさ」

 

 そのまま西住の近くまで歩み寄る。

 

「お前が背負ってきたものがどれほどのものかは、私には想像できない。だが――――」

 

 Ⅳ号を見て、右手でⅣ号の車体に触れる。

 

「お前が戦車道が好きになった。そう言うだけでも、お前は変わったな。良い意味でな」

 

「如月さん」

 

「・・・・・・だから、かな。私がお前が羨ましいって思うのは」

 

「え?私が、ですか?」

 

 西住は目をぱちくりと瞬きする。

 

「どうして、私をですか?」

 

「まぁ気にするな。大した事じゃない」

 

「き、気になりますよ!如月さんが羨ましいって思うのは今まで無かったんですから!

 それもこんな私なんかが羨ましいって言われるとますます!」

 

「確かにな。だが、今は教えん」

 

「そんなぁ・・・・・・」

 

 西住は戸惑いの表情を浮かべる

 

 

 

(本当に、大した事じゃないんだ)

 

 内心で呟きながら、Ⅳ号の向こうにある五式を見る。

 

(お前にはあって、私には無い・・・・・・それが羨ましい)

 

 

 

「西住、如月。あんこうとクマのメンバーを連れて生徒会室に来い」

 

 と、河嶋が二人の元にやって来ると、用件を伝える」

 

「は、はい!」

 

「分かった」

 

 二人は返事を返すと、他のメンバーを連れて生徒会室へ向かう。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「次の対戦校はアンツィオ高校だ」

 

 河嶋の説明を受け如月達は軽く頷く。

 ちなみにこの場に秋山と鈴野の姿は無く、代わりに二階堂が居た。

 

「しつもーん。アンツィオってどんな学校なんですか?」

 

 武部が挙手して質問する。

 

「あー、確か創始者がイタリア人だっけ?」

 

 会長が呟く。

 

「イタリアの文化を日本に伝えようとして設立されたイタリア風の学校だ。使用する戦車はイタリアの戦車が中心だ」

 

 別にこういう学校がアンツィオだけでは無い(聖グロはもちろん、サンダース他の学校もそんな感じである)

 

「先の一回戦で使われたのは、セモベンテM42 75ミリ長砲身載型と105ミリ榴弾砲搭載型。M13/42中戦車。CV33だ」

 

 見る限り目立った戦車と言える戦車は無い。

 

「CV33わたくし大好きなんです。小さくて可愛くて、花器にはぴったりです」

 

「・・・・・・いくらなんでも、花器には大きすぎない?ひまわりでも生けるの?」

 

 五十鈴の言葉に呆れるように武部が突っ込む。

 

「豆戦車も使っているって、どんだけボンビーな学校なの?」

 

「背後に取り付きそうな貧乏神じゃないんだから」

 

 坂本の言葉に早瀬がツッコミを入れる。

 

「しかし、セモベンテM42が居るのは厄介だな。侮れん威力を持つぞ」

 

 二階堂が呟く。

 

「75ミリ長砲身はうちのⅢ突に匹敵する威力を持つからな。それに加えて105ミリ榴弾砲型もいるとなると、警戒しなければならん」

 

「それもそうですが、向こうは新型戦車を購入したと言う未確認情報が入っています」

 

「先の試合ではそれらしき姿は確認されていません」

 

「だからこその秘密兵器か。まぁ、その内分かるさ」

 

「えっ?どうしてですか?」

 

 二階堂の言葉に武部は怪訝な表情を浮かべて問う。

 

 

 

 するとバンッ!!と大きな音と共に生徒会室の扉が開く。

 

「秋山優花里!ただいま戻りました!」

 

「同じく鈴野詩乃。帰還しました」

 

「中島空!戻って参りました!」

 

 そう言いながら秋山、鈴野、中島の三人が入ってくる。

 

「おー来たか」

 

「お疲れ様です」

 

 会長と小山が三人に声を掛ける。

 

「待っていたぜ、中島」

 

 二階堂がソファーから立ち上がって中島に声を掛ける。

 

「ゆかりんにしののん!その格好って!?」

 

 見覚えのある格好に、武部が声を上げる。

 

 

 なにせ秋山と鈴野の格好はコンビニの定員の制服であったからだ。

 

「優花里さん・・・・・・もしかしてまた?」

 

「鈴野。またか?」

 

「「はい(!)」」

 

 そうして秋山がポケットからSDメモリーカードを取り出す。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 そうして三人が集めた情報と秋山が撮影した映像と共にアンツィオの情報を確認する。

 

「P40か。確実に次の試合で投入してくるな」

 

「そうですね。でも、P40初めて見ました」

 

「私も昔一回見たきり全く見たことが無いな」

 

 如月と西住はそう会話を交わすと、中島が口を開く。

 

「いやぁそれにしても、潜入捜査で分かったと言えば、飯がうまかったことっすね」

 

 と、どこか機嫌が良く中島が呟く

 

「え?そうなんですか?」

 

「そうっすよ。生徒一人一人が出す料理とは思えないほどのうまさ!普通に店に出せるレベルっすよ!」

 

「・・・・だからお前、少し丸くなっているのか」

 

 二階堂はやけに丸くなっている中島を見て苦笑いを浮かべる。

 

「・・・・その点は、確かにそうですね」

 

「え?もしかして・・・・・・詩乃も?」

 

 早瀬が問いに、鈴野は恥ずかしそうに頬を赤くして軽く縦に頷く。

 

「格納庫でサンダースで使った取材の手を使って色々と聞いていたんだけど、その中で整備長や、パネットーネって言う名前の戦車長の自慢のカルボナーラやペペロンチーノ、整備員の一人が作ったピザ等、色んな料理を食べましたが・・・・・・本当においしかったです」

 

「・・・・・・それで、詩乃も少し丸いんだ」

 

 中島同様に、鈴野もまたやけに丸くなっている。恥ずかしさが込み上げてきたのか、鈴野は顔を赤くする。

 

「そうなんですよ。アンツィオ高校の生徒が作る料理って、本当においしいんですよ」

 

 そう言う秋山もまた、二人同様に少し丸くなっていた。

 

「うーん。そこまで言われると、逆に気になるな~」

 

「全くだぜ」

 

「うー!詩乃がここまで言うぐらいなら、私も行きたかった!!」

 

 三人の発言に武部、二階堂、坂本の三人が羨ましそうにそれぞれの言葉を発する。

 

 

「まぁ飯の事は別に良いとして、こりゃ色々と考えないといけないねぇ」

 

「そうですね。少しでもP40の資料を集めた上で、西住と話し合い、作戦を練ります」

 

 そうして話し合いは解散となった。

 

 

 

 

 


 
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