No.714371

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第245話

2014-09-07 20:17:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1352   閲覧ユーザー数:1263

 

 

~ルーレ市~

 

「て、鉄鉱石の横流し!?」

アンゼリカ達が持つ情報を聞き終えたアリサは信じられない表情で声を上げた。

「ああ、生産された鉄鋼の量が採掘された鉄鉱石の量に比べて若干少なくなっているらしい。ここ数年の間ずっとだ。」

「鉄鉱石の純度が低下してるなんて理由が報告されているけど……実際の鉱山現場では、鉄鉱石の質の低下は確認されてないみたいだね。」

「……………」

「だとしたら、確かに帳尻が合わなくなってきますね……」

「鉄鋼の横流しじゃなくて鉄鉱石の横流しだったとは………」

「た、確かにちょっと気付かれにくいかも……」

アンゼリカとジョルジュの話を聞いたアリサは信じられない表情で黙り込み、リィンやマキアスは考え込み、エリオットは納得した様子で頷いた。

 

「やれやれ、そのあたりを全部トワが調べやがったのか?」

「ああ、私のトワだからね。」

「トワ会長がいつから、アンゼリカさんのものになったんですか……」

「アハハ……」

苦笑するクロウの言葉に堂々と答えたアンゼリカの話を聞いて呆れているツーヤを見たセレーネは苦笑し

「フッ、妬いてくれているのかい?麗しき双子の姉妹なら、私はいつでも受け入れるよ?」

「「結構です!!」」

口元に笑みを浮かべて自分達を見つめるアンゼリカの誘いにセレーネとツーヤは同時に答え

「ガックシ……」

二人の答えを聞いたアンゼリカは肩を落とし

「ハハ……―――ラインフォルトの公式資料や政府に提出された産出量の資料まで集めてくれてね。それで突き止められたんだ。」

「凄いな……あの人は。」

ジョルジュの話を聞いてトワの凄さを改めて知ったリィンは驚いた。

 

「鉄鉱石の横流し……帳尻が合わない鉄鋼生産量……ジョルジュ先輩……!その帳尻が合わない鉄鉱石の量というのはどのくらいになるんですか!?この数年間のものを全て鉄鋼にしたと考えると!」

その時必死に考え込んでいたアリサはジョルジュを見つめて尋ねた。

「そうだな……完全に憶測にはなるけど。少なくとも10万トリム―――主力戦車2000台分になるね。」

「ア、アハツェンが2千台!?」

「そ、そんな量になるんですか!?」

「とてつもない量ですわね……」

ジョルジュの説明を聞いたマキアスとエリオットは信じられない表情をし、セレーネは驚きの表情で呟いた。

 

「ザクセン鉄鉱山は帝国の屋台骨……採掘される鉄鉱石の量も莫大だ。”やや少ない”といっても数年だとそれだけの量になる。」

「まさに”塵も積もれば山となる”ですね……」

アンゼリカの話を聞いたツーヤは真剣な表情で呟き

「でも、それだけの鉄鉱石を横流ししてどうするの?貴族派が秘密裏に戦車を作っているとか?」

フィーは自分の疑問を口にした。

 

「ううん、戦車の製造ノウハウは第二製作所しか持っていない……そちらは帝国軍を始め、革新派が牛耳っているから……」

「戦車は様々な技術のカタマリだ。設計図があれば作れるような単純なものじゃないからね。」

「そうすると、他国に売り飛ばして単純に利益を上げやがったか……しかしそれはそれでアシが付きそうだよなぁ。」

「……―――消えた鉄鉱石はともかく。その事実と、今回の事態を受けて先輩方はどう動くつもりですか?」

「あ……」

リィンの問いかけを聞いたアリサは呆け

「―――決まっている。第一製作所の取締役が叔父であり、ノルティア領邦軍が動いている以上、私の実家も無関係じゃないだろう。それに鉄鉱山の鉱員たちは完全に巻き込まれてしまっている……侯爵家の息女として、そんな状況を放っておくわけにはいかないさ。」

アンゼリカは決意の表情で立ち上がった。

 

「アン……」

「おいおい、親父さんと話を付ける気かよ?」

アンゼリカの様子を見たジョルジュは苦笑し、クロウは目を丸くして尋ねた。

「フフ、父は私の言う事など聞かないさ。領邦軍も同じ―――私が行ってもどうにもならないだろう。―――だったら自分の力でケリを付けてやるまでさ。バイトで働いた事もあるから鉱山内部は知り尽くしている。侵入経路さえ見つかればテロリストも何とかできるだろう。」

「はあ……やっぱりそうなるか。」

「ったく、相変わらずだな。」

アンゼリカの話を聞いたジョルジュは溜息を吐き、クロウは苦笑した。するとその時互いの顔を見合わせて頷いたリィン達はアンゼリカに申し出た。

 

「―――だったら是非、俺達も協力させてください。」

「突発的な事態に対してどう主体的に振舞えるか……これも特別実習の活動の範囲内でしょう。」

「さすがに放っておけません!」

「だね。」

「貴族とか平民とか関係なく”人”として鉱員の皆さんを助けたいです!」

「……あたしもセレーネと一緒の意見です。どうかあたし達も協力させてください。」

「アンゼリカさんと同様……私にとっても、実家が絡む以上、決して無関係じゃありません!」

「―――ありがとう。実はちょっと期待していた。協力してくれると助かるよ。」

リィン達の協力の申し出を聞いたアンゼリカは静かな表情で頷き

「やれやれ、しゃあねぇか。」

クロウは苦笑しながら呟いた。

 

「すると、領邦軍の裏をかいて鉱山内に侵入する必要があるね。アンなら、領邦軍の責任者と話をするくらいはできそうだけど。」

「その隙にわたしたちが鉱山に忍び込むとか?」

「うーん、さすがにちょっと難しそうな気がするけど……」

「―――鉱山に入る手立ては私に任せてください。多分、私の母が何らかの”鍵”を握っていると思います。」

鉱山の侵入方法についてそれぞれが悩んでいるとアリサが申し出た。

 

「な、なんだって?」

「イリーナ会長が………」

「わかった。そちらはアリサ君に任せるよ。私の方は実家と領邦軍に改めて探りを入れておこう。ジョルジュ、君はトワと連絡して帝国政府の動きを探ってくれ。」

「了解―――それと使えそうな機器とかも調達しておくよ。」

「ハハ、何だか去年の実習みたいになってきたな。」

「……あたしはレンさんに何か知っていないか、聞いてみます。正直、レンさんに頼るのは後が怖いのですが……そうも言ってられない状況です。レンさんなら必ず何かを掴んでいるでしょうし、直接会いに行って聞いてみます。さすがにあたしが相手なら護衛の兵士達も通してくれるでしょう。」

「ツーヤ……」

「わかった。よろしく頼む。」

「わたくしもご一緒します、お姉様!」

こうして、リィン達Ⅶ組A班はアンゼリカ達と共同戦線を張る事となり……アンゼリカ達とツーヤとセレーネと一旦別れたリィン達は鉄鉱山侵入の手がかりを求めイリーナ会長に会いに行く事にした。

 

 


 
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