No.713731

戦国†恋姫~新田七刀斎・戦国絵巻~ 第21幕

立津てとさん

学生の方は有意義な夏休みを送られたでしょうか、たちつてとです

2度目の京、剣丞達はいったいどうなるのか!という煽りを入れて見たり

更新スピードが亀で安定してしまった今作品ですが、しぶとく続いています!

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2014-09-05 01:40:28 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2351   閲覧ユーザー数:2133

 第21幕 千年王都・再び

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼 京への道中

 

空が高い。

かつてはそんな感想を抱きながら1人で歩いた道も、今や大所帯となっていた。

 

ちょうど剣丞がショートカットとして使った山が見えてくるが、険しい山道を進ませるなんて考えられない面子もいる。

少し遠回りにはなるだろうが、それでも日が出ている内に京に着く予定だ。

 

それに今は馬もある。同じ景色のはずなのに、徒歩で旅をしていた頃とはまったく違う景色に剣丞は思わず周りを見渡していた。

 

(やっぱ同行者がいるってだけでも旅は違うな)

 

久遠達の談笑が心地良いBGMとなって剣丞を癒す。

 

(でもやっぱり・・・)

 

自分が最も会いたかった彼女がいるというのは大きかった。

 

隣で手綱を引くのは、降り注ぐ日の光を浴びて反射する金色の髪。

 

「どうかしましたか?」

「いや・・・」

 

剣丞は視線を落とし、今朝の出来事を思い出していた。

 

 

 

 数刻前 朝 教会

 

ステンドグラス越しに差し込む光を受ける黒色の頭が1つと金色の頭が2つ。

計3人がこの教会にいる人の数だ。

 

昨日まではここで寝泊まりをしていた空は起きてからというもの、剣丞とどこか距離を置きたがっている。

今朝も起きるなり信濃屋へと行ったこともそこからくるものだろう。

 

「さて、お仲間も加わったことだしこれからは」

「ちょっと待った」

 

ローラが切り出したところで剣丞が止める。

 

「何よぉ人がせっかく真面目に仕切ってやろうと思ったのに」

「ほぉ・・・真面目にか」

 

非難の声が剣丞に飛ぶ。

しかし剣丞にはその数倍の威力を持って言い返すことができるという確信があった。

 

「じゃあお前が乗ってる、いや、跨ってるソレは何だ!!」

 

ズビシィッ!という音が聞こえそうなほど異議あり!なポーズを取る剣丞。

彼の指の先はローラの股下にある物に向いていた。

 

「何って、三角木馬よ」

「何故そんなものを・・・」

「あなたが中々私を痛めつけないから渋々自分で・・・ハッ!まさか、そうやって私が自分でしてるところを見たかったとか!?それならそうと早く言いなさいよぉ~!」

 

見れば見るほど礼拝堂の厳かな雰囲気にミスマッチな三角木馬の上でクネクネと自分の体を抱くローラ。

これは自分だけでは対処できないと悟った剣丞は長椅子の隣に座るエーリカへと話を振り、

 

「なぁエーリカ」

「無理です」

 

バッサリと斬り捨てられた。

 

「・・・もしかして、怒ってる?」

「怒ってません。それで、これからの方針を話し合うのですよね?」

「あ、あぁ・・・」

「まったくエーリカもお堅いわねぇ。キスしたくらいで硬くなるのはその男のチ――」

 

一瞬にしてローラの首のすぐ横を飛んでいく剣。

その勢いのまま礼拝堂の壁に突き刺さった白い剣を投げた張本人は氷を思わせる目をローラに向けていた。

 

(目にも止まらぬってこの事だな・・・まぁ俺見えるけど)

 

だが向けられた本人は涼しい顔で跨り続けているので、その脅しは対して効果は無いと思われる。

埒があかないと思ったのだろうエーリカは気を取り直して剣丞に話しかけた。

 

「それで、剣丞さん。質問というのは?」

 

先程エーリカに自分の結論を伝えた後、剣丞は気になっていることを彼女に聞いていた。

それでこれからの方針を決めるついでにその質問に答えようとエーリカはローラも招集して礼拝堂で会議紛いなことをしていたのだ。

 

「ああ、それなんだけどさ。2つくらいあるんだけど、まず鬼とかザビエルとかについて聞こうと思って」

「鬼とザビエル・・・ですか?」

「うん。鬼はまぁエーリカ達が操ってるってことはわかってるんだけど、それだと越後で俺の前に現れたあのザビエルは何なのかなぁって思って」

「ザビエル・・・あぁ、これの事ですか」

 

エーリカが目の前に手をかざした1秒後くらいに、白いローブを着た人型の何かが何もない空間から現れる。

それはかつて剣丞が邂逅した少女らしき人物そのものであった。

 

「これは私の分身のようなものです。命令を下して遂行させる人形ですよ。ただ下した命令以外は何もできず、話しかけてもオートで適当に返してきますが」

「ああーアレね・・・」

 

何度話しかけても「英傑よ」などの答えしか返ってこなかったのはこういうことだったのかと剣丞は合点がいった。

 

「それと鬼ですが・・・これはローラの方が説明が上手いでしょう」

「あら、エーリカにしては随分素直じゃない。いいわよ、説明してあげるわ」

「そのままでかよ」

「そうよ。痛くて気持ちいいもの」

 

一蹴したローラは三角木馬に跨ったまま説明を始めた。

 

「この世界の人間がNPCみたいなものだってのは教えたわよねぇ?鬼ってのは彼らの形状・性質を変えて支配下に置く――要は管理者にのみ与えられたチートみたいなものよ」

「チートって・・・」

「わかりやすいでしょう?」

 

何故か現代っ子重視な説明をしてくるローラ。

元の世界では一応ゲームを人並みに楽しんでいた剣丞にとってはわかりやすいと言えばわかりやすかった。

 

「大通りの時も私が周りの人間を鬼に変えたのはこのチートを周りの人間のみを対象に適用したからよ」

「えっじゃあその気になれば、武将や大名だって鬼に変えられるじゃないか!?」

 

そうなれば天下など自分の意のままに操り、支配することができるだろう。

剣丞がその考えに至ったところで、釘を打つようにローラがため息をついた。

 

「バカねぇ。私達は調律者よ?歴史の流れ通りに物事を進めたいのにメチャクチャにしてどうすんのよ」

「ぐっ、お前に正論を言われるとは・・・」

「まったく・・・考えりゃわかることじゃない」

「ぐぬぬ・・・!」

 

あまりな貶されに思わず睨みつけてしまう剣丞。だがそれが迂闊だった。

 

「あぁん!良い!良いわその目!もっと威圧的にぃ、もっと虐めてぇ!」

 

予想通りな展開に頭を抱える長椅子勢2人。

また数分間話が進まなくなる前に、剣丞は次の質問へと移った。

 

「ああもう次!もう1つの質問があるんだ!」

「えぇー放置ぃ?ねぇ~ご主人様って呼ぶからもうちょっと虐めてよぉ~」

「何人もの嫁にその呼び方をされてる人を知ってるから嫌だ!とりあえずエーリカ!」

「は、はい?」

 

一層剣幕を増した剣丞に気圧されたのか、エーリカは引き気味にその質問を聞いた。

 

「結構前からなんだけど、目と言うか反応と言うか・・・なんか変なんだ」

 

とてもうまく伝えられるとは思えない説明。

にも関わらずエーリカは納得したように頷いた。

 

「相手の行動がよく見えて、瞬時に反応できるんですよね?」

「ああ、そうなんだ。もしかしてそれもエーリカが?」

「えぇ・・・急激な神経伝達による超反応。それが剣丞さんに分けた『管理者権限』です」

 

管理者権限。

その単語に剣丞だけでなくローラも反応することによって彼女が三角木馬の上でクネクネと動くことが止められた。

 

「ああー、だから私と戦ってた時も異様によく避けてたのね」

「か、かんり・・・?」

「管理者権限。まぁこれもチートね。体力を強化したり、他人を操ったり」

「何でもありかよ・・・」

「それがそうでもないわよ」

 

ローラがやっと木馬から降り、剣丞達の前まで移動する。

 

「管理者権限は超ズル。だから与えられる権限には限りがあるわ。私は元々この外史の管理者じゃなかったから権限なんて人を鬼にしたり鬼の腕を武器にくらいしかできないし、エーリカだってそんなに持ってるわけじゃないハズよ」

「そうなのか?」

 

横を向くとエーリカは申し訳なさそうに目を背けている。

 

「はい・・・剣丞さんに『超反応』の管理者権限を分けて私に残った権限は『鬼を生み出す』ことと『空間跳躍』、後は『一時的な攻撃力激増』でしょうか」

「攻撃力激増か・・・すごいな」

「では少しお見せしましょう」

 

彼女はそう言って立つと、フッと剣丞とローラの目の前から消えた。

 

「えっ!?き、消えた・・・!?」

「今のが空間跳躍です」

 

エーリカの声が聞こえたのは置きっぱなしの三角木馬の向こう側。彼女がローラに向けて投げた剣が刺さった壁の辺りからだった。

 

「そして・・・」

 

剣を壁から引き抜き、再び空間跳躍で剣丞達の目の前に戻って来るエーリカ。

 

「これが攻撃力激増です」

 

言うと同時にエーリカの持つ剣から白い氣のようなオーラが沸き立つ。

それは神聖な印象を見る者に与えつつ、見ただけで『強い』と思わせるようなオーラだ。

 

その剣をザビエルの人形に向け突き出すと、貫くまでも無く、触れただけでその人形は消し飛んでしまった。

 

「天から降り注いだ力を自分の体を媒介として剣にオーラを纏わせる。これがこの攻撃力激増の秘密です」

「す、すげぇ・・・それなんてサテライトキャノンだよ・・・」

「別に月が出てなくても使えるしビーム出せるわけじゃないわよ」

 

元ネタを特定したローラの博識ぶりに舌を巻きながらも、剣丞は目の前で起きた漫画のような技にテンションを上げていた。

 

「いやーすごいな!答えてくれてありがとう、エーリカ!」

「い、いえ・・・」

 

目を輝かせながらエーリカの肩を掴んで礼をいう剣丞。

するとエーリカは顔を赤らめながら笑いながら俯いてしまった。

 

「ねぇご主人様!私は?私も説明したわよねぇ!?」

「ああー感謝してるよ。あとご主人様って言うな」

「・・・なんか気持ちが籠ってないけどまぁいいわ」

 

 

ともあれ剣丞の聞きたいこと『鬼・ザビエルとは何か』『自分に起きている異変』という2つをクリアした3人は次の話題へと移行していった。

 

「で、俺達の方針か」

「はい。これから織田家は幕府と繋がりを持ち、数ヶ月後に越前攻めを行います」

「越前・・・?確か、金ヶ崎の退き口だっけ?」

 

信長における歴史イベントのうちの1つ。金ヶ崎撤退戦である。

 

「そうですね。私達はまずはそこまで歴史通りに進めなくてはなりません」

「なるほどね・・・じゃあ俺達はその越前攻めでなんとか織田軍を撤退させなきゃならないだな」

「しかもかなり痛手を与えてね」

 

そうか、と顎に手を当てる剣丞。

 

金ヶ崎の退き口で重要となる歴史イベントは浅井家の裏切りによる挟撃だ。

 

「重要なのは朝倉を織田が攻めて浅井が裏切ることなんだよなぁ・・・」

「ま、その辺は追々確認していけばいいんじゃない?」

「ローラの言う通りですね、方針・・・というよりは心構えだけを決めた感じは否めませんが、今はまず織田家と行動を共にすることしかできませんし」

 

再びそうか、と言った剣丞の呟きは先程とは違うニュアンスを含んでいた。

 

「そういやローラはどうするんだ?流石に織田家の連中と行動を共にするのも無理がありそうだし」

「私は先に京に行くわ。どうせ将軍に会うんだから、御所でタイミングを見計らって合流しましょう」

 

ローラは織田の剣丞に顔割れしているため旅に同行できないが、彼女に落胆の色は無かった。

 

「でもその分動きやすいわ。色んな裏工作は私がしとくから、あなた達は上手いことやっといてね」

 

そう言って教会から出ていくローラ。

三角木馬は放置したままだった。

 

 

 

「さぁ、私達も旅の準備をしましょう」

「あ、ちょっと待って!」

 

自室に戻ろうとするエーリカを剣丞は慌てて呼び止める。

 

「なんですか?」

「ごめん、今思い出したんだけどもう1つ聞きたいことがあったんだ」

 

剣丞は度々見る不思議な夢についてエーリカに語った。

 

「夢・・・ですか?」

「ああ。なんか俺が出てて凄くリアルな夢なんだけど、その俺は俺じゃない気もするんだ」

 

超反応の時と同じように上手く説明ができない。

先程は今のような説明でもエーリカはしっかり理解してくれたが、今はそうではない。

彼女の反応は剣丞の望むものではなかった。

 

「ごめんなさい・・・それについては私にもわかりかねます」

「エーリカも知らないのか・・・じゃあアレは・・・」

 

未だ謎の残る『夢』

エーリカすら知らないというその夢に剣丞はまたしばらく悩まされそうだと感じていた。

 

 

 

 京の町

 

今回が2度目となる京だが、剣丞の感想は以前訪れた時と変わらなかった。

 

「なんか、随分さびれた町だな・・・」

 

織田の剣丞が全員の心情を代弁するかのようにポツリと呟く。

 

「本当に・・・これじゃあ清洲や美濃と比べようがありませんよ」

「今や幕府に力は無く、京も三好家がやりたい放題ですからね。このようになるのは必然かと」

 

ころや詩乃もボロ家や散らばるゴミを見てため息をつかずにはいられないようだった。

 

「なぁ久遠、本当に幕府って偉いのか?」

「まぁこの町の寂れようを見ればそう言いたくなるのもわかるが・・・幕府はまだ形だけでも日の本の頂点に立っている。幕府にしかできないこともあるのだ」

「それはいいけど、久遠は幕府と繋がりを持って何をしようってんだよ?」

「秘密だ」

 

笑いながら口を割らない。

少なくともマイナスな方向ではないと判断した織田の剣丞はこれ以上の言及を止めた。

 

「懐かしいなぁ京都。と言ってもあんまりここには居なかったけど」

 

ちょうど話題が切れた時に剣丞が一人ごちる。

この町中で無言でいるとこちらまでそのムードに呑まれてしまう。

それを回避したいのか、ちょうど気になったのか久遠は剣丞に話しかけた。

 

「そういえば七刀斎は越後の将なのに何故西の方に詳しいのだ?」

「ああそれ、俺も気になってた」

 

久遠や剣丞隊から好機の目線が飛んでくる。

ただ織田の剣丞は、自分のルーツが気になるのか一味違った目になっていた。

 

(まぁ同一人物なんだから、ルーツもなにも無いんだけどな)

 

「俺は元々旅人でさ、ちょうど京の町を訪れた時に美空と出会って仕官したんだ」

「なるほど、だからこちらに詳しかったのだな」

 

仕官という言葉に反応したのはひよところだ。

 

「へー町中で会って仕官ですかぁ・・・」

「野武士の私には想像できない・・・」

 

2人が織田家に仕官した経緯は接している内に聞いている。

 

「しかし、あの越後の龍が町中で会っただけの人間を仕官させるとは思えん。どういった術を使ったのだ?」

「ああそれはね、今みたいにこうして町を歩いてたら」

 

「あの女が出たぞおおおおおおぉぉぉぉぉーーー!」

 

「――こんな感じにいかつい男達が目の前を走ってきてってえええぇぇ!?」

 

一行を横切って走っていく男達。

彼らの手には抜身の刀が握られているのがわかった。

 

「おいおい、京ってこんなに物騒なのかよ・・・」

「いや、あやつらは検非違使の類ではないな・・・行くぞ剣丞!」

「ええっ!?行くってあのおっかない連中を追うってことかよ!?」

「京の町を見定める良い機会だ。疾く駆けい!」

 

困惑する周りに先駆け、走り出す久遠。

いち早く久遠を追いかけていった織田の剣丞に続き、他の面々も駆けていく。

 

(まさか、また美空じゃないよな・・・?)

 

町中で暴れ回る女など彼女以外に考えられない。というよりも居たら居たで日の本大丈夫かという心配があるのだが、もしかしたらということもある。

まさかという思いを抱きつつ、剣丞も彼らの後を追い走っていった。

 

 

 

久遠を追いかけて走ること数分。数人の人だかりが見えてくると同時にその足も止まっていった。

 

全員が合流したその目の前には、やはり剣丞が以前京で目撃した光景と変わらない状態が繰り広げられていた。

 

「おうおうおうねーちゃんよぉ!俺達が三好の武士だと知って金を奪ってったのかぁ!?」

「しかも仲間をボコボコにしやがって!この狼藉は高くつくぜぇ?」

 

男達が複数人で1人の女性を囲む。

剣丞にとってはデジャヴを感じるその光景の中で1つだけ違う点を挙げるとすれば、それは囲まれている女性が以前とは別人ということであろう。

 

(随分綺麗な人だな・・・)

 

剣丞は一目見て、そのような感想を抱いていた。

 

まず目に付くのは、美空のそれに似た腰まで伸びる銀色の髪。

着物の形状からしてわかりにくいが、スラッとした長身で尚且つスタイルの良い身体。

かわいい系というよりは美人系と言うべきその女性は、丸腰でありながらも隙無く男達と対峙していた。

 

「ただの町娘を追う下っ端徒士・・・という構図では無さそうだな。どうする?剣丞」

「俺に聞くのかよ!?」

「剣丞さま、あの連中は三好衆の徒士のようです。下手に手を出すと三好衆を敵に回すことになりますが・・・」

 

詩乃はそう諫言するが、傍から見ればガラの悪い男達が1人の女性に何かをしようとしているこの状況で男達に味方をする気にもなれない。

 

「まぁ、普通あの人助けようと思うよね・・・」

「うむ!それでこそ我が夫だ!」

 

はたして聞く必要があったのかと思う程の久遠の頷きように困惑した織田の剣丞に並んで立ったのは、事態を静観していたエーリカだった。

 

「私も賛成です」

「エーリカも?」

「はい。義をみてせざるは勇なきなり・・・私はあの女性に助太刀します」

 

言いながら白い剣を抜くエーリカ。

彼女は頑固なまでに真っ直ぐだ。それを知っている剣丞はこの行動をそのまま受け取ったが、まだ出会って日が無い久遠達には平時の冷静な彼女とのギャップに驚いていた。

 

「ふっ、なかなかどうして、お主も武者よのう」

「お褒めに預かり光栄です。では、行きます!」

 

エーリカが駆け出し、三好衆の男達に向かっていく。

それに気づいた三好衆は驚きながらもエーリカに対処した。

 

「な、なんだこの姉ちゃん!?」

「あのクソアマの仲間か!斬っちまえ!」

 

女性の囲みを少し解き、数人がエーリカへと向かう。

 

「そのような穢れた刃で私は倒せません!」

 

来る刀を避け、捌く。エーリカはその時に生じる一瞬の隙を見逃さずに三好衆を次々とノックアウトしていった。

 

「強いんだなーエーリカって」

「何をボサッとしておる!剣丞、お主も行くのだ!」

「はいはい、わかってますよ・・・ひよところは久遠と詩乃を頼んだぞ!」

「「了解です!」」

 

久遠の叱咤を受け、刀を抜きエーリカに加勢する織田の剣丞。

彼はすぐさまエーリカのフォローをすべく彼女の死角から迫る敵を峰打ちで倒していった。

 

「七刀斎さんは行かないんですか・・・?」

 

隣で立っていた空がおずおずと剣丞を見上げる。

 

「えっ、行くの?」

 

正直、織田の剣丞とエーリカで事足りるだろうとは思えるほどに2人は余裕で三好衆を相手にしている。

久遠も当然そのことはわかっているが、空の言葉に乗ろうと口角を上げていた。

 

「そうだな、あの2人であやつらは倒せそうだが、肝心のあの女子(おなご)を護るのに手薄だ。ここは行っておけ」

「えっと・・・頑張ってください!」

「ぐっ・・・!」

 

上目遣いでおねだりするようにエールを送る空に、剣丞は

(空ちゃんの方がよっぽど蕩しだよ・・・)

と思わずにはいられなかった。

 

「はぁ・・・しゃーねーな!」

 

 

織田の剣丞とエーリカが外側から斬り込んだとはいえ、女性はまだ複数の男達に囲まれている。

突然の乱入に混乱した彼らも、少し時間が経ったからか再び女性を斬るべくジリジリとその囲いを狭めているところだった。

 

「おい!アンタ!」

 

剣丞が大声で女性に声をかける。

名前がわからない以上こうして呼ぶしかないのだが、女性は自分の事を呼んでいるとわかったのか、瞬時にこちらを向いてきていた。

 

いかに隙の無い身のこなしと言っても、丸腰では不利極まりない。

剣丞は刀を鞘ごとホルスターから外すと、それを女性に投げつけた。

 

「やっちまえぇ!!」

「「「オオオオォォ!!!!」」」

 

それと同時に一斉に女性に突撃する男達。

 

女性はその内の1人を足場にして、放物線を描く剣丞の投げた刀に向かって高く跳んだ。

 

「ふっ、借りるぞ」

 

小さ目な声ではあったが凛と響くその声は剣丞の耳へとしっかり届いていた。

 

 

着地と同時に刀を抜き、一気に振り下ろす女性。

運悪く女性の目の前にいた男は、モロにその一撃をくらい地面に倒れ込んだ。

 

「こ、この女ぁ!」

「弱い!」

 

流れるように刀を振りバッタバッタと敵を倒していく女性の剣技は、遠くから見ていた久遠達に息を飲ませるほどに優雅であり優美であり、勇猛であった。

これには自らも刀を抜いて助太刀しようとした剣丞もその足を止めさせられる。

 

「俺の出番ねーじゃん・・・」

「そのようですね」

 

いつの間にか剣を収めたエーリカが隣に立っている。

周りを見ると、立っている三好衆は1人としていなかった。

 

「ふぅ・・・」

 

最後の1人を倒した女性が一息ついて刀を鞘に収める。

すると女性はクルリと振り返って剣丞に近づいてきた。

 

「お主が余に刀を投げた者か」

 

ザッザッと剣丞の目の前まで女性がやってくる。

彼女の氷のような鋭く冷ややかな目がその長身と相まって剣丞を威圧するように射抜いた。

 

「え、えっと・・・」

 

剣丞が返答に困りながら目を泳がせていると、女性は刀を剣丞に押し付け言った。

 

「中々の業物だが手入れが雑だ。刀は大切に使え」

 

女性は剣丞の手に刀を握らせると、ではなと言って去って行ってしまった。

 

 

 

「来て早々あのような大立ち回りが見られるとは、京とは楽しき町だな!」

「よく言うよ・・・自分は見てただけのくせにー」

 

剣丞もエーリカも先程の女性も、誰1人として血を流させていない。

三好衆の男達は誰もが痛みに呻きながら地を這いつくばっている形となる。

 

その後、検非違使の隊がやってきて男達を締め上げたが、彼らが三好衆と知ると拘束を解き、まるで客人を扱うかのように町の外まで案内していった。

 

「・・・・・・検非違使とは本来幕府の手の者のはずだ。それが今のように他家に媚びるようになってしまっているとはな」

 

久遠が幕府の現状に不満を吐露すると、それはエーリカにも伝わったようだった。

 

「久遠さま、今の幕府はそこまで力が弱いのですか・・・?」

「権威や外面なら今でも強いだろう。だが現状は力を持った隣国大名に町すら好き勝手されてしまう・・・予想以上に幕府は弱体化しているな」

 

これから門を叩こうという先の見たくなかった一面を知り、落胆の色を隠せない一行。

しかしここで回れ右は出来ない。

 

久遠達一行はやや重くなった足取りを二条御所に向けた。

 

 

 

 

 

 

 おまけ~管理者達の能力と補足説明~

多分今回の話では私の稚拙な文章により、新しく出てきた要素がわからない!となる可能性が高いため説明させていただきます

 

 

 

用語

 

【管理者権限】

外史の管理者や調律者(ここではエーリカとローラ)がその外史に介入するために与えられたチート級の特殊能力

あまりに強いために1人あたりの数はかなり制限される

管理者以外の人間に分け与えることもできる模様

※なおエーリカの権限のほとんどは戦恋本編で行った事(躑躅ヶ崎館に突然現れる、小谷での魔法剣など)はきっとこういった能力でやったんだ!と今作品の中でこじつけています

 

【ザビエル】

エーリカが使っていた人形で、白いローブの下はアンティークドール

技の説明の為に消し飛んだ不幸な役回りである

これによりこの世界には元々ザビエルなどいないということが剣丞に説明された

 

 

 

人物

 

 

ルイス・エーリカ・フロイス

 

【能力】

統率88 武勇85 知略92 政治96

天道より能力を引っ張ってきましたが、高いですね(笑)

流石は戦恋本編で完璧超人扱いされるだけありますね。才色兼備、文武両道が似合います

 

【所持管理者権限】

・鬼生産

 戦恋本編であったように鬼を呼び出したり、人を鬼にすることができる能力。しかし生み出せるのは低級の鬼だけで、人を鬼にする際にはその人の元々の素質で中級や上級に変わる

・空間跳躍

 本編後編でエーリカが皆の前に突然姿を表したり、一瞬で本能寺に移動したりする能力

・攻撃力激増

 本編で使っていた魔法剣のようなもの。かなりの威力を誇っていると推定

・超反応(新田剣丞に譲渡)

 相手の動きや攻撃がよく見えるほどの動体視力と、それを見て瞬時に反応できる運動神経が手に入る

 

 

アレッサンドロ・ローラ・ヴァリニャーノ

 

【能力】

統率20 武勇84 知略88 政治19

完全戦闘特化型管理者ことローラ

統率と政治の能力が低いのは、『興味が無い』ということからであり。地頭は良いかと

 

【所持管理者権限】

・鬼生産

 ほとんどはエーリカと同じ能力。しかし無から鬼を生み出せるエーリカに対し、ローラは人を鬼にすることしかできない

・鬼召喚(部分)

 鬼の腕を肩周辺に生み出し、それで攻撃する

 

 

 

 

 


 
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