No.713202

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第229話

2014-09-02 20:10:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1516   閲覧ユーザー数:1390

9月25日―――

 

~第三学生寮~

 

特別実習日の朝、A班、B班共に玄関に集合していた。

「―――8時20分。まだ来ていないのはエリオットと先輩だけか。」

「エリオットさん達と一緒に相談していたアムドシアスは真夜中に私が眠っている間に戻ってきたようですが……」

周囲を見回してその場にいない人物をマキアスとプリネはそれぞれ確認し

「ふふ、昨日は遅くまで出し物の企画を練っていたようだからな。」

「ああ、ステージの方向性はだいたい固まったんだけど……曲と演出については3人共拘りがあるみたいでさ。」

苦笑するガイウスの言葉にリィンは疲れた表情で頷き

「アムドシアスって、音楽に関しては滅茶苦茶うるさいもんね。」

(当然だ!”ロックミュージック”は個人的には好みではないが、それでも”ディル=リフィーナ”の今では誰にも伝えられておらぬ古(いにしえ)より伝わりし音楽!絶対に妥協は許さん!)

「アハハ……」

「フフ、でもそれだけ熱心になってくれるのですから、きっといいステージになりますよ。」

エヴリーヌの言葉を聞いたアムドシアスは力強く答え、ツーヤは苦笑し、セレーネは微笑んだ。

 

「あはは、なかなか楽しそうなステージになりそうだねー。」

「ふう、エリオットとアムドシアスはともかくクロウの方は気になるわね……」

「まあ、それについてはまずはお任せするとして……」

「それにしても昨日の夜はいささか驚かされたな……教官があんな事を言い出すとは。」

「ああ、そうだな……」

ラウラの言葉に頷いたリィンは仲間達と共に前日の夕食時の出来事を思い出した。

 

前日、夕食時―――

 

「―――そうそう、明日は出発前に士官学院に寄ってもらうわ。朝9時にグラウンド集合。A班、B班共に遅れないように。」

 

~現在~

 

「サラが唐突なのはいつものことだけど。」

「まったく……一体どういうつもりだ?西部にある”オルディス”など列車だと8時間はかかるだろう。」

前日の出来事を思い出したフィーとユーシスは呆れ

「ええ、到着する頃には日が暮れてしまいそうですね。」

「あまり出発時間が伸びてしまうと、今日中にオルディスに到着できるかどうか怪しいですね……」

「うん、ルーレだって5時間以上はかかるんだし。どちらも始発列車に乗っていてもいいくらいなんだけど……―――シャロン。思わせぶりに控えてるけど、何か事情でも知ってるわけ?ルーレが実習先になるならまた先回りするんでしょうけど。」

エマとプリネと共に考え込んでいたアリサは食堂の出入り口の前で控えているシャロンを睨んで問いかけた。

 

「ふふっ、滅相もありません。あくまで皆様のお見送りをさせて頂いているだけですわ♪」

笑顔で答えたシャロンの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかき、アリサはジト目になり

(ぜったい先回りしそう。)

(ああ、それに事情の方も知っていそうだけど……)

フィーの推測にリィンは頷き

(あはは、ゴハンも美味しいしすっごいメイドさんだよねー。)

(ええ……わたくし、シャロンさんやエリゼお姉様のような凄い有能なメイドの方、初めて見ましたわ。)

ミリアムの感想にセレーネは静かな表情で頷いた。

 

「ゴメン……!ちょっと寝坊しちゃった!」

「おー、おはようさん!」

その時エリオットとクロウがリィン達に近づいてきた。

 

「おはよう、二人とも。」

「これで全員揃ったな。」

「はあはあ……9時にグラウンドに集合だっけ?」

「何のつもりか知らんがまだ余裕はありそうだな。」

「うむ、A班B班とも、改めて出発するとしよう。お互い、出発前の最終準備もあるだろうしな。」

「そだね。」

「ふふっ、くれぐれもお気をつけていってらっしゃいませ。」

その後準備を終えたリィン達はグラウンドに向かった。

 

~グラウンド~

 

「―――来たわね。」

「―――8:50分。ちょうどいい時間だな。」

「サラ教官、レオンハルト教官。もう来てたんですか―――」

サラ教官とレーヴェに話しかけられたリィン達は二人の傍にいるシャロンに気付き

「ちょ、シャロン!?」

「さ、さっきまで寮にいたはずじゃ……!?」

「一体いつの間に先回りを……」

「油断も隙もありませんね……」

シャロンに気付いたアリサは驚き、マキアスは疲れた表情をし、セレーネは目を丸くし、ツーヤは苦笑していた。

 

「実はサラ様とレーヴェ様に呼んで頂いておりまして。皆様をお見送りした後、こちらに伺った次第ですわ。」

「やっぱり先回りしてた。」

「あはは、シャロンさんらしいというか……」

「さすがはラインフォルト家のスーパーメイドってヤツだな。」

シャロンの話を聞いてリィン達と共に冷や汗をかいたフィーはジト目で呟き、エリオットは苦笑し、クロウは笑顔でシャロンを見つめた。

 

「ま、個人的にはご遠慮願いたいんだけどね~。一応、A班の”案内役”だから仕方なくってところかな。」

「ふふっ、恐れ入ります。」

「……A班の案内役?」

「そ、それって……」

サラ教官の言葉が気になったリィンは首を傾げ、ある事を察したアリサはシャロンを睨んだ。

 

「あ、もう来てたんですね。」

「おや、シャロン殿?」

「あれれ、なんで来てるのー?」

「さっきまで寮にいたのに、いつの間に先回りしたの?もしかして転移魔術を使えるの?」

「エ、エヴリーヌお姉様……さすがにそれはないかと。」

「フン、つくづく驚かせてくれるメイドだ。」

「ふふっ、恐縮です。」

するとその時B班のメンバーがグラウンドに来た。

 

「A班、B班揃ったわね。09:00ちょうど―――ジャストタイミングじゃない。」

「ああ……――来るぞ。」

「へ……」

サラ教官とレーヴェの言葉にアリサが呆けたその時、空から何かの駆動音が聞こえて来た。

「この音は………」

「風を切る音……いや。」

音を聞いたリィンとガイウスは考え込み

「飛行船の音だね。」

「な、なんだって?」

フィーの答えを聞いたマキアスは驚いた後仲間達と共に空を見上げると驚くべき光景があった。

 

「あ!」

「あ、あれは……?」

「おいおい……なんだぁ、ありゃあ!?」

「―――来たわね。」

驚くべき光景―――アルセイユ号の姿に似た深紅の飛行艇がグラウンドの上空に現れた!

 

「……………………」

「な、な、な……」

「なんだこれはあああっ!?」

飛行艇を見たリィンは呆け、アリサは口をパクパクさせ、マキアスは信じられない表情で声を上げた!

 

「あはははっ、カッコイーっ!」

「あら?あの飛行船の形、どこかで見たような……?」

「なにあれ。もしかして”影の国”のどっかにあった”アルセイユ”とか?」

「エ、エヴリーヌさん。さすがにそれはありえませんよ。」

「フフ……―――話には聞いていたけど、ようやく完成したようね……」

深紅の飛行艇を見たミリアムは興奮し、ある事に気付いたセレーネとエヴリーヌは首を傾げ、エヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかいて苦笑し、プリネは微笑みながら飛行艇を見つめ

「紅い飛行船……いったいどこの……」

「正規の飛行艦……にしては武装が少ない?」

エマとフィーは考え込んだ。

 

「しかし……このシルエットは最近どこかで……」

「そうだ……!”リベールの白き翼”!あれに似てない!?」

ラウラの言葉を聞いたエリオットはある事に気付いて声を上げた。

 

「”アルセイユ号”……!」

「い、言われてみれば……!」

「”リベール王国”の高速巡洋艦……」

「オリヴァルト皇子がリベールから帝都に凱旋した時、乗っていたという船だな。」

そして滞空し続ける飛行船を見てある事を察したリィン達は石化したかのように固まり

「えっと、まさか……!?」

「こ、このままグラウンドに着陸するつもりなんですか!?」

我に返ったエリオットとマキアスは慌てた様子で声を上げた。

 

「ええ、もちろん。」

「全長75アージュ……一応、何とかギリギリ着陸できる広さですわ。」

「フッ、その大きさにしたのは偶然か、わざとかは”奴”次第だがな。」

リィン達の反応を面白そうに見ていたサラ教官達は着陸に邪魔にならない位置に移動した。

「はー、ムチャしやがんな。」

サラ教官達の話を聞いたクロウは呆け

「……ていうか何でしれっとサイズとか把握してるのよ!?」

シャロンが飛行艇のサイズを把握している事に気付いたアリサはシャロンを睨んで指摘した。その後飛行艇はグラウンドに着陸した。

 

「おーっ、スッゴイね!」

「綺麗な船……ですね。」

「本当に……紅い”アルセイユ”だね。」

「エレボニアの紋章……帝国の船であることは間違いなさそうだが。」

深紅の飛行船の着陸にリィン達が驚いたり興奮しているその時

「―――やあ諸君♪10日ぶりになるかな?」

聞き覚えのある声が聞こえた後、なんとブリッジにオリヴァルト皇子とミュラー少佐、そしてレンが姿を現した!

 

 


 
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