「・・・うぅ・・・・」
痛い
全身が、痛い
動かそうともがくけど、痛みに負けて再びベットに沈む
目が覚めてから、私はずっと病室から脱出を試みていた
しかし体が動かない以上、私は逃げる事はできない
今、私は病室の一室と思しき場所
カーテンに仕切られた場所に縛り付けられていた・・・本当に体が重いってだけなんだけど
「患者さんが目を醒ましました」
「ふむ、本当に運には恵まれている子だね」
カーテンをシャッと開けてそこに待っていたのは、白衣を纏った男の医者だった
「時速約60kmで突っ込んできた車に正面から衝撃を受けたのにも関わらず
全身打撲のみ、骨格、筋肉、内臓その他の部位に異常は診られない
奇跡にも程があるね。君は神様に愛されてるみたいだ」
カルテを捲りながら、医師はメガネを正してそういった
見た目温厚そうなおじさんで、パタッとボードをたたんで私に向き合った
「君が守った少女は無事。完全無傷で今は心が落ち着くまでここに居てもらってるよ」
「そう・・・ですか・・・」
「おおっとあまり無理はしない方がいい。君はまだ動けないだろう?
ゆっくり療養していくといい。あと、治療代金は事故車の運転手から搾り取るから心配しないでくれたまえ」
と、ほとんど一方的に会話を終わらせて医者は去っていった
「よかった・・・あの子無事なんだ・・・」
自分の手に残る少女の温もりを、守るように蹲る
毛布を被せるように、私は蹲った
シャッ
カーテンが開く音が聞こえて、私は布団から顔を出した
そこに待っていたのはーーー
何で?
どうして?
どうして・・・!?
「・・・フィリア」
「・・・お母さん」
そこにいるの・・・!!
「ああフィリア・・・やっと会えた・・・」
ぎゅうっとお母さんに抱きしめられ、体中が軋む
ってギャァァァァァァァァァッ!!
「痛いよ・・・お母さん・・・」
苦痛を堪えながら言った・・・・体が引きつるっ・・・!!
「ああっ・・・ごめんなさい・・・」
しょんぼりと、お母さんはそこの椅子に腰掛ける
「久しぶり・・・っていうのもおかしいかな」
「そうね・・・夢じゃなかったのね・・・」
手を握られ、そして聞かれる
「本当に・・・フィリアなのね?」
「うん、”ただいま”お母さん」
「ーーーー!!」
大粒の涙を流しながら、お母さんは私を抱きしめる
またしても、私は激痛に身をよじる羽目になってしまった
「フレイス~お茶を淹れてもらいましたよ・・・って、何してるのよ。貴女病人でしょう?」
と、頭を抱えて手にしているプレートを机に置く女性
プレートにはティーセットが伏せ置きしてあって、どうやら給仕室から借りてきたようだ
「ところでそちらの方は?」
「私の娘よ」
「その冗談は体に響いたわ・・・、そうよねお嬢さま」
私に向かって言ってるのかな、お嬢さまって
そういうガラじゃ無いのに・・・
「確かに似てはいるけど・・・でもそれならーーー」
ガラッ
「フィリアさん・・・いや、フィレイア・V・リーファフロイス皇女殿下
国家重要人物と、そして国家重要参考人として身柄を拘束させていただきます」
病室に突入してきたセシリアが何かの手帳を突きつけて決めポーズ
うん、堂々としてる方が似合ってるよセシリアって
「この子を拘束しようと言うのかしら?」
「はい、これはクルク王妃より頂いた特命ですので」
お母さんの私を抱きしめる腕に少し力が入った
「そう・・・国家の主たる最高権限を持つ者として命令します
我が愛娘を力ずくで拘束しようとするのならば
代表候補生の任を背負う権利を持たぬ者としその権利を剥奪します」
お母さんがセシリアの方を向く
そして、セシリアの顔から血の気が引いていく
この症状はアレだね
「「「ショック気絶」」」
さっきの医者と私、そしてお母さんの親友さんが呟く
と、同時にセシリアの意識と体を支える糸が切れた
「そこのベットに寝かせておきなさい」
「わかりました」
「ついでに手足をベットに拘束、暴れても拘束が解けないようにしておくように」
おぉ、徹底的徹底的
医者は手馴れているかの如く、私の正面のベットにセシリアは沈んだ
「全く、この病院は忙しないですわね」
「原因のアンタに言われたかないな、フレイシア。というか、あんたの娘って・・・ホントか?」
じぃっと私とお母さんを見比べる医師はポンと手を叩く
「孫だろ」
ごもっともです・・・自分でも思います
見た目がその位離れている
私の中身もその位離れてるんだけどね
「あなたは今何をしているの?」
「今は・・・IS学園に居る」
「あら、それならセシリアちゃんと同じ学校なのね」
「うん、同じクラスだけどさ・・・」
ばたんきゅー☆な状態だからね本人
「本当に・・・またあなたをこうして抱きしめられるのが夢のようね・・・」
「私もだよ。でもお母さん・・・私は・・・」
「クルクから話を聞いたのね。私達の名前を」
それから、私はお母さんに聞いた
自分の、本当の自分を
「・・・貴女は私のたった一人の娘よ
だからーーー私から貴女に名前を返します」
「名前を・・・返す?」
私はその言葉の意味を・・・重さを理解していなかった
それがどれだけの意味を持ち、それがどれだけの運命を狂わせる物だとも知らずに
「貴女の名前はーーーフィレイア・ヴィリタニィ・リーファフロイス
私ーーー英国皇族第一皇妃、フレイシア・ヴィリタニィ・リーファフロイスの娘にして
英国の長たる権限を正式に私より受け継ぐ権利を持つたった一人のお姫様なのよ」
その言葉を耳にした私は、その段階で初めて認めた
それ以外に、私に残された道はないから
「なんですって!?本当に貴女がフィレイアちゃんなの!?」
「・・・その時の記憶が曖昧で覚えてないですけど・・・
リファリーおばさんですよね?」
「そう・・・よ・・・っ!!」
そうして、私の記憶にあるよく遊んでくれていたクルクのお母さん・・・
リファリーおばさんに抱きしめられた
「本当にフィレイアちゃんね!?本当に生きてたのね!?」
「はい・・・お久しぶりです、リファリーおばさん」
「大きくなって・・・また会えるとは私も思ってなかったわ!!」
そうして涙を見せるおばさん・・・
どうしてだろう?
どうして私はこんなにも・・・
「でも、どうして?あなたは歳を取ってないの?」
そう・・・私はいきなりこの時代に居た
三十年の時の流れを、そのまま飛び越してこの時代に存在させられてしまった
「・・・わからない」
「え?」
「わからないんです・・・本当に・・・
私は、気が付いたらこの時代に飛ばされていました」
「それは・・・?」
と、おばさんが訝しげな顔をしていた途端、お母さんが口を開いた
「そう・・・フィレイア、貴女は”私達が持つ特異な能力”を発現させたのね・・・」
「どういう事?おかあさん」
「私達だけが持っている・・・それは科学的な根拠なんて一つもないオカルトのようなものだけど
・・・私達の一族は、物理的な力ではない力を持っているの」
「・・・それは?」
「それは神の力・・・所謂、私達だけが持つ特殊な能力よ」
それから説明を聞いていく
「私が持つ能力は、”過去を見透かす”事・・・あまり大した能力では無いわ
フィレイア、貴女が持つ能力が何なのかは判らないけど
貴女は私達の血を色濃く継承しているの。恐らく貴女はとても強い能力を
発現しているはずよ」
ちから・・・
「わからないよ・・・」
「フィレイア?」
「わからないよ!!そんな力なんて要らない!!
要らないから・・・私は・・・」
ふつうの・・・みんなと一緒に笑っえる日常が
ふつうの・・・みんなと一緒に居られる日常が
全てにおいての、皆が”思っている”日常が
その日常の裏の・・・最たる冷たい場所で生きてきた私にとって
届かない夢の居場所である事は判ってる
それでも・・・
「私は・・・戻る事のできる・・・”平穏な居場所”がほしいだけなのに・・・」
私の娘が、泣きながら私に言ってきたその言葉
過去を視る事のできる私は、この子の過去を遡り視た
その過去は・・・私にとって信じられないような壮絶なる過去だった
あの戦争・・・ベルカ戦争に巻き込まれ
そして・・・あの有名な英雄・・・”ガルム”として
あの戦争を生き抜き、そしてその名を世界に広めた戦闘機のパイロット
その時・・・いや、それ以前
学校の友人達を目の前で失い・・・ただひとり、残ってしまった
私の娘は・・・なんてものを抱えて生きているの?
その時、私は何をしていたの?
娘を勝手に殺しておいて、国の為、国民の為と会議をしていた?
私が欠伸をしながら書類を整理している時に、この子は戦闘機に乗っていた?
私が楽しくお茶会をしている時に、この子は仲間を失っていた?
私がこの子の事を夢見ながら寝ている時に、この子は一人部屋で悲しんでいたの?
私が笑っている時に
この子は・・・人を殺していた
それが正当化されてしまう荒れ果てた空の果てで
この子は、世界を背負って戦っていた
昔、この子が小さい時に見せた無邪気な笑顔の影はなく
暗く、その輝きを失ってしまっていた
いつか、家族全員でゆったり暮らそうと思っていたのに
夫である皇子・・・リーディアスは帰らぬ人となり
一人残されてしまったこの子は・・・日の光の当たる大通りを堂々と歩く事ができなくなっていた
そんな夢は・・・完全に崩れて消え去った
こんなの・・・母親として・・・家族として失格よ・・・
この子に触る権利すら無い、私は人でなしよ・・・
「えぇ!?フィリアさんがイギリスのお姫様!?」
と、学園にて千冬と機密会議をしていた麻耶は思わず大きな声を出した
「ああ、向こうの人間からご丁寧に血縁証明書まで送付してきた。
生年月日は1979年2月8日、現英国の民家にての極秘出生
当時のしきたりである身分隠匿による市民生活を六歳まで続ける
しかし、父親であり英国皇子であるリーディアス・B・リーファフロイスが
自ら戦役へ、彼女も父親と共に国を出た
しかし某哨戒任務にて皇子は行方不明。KIA認定され、彼女は空軍基地に取り残される
それ以降、彼女は基地で飛行操縦技術を学び航空学校へ進学
その航空学校を飛び級、過去最高成績の主席で卒業。
オーシアの防空飛行隊に就く
しかし彼女がパイロットになって半年、所属不明部隊による基地奇襲事件が発生
彼女以外の同期のパイロットは、全員撃墜、墜落で死亡
一人残された彼女は軍上層部へ懸念を抱き、一ヵ月後に退役
そして、航空学校前をたまたま通りかかった航空傭兵会社の幹部が彼女をスカウト
航空機を与えられえ、彼女は再び空へと上った
名を、”ジュリエット”から”サイファー”に改めて
そして間もなく、ベルカ戦争勃発・・・」
それから二番機との邂逅、決別・・・そしてーーー決闘
語り継がれた内容が、後に続く事になる
「でもこれって・・・これが事実だとしたら・・・」
「ああ、アメリカは核爆弾以上の脅威の不発弾を”腹に抱えている”と言う事になる」
まずーーー他国の国家重要人物が戦闘機のパイロットになっている事
いかなる理由であろうと、その地位を持つ者ならば国外で働くなどありえない事態なのだ
更にーーー
「軍事航空機総合戦闘支援システムーーー通称”FACS”
今や西側各国の戦闘機に標準的に装備されているそのシステム
その初めての実戦投入ーーーしかも、それは空想段階の最初の試作品だったらしい」
「あのタッチパネル式電子系統支援システムですね。あれがどうかしたんですか?」
「その初期試作実験品を装備した機体がーーーフェイリールドのF-15Cだ」
「・・・え・・・それって・・・」
「あのシステムは機体の電子制御系統を全て統括制御している
開発されたばかりのシステムがエラーになればどうなるかーーー判るな?」
「・・・でも、彼女自身がそれを承知していれば別にアメリカ側はーーー」
「そこだマヤ。そこがアメリカにとっての最大級の発火点たる点だ
この事をーーーフェイリールドは”知らされてなかった”んだ」
「っ!?だとしたら・・・」
「ああ・・・アメリカは、フィリアを”モルモット”にしたたんだ。更に、この実験には裏があるんだ」
「な、何ですか?」
「ライトウエイト・バイ・ライトグラビティ法則という言葉を知っているか?」
「確か・・・荷物の自重が軽ければ軽いほど、その荷物に掛かるGは軽減される
というものですよね」
「そうだ。フェイリールドのパイロットスーツには他のスーツには見られない”センサー”が
組み込まれていた」
「・・・・・・・」
「恐らくーーーその臨床実験と関係する物だろう」
淡々と冷静に思考する千冬をよそに、マヤは小さなこぶしを握り締めていた
「・・・どこまで・・・世界はどこまで彼女に背負わせるつもりなんですか!?
あんまりじゃないですか!!何でこんなに・・・こんなに・・・」
そうだーーー明らかに、彼女は常軌を逸した運命を抱え込んでいた
千冬は、ただ恐ろしかった
それでも、これだけの物を引きずりながらも前に進もうとする少女が
世界のどんな強力な兵器よりも・・・殺意よりも自身の恐怖心を煽った
それ以外に、彼女が歩む道は無かっただろう
否定なんて誰もできない
「それでも・・・あいつは壊れる事もなく心を保っている
それだけ、フェイリールド自身は強いという事だ。
だがマヤ・・・これ以上彼女にこんな下らん物を背負わせる訳にはいかない」
それは一人の教員としてでは無く、彼女が守ってくれた世界に生きる一人の人間として
「当たり前です・・・!!そんな事、判っています!!」
いつものようにおどおどした姿ではない、大人としての雰囲気
それは、彼女の代表候補生時代の眼差しを遥かに凌ぐ決意を表していた
一人のーーー”世界最強”として、千冬は覚悟を決めた
「零式のモニタリングを行う。現在位置情報を衛星より確認」
「衛星とのデータリンクを確立、特定人物保護法に基き
英国第一位皇位継承者”フィレイア・B・リーファフロイスの現在位置を確認」
ピピッという音と共に画面に表示される情報
そこには赤い文字で”第一級重要保護対象人物”の文字が赤々と映し出された
そして、フィリアという名前の人物は存在しない事は予め把握していた
その個人情報は・・・名前という”鍵”を使って初めて引き出せた
彼女のーーー真の姿である写真が映し出された
そこには、現実を知る者としては呼吸が不安定になるほど苦しい姿の
・・・何の濁りもなく、ただ純粋に綺麗な蒼い瞳を輝かせる
眩しい程に輝く蒼い長髪を惜しげもなく舞わせる、”お姫様”がそこに写っていた
「シース・ストラティア現在位置ーーーイギリス オークトレア国家総合医療病院!?」
そして、零式の搭乗者管理状態を表示する
「全身打撲による行動不能・・・」
「イギリスの映像放送を全てチェックしろ」
画面全体に、細かく区切られた放送がそれぞれに映し出される
「さらに番組を報道系に絞り込め」
画面から放送が切り替わり、少し大きくなった区切りに放送が集約された
「これではない・・・・これも・・・・・!!六番の放送を」
さらに、大きなモニターに一つの番組が映し出される
”次のニュースです。今朝未明、クロードストリート交差点にて交通事故が発生
信号無視した乗用車が子供に向かっていた所、少女がその間に入って
子供を守った模様。乗用車運転手は現行犯逮捕、信号無視の経緯は聴取中
庇った少女は意識不明の重体
現在、オークトレア国立病院にて治療を受けている模様です
彼女が守った少女は奇跡的に無傷、勇気ある行動にその場に居た誰もが賞賛と
感銘の意を表しています”
「これだ・・・オークトレア国立病院に連絡を」
「それなんですが・・・」
と、麻耶はモニターの表示を変更
映し出されたそれは病院のホームページだった
「”現在、国家重要参考人物を療養しており
病院の三階を封鎖、立ち入り禁止区域としております
お手数ですが、階段叉はエレベーターご利用の際は
ナース叉は警備員、医師等にお気軽にお尋ね下さい”
・・・まずいな。フィリアの正体が世間に露呈するのは何としても避けたいが・・・」
ピピピッピピピッ
と、司令室の通信音が鳴り響いた
「零式を通しての通信・・・」
「繋ぎます」
”Online sound connecting "Sees.Stratya"”
「(こうしてこうで・・・ああ、もう繋がっているのね)」
繋がれたと同時に聞こえてきたのは、明らかにその搭乗者のものではない声だった
「搭乗者では無いな。ISを専属搭乗者以外の人間が操作する事は条約違反だ
今すぐ搭乗者を通信に介させろ」
そう、ISは所謂”兵器”だ。一般人が容易に扱っていいものではない
「(あれまぁ・・・怒られちゃったわ)」
「余計な会話をするほどこちらも忙しくないんだがな」
「(その話し方は・・・ブリュンヒルデね)」
「だとしたらそれがどうした」
「(娘の世話をしてくれてありがとうございます)」
・・・・・・・・・
この会話からくる事実とは・・・
「お・・・織斑先生、ま、まさか・・・・」
麻耶が恐ろしいものを見る目で私を見ている
私自身、先程の問答をかなり後悔している所だ
「(申し遅れましたね。私の名前は フレイシア・V・リーファフロイス
フィレイア・V・リーファフロイスの母になります。以後、お見知りおきを)」
この時、私達はとんでもない事をしでかしたと己の行動を悔やんだ
まさか・・・英国の女王陛下様が相手とは思わないぞ
「(今、娘は私が保護しております。心配なさらないで
それに突然現れた私の娘を守ってくださった事に関して、本当に感謝の念が尽きません)」
「いえ、私は”人として当然の処置”を取っただけの事です
それに、彼女はうちの学園のどんな生徒よりも優秀で手のかからない生徒ですよ」
「(それは結構、迷惑をかけていないのならそれで良き事です)」
ふふっと控えめな笑い声が聞こえた
「(時間があまりありません。こんなおばさんのお願いを聞いてはくれませんか?)」
その声には、本当の意味での力が篭っている
そんな気がして、私は真剣に耳を傾ける
「(私の娘を・・・お願いできないかしら)」
声が・・・少し震えた
「それはどういう意味で、ですか?」
「(そのままの意味よ・・・私にはもう、あまり時間が残されて無いの
この子が二十歳を迎えないうちに私はこの世を去るでしょう
だから・・・それまでこの子をお願いできないかしら)」
「・・・その必要はありませんよ
彼女はもう、人としての経験を十分以上に吸収しています
それこそ、十代の女の子とは思えない程に大人です」
「・・・そうね・・・でも、人は一人だけでは生きては行けない
見守るだけでもいいから・・・お願い」
・・・この人に伝えるべきか
迷う・・・
彼女が、英雄であり悪魔であるという事を
ーーーできない
それをしたとき、あいつの心は壊れてしまうだろう
「”・・・この子がどういう過去を歩んできたのか、おおよその想像はつきます
でも・・・この子が守ってくれたこの世界は、本当にこの子が望んだ世界なのでしょうか?”」
この人は・・・全てを把握していた
「・・・その質問にはお答えかねます」
彼女が何を望んで世界と向き合ったのか
何を求めて世界を救ったのか
それは私にも判らない
ただ命令にしたがった結果がこうだとすれば
それは、彼女の意思ではないという事になる・・・でも
「彼女は、意識して世界を救った訳ではなく
単純に、結果的にそうなっただけの事だと思います
彼女自身に、それを背負わせる訳にはいかない」
麻耶が隣で強く頷く
私達の・・・”真実を知る”私達の意思を伝える
「”・・・そう・・・それじゃあ、お願いね
私に・・・この子を愛する権利はないわ・・・”」
通信が切れ、そして沈黙が私達に纏わり着く
「そうだ・・・これ以上彼女を追い詰める訳にはいかない」
「私達が、彼女を守るんです」
麻耶が決意の言葉を括る
そして私は、最後の一言の意味を直感的に悟っていた
だからーーーー私が、あなたの意思を引き継ぎます
”行かなきゃ・・・”
”sistem state...
Flight Asist Control Sistem ...main control sifting
sistem login "F-15C"...
"F-45 praviry eagle" boot...
両端を紺色に染められた機体のFACSが、静かな電子音と共に起動する
その操縦席には誰も座っていない
だが・・・そこには確実に”誰か”が居た
第三格納庫
「さて、機体のスクランブルカタパルトへの接続完了・・・でも、パイロットって誰なんだろう?」
機体のチェックと整備を担当する生徒・・・水崎 陽菜美は飴玉を口に含んでイスにもたれかかった
「えっと?搭乗者氏名は・・・登録されてないや。でも、世界最新鋭の戦闘機か~
Fー45・・・ISに対抗できるだけの剣を作り出す計画”エクスカリバー計画”
において開発され、正式採用に至った特殊戦闘機
機体の開発においては、エストバキア・・・現ロシア連邦が開発していた多目的戦術戦闘機
CFA-44”ノスフェラトゥ”を元に改良、省略、量産化にあたって徹底的に再設計され
空対空処理能力、旋回性能、そして最大の変更点はエンジンそのものの大幅アップグレード
新技術を惜しみなく投入し、果てはISの推進機構の一部を参考にするなどの構造変更を
行った結果・・・航続距離が大幅に増え、燃料を給油せずに世界を一周する事ができる
・・・・かっこいいから別に私は気にしないけど」
水崎は機体の方に目を向けた
「一度でいいから、離陸を見てみたいなぁ・・・」
と、デスクに頬杖を付いてモニターをチラッと見る
そして、気が付いた
「あれ!?カタパルトにエネルギーが回ってる!?誰か乗ってるの!?搭乗者確認!!」
と、制御画面に表示されているパイロットの名前を確認する・・・しかし
” pirot "No entry"
「え!?何で!?パイロット不在なのになんで!?あっ!!ちょっと待って!!
待ってえぇぇぇぇぇ!!」
”カタパルト射出フックの接続完了・・・整備各員は速やかに退避室へ退避してください”
キュィィィィィィン
エネルギーゲージが最大まで表示され
射出完了の青いアイコンが光る
「マスターコントロール行使!!カタパルトのコントロールシステムのロック
緊急停止装置作動用意!!・・・作動!!」
水崎は間髪入れずに緊急停止ボタンを押す・・・だが
”この操作を受け付ける事はできません”
「なにやってんのこのポンコツシステムゥゥゥゥゥゥゥ!?」
”カタパルト作動電圧確保確認 機体推力の安定化を確認
作動準備完了 You have control”
「許可できるわけないでーーー」
”あい はぶ こんとろーる”
その小さな声に水崎が疑問を持つ数秒前に、カタパルトが作動して機体を大空へと飛翔させていた
「何だ!?何故あの機体が飛んでいる!!搭乗者は誰だ!!」
「こちら管制室!!搭乗者確認できず!!」
いきなり滑走路緊急離陸用カタパルトが作動し、地面からいきなり戦闘機が飛び出した
その機体の色は、フィリアのあの機体を模した塗装を施してあるあの戦闘機だった
「映像確認中・・・っ!!搭乗者無し!!パイロット搭乗しておりません!!」
「何だと!?では何故飛んでいるんだ!?」
「オートパイロットオフライン・・・待ってください。FACSに何らかのアクセスがあります
解析・・・検索完了、システム自体が別の機体のシステムに切り替わっているみたいです」
「何だと!?その別の機体のシステムとは何だ!?」
「システムログイン・・・・コード F-15C システム名称”フィア”」
「ーーーーーーーー!?」
何・・・だと・・・・?
「機首反転、GPS航路誘導装置アクセス確認・・・航路番号148
空港指定無し・・・目標、イギリス、レイラルド」
レイラルド・・・第四首都か
オルコット達に
「F-45、対目視用光学フィールド展開確認・・・映像出します」
私の端末に送信されてきた映像には・・・F-15が写っていた
間違いなく、あいつの機体が写っていた
それは証明でもあった
あいつの機体が・・・あいつの娘が
自ら、意思を持ってあいつの元に向かっているんだ
どこまで・・・お前は人間離れしているんだ
どこまで・・・お前は
”ヒト”を捨てれば気が済むんだ・・・
はい、作者です・・・
ラリー「もはや何も残ってないぞ作者」
作者「出番はまだまだ後だから大人しくしとけ変態妖精片羽」
てなわけで・・・ここからですね・・・色んな意味で
意見感想募集中
よろしくお願いします~
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ありとあらゆる偶然の元、主人公はこの場所・・・生まれ故国で
記憶を・・・昔の姿を認識し始める