No.712743

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第224話

2014-09-01 00:02:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1856   閲覧ユーザー数:1734

 

9月19日―――

 

翌日、いつものように生徒会の依頼を終わらせた後旧校舎の探索を終えたリィンは昨日のトワの約束通り、端末室に向かった。

 

~トールズ士官学院・端末室~

 

「あれ……?まだ来てないみたいだな。―――あ。」

扉をノックしても返事が返って来ない事に首を傾げたリィンは教室に入って周囲を見回した際トワが居眠りをしている事に気付いて呆けた声を出した。

「スヤスヤ……むにゃ……」

(うーん……よく寝てるみたいだ。どうする……?起こすのも忍びないけど。……疲れてるんだろうし、しばらく寝かせてあげよう。そうだ……)

トワを起こすか起こさないかで悩んだリィンはトワを起こさない事に決め、トワが風邪を引かないように上着をかけた。

(―――これでよし。俺は……本でも読ませてもらうかな。)

そしてリィンは椅子に座って本を読み始めてトワが起きるのを待ち

(うふふ、今ので間違いなく好感度はアップね♪)

(このような気配りができるのに、どうして恋愛事になると、とたんに鈍くなるんでしょうね……?)

(ふふふ、それはご主人様だから仕方ないかと。)

(フフ、言われ放題ね、リィン……)

その様子を見守っていたベルフェゴールはからかいの表情になり、苦笑するメサイアの疑問にリザイラは静かな笑みを浮かべ、3人の念話を聞いていたアイドスは微笑ましそうにリィンを見つめていた。

 

~数時間後~

 

「ん……あれ……ここって……」

数時間後、日も暮れてすっかり夜になるとトワもようやく目覚め、自分の肩にかけられている真紅の上着に気付いた。

「……上着……?えっと……」

自分の肩にかけられている上着にトワが戸惑ったその時

「――会長。起きたみたいですね。」

リィンが声をかけてきた。

 

「あれ……リィン君……?あ、そっか……会議が終わってここに来て……それじゃ……この上着は……わわわっ、ごめんなさい!」

自分が居眠りをした事にようやく気付いたトワは慌てた様子で立ち上がった。

「自分で来いって言ったのにわたし、寝ちゃうなんてっ!」

「はは……気にしないでくださいよ。こっちの用事なんですし、忙しいのにありがたいです。」

「うう~……なんでリィン君の前だとこんなのばっかりなんだろ……こ、これ、ありがとう。」

(うふふ、彼女の場合は素の自分をさらけ出す事が出来る唯一の男って事でその内ご主人様を意識するでしょうね♪)

(フフ、確かにそれはありえそうですね。)

肩を落としてリィンに上着を返す様子のトワを見守っていたベルフェゴールの推測を聞いたメサイアは微笑みながら頷いた。

 

「いえ、もしかしたら余計かなと思ったんですが。暑くなかったですか?」

「ううん、ぽかぽかして気持ちよかったけど……―――じゃなくって!リィン君、そこに直りなさいっ!」

「へ……」

突如頬を膨らませて自分を睨み始めたトワの命令にリィンは呆けた。

 

「そ、その……!上着をかけてくれたのは紳士的だし、嬉しいけどっ。女の子の寝顔をずうっと見てるのはどうかと思うなっ。」

「いや……すみません。あまりによく寝てたから起こすのも忍びなくって……でも、そうですね。確かに配慮が足りませんでした。」

「ち、ちがうのっ!別に怒ってるわけじゃなくて!―――とにかくっ!あんまりこういうことを簡単にしちゃダメなんだからねっ!?」

その後トワは端末の前に座った。

 

「コホン………それじゃあ改めて。去年の学院祭の時にやった『演奏会(コンサート)』についてだけど。」

「あ、はい。先輩たち4人の出し物ですね。ひょっとして……何か記録でも残っているとか?」

「えへへ……実はそうなの。ルーレ工科大学で開発された”導力ビデオカメラ”のテストをちょうどジョルジュ君がやって……その記録が残ってるの。」

「導力ビデオカメラ……?」

聞き覚えのない単語を聞いたリィンは首を傾げた。

 

「うん、導力ネットとは別の技術みたいなんだけど。百聞は一見に如かずだね。さっそく映してみようか。」

「スクリーン……あれに写真を写すんですよね?」

「えへへ……それだけじゃないよー。それじゃあ始めるね♪」

そしてトワが端末を操作するとスクリーンに何かが映った。

 

「これは……」

スクリーンから音声が聞こえ、写真が動いている事にリィンは驚き

「うん、写真やラジオと違って映像と音声の両方が流せるの。ちょっと荒いかもだけどその場にいるみたいでしょ?」

「ええ。凄いな、これは……」

トワはリィンに説明をした。

「ふふっ……あ、そろそろ始まるよ!」

そして映像は進み、なんと大胆な衣装を身に纏っているトワ、クロウ、アンゼリカ、ジョルジュが映った。

 

「こ、これは……」

「えへへ、凄いでしょう?”ろっく”っていう新しいジャンルの音楽なんだって。”おーばるぎたー”っていう導力楽器なんかも使われているの。」

映像を見て驚いているリィンにトワは自慢げに説明し

(まあ……このような音楽が異世界にはあるのですか。)

(私(わたくし)も音楽は嗜みますが、長年生きてきて初めて聞きましたね。)

メサイアは目を丸くし、リザイラは興味ありげな表情をし

(ああ、これの事だったのね。ふふっ、随分と懐かしいわね~。世界が融合する前の世界―――”イアス=ステリナ”に人間の姿で紛れ込んで、人間達と一緒に楽しんでいた頃もあったわね~。)

(フフ、まさか世界が融合する前の遥か昔の文化が異世界で残っているなんて、不思議な偶然ね。)

ベルフェゴールは懐かしそうな表情をし、アイドスは微笑みながら映像を見つめていた。

 

「確かに凄いですね……その……衣装も大胆というか。正直、肌を多く露出している衣装を好む睡魔族と大して変わらないと思いますよ。」

「はわわっ……忘れてたっ!い、衣装はどうでもいいからステージに集中しなさいっ!」

リィンの指摘に慌てたトワは指摘した。

(これは……)

そしてリィンは興味津々な様子で映像を見つめていた。

 

「うおおおおっ……!」

その後映像のコンサートが終わるとリィンは興奮した様子で思わず拍手した。

「凄かった……!メチャクチャ良かったです!いやぁ……!これ、実際に見たかったですよ!」

「えへへ……そう言ってくれると嬉しいな。その、少しは参考になった?」

「ええ……この上なく!さすがにここまで出来るかはちょっとわかりませんけど……音楽に強い人達もいるし、何とかなりそうな気がします!」

(うわぁ……もしこれをやる事になったら、歴史バカであり音楽バカでもある”一角”が滅茶苦茶口出ししてきそうね~。あいつなら先程の音楽も絶対知っているでしょうし。ご主人様達も御愁傷ね~……)

恥ずかしそうな表情で微笑むトワの言葉に力強く頷いたリィンの答えを聞いたベルフェゴールは表情を引き攣らせた。

 

「そっか………よかった。今のステージ、クロウ君の企画だから相談してみるといいんじゃないかな?振り付けはアンちゃんだし、導力楽器はジョルジュ君に相談すれば力になってくれると思うよ。」

「そうですか………わかりました。」

「それと、この記録結晶(メモリアクオーツ)に今の映像をコピーしたから。この導力映写機にセットすれば見られるよ。明日にでもⅦ組のみんなと見てみるといいんじゃないかな?」

「あ、ありがとうございます。なんだか至れり尽くせりで申し訳ないっていうか……」

「ふふっ……おあいこ様だよ。話し合って、どんな出し物になるかはこれからだろうけど……リィン君たちの出し物楽しみにさせてもらうから。」

「はい……!」

その後トワから記録結晶を受け取ったリィンは寮に戻った。

 

 


 
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