No.712428

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第222話

2014-08-31 00:01:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2339   閲覧ユーザー数:2115

 

 

 

 

9月18日―――

 

理事会から3日後……特別実習の続行が決定したことでリィン達Ⅶ組の意識はようやく来月の学院際に向き始めていた。

 

しかし、月末が潰れるということは準備期間が減ることでもあり……人数が少ないことも相まって”これは”というアイデアが中々出てこないでいた。

 

そして―――

 

~1年Ⅶ組~

 

「うーん、あっという間に週末ね。暑くもなく、寒くもなく。絶好の行楽日和でもあるし。明日の自由行動日は有意義に過ごすといいわ。―――ま、来週の水曜日には実技テストが控えてるんだけど。」

サラ教官の言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。

 

「ふう、水を差すようなことを言わないで下さい。」

「ハハッ、相変わらずだな。」

「そして来週の週末には『特別実習』ですか。」

「ええ、当初の予定通りね。――少し変更もありそうだけどまあ、誤差の範疇でしょうし。実技テストの後に発表するからせいぜい楽しみにしてなさい。」

「やけに思わせぶりですね……」

サラ教官の発言を聞いたリィンはジト目になり

「ま、いつもの事だね。」

「ワクワク、次はどこかなー。」

フィーは呆れた表情をし、ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ

「……今のⅦ組は人間関係で問題が起こっていませんから、どこになっても今までの特別実習を考えれば楽でしょうから、別に構いませんよ。」

「ツ、ツーヤ……」

「フッ、経験者が言うと重みがあるな。」

(お姉様に何があったのでしょう?)

「?よくわかんないけど、エヴリーヌもどこでもいいし。」

疲れた表情で呟いたツーヤの言葉を聞いたプリネは冷や汗をかき、レーヴェは静かな笑みを浮かべ、セレーネは戸惑い、エヴリーヌは首を傾げた後呟いた。

 

「それと来月の学院祭もそろそろ出し物を決める事。一年生は義務みたいなもんだから何もしないんだったら特別実習のレポートでも提示してもらうわよ?」

「ええっ!?」

「むむ、それはさすがに躊躇われるな……」

口元に笑みを浮かべたサラ教官の提案を聞いたエリオットは声を上げて驚き、ラウラは困った表情をした。

 

「HR終了。委員長、号令して。」

「は、はい。起立―――礼。」

そして教官達が教室を出るとリィン達は全員集まって学院祭の出し物について話し合い始めた。

 

「さ、さすがに実習のレポートの展示というのは冗談だろうが……とにかく来週明けには出し物をするか決めてしまおう。」

「そうですね……水曜には実技テストがあって週末は特別実習がありますし。」

「そうすると、明日中には当たりを付ける必要があるな。」

「他のクラスや有志の出し物も一通り調べた方がいいわね……内容がかぶったらお互いつまらないでしょうし。」

マキアスの提案を聞いたエマ、ガイウス、アリサはそれぞれ頷いて考え込み始めた。

 

「ああ、それはみんなで手分けして情報を集めよう。それと―――この人数でやれる出し物のアイデアだな。」

「そうだね……他のクラスは僕達の倍以上の人数だし。けっこう大掛かりな企画を考えてるみたいなんだよね。」

「人数の劣勢を覆せるような案があるといいのですが……」

「そうなると模擬店辺りが妥当ですけれど……」

「普通過ぎてつまんない気がする。エステル達みたいに劇だったら、人気は取れると思うけど。」

「さすがにこの人数では劇は難しいですし、何より練習時間が限られていますから、無理でしょうね……」

リィンの提案にエリオットは頷き、セレーネとツーヤは考え込み、エヴリーヌの提案を聞いたプリネは苦笑した。

 

「フン、人数が多ければ良いというわけじゃない。逆にこの人数だからこそ映える出し物はあるはずだ。」

「……なんだろ。想像もつかないけど。」

「まあ、そのあたりは全員の宿題というわけだな。」

ユーシスの提案を聞いたフィーは首を傾げ、ラウラは考え込み

「えへへ、何だか盛り上がってきたねー。」

「ま、若いモン同士、せいぜい気張るといいだろ。」

ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、クロウは口元に笑みを浮かべてリィン達を見つめた。

 

その後解散したリィンは校舎内を回って多くの生徒達から学院祭の情報を聞いた後寮に戻ろうとすると虫の鳴き声に気付いて立ち止まった。

 

~校門~

 

「虫の音………一応、もう秋なんだな。…………(―――入学して半年……来月には学院祭もあるのか。はは、目まぐるしいというかあっという間だった気がするな。)」

「あれ~、リィン君?」

入学当時の自分を思い出して懐かしんでいるとトワがリィンに近づいてきた。

 

「トワ会長……珍しいですね。こんな所で会うなんて。そう言えば、生徒会室で何か会議をしてましたよね?」

「あれ、よく知ってるね?えへへ、ちょうどさっき終わった所でね。今日は早上がりをさせてもらったんだ~。」

「そうだったんですか。会議と言うと……やっぱり学院祭関連ですか?」

「うん、来月に向けて決めなくちゃいけないことが山ほどあるから。明日、生徒会メンバーで改めて話し合うことになったの。」

「はは……お疲れ様です。そういえば、明日の依頼はもう用意できていますか?何だったらここで受け取ってしまいますけど。」

「あ、リィン君への依頼は寮で寝る前にまとめてるの。うーん、これから商店街に買出しに出かけなきゃだし……ごめんね~、やっぱり明日の朝でもいいかなぁ?」

「いや、もちろん大丈夫です。」

リィンの答えを聞いたトワは真剣な表情で考え込んだ後リィンを見上げた。

 

「―――リィン君。それにⅦ組の他のみんなも。改めてになっちゃうけど……ガレリア要塞の件はありがとう。」

「あ……いや、頭を上げてくださいよ。もう何度もお礼を言われてますし。それに、あれは成り行きというか教官達を手伝っただけですし……」

トワに頭を下げられたリィンは呆けた後慌てた様子で言った。

 

「ううん、それでも君達はわたしにとって命の恩人だよ。あの時、わたしは通商会議とは別のフロアにいたけど……それでも、列車砲が発射されてオルキスタワーを直撃していたらたぶん助からなかったと思う。」

「それは……良かったです。会長が無事でいてくれて。」

「えへへ、ありがとう。あ、あんまりしつこくお礼を言うのもなんだし、このくらいにしておくねっ。」

「(うーん……本当に律儀な人だな。)そうだ、これから商店街で買出しって言ってましたよね?ひょっとして結構、荷物になるんじゃないですか?」

何度もお礼を言うトワの様子を苦笑しながら見守っていたリィンは話を変えた。

 

「うーん……それなりに、くらいかな?あ、そう言えば本屋さんで頼んでいた資料も来てたっけ……むむ、雑貨屋さんに行ったら一度戻らなきゃかも……」

リィンの質問を聞いたトワは困った表情で答えた後ある事を思い出して考え込み

「その、良かったら荷物持ちを引き受けますよ。いつもお世話になっているお礼ってわけじゃないですけど。」

トワの呟きを聞いたリィンは手伝いを申し出た。

 

「い、いいよぉ。さすがに申し訳ないし。その、すごく助かるけどそこまで手伝ってもらうのはちょっと心苦しいっていうか……って、すごく助かるとか催促してるわけじゃなくて~!」

「はは……」

勝手に自爆している様子のトワをリィンは微笑ましそうに見つめた後ある事を思いついた。

 

「……それなら、代わりに相談に乗ってもらえませんか?実は学院祭の出し物のことでちょっと困っていて―――」

そしてリィンはトワを手伝う名目を伝えた後、荷物持ちを務め、トワと共に多くの店を回り終えると既に日は暮れ、夜になっていた。

 

 


 
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