No.711852

ごちゆり!(1)

初音軍さん

ココ×チノです。姉妹百合な感じになってたらいいなって思います(◜◡◝)

2014-08-28 17:43:46 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:779   閲覧ユーザー数:778

***

「チノちゃん。私、リゼちゃんと付き合うことになったんだ」

「付き合う? どこにですか…?」

 

「そういうことじゃないの。恋人同士になっちゃったんだ。

みんなと話し合ってリゼちゃんと同棲することになったから、

もうチノちゃんと同じ場所で暮らせなくなったんだ」

「え、そんな…」

 

 そういうココアさんの表情はいつもと変わらない見てると落ち着くような

笑顔を振りまいてくる。だけど、私は今の話に動揺しすぎてココアさんの顔を

まともに見られないでいた。

 

 どうしてそんなに平然として言うのだろう。

全てが唐突で頭の中で整理がつかなかった。

 

「安心して。お仕事は続けるから。じゃあね、チノちゃん」

「待って!待ってください。ココアさん…!ココアさん……!!!」

 

***

 

バッ!

 

「ふぁっ!?」

 

 手を伸ばして掴もうとすると私はベッドから飛び上がるように起きた。

汗が一筋たれて、呼吸が乱れている。そして寝ていたとは思えないほどひどい

疲労感に満ちていた。

 

「ココアさん…」

 

 ココアさんは…!?

 

 あれは夢の中なのだからあんな状況にはならないのだけど

このときの私はすごく必死になっていたから。

 

 バタンッ

「ココアさん…?」

「くー…」

 

 私の必死さが馬鹿みたいに、可愛らしい寝顔をしながら楽しそうに眠っていた。

 

「ほっ…」

「んぁ…? あれ、チノちゃん。おはよぉ…」

 

「おはようございます…」

「あれ、チノちゃん泣いてる? どうしたの? どこか痛いの?」

 

「いえ…大丈夫です」

 

 言われて気づいて私は目元を手で拭うような仕草をして言葉で誤魔化した。

そうか私は気づかない内に泣いていたのか…。

 

 

 それから何とも無かった…むしろ癒しの時間だったはずの仕事の間。

リゼさんとココアさんが仲良さそうにしているのを見ていると胸が

ズキズキしてしまうようになってしまった。

 

 この気持ちは一体何なのだろう。

早く元の気持ちに戻して欲しいと願うように思っていた。

賑やかで穏やかな時間は今の私には少し毒のように感じていた。

 

「おつかれさま、チノちゃん」

「お疲れ様です…」

 

「最近元気ないね…」

「そんなこと…ないです…」

 

「そんなことあるよぉ~。私チノちゃんが楽しそうにしている姿を見るのが

好きなのに~~」

「そんなこと言われても」

 

「よーし、チノちゃんが元気になるようなパンを作ってあげるよ!」

 

 そう言って私の言葉を聞く前に走り出して店の奥へと姿を消すココアさん。

違うんです、私が元気になるにはココアさんが…ココアさんが私に。

 そこまで思った時に「どうして私になんだろう」と首を捻ってそれから考えないように

してココアさんの後を追いかけた。

 

 しばらくしてパンの匂いに満ちた部屋で私は味見と称してココアさんと向かい合って

パンにもふっと齧り付いた。

 

 パンの香りと柔らかい食感に幸せな気持ちを感じていた。それはパンだけではなくて

これがココアさんが作ってくれたことと、ココアさんと一緒に食べているから幸せに

思えるのだろう。

 

「美味しいです…」

「よかったぁ~」

 

 甘くて優しい声に落ち着いてぽやんっとしてきた。

ココアさんを意識して彼女を見つめていると少し胸がキュンっと鳴った。

 

 私はいつからココアさんにここまで気持ちを寄せていたのだろう。

最初は同居人、それからちょっと不本意だけど姉みたいなものとして感じていたけれど

最近では普通に仲の良い姉妹として望んでいたけれど今はどうなのだろう。

 

「…」

 

 姉妹としてはもちろんだけど、それ以上のことも望んでいるのだろうか。

でも、それ以上というのを私はまだ知りようがない。あるとするのなら…。

 

「ココアさん」

「なぁに、チノちゃん?」

 

「頬にパンくずがついてますよ」

 

 指でココアさんの頬にくっついたパンくずを摘んでそのままの流れで自分の口に運んだ。

ココアさんは見てないでパンに夢中だったけど、私は自分の行動に照れて俯いてしまった。

 

「チノちゃん?」

 

 食べ終わった後に私の姿を見たココアさんは心配そうな声で呼びかけてきた。

 

「やっぱり今日は変だよ。何かあったの? この頼れるお姉さんに何でも相談しなよ~」

「いいです。頼れませんし」

 

「ええ~~~。私そんな頼りないの~?」

 

 悲しそうにするココアさんを見ないようにして私は逃げるように走り出した。

ココアさんのことでココアさんに相談することなんて出来るわけがない。

だけど、今の態度は可哀想だったかなって後になって思った。

 

 

 いつの間に自分の部屋で寝ていたのか、空はすっかり夕焼け色に染まっていた。

何だかすごく幸せな夢を見た気がする。そしてふと横に目を向けると静かに寝ている

ココアさんの姿が見えた。

 

「!!」

 

 いきなり過ぎて大声を出してしまいそうになったけれど起こしてしまいそうで

思わず手を口に当てた。一体なぜここに…でも…。

 

 すごく安心する匂い…。

 

 ずっと傍に居たくなる匂い…。

 

 ココアさんの顔を見ていたら自然に力が抜けてそのままココアさんにくっつくように

体を寄せるとココアさんの匂いに包み込まれるようで落ち着く。

 

 落ち着くだけじゃなくて、体の奥の方から熱くなっていって。

ココアさんの軽く開かれた口を見てドキドキしている。そのまま近づいてくっつけて

しまいそうになる。

 

「んぁ…おはよー」

「まだ朝じゃないですよ…」

 

 考えていたら静かに目を開いて私を見ると微笑むココアさん。

まだうとうとしていて意識はぼんやりしている様子を見ていると、いつの間にか

私の傍でティッピーが見上げながら私に伝えてきた。

 

「初めてのことで不安なのはわかるが…目を逸らし続けるとロクなことにならんぞ。

自分の気持ちに素直に。ちゃんと相手に気持ちを伝えることじゃ」

 

 そう言うと私の返事を待たずにぴょんぴょんと跳ねながらティッピーは部屋を

出て行った。独り言のように言ったけれど全て私のためを思ってのことだったのだろう。

 

「ありがとう…おじいちゃん」

 

「ココアさん…私、ココアさんのことが好きです」

 

 また寝てしまっているココアさんの顔の傍まで顔を近づけて囁いた。

今なら後で伝える練習もできるだろう。今なら緊張せずに本音を言えるかも。

そんな気持ちでココアさんに伝えた。寝ていてわからないだろうけれど。

私の精一杯の気持ちを寝ているココアさんにぶつけた。

 

「お姉ちゃんとしてもそうだけど、また一つ別の意味で大好きになってしまいました」

「私も」

 

「え!?」

「ふふっ、ごめんね。こうでもしないと本音聞けないかと思って」

 

 私の告白の後に目を開けて笑って起き上がると背を伸ばしてうーんって唸っていた。

もしかしてあの寝ているのはわざとだったのか、いや…でも。

 

「本当は半分寝てたでしょ」

「てへっ、ばれた? でもチノちゃんの告白はちゃんと全部聞いたし覚えてるよ」

 

「なんでそこだけはっきりと」

「だって。私もチノちゃん大好きだし愛してるから」

「あ、愛…って」

「あれぇ? チノちゃんは違うのかなあ?」

 

「ち、違って…ないです…」

 

 ココアさんにおされ気味に言葉を詰まらせながら言うとココアさんは嬉しそうに

はしゃぎながら私に抱きついてきた。

 

「やったー!これで私たち姉妹で恋人だね!?」

「こ、恋人…」

 

「違う?」

「わ、わからないです。まだ実感が湧きません」

 

「それもそっかぁ~」

「で、でも…」

 

 少し間を置いてココアさんから視線を外して俯きながら私は呟いた。

 

「すごく…嬉しいです」

「私も!」

 

 ベッドの上で二人絡みつくようにして愛を囁く言葉を交わした。

ココアさんが私を後ろから包むように私はぬいぐるみを抱えるようにして

ココアさんに抱きつかれる形で。この時間が長く続けばいいのにって思った。

 

 でもお互いの気持ちが通じ合った今、こういう状況はいつだって続けられるのだ。

 

 

「ラビットハウスへようこそ~」

 

 私たちが付き合ってからココアさんの接客が前にも増して上手になってきた。

それは周りの人もわかるようで関心したような声でココアさんを褒めていた。

 

「それとあれだよな。チノの表情もよくなった!二人ともすごくいい感じだぞ」

 

 同じフロアで働いているリゼさんは私のことも褒めてくるようになり

少し照れくさいけどとても嬉しかった。

 

「だって私たち付き合ってるからね~」

「ちょっ!」

 

「へぇ、そうだったのか」

 

 なるべく秘密にしようとしていたことがあっさりと暴露され、尚且つ周りも

そのことを重々にわかっていたみたいに私たちの関係をあっさりと理解してくれた。

だけどちょっと恥ずかしいからなるべく言わないで欲しいのに何かあるたびに

ココアさんは私たちの関係を言わずにはいられないようだ。

 

「ココアさん…!」

「てへっ、ごめんごめん。あっ、いらっしゃいませ~」

 

 まるで私から逃げるように新しく入ってきたお客さんの元へと早歩きで向かっていった。

まだあれから進展はほとんどないけれど、前よりは一緒に過ごしたり寝たりすることが

増えていった。

 

「もうキスとかしたのか?」

「まだですよ…」

 

「まだってことは予定はあるのか~」

「リゼさん!」

 

 こういう話はリゼさんも恥ずかしがるはずだったのに最近私たちをからかうための

そういう話題は慣れてきたようで少し困っている。

 

 だけど悪気はないようだし、実際悪いことはないのだけど。

私の気持ちが保てるかどうか怪しいところである。

 

「でも、ちょっと前までチノ苦しそうだったからな。安心したよ」

「はい…」

 

「これに限らず何かあったら私たちにも相談するんだぞ」

「ありがとうございます」

 

 とはいってもここしばらくはココアさん関連のことで相談しそうな気もするけど。

それでも暖かく迎えてくれる友人たちは温かくて。そして…。

 

「チノちゃん、カプチーノ一つ~~」

 

 姉で恋人のこの人の温かさと甘さにとろけるようになってしまいそうになるのだった。

 


 
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