No.711701

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

混乱・インベスジャック

2014-08-27 20:48:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2183   閲覧ユーザー数:1024

「何で、こんな所に植物が…? それに、この裂け目は…」

 

豪華客船アンジェラ号。その船内の機関室にて、一人の船員が空間の裂け目―――クラックと、その周囲に僅かに繁殖している植物を発見していた。船員は目の前に存在している現象に疑問を抱いていたのだが、ふと視界に入ったある物を見て、視線がそれに釘付けになる。

 

「これって……果物?」

 

繁殖している植物の中には、紫色の皮に包まれた果実がいくつも生えていた。船員はその内の一つを手で捥ぎ取って皮を剥くと、皮の中には葡萄の中身のようなプルンとした綺麗な身が詰まっていた。

 

「…これ…何か、凄く……美味そうだなぁ…」

 

それを見た船員は何かに憑りつかれたかのように果実を見つめ、ゴクリと唾を飲み込む。そして果実をそのまま、自身の口元へと持って行く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、謎の森の中では…

 

 

 

 

 

 

 

「ブルァァァッ!?」

 

「全く、無駄にしぶといですね」

 

「ギギィ…!?」

 

竜神丸の変身したアーマードライダー―――龍刃はマスカット風刃を逆手に持ち替え、シカインベスとカミキリインベスを擦れ違い様に斬り裂いていた。二体が怯んだ隙に龍刃は木を蹴る事で高く跳躍し、空中を飛び回っているコウモリインベスの背中に飛び乗る。

 

「うざったいんで、いい加減降りて貰いましょう…か!!」

 

「ギシャアッ!?」

 

コウモリインベスの背中に乗った龍刃はマスカット風刃をコウモリインベスの羽に突き刺し、そのまま羽をばっさり斬り裂く。それにより羽を片方失ったコウモリインベスは地面に落下し、同時に龍刃も前転で受け身を取ってから素早く立ち上がる。

 

「ギギギッ!!」

 

「おっと」

 

その直後にカミキリインベスが長い触角を鞭のように叩きつけてきたが、龍刃は二本の触角を片手で纏めて掴み取る。その際、マスカット風刃を一度真上へと放り投げる。

 

「そぉいっ!!」

 

「ギギィッ!?」

 

「ブルァ!?」

 

「シャァァァァッ!?」

 

龍刃はハンマー投げの要領でカミキリインベスを投げ飛ばし、シカインベスやコウモリインベスごと纏めて吹き飛ばす。そして真上から落ちてきたマスカット風刃をキャッチし、戦極ドライバーのカッティングブレードに手をかける。

 

「では、そろそろ仕上げを」

 

≪マスカットスカッシュ!≫

 

カッティングブレードを一回倒し、マスカット風刃にエネルギーが充填されていく。立ち上がったシカインベス逹は一斉に龍刃に襲い掛かろうと駆け出し…

 

「…ふっ!!」

 

「「「ガァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」

 

龍刃が一振りした瞬間に放たれた斬撃が、シカインベス逹の身体をマスカットフルーツ状のエネルギーに包み込む。最後に龍刃がもう一振りし、まるでマスカットフルーツの身を切るかのようにシカインベス逹の身体を真っ二つに斬り裂き爆破させてしまった。

 

「…ふぅ」

 

インベスの消滅を確認した龍刃はマスカットロックシードを閉じ、変身を解除して竜神丸の姿へと戻る。

 

「これがロックシードの力ですか。なるほど、まだまだ強化の仕様はあるという事ですね……む?」

 

取り外したマスカットロックシードを眺めながら呟く中、竜神丸は外へ出る為のクラックが近くに開いている事に気付く。

 

「おやま。このような所にクラックが開いているとは」

 

竜神丸は特に気にも留めない様子で、クラックではなく森の果実が生えている木々の方へと歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その竜神丸が見つけたクラック。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのクラックの先はアンジェラ号に繋がっており、その近くには船員が持っていたと思われる懐中電灯だけが落ちているのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのアンジェラ号のホールでは…

 

 

 

 

 

 

 

「では忍君。私は、少しお手洗いに行って来ようと思う。その間、娘の面倒を見ていて欲しい」

 

「畏まりました。この命に代えてでも、レイラお嬢様をお守りしてみせましょう」

 

「し、忍さん…!」

 

「ははは。では、よろしく頼むよ」

 

護衛対象であるご令嬢―――レイラの父が一度席を外し、忍はレイラと二人きりの状態となっていた。忍はあくまでレイラを守るボディーガードでしかないのだが、その立ち振る舞いは実に礼儀正しく、まるで彼が本物の執事だと周囲に勘違いさせてしまう程だ。しかも会話をする中で時々見せる笑顔は、女性のハートを射抜くのには充分な威力があった。

 

「(さて。今回の任務は、どれくらい楽しめる事やら)…レイラお嬢様、何かお飲み物をお持ちした方がよろしいでしょうか?」

 

「えぇ、お願い出来るかしら」

 

「畏まりました。すぐにお持ち致します」

 

レイラにペコリと頭を下げてから、早速ドリンクを取りに向かう忍。その時、一人の人物とうっかり肩をぶつけてしまった。

 

「おっと、失礼。お怪我はございませんか?」

 

「あぁいえ、大丈夫ですよ。では」

 

そう言って、その人物はすぐに立ち去って行く。この時、忍はある疑問を抱く。

 

(何だ? 今の男、何処で会ったような…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、危ない危ない」

 

先程忍とぶつかった人物、その正体はokakaだった。鮮血の魔法使いである忍の素性を探る為、彼も乗客の一人としてアンジェラ号に乗り込んでいたのだ。

 

(距離を離して監視していたら、まさかターゲットの方からこっちまで寄って来るとはな。それにこっちの気配にも何となく気付いてるっぽいし…)

 

海鳴市で発生した幽霊騒動にて、忍とokakaは一度共闘を果たしている。しかしその時は両者共に仮面ライダーとして行動していた為に素顔での面識は無く、okakaからすればメンバー候補の調査をするのには非常にちょうど良い状況である。

 

「何事も無く終えられれば良いんだが…!」

 

そんな事を考えるokakaだったが、彼はある事に気付く。何やら船員逹の様子がおかしい。乗客逹は何も気付いていないようだが、船員逹は何やら慌ただしい様子で船内を移動して回っている。

 

「…やっぱり、何かしらの事件は起こり得るんだよな。面倒臭い」

 

okakaは小さく溜め息をついてから、船員逹が移動した通路へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、楽園(エデン)でも…

 

 

 

 

 

 

 

「隊長! 第97管理外世界地球にて、クラックの反応あり! 場所は日本の東海鳴市です!」

 

「クラックだと? おいおい、何だってそんなのが地球に!!」

 

支配人達も、クラックの発生を察知しているところだった。部下の団員逹が慌ただしく動いている中、支配人は部屋の大画面に映っている日本の地形を見て、厄介そうな表情になる。

 

「至急、トルーパーズは火炎放射機を持って出撃、中からインベスが出てくる事を念頭に各自行動しろ!! 間違ってもヘルヘイムには入るなよ!!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

「支配人さん、何かあったんですか?」

 

「さっき、地球にクラックが発生した。被害状況はまだ判明していない」

 

「クラック…確か、インベスとやらの住処に繋がるゲートでしたっけ?」

 

「あぁ、急がなきゃ相当マズい事になる。これから俺達はクラックから繁殖する植物を焼却処分しに行かなきゃならん」

 

「僕も行きます。インベス相手に、僕の魔法が何処まで通じるが分かりませんけど…」

 

「OK、人手は多い方が助かる。トルーパーズ、出撃だ!!」

 

「「「「「はっ!!」」」」」

 

支配人とディアーリーズ、ゼクトルーパー部隊が一斉に出動していく中、二百式はそんな光景を離れた位置から眺めていた。

 

「…下らないな……そんな事よりも」

 

二百式はその場から移動し、エレベーターを使って地下の資料室まで向かう。

 

(団長、それに竜神丸やガルムが話していた“アレ”……何か少しでも手がかりがあれば、奴等の動きを把握出来るかも知れん…)

 

この時、二百式は自分が所属しているOTAKU旅団という組織に対して不信感を抱き始めていた。数日前に発生した幽霊騒動、各世界における不正転生者、モンスターの出没、それに黒騎士の存在。クライシスや竜神丸が確実に何かを知っているであろう事は、二百式も既に薄々勘付いていた。

 

(何としてでも“アレ”の正体を暴いてやる。もしそれが俺の目的を妨害しようなら、この手で障害を排除するまでだ…!!)

 

 

 

 

 

 

この時、二百式はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の暴こうとしている存在がどれだけ強大で、どれだけ自身の無力さを痛感させられる存在なのかを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、アンジェラ号…

 

 

 

 

 

 

 

「さて、出航の時間はもうすぐだったかな」

 

「はい、お父様」

 

「……」

 

船内では変わらず、乗客逹はプールやカジノ、ダンスホールなどで娯楽を楽しんでいた。そんな中、忍だけは船内の不穏な空気を肌で感じ取っていた。

 

(さっきから、船員共の動きが妙におかしい……確実に何かあったな、こりゃ)

 

「忍さん、どうかなさったのですか?」

 

「あ、いえ。何でもありません」

 

レイラが心配そうな表情で顔を覗き込んできた為、忍はひとまず彼女を安心させる。元々彼は依頼で彼女の護衛を引き受けている為、あまり彼女の下から離れる事は出来ない。

 

(やれやれ。どうしよっかねぇ、本当に…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、そっちの方はどうだ?」

 

「いえ、見当たりません!」

 

「くそ、あの馬鹿何処に行きやがった…?」

 

その頃、船員逹は船内のあちこちを動き回っていた。見回りに向かわせた船員の内、一人だけがまだ戻って来ておらず、完全に行方不明となってしまっているのだ。

 

(おうおう、また何が起こったのやら)

 

そんな船員逹の様子を、okakaは物陰からこっそり眺めていた。

 

「さて、これじゃあ目標の調査が碌に出来やしないな。どうしたもんやら…」

 

「お、おい、こっち来てくれ!」

 

「何だ、どうした!」

 

「…?」

 

一人の船員が、機関室で何かを見つけたようだ。何人かの船員が移動し、okakaもこっそりと後をつけながら移動する。

 

「ちょうどここに、懐中電灯だけが落ちてて…」

 

「な、何だこれは…!?」

 

(!? あれはまさか…!!)

 

機関室にて、船員逹はクラックを発見した。okakaも気付かれないように物陰から眺めており、クラックの存在を見て思わず驚愕する。

 

(おいおい、何でよりによってクラックが…)

 

「な、何だ!?」

 

「何か、こっちに来るぞ!!」

 

「…!」

 

「「「グルァァァァァァァァァァァァァァッ!!」」」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「か、怪物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

(ッ…マズい!!)

 

その時、クラックから何体かのインベスが姿を現した。okakaはすかさず飛び出し、船員逹に襲い掛かろうとしたインベスの一体を蹴り飛ばす。

 

「逃げろ!! こいつ等は危険だ!!」

 

「ア、アンタは…!?」

 

「私はこういう者だ!! アンタ逹は急いでここから離れてから、乗客逹を全員避難させろ!!」

 

「わ、分かりました!!」

 

船員逹が急いで逃げたのを確認してから、okakaは出現したインベス逹と正面から対峙する。

 

「よぉ、インベスさん。俺が相手をしてやるぜ…変身!!」

 

≪カメンライド・ディケイド!≫

 

okakaはすかさずドライバーを装着し、プロトディケイドに変身。ライドブッカーをソードモードに変形させてから、向かって来るインベスを一体ずつ連続で一閃していく。

 

「ブルォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

「な…ぐぉっ!?」

 

その時、青い体色の巨体を誇るヒグマインベスまでもが出現し、プロトディケイドを蹴りの一撃だけで壁まで勢い良く吹っ飛ばした。プロトディケイドもすかさず立ち上がり、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

 

≪カメンライド・カブト!≫

 

「あんまり時間はかけてらんねぇな、これで行く!!」

 

≪Clock Up≫

 

プロトディケイドは仮面ライダーカブト・ライダーフォームへと変身し、クロックアップを発動してインベス逹を次々と爆破していく。しかし、そう簡単には終わらない。

 

「グルルルルル…グルァッ!!」

 

「な…ごはぁっ!?」

 

クロックアップの中からPDカブトの気配を察知したヒグマインベスはその太い腕を振るい、ちょうど目の前を通ろうとしていたPDカブトの首元にラリアットを命中させた。想定外の事態に怯んだPDカブトをヒグマインベスは両手の爪を使って連続で攻撃する。

 

「グガァッ!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

そしてヒグマインベスの爪がPDカブトのベルトに装着されているカブトゼクターに命中し、PDカブトは吹っ飛ばされたままプロトディケイドへと戻ってしまい、床を何度も転がる。そんなプロトディケイドに追い打ちをかけようとヒグマインベスが駆け出す。

 

「くそ、クロックアップに反応出来るとか厄介過ぎるだろ…!!」

 

「グガァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

プロトディケイドが起き上がると同時に、その仮面にヒグマインベスの爪が迫ろうとしたその時…

 

≪ゲイザー・ナウ≫

 

「グガアァッ!?」

 

一本の氷の槍が飛来し、ヒグマインベスの顔面に命中。振るわれた爪が、プロトディケイドの仮面を斬り裂く事は無かった。

 

「okakaさん、無事ですか!?」

 

「ディア!? それに支配人まで…」

 

「話は後だ、まずはコイツ等を片付ける…変身!!」

 

≪HENSHIN≫

 

プロトディケイドの下にはウォーロックが駆け付け、支配人はダークカブトゼクターを呼び出してからベルトに装着し、仮面ライダーダークカブト・マスクドフォームに変身。ゼクトクナイガンを用いて、機関室から移動しようとするインベスを次々と狩っていく。

 

「「「ギシャァァァァァァァァァッ!!」」」

 

「!? おいおい、また増えやがった!!」

 

「はぁ、嘘でしょう!?」

 

更にサメインベスの大群が次々とクラックを通って現れ、機関室内はあっという間にインベスだらけとなってしまった。そんな中、何体かのサメインベスが機関室の外へと出てしまう。

 

「ヤバい、何体か外に出やがった!?」

 

「ここは僕に任せて下さい!! 支配人さんは逃げたインベスの方を!!」

 

「おう、任せろ!!」

 

機関室から出て行ったサメインベスはダークカブトが後を追い、ウォーロックはウォーロックソードを構えてからヒグマインベスと対峙する。

 

「悪いですが、一気に片付けさせて貰います!!」

 

≪アクセル・ナウ≫

 

「あ、おい待てディア!! そいつは…」

 

プロトディケイドの制止も届かず、ウォーロックは高速移動を発動しインベスを次々と爆破していく。そんなウォーロックの気配もヒグマインベスはしっかりと察知し…

 

「グルゥッ!!」

 

「がはっ!?」

 

「な、ちょ…のがぁ!?」

 

真後ろに移動しようとしたウォーロックを、ヒグマインベスは素早く振り向いてから爪で弾き飛ばす。弾き飛ばされたウォーロックはプロトディケイドを巻き添えにする形で機関室のタンクに激突する。

 

「か、は……嘘でしょ…何で、高速移動に反応出来るんですかアイツ…!!」

 

「気を付けろ。あのインベス、さっきは俺のクロックアップにもしっかり反応しやがったんだ。恐らく高速移動系の能力じゃアイツは倒せない」

 

「えぇ!? ちょ、そういう事は早く言って下さいよokakaさん!!」

 

「お前が俺の声を無視しやがったんだろうが!!」

 

「グルァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

二人が口喧嘩する中、ヒグマインベスは「俺を無視するな」と言わんばかりに爪を振るいながら突撃する。その時…

 

≪マスカットオーレ!≫

 

「!? ガァァァァァァァッ!?」

 

「「!?」」

 

マスカット風刃がブーメランのように飛来し、ヒグマインベスの顔面を斬り裂いた。マスカット風刃はそのまま飛んで来た方向へと帰って行き、クラックの前に立っている龍刃の右手にキャッチされる。

 

「!? アーマードライダーだと…!?」

 

「え!? それって確か、鎧武っていうライダーの世界にいる…」

 

突然のアーマードライダーの出現に警戒する二人だったが、それもすぐに解かれる事となる。

 

「おやおや。okakaさんもディアさんも、こんな所で何をしてるんですか?」

 

「「!」」

 

その声は、二人にとって聞き覚えがあった。

 

「まさか、竜神丸か?」

 

「ご明察。そんな事より見て下さい、このロックシードの山を」

 

龍刃は手に持っていた風呂敷から回収した大量のロックシードを床に落とし、二人に堂々と見せびらかす。その際、スターフルーツ状のロックシードが一つ、ウォーロックの足元に転がる。

 

「いやぁ~ヘルヘイムの森に行ってみたら大量大量♪ 戦極ドライバーの性能チェックも出来て、ロックシードも大量に確保出来て、一石二鳥でしたよ」

 

「お前……俺達がこんなに忙しくしていた時に…」

 

「グルァァァァァァァァッ!!」

 

「ちょ、ぬぉう!?」

 

呑気な龍刃に対して文句を言おうとしたプロトディケイドに、再びヒグマインベスが襲い掛かる。そんな状況の中、ウォーロックは変身を解除してディアーリーズの姿に戻ってから、自身の足元に落ちているスターフルーツロックシードを拾い上げる。

 

「…竜神丸さん」

 

「はい?」

 

「こんなにロックシードがあるという事は……あるんですよね? 戦極ドライバーも」

 

「えぇ、ありますよ。どうします? あなたも使い…」

 

「使います」

 

ディアーリーズは逡巡もせず言い放つ。

 

「…決断が早いですね」

 

「今この状況を乗り切るのに最適なライダーは、他でもないアーマードライダーです。それに、僕にはもっと力が必要です。これから先、魔法が使えない状況に陥ってしまう事もあるでしょう。そんな時の為にも、僕には魔法以外の力が必要なんです」

 

「…まぁ良いでしょう」

 

龍刃は自身の手元に、認証前の戦極ドライバーを転送する。

 

「使いたいのであれば、ご自由にどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

認証前の戦極ドライバーが、龍刃によってディアーリーズに投げ渡される。ディアーリーズはすかさずその戦極ドライバーを装着し、ライダーインジケータにアーマードライダーの横顔が浮かび上がる。

 

「僕には特に、この船を守らなきゃならない理由は無い。死ぬ気で守りたいような人も、この船にはいない」

 

≪スターフルーツ!≫

 

スターフルーツロックシードが開錠され、ディアーリーズの頭上にスターアームズが出現する。

 

「それでも……この船を見捨ててしまったら、僕はもう僕じゃなくなる。そんな気がする。だから」

 

≪ロック・オン!≫

 

スターフルーツロックシードが装填される。

 

「だから僕は戦う、そしてこの船を守ってみせる……変身!!」

 

≪ソイヤッ!≫

 

カッティングブレードが倒されると共にスターアームズが降下し、ディアーリーズの頭に被さる。そこから出た果汁状のエネルギーがディアーリーズの全身にスーツを纏わせる。

 

≪スターアームズ! セイバースター・オンステージ!≫

 

最後にスターアームズが鎧に変形し、変身が完了される。

 

「おぉ、これはまた…」

 

「…これが、アーマードライダー」

 

ディアーリーズは自身の両手をギュッパギュッパ握ってから、改めてインベスの大群と向き合う。

 

「アーマードライダー龍星……ここからが、僕のステージだ!!」

 

ディアーリーズの変身したアーマードライダー―――龍星(りゅうせい)はそう言い放ってから自身の両手に出現した二本の双剣―――双星刃(そうせいじん)を構え、インベス逹に向かって突撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、機関室の外でも…

 

 

 

 

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「か、怪物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

乗客逹の前にも、何体かのサメインベスが出現していた。乗客逹は逃げ惑い、船内はあっという間にパニックへと陥る。

 

「な、何だあの怪物は!?」

 

「ど、どうしましょう、忍さん…!!」

 

サメインベスの群れは忍逹がいるホールにも出現し、忍はレイラとレイラの父を自身の後ろに下がらせる。

 

「旦那様、レイラお嬢様、私の後ろにお下がり下さい。あれ等は私が何とかしてみせましょう」

 

「し、忍さん!? そんな事をしたらあなたが!!」

 

「心配はいりません。私には、切り札がありますから」

 

「え…?」

 

忍はレイラに優しく微笑んでから、暴れているサメインベス逹の前に立つ。そこにダークカブトが到着する。

 

「!? おいそこ、危ないぞ!!」

 

ダークカブトが呼びかけるが、忍はその場から動こうとしない。

 

「レイラお嬢様をお守りするのが、今回の私の依頼。それを遂行する為ならば…」

 

忍は何処からか赤いドライバーを取り出し、それを腹部に装着する。

 

「!? ロストドライバーだと…!?」

 

ダークカブトが驚いているのを他所に、忍は懐から『J』と描かれたガイアメモリを取り出す。

 

「あらゆる障害を、私は排除してみせましょう」

 

≪ジョーカー!≫

 

音声が鳴り、忍はジョーカーメモリをロストドライバーに装填。待機音が鳴る中、忍はゆっくりと変身ポーズを取りながら左手をロストドライバーに置く。

 

「変身…!!」

 

≪ジョーカー!≫

 

ロストドライバーのバックルを展開し、忍は黒いエフェクトに包まれる形で変身を完了する。その姿は仮面ライダーダブルにそっくりながらも、仮面ライダーダブルとはまた異なる姿だった。

 

「仮面ライダージョーカーだと…!?」

 

ダークカブトが離れた位置で驚きながら見ている中、忍が変身した戦士―――仮面ライダージョーカーは右手首を軽く捻ってから、左手でサメインベス逹を指差す。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態の終結は、かなり早く近付いているようだ。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
4
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択