第十九話 獅子とまほら武道会第二回戦第三試合―狂剣士との試合―
『さあまほら武道会も佳境に入ってまいりました!!二回戦第一試合では村上選手対ネギ選手の格闘技戦!!それを制したのはネギ選手!村上選手のギブアップ宣言での勝利でした!そして第二試合は佐倉選手対桜咲選手!この試合はあっさりと決まってしまいました。佐倉選手が前大会と同じく、リングアウトで溺れてしまったからです!結果、桜咲選手が準決勝に駒を進めることとなりました!!さて―』
レースクイーン風の衣装を着た和美が舞台の上に佇むウルを見やる
ウルはその手にその身長には不釣合いと思われる、普通の長さの木刀を携えていた
『第三試合はウルティムス選手対月詠選手!ウルティムス選手は予選で見事な八極拳を見せてくれましたが、今回は木刀を使うようです!相手の土俵で勝負、と言う余裕の現れでしょうか!?』
「ほんま、余裕のつもりどすか?だとしたら滑稽に映りますわ」
舞台の上に月詠が現れる
アイデンティティとも言えるゴスロリ風の衣装と、二本の木刀は相変わらずだ
「余裕なんてありませんよ。貴女は単純に神鳴流の技の冴えだったら刹那さんの上を行きます。手を抜いて勝てる相手とは思っていません」
「へえ…随分ウチを高こう買うてくれますやんか。なら尚更分かりまへんな…。何でウチ相手に得意の拳で戦おうとせえへんのか…」
月詠は訝しげな視線をウルに送る
ウルはその視線を流して、冷ややかに笑う
「それは試合が始まってからのお楽しみですよ」
「ああん…子供の癖に無体やわぁ…♪」
恍惚とした表情で顔を赤らめ、月詠は自身を抱く
『さてそれでは!まほら武道会第二回戦、第三試合…Fight!!!』
「先手必勝です!」
ウルは開始のコールと同時に瞬動で真っ直ぐ月詠に向かう
そしてその勢いのまま、木刀で袈裟懸けに斬りつける
―が、
「いきなり斬りかかって来るなんて、雅さの欠片もあらしまへんなぁ?」
月詠もまた、二振りの木刀を交差させてウルの剣撃を防ぐ
「今度はウチの番どすえ~」
月詠が木刀に力を込めると、ウルの矮躯が空を飛ぶ
舞台上ギリギリで止まり、リングアウトは辛うじて防いだ
「
螺旋を描く、気の斬撃
二連撃のそれがウルに向かって飛来する
「…神鳴流奥義―」
対してウルは落ち着いた雰囲気で、手にもつ木刀を上段に構える
木刀の剣先には気が集中している
そしてカッと目を見開き、一気に木刀を振り下ろした
「斬岩剣!!」
その斬撃は飛来してきていた螺旋の斬撃をいとも容易くかき消した
それだけではなく剣圧とでも言うのか、振り下ろした舞台には一直線に傷が走っていた
「…これは驚きましたえ…。まさか神鳴流を修めてるとは思いまへんでした」
「そうですか。ではもっと驚かせてあげますよ!!」
「それは楽しみどすなぁ!!」
二人は同時に踏み切り木刀では有るが、火花を散らすほど鍔迫り合った
「アハハハハハハ!!こんなに楽しいのはセンパイとの斬り合い以来どす!!叶うならずっと切り結んでいたいくらいやわ!!」
「僕としてはさっさと終わらせたいんですけど、ねっ!!」
「そんな寂しいこと言わんでぇな!!」
木刀ではありえないガギン、ガギンと言う様な金属同士がぶつかり合う音が響く
二人ともが得物である木刀を気で強化している為だ
「
「あうっ!?」
武装解除の呪文で、ウルが月詠の木刀を二本とも弾き飛ばす
月詠は一瞬だけ怯んだが、すぐに体勢を立て直す
「神鳴流は武器を選ばずどす!神鳴流奥義・
「あぐぁっ!?」
お返しと言わんばかりに、月詠は気を乗せた鋭い蹴りでウルを蹴り飛ばす
「アッハハハハハハ…楽しいなぁ。訂正しますえ、この戦いはセンパイとの立会いより面白いどす。本当に、いつまでも戦っていたいわぁ」
「それは大会だから叶わない相談ですね。楽しいのは否定しませんけど」
「本っ当、心から残念どすえ…だからこそ、今の戦いを楽しまんと!」
月詠は木刀を拾い、ウルは体勢を整え
二人は三度、激突した
★
「本当に凄いわね…人間の達人は。あそこまでの剣技、冥界でも中々お目にかかれないわよ」
「そうね…。サーゼクス様の
「お、沖田総司!?新撰組の一人が悪魔になってるのか!?っはー…世も末だぞ…」
響が思わぬ現実に驚いている中、リアスと朱乃は月詠をじっくり見定める
「(…戦闘狂…それも相手が強ければ強いほど喜びを得るバトルマニアと見たわ。実力は申し分ないし、眷属にしても良いのだけれど…『はぐれ』にでもなられたら困るわね…)」
「(リアス、それならウル君を使ったらどうかしら?眷族まで行かなくとも『駒王学園に来ればウル君といつでも模擬戦が出来る』といえば良いと思うわ)」
「(そうね、そうすれば滅多なことでは裏切りそうに無いわね…。…決めたわ、彼女を駒王学園に呼び寄せましょう)」
「(それと私が見たところあのカリンさん、あの人は神の愛を受けてるみたいね。ウル君を餌にすれば彼女も釣れそうな気がするわ)」
「(神の愛!?何でそんな大物がウルに釣られるのかしら…)」
「(ウル君が誰にでも優しいからだと思うわよ)」
「…なあ、二人ともなんでヒソヒソ話してるんだ?」
どうやらウルは実力者二人を釣るための餌にされそうだ
憐れウル、骨は忘れてなければ拾ってやる
★
「ふっ!」
「おぉっとぉ」
ウルが放った首を狙った突きを、月詠は木刀を立て剣先を逸らすことで回避する
「お返しどす!」
「なんの!!」
立てた木刀をそのままウルの頭に振り下ろすが、ウルはそれを木刀で持って防ぐ
「楽しいどすなぁ。ほんまに楽しい」
「だけどそろそろ、終わりの時間も近づいてきてますよ」
「ああ、その事がほんまに残念で仕方あらへんわ…。では」
月詠は一旦身を引き、ウルと距離をとると二刀を構えた
その木刀には充分すぎるほどの気が込められている
「最後に技を放ちあって、それで終わりにしまへんか?」
「…一技勝負ですか、分かりました。乗りますよ」
ウルもまた月詠にならい木刀を構え、気を充填させる
「神鳴流・秘剣―」
「我流神鳴流・奥義―」
月詠は木刀だけではなく、それを操る体にも気を充填させ
ウルの木刀は帯電しているかのように青白い稲妻が走る
「
「
木刀が何本にも見える無数の剣撃と、雷を木刀に纏った強烈な一撃がぶつかり合った
その結果―
パキ…ィィン
ウルの木刀が、根元から砕け散った
無数の攻撃を受けたからだろう
―しかし
「ふ、ふ…ウチの負け…どす…」
月詠もまた、舞台に倒れていた
「まままっま、まさか、電気でしびしび痺れさせるとははっは、おっお思いもよりまへんでしたたたたた」
どうやら雷鳴剣の電気が木刀を伝って月詠の体に流れていったようだ
木刀は伝導率が高いとは言えないが、ウルの雷鳴剣の電圧はどうやら本物の雷と遜色ないようだ
『おおっと、月詠選手ダウーン!ここでカウントが入ります!ワン!ツー!―』
「ざざざ残念どすすすす。こここれででで終わってまうのがががが」
「僕も残念ですね。貴女との試合は得る物が多かった」
「ままま、またたた戦いたいもももののどすす」
「僕が戦えるときなら何時でも受けますよ」
「そそ、その言葉しっかりお覚えましたえ」
『ナイン、テーン!剣豪月詠選手を下しウルティムス選手、準決勝に進出でーす!!』
その試合の後、密談するリアスと朱乃、月詠とカリンが目撃されたそうだ
いやー月詠とカリンを駒王学園に編入させるとして、学年どうしよう
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