No.711615

月刊少女野崎くん 少年漫画を描くことになったんだ

野崎くんは新しいジャンルに挑戦することになりました。

2014-08-27 12:43:49 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4584   閲覧ユーザー数:4576

月刊少女野崎くん 少年漫画を描くことになったんだ

 

 

少年漫画1

 

「佐倉……実は今度、少年漫画を描くことになったんだ」

 教室の中で座っているだけで汗が額から吹き出してしまう夏本番の昼休み。

 廊下で偶然出会った野崎くんはいつもながらの無愛想というか無表情で話し掛けてきた。

「編集部の企画か何か?」

 プロの連載少女漫画家である野崎くんには正規の原稿以外に別の仕事が舞い込んでくることがたまにある。プレゼントグッズのデザインとか。今回もそんな感じなのだろうなあって思う。

「ああ。少年誌とのコラボで月刊少女ロマンスからは俺とゆかりさんが、少年誌からも2人の作家が掲載誌を交換して読み切りを描くという企画なんだ」

 野崎くんは大きく頷いてみせた。

「男の子にも少女漫画に興味を持ってもらって、女の子にも少年漫画に興味を持ってもらおうっていう主旨?」

「まあ、そんなところだ。なかなか上手くはいかないのが現実だがな」

 野崎くんは渋い表情を見せた。

「剣さんからは少女漫画家らしさを残しつつも普段とは違う少年漫画を描いて欲しいと頼まれている」

「難しそうだね」

 話を聞きながらウンウンと頷いてみせる。

 コラボ企画の難しいところというか。普段の野崎くんの作品を載せてしまうと、少女漫画に慣れていない男の子読者には浮いた世界観の作品に見えてしまうかもしれない。逆に少年漫画に徹して野崎くんらしさを完璧に消し去ってしまうと少女漫画家であることが伝わらずコラボ企画としての意味がなくなってしまう。素人目にも塩加減が難しそうな企画だと思う。

「そうなんだ。剣さんの頼みだから引き受けたものの、俺にはハードルが高い企画なんだ」

 野崎くんはいつになく難しい表情をしている。いつもコピペしたみたいな無表情なので、よく観察しないと表情の違いに気が付かないのだけど。

「掲載誌も読者も普段と違うんじゃ反応が読めないもんね。でも、野崎くんは男の子なんだし、少年漫画だったら十八番なんじゃ?」

 私は少女漫画、しかも恋愛モノばかり読んできたので少年漫画のことはほとんどわからない。でも、野崎くんは男の子なんだし少年漫画は幼い頃から慣れ親しんできたはず。

「実は俺、少年漫画ってほとんど読んだことないんだ」

「えっ? そうなの」

 私は大きく首を傾げるしかなかった。とても意外な感じがする。プロの漫画家になるぐらいなんだし、色んな種類の漫画を読んでそうなイメージがあるのだけど。

「幼い頃は多分読んでいたんだろうけど、どうにも性に合わなくてな。気が付けば少女漫画一色に染まっていた」

「そうなんだ」

 野崎くんが難しい表情で眉間にシワを寄せる。

「俺は少年漫画によくあるピンチになると眠っていた力に覚醒するという展開が大っ嫌いでなあ。あれは日頃の努力に対する否定か? 努力は天才には敵わないというクリエーター業界の残酷物語を子どもに見せ付けているのか?」

「いや、私にそんなこと言われても……」

 額から冷や汗が流れる。

 野崎くんの漫画でもマミコはわりと突然覚醒して凄い活躍を見せるよね。とは、突っ込めない。野崎くん、真剣に悩んでいるから。

「同様に、ド素人の主人公が何かを始めて数ヶ月以内に全国大会に出場できるぐらいの実力者になって、3年も経てば世界の頂点に立ってしまうという展開も世の中を舐める少年を量産しそうで嫌なんだ」

「ははははは……はは」

 嘆く野崎くんに乾いた笑いで応じてみる。

 マミコはテニスを始めて1週間でテニス部のエースに勝利して、1ヶ月で全国大会に出場していた。テニス編、あんまり人気出なかったのか、その後マミコがラケットを握っている姿を一度も見たことないけど。とは突っ込めない。野崎くん、真剣だから。

「後、ヒロインが男にとって都合が良すぎて気持ち悪い。現実の女はもっと色々考えて自分のために行動してるっての」

「それは……まあ……」

 口を濁す。

 ヒーローの鈴木くんはいつでもマミコを優先し過ぎていて、男の子から見たら女にとって都合が良すぎて気持ち悪い存在だと思う。とは突っ込めない。野崎くん、とっても真剣なんだから。

 そして私はそんな真剣な表情の野崎くんが好き。だから脳内突っ込みなんて余裕しゃくしゃくに握り潰す♪

「まあ、そんなこんなで俺は少年漫画が苦手で避けてきたんだ」

「…………野崎くんが乙女目線で物を考えていることはよくわかったよ」

 野崎くんは乙女の心の代弁者に違いなかった。190cmを誇る巨漢でヤンキーもひと睨みで逃げ出しそうな鋭い瞳を持つ外見はどう見ても漢の代表って感じだけど。

「そんなわけで佐倉……」

 野崎くんの雰囲気が変わった。とても真剣な表情で私を覗き込んでくる。

「なっ、何、かな?」

 好きな人に見つめ込まれて私の胸がドキドキと高鳴っていく。

 私と野崎くんは身長差が45cmあるので見上げているだけであごが結構辛いのだけど。

「少年漫画のストーリーを作るのを手伝ってくれないか?」

 野崎くんにお願いされてしまい、私の体温は一気に急上昇する。

 大好きな人に頼られて頼られて嬉しくて堪らない。

 でも、不安も同時について回る。

「私でいいの? 私、少年漫画をほとんど知らないよ」

 野崎くんはプロの漫画家。その作品は数万人の読者の目に触れる。私が変な入れ知恵をして失敗してしまっては大変なことになる。

 ベタ塗りならお手伝いできるけど。ストーリーを作るなんて、しかも別ジャンルのストーリー作りなんて私にできるの?

「俺は……佐倉がいいんだ」

「えっ? の、野崎……くん……っ?」

 野崎くんの声は私の心の奥の深いところにズシリと響いた。

 これって、もしかすると遠回しの愛の告白なんじゃ?

 そんな、都合の良いことを考えてしまう。

 野崎くんの性格上、そんなことはあり得ない。それは知ってる。

 でも、勘違いしてしまいたくなる甘美な響きを持つ言葉だったわけで。

「ハイハイハイハイッ! 私頑張るよ。もぉ、本気で頑張っちゃうからっ!」

 両手を突き上げて了承の意を示す私。

「…………やはり、次の少年漫画の主人公のモデルは佐倉にしよう。このノリの良さと熱血ぶりは少年漫画の主人公っぽい気がする」

 こうして私は野崎くんの少年漫画のストーリーを作るお手伝いをすることになったのだった。

 

 

 

少年漫画2

 

「佐倉は少年漫画でこんなのを読んでみたいとか何か希望はあるか?」

 放課後になって、改めて教室で作戦会議を開くことに。机を挟んで座ってちょっとした恋人気分を味わいながらの会議。思わず頬が緩んでしまうのはご愛嬌。

って、いけないいけない。ちゃんと相談に乗らなくちゃ。

「少年漫画自体読んだことがないから希望って言われてもよくわからないんだよね」

 質問に答えられない自分が歯がゆい。

 私と少年漫画は縁が薄い。少年漫画って言って思い浮かぶのは、海賊王になりたがっている少年のお話とか、髪の毛が黄色だか金色の忍者少年の話とか。古いところだと7つの玉を集めてドラゴンに願いを叶えてもらうお話とか。それもテレビのCMとかで知っているぐらいで原作漫画は読んだことがなかったりする。

 そんな私に少年漫画の希望と言われてもピンと来ない。強敵を倒すのが少年漫画なのかなって思うぐらいで。

「やっぱり、少年漫画に詳しい人に尋ねてみるのが一番早いんじゃないかな?」

 先達の知恵に学ぶ。悪く言えば他の人に丸投げすることにした。

「少年漫画に詳しい人?」

「男の子とか、オトコっぽい感じの女の子とかに聞いてみるの」

「なるほど。少女漫画描くのに女ばっかり観察していたから思い付かなった」

 野崎くんは頭の後ろを掻きながら少し照れてみせた。照れる野崎くんが可愛い♪ じゃなくて。

「ストーカー疑惑を持たれるから他の人にそんなこと言っちゃダメだからね」

 釘を差すのは忘れない。野崎くんは仕事熱心なのだ。そう思わないとやってられない。女ばっかり見ていると語るわりに私の想いにはいつまでも気付いてもらえないのだけど。

「早速調査しに出掛けてみよう」

「うん」

 私と野崎くんは足早に教室を出た。

 

 廊下を出たところで早速見知った顔を発見した。

「鹿島くんと堀部長だよ」

 演劇部の部長とエースが並んで歩いているのが見えた。

「あの2人ならいいアイディアを出してくれるんじゃないかな?」

 堀部長は演劇を極めるために色んな分野に造詣が深い。鹿島くんは外見も中身も王子さまって感じだから、少年漫画に対しても一言ありそう。

「そうだな。早速意見を聞いてみることにしよう」

 2人とも親しい間柄だけに野崎くんのフットワークも軽かった。挨拶してから早速鹿島くんたちの希望を聞いてみた。

「少年漫画……そうだなあ。スポーツモノとか部活モノが王道でいいんじゃないか?」

 堀先輩は唸りながらもちゃんと答えてくれた。

「スポーツや部活モノなら少女漫画にもありますよ」

 野崎くんが反論というか、更に詳細を促す。

「題材が同じでも、読者層が違うんだから描く内容や描き方は変わってくるだろ」

「例えば?」

「読者が男なんだから、男が感情移入しやすいように主人公を男にする。後は可愛いヒロインを登場させて、ライバルとの切磋琢磨を通じた男同士の熱い友情を描くのがスタンダードなんじゃないか?」

「男同士の熱い友情……なるほど、BLというヤツですね」

「なんでそうなるんだっ!」

 大声で怒鳴る堀部長。ごめんなさい。私も野崎くんと同じことを一瞬考えました。だって、少女漫画雑誌って、そうとしか思えない男の子同士の友情が描かれてたりするから。

 

「フッ。恋愛モノは男女の性別を超えて受け入れられるものさ」

 今度は鹿島くんが意見を出してくれた。いつも通りに王子さまな仕草を交えながら。髪を掻き上げながら格好付けて喋るってリアルを生きる私たちにはなかなかできない。

「女の子と男の子が恋をして結ばれる。恋愛モノこそどんな種類の漫画であれ、最も優れた選択肢だよ」

 鹿島くんは堀部長の脇を両手で持って高い高いしながら笑っている。何ていうか命知らずの行動。でも、言いたいことはわかる。

 恋愛を題材にした少年漫画が数多く存在することぐらいは私も知っている。恋愛モノなら野崎くんの得意分野だし、いいかも知れない。

「男装したイケメンな女子がショタを落とす漫画を描くのか? 高度な擬似BL過ぎて読者が付いていけないんじゃないか? 少なくとも俺には無理だ」

「BLから離れろぉ~~っ! そして、俺はショタじゃねえっ!」

 堀部長の雷炸裂。けれど、野崎くんは真顔のまま一歩も引かない。

「しかしですよ。男キャラ同士を親密に絡ませるほどに読者の人気は上がるんです」

「男読者相手にそれをやったら一発で干されるぞっ!」

「しかし、男同士の熱い友情とは結局のところBLへの前段階なのでは?」

「友情と愛情を一緒くたにすんなぁっ!」

 今日も堀部長は元気です。

「フフ。そんなにBL要素を入れたくないなら、堀ちゃん部長を女体化させてしまうのはどうかな? 部長の女体化…………実にいい。ちっちゃくて可愛い」

 ほっこり表情の鹿島くん。とてもいい表情で思わず遺影の写真にしたくなるぐらい。だって、堀部長はとてもお怒りで鹿島くんを明日学校で見掛けられる自信が持てない。

「男装した美少女が口と手癖の悪いロリっ子と恋に落ちる。今流行の百合ってヤツですね。ええ、わかります」

「誰が口と手癖の悪いロリっ子だぁ~~っ!」

「堀ちゃん先輩の女体化……フフフフフ。実にいいなあ」

「お前はいい加減に下ろしやがれっ!」

「ブボッ!?」

 堀部長のキックが鹿島くんの顔面を直撃。それから流れるようにパンチ、キック、パンチ、キック、パンチ、投げ技のコンビネーションが決まった。部長の連続攻撃で鹿島くんの体が宙に浮かんで地に落ちてこない。

 集中攻撃を受けているのに鹿島くんはちょっと幸せそう。あっ、今、ちょっと意識を失い掛けた。本当は凄く大変な状態なのかもしれない。

「なるほど。バトルモノというわけですね。それなら確かに少年漫画っぽい。描いたことないんでできるかわかりませんが」

 取材モードの野崎くんは目の前の事態にただ素直に感心している。

「野崎くんがここにいると鹿島くんが死んじゃうまで攻撃を受けそうだから。他の人のところに聞きに行こう!」

 野崎くんが余計な感想を述べる限り部長の鹿島くんへの攻撃は止まらない。私は友達の命を救うために敢えてこの場を去ることにした。

 野崎くんが描くバトル漫画展開にちょっとワクワクしながら。

 

 

 

 私たちは更に取材を重ねるために廊下を歩いて行く。

 すると隣の教室内から女の子たちの黄色い歓声が聞こえてきた。興味を持って教室の中を覗いてみる。

「きゃ~~♪ 御子柴くぅ~ん♪」

「おいおいっ。いつまでも俺のことを離してくれないとは困った仔猫ちゃんたちだな」

 みこりんが4人の女子に囲まれて窓際で軽快にお喋りしている。一見するとプレイボーイな美少年が女の子たちを明るく楽しませているように見えるこの構図。でも、みこりんをよく知っている私はその見方が大きく間違っていることを知っている。

 シャイで恥ずかしがり屋なみこりんに複数の女の子との会話を楽しむ余裕なんてない。今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいのはずだった。

「おうっ。野崎と佐倉じゃねえか。連れが来たんでそろそろ失礼するぜ仔猫ちゃんたち」

 実際、みこりんは私たちの存在に気が付くと何も言っていないのにすぐにこちらへとやって来た。女の子たちから逃げるようにして。

「え~。行っちゃうの、御子柴く~ん」

「男同士の友情に水を差すもんじゃねえぜ。また遊んでやっからよぉ。バーン」

 指でピストルを撃つ真似をしながら颯爽と教室を出てくるみこりん。恥ずかしがり屋の癖にこういう仕草はしっかり取ってしまう。それでいつまでも誤解が解けないのがみこりんという男の子だった。

「よっ。待たせたな」

 白い歯を光らせて微笑む。内面を知っている私たちに対してもチャラい系キャラを突き通すのがみこりんの真骨頂。この姿だけ見ていると、女の子たちの相手するのに限界を迎えて逃げてきたと思う人はいないだろう。それがみこりんなのだ。

 私たちは早速野崎くんの現状を説明してみこりんに意見を尋ねることにした。

 

「要するに男が漫画に欲しているものを答えればいいんだろ?」

 マミコのモデルであり、花がらを描くのが得意な乙女マスターみこりんが男について語る。さて、その答えは?

「そんなもん……萌えだよ、萌え」

 自信満々に答えてみせるみこりん。そう言えばみこりんは女の子と話す練習のために始めた美少女恋愛ゲームに嵌まり、それ以降そっちの道を突き進む人でもありました。

「燃え? 熱血か?」

 そして、男の子なのにプロ少女漫画家の野崎くんは萌えをまるで理解していなかったのです。

「違ぇよっ! 美少女の方だよっ!」

 怒鳴るみこりん。

「美少女? マミコなら毎月描いているが」

 真顔で顔を傾げる野崎くん。なんかとてもシュールな構図。

「マミコは確かに可愛いがな……萌え要素がちょっと足りてねえんだ。今のままじゃあ野郎連中のハートは掴めねぇぞ」

「燃え要素が足りない? やはり、少年漫画ではマミコにもバトルアクションが必要ということか。マミコは一子相伝の暗殺拳の伝承者なのだな」

「そうじゃねえっ! マミコは男心をくすぐるあざとさに欠けてるって言ってるんだ」

「マミコは作中で男子生徒たちから大人気だぞ?」

「作中の男キャラからの評価じゃねえっ! リアル男子読者の反応のことだよ」

 平行線を辿る野崎くんとみこりん。萌え心をくすぐることに極めた美少女ゲーム愛好者と乙女の心の代弁者と言われる少女漫画家の間を隔てる溝は深い。

「マミコにはちょっとぐらい媚びたような仕草が必要なんだよ。例えば舌をチラッと出してテヘッ♪て自分の頭を小突いたりな」

「鈴木がよくやる仕草だな」

「少年漫画で男にそんな仕草させたら総スカン食らうっての! 美少女限定だよ!」

「マミコに1度同じ仕草を取らせたらムカつくってファンレターで怒られたぞ」

 『テヘッ♪』なんて仕草は同性にはあざと過ぎてイライラするだけ。でも、異性ならそのあざとさが可愛く見えるのも確か。私も鈴木くんが舌をペロッと出すのは許せるけど、マミコはちょっと嫌。

 男性目線でヒロインにあざとさを求めるみこりん。女性目線でヒロインへの反発を防ごうとする野崎くん。どちらも間違っていないだけに問題解決の道は遠い。

 だけど野崎くんは少年漫画を描かなきゃいけないんだから、みこりんの視点をもっと貪欲に取り込まなきゃいけないんじゃ?

「ではマミコ(改)が男子読者に受けるためには、どんなあざとさが必要なんだ?」

 勢い込む野崎くん。少年漫画への情熱は失っていなかったらしい。

そして、ヒロインの名前がマミコ(改)って一体、何? 

野崎くんはそんなにマミコって名前に思い入れがあるの?

私もマミコって改名した方がいいのかなあ?

「そりゃあ、男がヒロインに望むあざとさって言ったらアレだろ……」

 みこりんの動きが急に止まった。代わりに顔がドンドン赤く染まっていく。極度に恥ずかしがっている時の顔。でも、どうして?

「…………おっ…………とか…………パン…………とかだよ」

「小声過ぎて聞こえないよ」

 みこりんのシャイが困った方向で出てしまっている。

「いっ、言えるかっ!」

「言ってくれなきゃ参考にならないだろうが」

「佐倉の前で、女の前で言えるかっての!」

 私の前では言い辛い話らしい。

「じゃあ私はしばらく離れるから、みこりんは野崎くんにこっそり話してくれればいいよ」

 恥ずかしがり屋のみこりんを思いやるのも野崎くんの助手の仕事の内。2人から一歩下がる。

「あっ。結月~」

 その時丁度クラスメイトにして親友の瀬尾結月が近くを通り掛かった。

 せっかくだから結月にも聞いておこう。私は早速親友の元へと駆け寄って尋ねた。

「男が漫画に望むもの? そんなもの、おっぱいとパンツに決まってるだろ」

 みこりんはとてもキラキラした笑顔で結月に向かってサムズアップしてみせた。

 

 つづく

 

 

 


 
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