現在。美希を膝の上に乗っけながら二人でテレビを観賞している。
普段はやや無表情ながらも悪くはなさそうな雰囲気を出していた美希が
今はちょっと…というかだいぶ不満気な顔をしてテレビを睨んでいた。
「どうしたの、美希?」
「…何でもないのです」
「そうは見えないんだけれど」
「…」
「あ、そうだ。今日は美希の好きなもの作ってあげる」
「誤魔化さないでください!」
「美希?」
笑顔を浮かべて宥めようとしていたんだけど、あまりに真剣だったから
私も真顔で返した。
「犬神さんと密着しながら話してるのを見てしまったんです…あれは普通の距離じゃ
ないです。雪ちゃん、私に飽きちゃったのかと…」
「もう、馬鹿ね」
「ば!?」
私の言葉に傷ついた顔を浮かばせる美希が少し可愛かった。
もう少し眺めていたかったけれど、複雑な雰囲気になったら大変だったから。
すぐに誤解を解いてあげた。
「あのね、わんちゃんをからかうような感覚。わかる?」
「え?」
「可愛いから、ちょっといじめたくなっちゃう感じ。
人にやるような好きな子に対して、とは違う感覚」
「何となく」
「それと同じなの、だからね前にも言ったけれど美希は特別」
チュッ
「ゆきちゃっ…!」
チュッ
「美希…」
「ん…」
同じ距離感のまま、美希が振り向いた瞬間を狙ってキスをした。
小さいことで怒る子にはこれくらいがちょうどいい…。
うるっとして濡れてる美希の瞳を覗き込むとドキドキしてしまう。
ちょっと悪戯したくなってくるというか。犬神ちゃんとは違う、ねっとりとした
私の愛を美希に染み込ませたくなる。
だけど知識だけアレでけっこう純な美希には早いからグッとこらえる。
だからキスだけはねっとりじっくり。舌を這わせて美希の唾液を味わう。
味はしない。けどすごく甘い気持ちに浸れていく。
「ゆきひゃっ…んぅっ」
「ん…」
時折、瞬間だけ息継ぎするような間に苦しそうな。けど嬉しそうな声を
漏らす美希に私は悶々としていた。美希の顔は真っ赤で今にものぼせて倒れて
しまいそうな感じがしたから。
「ふぁ…」
「はい、これでお終い」
「ひどい雪ちゃん…」
「あら、ひどいのはどっちかしら。今日は私の誕生日だというのに」
「…あっ!」
「今思い出したのね」
いつもは忘れることなどなかった美希が本気で慌てていて思わず笑みがこぼれる。
忘れられたことより、忘れたことによりこれだけ必死に慌てる美希の気持ちが
嬉しかったから。
「ご、ごめん。何か買ってく…」
美希が言い終わる前に両頬を手で挟むようにしてゆっくりと顔を近づける。
「私にとってこれがプレゼント」
「雪ちゃん…」
そしてもう一度、今度は不意打ちじゃないキスをじっくりと長い時間かけてした。
私は美希がいてくれれば一番幸せ。
美希から幸せになれる成分をもらっている。
だから物よりこの時間が何より大切なのだ。
プハッ…。
乱れた息を少しずつ整えてから見つめ合い、私を見ていた美希がゆっくりと
口を開いた。
「誕生日おめでとう。雪ちゃん」
「うん、ありがとう。美希」
時々ちょっとだけすれ違うこともあるけれど、ずっとこうして二人で一緒にいたい。
「あ、でも一つだけ」
「何?」
「今度からは紛らわしいことはしないように!」
「えー」
「えーっじゃないのですよ!!」
美希にぽかぽかと全く痛くないパンチをもらいながら私は楽しくて仕方なくて
笑いながらごめんごめんと謝る。そんな日常が本当に愛おしい。
だからこういう普通のやりとりが私にとっては一番のプレゼントなのだった。
終
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そこはかとなく奥がSな先輩誕生日おめで(ry)うわっなにをするやめ(ry)
ということでおめでとうございます(*`▽´*)ノ美希音ちゃんと末永くイチャイチャしてくだせ~w