雲雀、クレア、真司逹が冥界に送られてから、更に一日が経過した。
あれから旅団のメンバー達は再びいつもの任務に戻り、ロストロギア回収や不正転生者の排除などで忙しく活動していた。
そして…
ミッドチルダ、地上本部。
その少し離れた位置にある街の路地裏にて…
『つまり、奴等は任務に失敗したという訳だな?』
「はい。そういう事になりますね」
機動六課の監視役―――ソーマ・クリウスは、直属の上司であるレジアス・ゲイズに報告を入れていた。その内容はもちろん、機動六課がロストロギアの回収に失敗した件についてである。
『よくやったクリウス。それだけでも、機動六課を潰す材料には充分になり得る』
「潰す、ですか……中将、あなたはよほど機動六課を嫌っているようですね」
『当たり前だ。あのような子狸の設立した部隊に、本局と聖王教会が肩入れする理由が分からん。ただでさえ地上の治安も不安定な状態だというのに』
「まぁ、確かにそうですが(その犯罪者はここにもいますがねぇ♪)」
通信によって伝わってくるレジアスの愚痴にクリウスも適当に相槌を打つ。そもそもその治安が不安定になるような事を管理局その物がやってしまっているのだから、犯罪を犯している張本人であるクリウスからすればレジアスの言っている事も滑稽にしか聞こえない。
「あぁそうだ、中将。私の方から少しお願いがあるのですが」
『ん? 何だ』
「機動六課の事なのですが……今はまだ、奴等を潰さないでおいて欲しいのですよ」
『な!? 何を馬鹿な事を言っているのだクリウス!!』
「実を言いますと、第97管理外世界での任務において、少し面白い事が判明しまして。どうやら機動六課の面々からごく一部のメンバーと……OTAKU旅団の連中が、若干でも絡んでいるようです」
『…何だと? それは確かか、クリウス』
「はい。なので、旅団の連中を誘き寄せる為の罠として、今はまだ六課には存在していて貰わないと困るのですよ」
『しかしだな、あの旅団と繋がっているのであれば尚更…』
「だからですよ。良いんですか? 旅団の連中だって充分に極悪なんですよ? そんな奴等が次元世界に好きなようにのさばっているのを、あなたは指を咥えて見てるとでも言うつもりですか?」
『ぐ…』
「まぁそういう事です。こちらでその為の算段を付けようと思っていますので、私はもうしばらく六課に滞在します。よろしいですね、レジアス中将?」
『…良いだろう。もうしばらくの間、六課に潜っていてくれたまえ』
「ありがとうございます」
通信を切り、クリウスは小さく溜め息をついてから……少しずつ表情が醜い笑顔へと変わる。
「ヒヒヒヒヒヒ……相変わらず馬鹿なオッサンだ。旅団と六課が繋がっている? そんな適当な言葉に簡単に引っかかるなんてなぁ♪」
クリウスの予想が正しければ、旅団と六課は所詮敵同士。仮に旅団の中に六課一同の関係者がいたとしても、あの旅団が六課を相手に手を抜くような事は到底考えられない。先程クリウスがレジアスに告げた事も、所詮は自分自身が楽しむ為の口実でしかないのだ。
「さぁて、中将からの許可は頂いたんだ。マウザーのおっさんにも悪いが、俺はもうしばらくこの状況を楽しませて貰うとするぜ…ヒヒヒヒヒヒヒヒ……ヒィーハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
一方、
「…さぁて」
研究室にて、竜神丸は目の前の机に置いてある四機のベルト―――戦極ドライバーを見てある考え事をしている真っ最中だった。
(この前の約束から、ZEROさんに一機渡す事は確定済み。二つ目は私が使用し……残るは二つですね)
クライシスから授かった四機の戦極ドライバー。性能テストをするべくこれらのベルトを旅団メンバーの内の誰かに渡したいところなのだが、問題は二つ存在する。一つは装着者の選定、もう一つは変身する為のあるアイテムの不足である。
「やはり、こういうのはライダーシステムに通ずるメンバーに渡すべきですかねぇ? そうなると、支配人さんは確定として……他にはディアーリーズさんかな? okakaさんは今、例の任務で忙しいでしょうし」
そうと決まれば話は早い。竜神丸は四機ある内、一機の戦極ドライバーを手に持って研究室から姿を消す。性能テストを行うのに、一番ちょうど良い実験場へと向かう為に。
日本、とある港町…
「なるほど。奴さんは、この世界にいるって訳ね」
okakaは現在、ある目的の為にこの港町へとやって来ていた。okakaの周囲には、プロトディケイドのカメンライド機能で召喚したバットショットが飛び回っている。
「それじゃ、頼むぜ」
『ピピピ』
okakaの指示でバットショットは港町に停泊している客船―――アンジェラ号へと向かって行く。
「さて……こんなにも早く、また会う機会が出来ちまうとはな」
okakaは懐から一枚の写真を取り出す。
「なぁ? 鮮血の魔法使い……クリムゾン」
写真には、ローブを華麗に靡かせているクリムゾンの姿が写っていた。このクリムゾンこそ、今回okakaが目的としている人物だった。
「しっかし、団長もいきなりだよ。突然俺の所に来てから『この写真の人物を見つけ出せ』とか……幸い、うちの会社の情報ネットワークを利用して、すぐに見つける事が出来たのが救いか」
~♪
「んむ?」
okakaが溜め息をついていると、彼のポケットから着信音が鳴り出した。okakaは着信音の発信源であるスタッグフォンをポケットから取り出し、動画モードに切り替える。
「お、来たか」
バットショットの撮っている映像が、スタッグフォンに送られてきた。okakaが覗き込む映像には、燕尾服を身に纏った一人の青年の姿が映っていた。
「ふぅん、こいつがそうなのか…?」
豪華客船、アンジェラ号の船内…
「ねぇねぇ。あの人、何かめっちゃかっこよくない?」
「うわ、本当だ。凄いイケメン…」
「俳優さんかな?」
「誰かの執事さんとか…?」
「お、おい、セリア? 何であんな奴なんかに顔を赤らめて…」
「くそ、所詮イケメンが勝ち組ってか…!!」
船内の客達は皆、ある青年に対して視線を釘付けにしていた。女性客は青年の容姿を見たまま愛しそうに顔を赤らめており、男性客は嫉妬のあまりその青年をギロリと睨み付けている。そんな事も露知らず、青年は船内のホールまで無言のまま移動し、そしてある団体と対面する。
「お待たせしました。あなた達ですね? レイラお嬢様のボディーガードを、この私に依頼したのは」
「おぉ、来てくれたかね! 待ち侘びていたよ!」
「あぁ、何て凛々しいお方……あなたが、私の事を守って下さるのですね…?」
「えぇ、お任せ下さい。あぁ、失礼。自己紹介がまだでしたね」
青年は左手を腰の後ろに持っていき、右手を胸元に持っていってから深くお辞儀をする。
「私は
その様子を、真上からバットショットがしっかりと撮影していた。
「宰我忍……なるほど、こいつがクリムゾンか。見た目はまだ結構若そうだが……いや、見た目だけで判断するのはまだ早いか」
幽霊騒動の際は、彼の助力もあってアザゼルやゴーストショッカーの暴走を食い止められた。それ程の実力を持った者が旅団メンバーになれば、相当な戦力になり得る事は間違いない。
「うし。そうと分かれば、善は急げだ」
okakaはスタッグフォンをポケットにしまい、木の上から地面に降り立つ。
「俺も乗り込むとしようかねぇ、アンジェラ号に」
より深く調査をする為には、自身が目標に接近する事も重要である。当然、自身の存在が目標に気付かれてしまっては元も子も無い為、ここから先は慎重に動かなければならない。
「う~し。待ってろよぉ、鮮血の魔法使い…!」
okakaは小さく笑みを浮かべながら、アンジェラ号に向けて駆け出すのだった。
しかし、彼等はまだ気付いていなかった。
「ん?」
アンジェラ号がこれから、パニックに陥る事になる事を。
「何だこれ…?」
一人の船員が、船内である物を発見した。それは…
「植物? それに、何だこの……チャックみたいなのは…?」
この世の物とは思えないような不思議な植物、そしてファスナーのように開いてる空間の裂け目だった。
その裂け目の先に続いている、生い茂った深い森のような空間。
そこには地球上には存在しないであろう植物が繁殖し、そしてある異形が存在していた。
「グゥゥゥゥゥゥゥゥ…」
「グルルルルル…」
「キシャァァァァァァァァ…」
灰色の丸っこい身体つきをした謎の怪生物。
人は奴等を、インベスと呼ぶ。
インベスは木々に成っている果実を両手で掴み、自身の口へと運ぶ。そしていくらか果実を食べたところで残りカスを地面に放り捨てる。
「グ、グ…グゥゥゥゥゥ…!!」
するとインベスの肉体が少しずつ変異していき、全身が植物に包まれていく。そして…
「グググ…ブルァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
インベスは二本の枝角を生やした青い体色の上級インベス―――シカインベスへと成長した。その周囲では他のインベスも同じように果実を食べ、そして同じように成長していく。
「ブルルルルル…!!」
「ギギ、ギギギギギギ…!!」
「キシャァァァァ!!」
シカインベスの他にも、二本の長い触角を持ったカミキリインベス、羽を持った赤い体色のコウモリインベスが次々と誕生。もっと果実を食べようと、インベス逹は別の場所へと移動しようとする。
その時…
-ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!-
「「「!?」」」
突如インベス逹の前に空間の裂け目が出現し、そこから一台のバイクに乗った竜神丸が姿を現した。竜神丸はバイクが地面に降り立ったのを確認し、ブレーキをかけてバイクから降りる。
「さてと……おやま、いきなり当たりですか」
「ブルゥゥゥゥゥゥ…!!」
「ギギギギギ…!!」
「キシャァァァァァァァ…!!」
竜神丸の姿を見て、インベス逹は一斉に戦闘態勢となる。それを見た竜神丸はやれやれと言いたげな仕種をしつつ、懐から戦極ドライバーを取り出す。
「まぁ良いでしょう。性能テストするのには役立つでしょうし」
戦極ドライバーが竜神丸の腹部に装着される。それと共に、戦極ドライバーの左側に付いた表示板ライダーインジケータに、装着者のデータを認証した証であるライダーの物と思われる横顔が出現する。
「では…」
竜神丸は近くの木に成っていた果実を一つ手に取る。すると手にした果実が変化を起こし、マスカットフルーツの描かれた南京錠型のアイテム―――マスカットロックシードとなる。
「ふむ、14番ですか。これはまたレアな」
「ブルァァァァァァァァッ!!」
「おっと」
飛びかかって来たシカインベスの角をしゃがんで回避し、竜神丸はマスカットロックシードを右手から左手に持ち替える。
「では、始めましょう」
≪マスカット!≫
マスカットロックシードの開錠スイッチが押され、竜神丸の真上にマスカットフルーツ状の鎧が出現。竜神丸はそれを確認してから、マスカットロックシードを戦極ドライバーへと装填し、マスカットロックシードのハンガーを閉じる。
≪ロック・オン!≫
マスカットロックシードが装填されると同時に、中華を思わせるような待機音が鳴り始める。その待機音を聞いたインベス逹が一斉に駆け出して竜神丸に襲い掛かろうとした瞬間、竜神丸は戦極ドライバーの右側に付いている刀型のパーツ―――カッティングブレードに手をかけ…
「変身」
≪ハイィ~!≫
「「「ガァァァァァァァァッ!?」」」
カッティングブレードが倒され、マスカットロックシードが斬られて断面図が露わになる。それと共に頭上の鎧が降下して竜神丸の頭に被さり、そこから飛び出た果汁がインベス逹を押し返す。そして果汁がエネルギー状となり、竜神丸の全身にスーツを纏わせる。
≪マスカットアームズ!
頭部に被さった鎧―――マスカットアームズの中では竜神丸の頭に仮面が形成され、最後にマスカットアームズが変形してスーツの上に装着される。
「ブルルルルル…!!」
「ギギギギギギギギ…!!」
「キシャシャシャシャシャ…!!」
インベス逹が体勢を立て直す中、竜神丸はロックシードの力を操る戦士―――アーマードライダーへの変身を完了した。
「ふむ、着心地はなかなか」
竜神丸が変身した戦士―――アーマードライダー
「さぁ、テスト開始です…!!」
その言葉と共に、龍刃は襲い掛かって来るインベス逹を迎え撃つのだった。
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クリムゾンの正体・アーマードライダー出陣