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【獣機特警K-9ⅡG】野生児少年と薬学お姉さんの出会い【交流】

2014-08-19 23:07:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:816   閲覧ユーザー数:800

「ここどこだ? わからない。アビィの家、どこ行った……?」

 サバンナや森林の中では、狩猟民族出身の彼は素晴らしい方向感覚を発揮する。だが、緑豊かとはいえ、アスファルトとコンクリートの人工物に囲まれた中では、どうも勝手が違うようだ。かれこれ2時間、この調子だ。

 彼の名前はアビィ。ネイティブファンガー・サザル族出身の、ヤマネコ型ファンガーの少年だ。この春から、故郷の村を離れて、エバーグリーンカレッジの中等部に入学した。

 彼が探している「家」とは、学生寮の自室のことだ。彼は入学と同時に、親元から離れ、一人暮らしを始めたのだ。だが、入学して日も浅く、土地勘もないアビィは、見事に迷子になってしまった、というわけだ。

 エバーグリーンカレッジの学生寮は数棟に分かれている。寮の建物をうろうろすること3時間。ようやく、アビィはひとつのドアの前にたどり着いた。アビィが記憶していたドアの形、周囲の景色などは、たしかに似ている。

「思い出した! たしかここ! アビィの家!」

 アビィは、ドアノブをつかむと、勢いよく開いた。

  ガチャ!

 

 

 そこには、着替え中のエゾリス型ファンガーの少女がいた。スレンダーな身体に大きな胸。淡褐色の毛皮と、薄いピンク色の下着が、美しいコントラストをなしている。

「……」

「……」

 エゾリス型ファンガーの少女と、ヤマネコ型ファンガーの少年は、数秒間黙って見つめあっていた。お互いにとって、想定外の出来事である。

 先に口を開いたのは、アビィの方だった。ネイティブファンガー出身のアビィにとっては、半裸に近い女性は見慣れたものだった。

「アビィ、家まちがったか? ここ、オマエの家か?」

 シマリス型ファンガーの少女は答えた。

「ええ。君、誰? 迷子?」

 驚くことに、見られた彼女も平然としている。困っている人を見れば、自分がどんな状況に置かれていても手を差し伸べずにはいられない。彼女はそういう性格だった。

「自分、アビィいう。中等部1年。アビィの家、知らないか?」

「ごめんなさい。わからないわ。わたしは雅 舞[みやび・まい]。よかったら、いっしょに探してあげるね」

「ありがとう! 助かる!」

 アビィの顔が輝いた。

「ちょっとだけ待ってね。服を着るから」

 舞は、エバーグリーンカレッジの女子制服を着ると、その上から白衣を羽織った。

 

 舞の付き添いで、10分ほどでアビィは自分の部屋に戻ることができた。

「マイ姉、ありがとう! アビィ、一生迷ったままか思った!」

「くすっ、大げさね。じゃあ、わたしは帰るから」

 立ち去ろうとした舞を、アビィが呼び止めた。

「待って! マイ姉、また会えるか?」

「え? うん。困ったことがあったらいつでも呼んでね」

 

 こうして、アビィと舞は友達になった。

 彼らがお互いを異性として意識し始めるのは、もう少し経ってからである。

 


 
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