陳留の街にある定食屋、そこで俺は曹操たちに質問(もしくは尋問)されていた。
「もう一度聞くぞ?名前は?」
「緋霧零児」
「生まれた場所は?」
「日本の東京、海を渡ったところにある」
「………この国に来た目的は?」
「そんなものは無い。……気が付いたらあの荒野にいたからな、ここに来た方法もわかっていない」
「………?あの鋼鉄の馬を使ったのではないのか?」
「あれじゃあ海は渡れない。それにあれもここに来るまで、持ってなかったしな」
「…………では最後の質問だ。……貴様が使っていたあの鎧はなんだ?」
「あれは《アーマードライダー》と呼ばれるシステムで作られたものだ。……詳しい理屈は俺も知らないが、《ロックシード》と呼ばれる錠前のパワーを引き出すことによってあの鎧を纏うことが出来る」
「……………華琳様、どう……いたしましょう」
因みに質問の流れは、夏侯淵が質問する→俺が答えるのを繰り返している。三つめの質問辺りから困惑しているように感じたが………まぁ当然か。
「………それで?そんな与太話を……零児。貴方は私に信じろというの?」
「ああ、信じてもらうしか俺に出来る事は無い。………無論、俺を賊として見る。…というなら俺もそれなりの対応をさせてもらうがな」
曹操の問いかけにそう答えつつ、腰にぶら下げていたオレンジのロックシードを手に持った。反対側の手で懐に入れてある戦極ドライバーも忘れずに掴んでいるが。
「別に貴方を賊に仕立て上げる気はないわよ。………私の手助けをすることが条件だけど」
そう言いつつ、曹操は挑発的な笑みを浮かべる……成程、得体の知れない力を持つ者を野に放つより、自分の戦力として利用した方がいいと判断したか。随分と打算的だこと。
「どうせ行くあても無いしなぁ……孟徳殿さえ良ければ、あんたのために力を振るうのも吝かじゃない」
俺のその言葉に曹操はさらに笑みを深くした。
「契約成立……ね。これからよろしく、零児」
「ああ、宜しく頼むよ、孟徳殿」
なんか上手く誘導された気もするが、これからの当てがないのも事実だしな。
「………で、話は変わるけれど…なぜ名乗ってもいない私と春蘭の名が分かったのかしら?説明………してくれるわよね?」
Oh………そういえばまだ説明してなかったな。……そのまま忘れていれば良かったのに。
「あ~それはだな………俺がこの時代の人間じゃないからだな。うん」
「……………なんですって?」
「言葉の通りだよ。……俺はこの時代の人間じゃない。大体1600年後の人間だ」
性別が違うという重大な問題があるが、それは今の状況において、些細な問題でしかない。重要なのは、これは((史実|・・))ではなく、((現実|・・))だということだ。
「貴様~!!何をふざけたことを言っている!!華琳様はなぜ私たちの名を知っていたかを聞いているのだ!!それがなぜ未来から来たという話になるのだ!!」
「それは簡単だ。………あんた達が俺の時代で『歴史上の人物』として書物に残っているからな……あんた達の感覚で言えば、項羽や劉邦について知っているのと同じだ」
「……………はぁ?貴様は一体何を言っておるのだ?」
「姉者……後で説明するから黙っていてくれ。………しかし華琳様、いかがいたしましょう?」
「そうねぇ………」
曹操、夏侯淵熟考。夏候惇、沈黙。………なんぞ?これ。まあ、気持ちは分からないでもないが。
「…………そういえば零児。まだ貴方の《真名》を聞いていなかったわね、教えてもらえるかしら?」
これから長い付き合いになるのだから、と曹操が言う。
「いや……そもそも《真名》とはなんだ?俺の知っている歴史では、そんな呼び方はされていなかったはずなのだが」
「なんだ?貴様《真名》も知らんのか?一体、どこの世間知らずなんだ」
「…………世間知らずで悪かったな、夏候惇。………その世間知らずなこの俺に真名について教えてもらえるか?」
「なに?そうかそうか!!仕方ない!!この夏候元譲が説明してやろうではないか!!」
…………こいつ、本当にアホの子なんだな。皮肉が通じてないし、曹操と夏侯淵は溜息ついているし。……まぁ現状では知識を仕入れるのが最優先、一時の恥は我慢しよう。
「いいか?《真名》とは親から授かった大切な、名前だ。真名を許されていない者が真名を呼べば、殺されても文句は言えん。それほど大切にされているものだ」
「成程………助かった、夏候惇」
曹操たちと出会ったときは夏侯淵が名乗ったから彼女たちの名前を推測できた。………もし、最初に曹操たちと出会っていなかったら俺、死んでいたかもな。
「……生憎と、さっき真名の意味を聞いていた通り、俺が今まで過ごしていた場所ではそんな風習がなくてな………敢えて名乗るなら零児が真名になるな」
「………なんですって?!!つまり貴方は会って間もない者に真名を預けたというの?」
「あんた達からすればそうなるな。………だが俺としては、孟徳殿はこれからの生活をある程度保障してくれる相手になる。自分の名を預けるには十分だと俺は思うが?」
勿論、これは飽くまで俺の価値観によるもの。この時代の者からすれば甘い考えなのかもしれないが、一宿一飯の恩という言葉があるくらいだ。別段可笑しくもないだろう。
「…………そう。零児、私の真名は華琳よ。これからはそう呼びなさい」
「………いいのか?俺としては別に気にしないんだが」
「何を言っているの。王たる私が真名に等しい名を預けられたのよ?それに応えるのが義務というものよ」
「……まぁあんたがいいなら呼ばせてもらうか。……改めて、宜しく頼む。華琳」
「ええ。………春蘭!秋蘭!貴方達も零児に真名を預けなさい!!」
「御意。………零児、私の事は秋蘭と呼んでくれて構わん」
「おう、宜しく秋蘭……ってそれでいいのか?」
真名って命賭けるほど大切なものじゃなかったのかよ
「なに、私の全ては華琳様のものだ。華琳様が真名を預けろ、というならそれに従うまでだ」
よくできた側近だこと。……まぁもう一人はちょっと違うみたいだが。
「………姉者?」
そう、夏候惇は俺に真名を預けるのを渋っていた。………正直華琳のいう事には即座に反応を示す奴だと思っていたのだが。
「……華琳様。無礼を承知で申し上げます」
「………何かしら、春蘭?」
華琳が不敵な笑みを浮かべる。……嫌な予感しかしないな。
「私と緋霧を戦わせてください!!」
「………なぜ?私が認めているという事実だけでは足りないというの?」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ……」
「ただ?」
「緋霧の持つ戦極ドライバーとやらは、得体の知れない物です!!そんな物を使う緋霧がどういった人物かを自分の身で確かめたいのです!!」
………正直、ただ気に入らないから真名を預けないとばかり思っていたんだが…………流石は夏候元譲と言うべきか?
「…………成程、一理あるわね。いいでしょう、城の中庭で零児と春蘭の模擬戦を行うわ。……零児も言いわね?」
「ああ、俺から何か意見を述べるつもりはない。………あんたの好きにするといいさ」
「結構。さて、では早速城へ戻りましょうか」
言葉と共に、華琳が席を立つ。………引き受けといてなんだがライダーと生身の人間が戦って大丈夫なのだろうか?疑問を抱えながら前を歩く三人へと着いていく。
後書き
皆さんこんにちは。作者の北河静です。更新が遅くなって申し訳ありません!!リアルが多忙で全然執筆できませんでした。これからもこれくらいのペースになると思うのでご了承ください。
お詫びになるかはわかりませんが取り敢えず零児の持ちものでも書いておきましょうか。
まず普通のロックシードがオレンジ、バナナ、ブドウ、メロン、マツボックリ、ドングリ、ドリアン、クルミ、パイン、イチゴ、スイカ、マンゴー、キウイです。
次、エナジーロックシードがレモンエナジー、ピーチエナジー、チェリーエナジー、メロンエナジーです。
続いてロックビークル。サクラハリケーン、ローズアタッカー、ダンテライナーですね。
それ以外として、フレッシュオレンジ、フレッシュパイン、カチドキ、金のリンゴ、銀のリンゴ、戦極ドライバー、ゲネシスコア、あと服装がフランチェスカの制服ではなく、SAOのキリトみたいな黒ずくめの格好になっています。正直な話、持たせたのはいいんですがドングリとクルミの使い道が今の所無いんですよね……マツボックリ?手加減用ですよ。前二つと違って威力増幅とかないから。極ロックシードもどうやって出そう……オーバーロードも出すわけにもいかないし………あと、これらはあくまで『初期装備』であって増えないとは言ってませんからね?増やすとも言いませんけど。
ではこの辺で。それでわ~
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第二話 零児尋問される