蓮華「さて、早速だけど情報をまとめようと思うわ」
徐福襲撃の次の日、私達呉の重鎮は円卓に座り話し合う事となった。
ここには私、母様、父様、蓮華さん、雷蓮、冥琳さん、清琳、穏さん、温、祭さん、
思春さん、明命さん、亞莎さん、小蓮さん、美羽さん、七乃さんと集まっている。
呉の最重要人物がここまで揃うと、なかなか壮観ね
冥琳「まず、蓮鏡様が会ったという男についてなのだが…その者は韓玄と名乗ったらしいな?」
蓮鏡「はい。見た目は父様と同じくらいの年齢。老齢ながら研ぎ澄まされた氣。
間違いなく武将級の人間でした」
私がちょっと小細工をしなかったら、負けていたかもしれない程の強さだ
雪蓮「韓玄って確か、あの大戦時に桃香に荊州を攻め込まれて、
陥落して以来姿を眩ませていた奴だったかしら?」
七乃「はい。あの人、生きてたんですねー。とっくに野垂れ死んだと思ってました」
七乃さんは相変わらずの毒舌ね
美羽「最期は敵の爆弾により爆殺処理。なかなかにえぐい事をする連中であるな」
小蓮「口封じと蓮鏡たちも巻き込む気ってところよね。蓮鏡凄いわ、爆弾に気付くなんて」
蓮鏡「勘だったんですけどね」
冥琳「その勘は、まさしく雪蓮譲りだな」
母様譲り……冥琳さんったら嬉しい事言っちゃって♪
雪蓮「蓮鏡の話からすると、徐福は組織の名前ではなく、その組織の頭ということになるのね?」
蓮鏡「はい。韓玄は徐福が薬を作ったと言っていました。
まぁ、それが誰なのか、どんな奴かまではわからないけど」
それを聞き出すつもりだった人間は爆殺されてしまったし
零士「徐福の名を語った一刀君に恨みを抱いている人間の仕業か、それとも徐福本人か」
父様の呟きに沈黙が生まれ、この場誰もが父様を見つめた。徐福本人?
穏「あのー、さすがに徐福本人はあり得ないのではないでしょうか?
徐福と言えば、始皇帝の代に居た人間の名前ですよ?
始皇帝の代から今日まで何百年経ったと思ってるんですかー」
穏さんの言う通りだ。徐福と言えば、もうほとんど伝説上の人物だ。
そんな人が今も生きていたら、それは…
冥琳「そんなものが生きていたら、それはもう人間ではないだろうな。
だからあり得ない……と、言いたいところなのだがな」
冥琳さんは頭を抱えてため息を吐いていた
祭「わしらは、今まで数々のあり得ない事象を見てきた。零士もまた然りじゃ」
そうか。異能…魔術や妖術の力があるのか
蓮華「零士、魔術に不老不死なんて術、あるのかしら?」
蓮華さんが聞くと、父様はまっすぐ蓮華さんを見つめて、口を開いた
零士「不老不死はない。魔術師、ひいては人間の永遠の課題である不老不死には、
誰一人としてたどり着けなかったはずだ。そんなものがあれば、人類は人間をやめている」
父様は断言していた。なら、これで徐福本人という選択肢は…
ん?でもなんで父様は、徐福本人なんて発想に?
冥琳「不老不死はない。だが、不老不死に近い術はある。私にはそう聞こえたが?」
零士「さすがだ冥琳ちゃん。不老不死はないが、それに限りなく近い術式はある。
だが、その条件はなんというか、非人道的なんだ。悪魔と契約するとか、
何百人もの人間をかき集めて、その人間の生命力を吸い上げるとか。
そういったものを経て、寿命を引き延ばしたり、老化を防いだり、肉体を強化するんだ」
明命「そんな事があり得るのですか?」
零士「まぁね。だから、僕のいた時代では既に禁術扱いになっているんだ。
人一人を長命にさせるのに、犠牲が多すぎるってね。
未来では失われた術式だけど、この世界ならまだ生きているかもしれないね」
この世にあり得ない物はないということなのかしら。
咲希がよく言うように、人間が想像できることはその気になればできるか
雷蓮「じゃあ徐福本人だったとして、徐福は不老不死の研究をほとんど成功させていた、と言うことになるのかしら?馬鹿げてるわね」
本当に徐福本人ならの話だけどね
雪蓮「なーんかキナ臭くなってきたわねぇ。
だいたい張譲のせいとか、そんなオチじゃないでしょうね?」
零士「それはないでしょ。張譲は咲ちゃんがしっかり解体してたし」
張譲と言えば、17年前の『晋』にとっては宿敵だったらしい。
三国が大戦をしている間、『晋』は張譲と戦い大陸を護っていた。
その張譲の最期は、咲夜さんに何重にも分割されて死んだとか。
咲夜さん、超怖ぇ
雪蓮「それもそっか。それにしても、徐福に梁山泊に、行方不明になってた武将かぁ。
なんだかいろいろめんどくさ…」
零士「ちょっと待った。梁山泊?」
父様が珍しく驚いた表情で母様に聞き直した。りょうざんぱく?ってなんだ?
雪蓮「え、えぇ。知ってるの零士?」
零士「あまり詳しくはないけどね。この大陸には、梁山泊って山があるんだけど、
そこに武術を得意とする集団がいるんだ。その人たちが梁山泊の名を借りて、
腐った政権を打倒するって話があるんだ。
だが、それは確かこの時代よりずいぶん先の話だったと思っていたんだけど、
本当に梁山泊と名乗ったのかい?」
雪蓮「えぇ。梁山泊の名においてとかなんとか。ちなみにその子は女の子で、
鈴々が使っているような蛇矛に似た矛を使っていたわ」
零士「蛇矛……その子はもしかしたら林冲かもしれないな。槍や矛などの棒術の名手だ。
本にはかなりの強者だったって記されていたはずだよ」
雪蓮「そうね。私と思春の二人掛かりでも、押し切れなかったわ」
そんなに強い人がいるの?
零士「そうか…ならあの弓を担いだ子は、もしかしたら花栄か?」
蓮鏡「ステージや隠れ家を爆破したやつね?花栄というのね…」
花栄…次に会ったらボコ殴りにしてやる。ホントに間一髪だったんだから
清琳「今回の件、幸いだったのは民間人の犠牲者がいなかったことですが、
敵の兵力や武力を鑑みるに、こう言ったことはこれっきりの方が良いでしょう」
温「ですねー。どうも私達は、徐福を軽視し過ぎていたようです。
祭りの警備案も何故か漏れていたみたいですし。
今後は、もう少し慎重に行動した方が良いでしょう」
亞莎「そうですね。早速、思春さんと打ち合わせをして、訓練の調整をしようと思います」
思春「孫呉に忠誠を誓わせ、あだなす敵を全て排除できるよう仕上げます」
蓮華「頼むわ」
清琳、温、亞莎さん、思春さんの提案に蓮華さんが力強く頷いた
零士「今回の件、魏と蜀にも報告するべきだろう。
幸い、許昌には一刀君が来ているから、一刀君には僕の方から伝えておくよ」
蓮華「すまない。私達の方でも、桃香と華琳に伝えておくわ」
こうして、会議は無事に終わっていく。会議が終わる頃には、皆の瞳に炎が宿っていた。
敵を前にし、眠っていた虎が目覚めたようだった
それから数日後、母様と父様は呉の訓練メニューを組み上げ、
必要な情報をまとめ、許昌に帰ることになった
雪蓮「それじゃあ、私達は行くわね。蓮華、しっかりやりなさいよ。
シャオ、蓮華を支えてあげてね」
蓮華「はい。姉様もお気をつけて」
小蓮「まっかせて!お姉ちゃんは私が守ってあげるわ!」
母様は蓮華さん、小蓮さんに挨拶を済ませていた。父様は祭さん、思春さんと話していた
蓮鏡「じゃあね、みんな。また必ず会いましょう」
私は私で、雷蓮、季春、閃命、亞真、彩、清琳、温に挨拶を済ませる
亞真「はい!今度は蓮鏡様も、一緒に舞いましょう!」
閃命「そうですね!またお会いできることを、楽しみにしています!」
彩「道中気をつけるんだぞ。ま、いらん心配だろうがな」
温「あははー、大陸最強の一家ですからねー。蓮鏡様、またいつの日かー」
清琳「お前が居ると、トラブルが絶えない気がせんでもないがな。またこい」
雷蓮「世話になったわね蓮鏡。今度は平和な空の下で派手な事しましょう」
私は雷蓮と握手する。力強く握られた手からは、家族のような絆を感じた
蓮鏡「……言うのが遅れたけど、殻、破れたわね、季春」
私は季春に向き直り、頭を撫でてやる。
父様や咲夜さんみたいに、上手く撫でてあげられているかしら
季春「その、いろいろと世話になった。あなたのおかげだ」
蓮鏡「別に大した事はしてないわ。季春、あなたが次代の呉を護っていくのよ。
だからこれからも、しっかりしなさいね」
私が微笑むと、季春は顔を赤くし、下を向いてしまった。
まだまだ少し恥ずかしがり屋なところはあるが、まぁなんとかなるだろう。
あの大会の成果の一つね
蓮鏡「じゃあみんな、次会う時まで死なないこと!必ず徐福の連中をぶっ潰すわよ!」
孫呉の子ども達の気持ちが一つになる。
きっとこの子達なら、いくら敵が巨大であろうと飲み込む事ができる。
だって、虎の子は虎なのだから
雪蓮「うーん!ただいま許昌!」
それから馬車に揺られ数刻。許昌に着いたのは夜だった。
許昌は呉に比べて少し涼しいわね。ところで…
蓮鏡「父様、ずいぶん顔が青いけど、どうしたの?」
家に向かう道中の父様の足取りは妙に重く、また冷や汗を大量に流していた。寒いのかな?
零士「え、あ、うん、その…ちょっと大変な事を思い出したと言うか…」
雪蓮「呉に忘れ物でもしたの?」
零士「忘れ物と言うか、忘れていたというか…」
蓮鏡「どうしたの?父様にしては妙にハッキリ…」
ん?父様がハッキリしない時?時々あるけど、それって確か咲夜さん関係の事よね?
父様、咲夜さんには頭が上がらないからなぁ
蓮鏡「まさか、呉に長期滞在する事を、咲夜さんに連絡してないとか?
あっはははは!まさかそんな事あるわけないわよね!」
雪蓮「えー?それはないでしょー。どんだけ時間あったと思ってんのよ!」
私と母様は吹き出してしまう。だけど父様は、視線を逸らして汗を流すだけだった
雪蓮「……え?嘘でしょ?」
零士「……あぁ…訓練に夢中になるのは良くないなぁ…」
父様は遠い目をしていた。瞳には正気が感じられない。
すぐそこには『晋』が見えていて、店から妙な雰囲気が視える気がする。
おかしいなぁ、私には司馬家が持ってるような特別な眼なんてないのに…
雪蓮「おっとちょっと野暮用を思い出してしまった。蓮鏡、ちょっと付き合ってくれるかしら」
蓮鏡「わー、それは仕方ないわね。付き合うわよ、母様」
零士「え!?ちょっと待って!ねぇ待ってよ!待ってください、お願いします!独りにしないで!?」
私と母様は父様を店の前に置いて来てしまった。
その直後、後ろから父様の悲痛な叫び声が聞こえた気がした
雪蓮「うわぁ…めっちゃ地鳴ってる。あ、零士の服が細切れに。
うわっ、雷まで落ちた。あれは月の仕業ね」
蓮鏡「ま、父様は自業自得として…あの人達へのお供え物、用意しとこう」
あとがき
どうも、夏になって妙に忙しい桐生キラです。
以前は2,3日に一話投稿していたのに、夏に入り週一ペースになって申し訳ないと感じております。今後も、もしかしたら更新が遅れる事があるかもしれない事をご了承ください
さて、孫紹伝、いかがだったでしょうか?
未来設定ということもあり、とっつきにくさは多々あると思いますが、今後もこんな感じで話を進めていく予定でございます。
三国同盟後に現れた徐福と言う人物と梁山泊。こいつらに立ち向かう英雄の子ども達。
そんな感じのストーリー展開です。中二設定満載です(笑)
ちなみに、このお話は前作ほど長くなる予定はありません。あくまで蛇足なので(笑)
この話を書く上で一番大変なのは名前、特に真名です。
孫登やら甘述は呉√のエピローグにいるので、いつ真名が判明するかびくびくしながら、こんな感じかなって感じで名づけました。この作品において華雄さんの真名を書かないのはその関係もあったりします(笑)
もし何か要望があれば、こんな真名どうかなっていうのも募集します(笑)
今後出てくる予定のオリキャラは…
曹丕、甄姫、劉禅、関平、星彩になっております
コメントにもありました時系列について
現在書かせてもらっているもう一つの作品「リリカルHS」にて、幽霊騒動のあった時期に展開しているお話です。コメントしてくださったvavavaさん、大正解です!
この作品においての皆さんの年齢について
王異:17歳
司馬昭、司馬師、黄柄:16歳
夏候覇、孫紹、孫登、甘述、陸延、周循:15歳
楽綝、張雄、呂琮、周邵:14歳
璃々さんも含めた恋姫†無双原作組:18歳以上
っとなっております。18歳以上って便利な表記ですよね。
どんだけ歳とった祭さんでも18歳以上なんですから(笑)
次回の真・恋姫†無双 裏√SGは…
孫呉編の裏であった許昌での日常。原作終了17年後の月さんと詠さんの休日風景に迫る!
書いていて、やっぱり日常編の方が書きやすいなと感じております。
期待しないで待っていてください(笑)
先に「リリカルHS」の方を完結しようと考えておりますので、SGの更新はしばらく先になります。読んでくださる方々、もうしばらく更新が止まりますが、必ず完結させますので、少々お待ちください。大変、申し訳ありません!
それでは、また次回に!
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こんにちは!
Second Generations孫紹伝其五
孫呉編はこれにて終幕