No.709031

真・恋姫†無双 刀蜀・三国統一伝 番外編 軍師も武官も竜も入り乱れ交流戦! 決着編

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2014-08-15 23:38:33 投稿 / 全21ページ    総閲覧数:4027   閲覧ユーザー数:3180

まえがき コメントありがとうございます。皆様、四ヶ月振りです。というか暑い!syukaです。皆様、体調にはどうぞお気を付けください。8月に突入しましたね、早いものです。暖かくなってきました。・・・ぬくぬくヽ(;▽;)ノ というか暑い。だが胸を張って言いましょう。完全防備で徒歩2分のコンビニに行かなければならない真冬よりはマシだと! さて、野球ですね。勝利の切符を掴むのはどのチームになるのか!というかまともな試合になるのか!?それではごゆっくりしていってください。

 

 

「というわけで、作戦会議を始めます。」

 

 チーム分けが終わってから早くも一日が経った。本当は昨日のうちに決めたかったんだけど・・・、

 

「ご主人様・・・お腹、空いた。」

 

 鶴の一声ならぬ恋の一声により時間を置くことになった。毎度のことだから皆気にしてないけどね。明里にポジション、打順の重要性などなどは教えたつもりだ。まぁ、とりあえずは俺の部屋でポジション決めから始めようという話になった・・・流石に、一部屋に十人は狭いなぁ。

 

「はい!」

「ん? 百合、どうしたの?」

「私、投手やりたいです!」

「百合が投手・・・かぁ。」

 

 ピッチャーライナーとかあるからなぁ・・・出来れば外野かDHにしたいんだけど・・・。

 

「それでは私が遊撃手に回りましょう。 いざという時は私が対処しますので。」

「う~ん、それなら・・・お任せしてもいいですか?」

「はい。」

「お願いします。 じゃあ俺が捕手やるから・・・他にやりたい守備位置はある?」

「球があまり飛んでこないとこ。」

「同じく。」

「私はご主人様に従いますよ。」

「で、できればご主人様の側の方が・・・ごにょごにょ。」

 

そうだよなぁ。先にこの四人だよな。明里の俺の側というのは叶えられそうにないけど。

 

「そうだなぁ・・・じゃあ、明里が一塁手で詠が中堅手。 薔薇が三塁手。 恋が二塁手で零ちゃん、左翼手。 鈴、右翼手でお願い。」

「ご主人様、私は・・・。」

「月はDH・・・指名打者。」

「指名打者?」

「守備がなくて打つだけの選手。」

「あー! 月ばっかりずるーい! 一刀! 私もそれがいい!」

「そう言われても・・・。」

「薔薇ちゃん、文句言ったらめっ!だよ。」

「うっ・・・。」

 

 言い返せずにしょぼんとする薔薇。まぁ・・・相手チームの面子が面子だから文句の一つも言いたくなるのはわかるつもり。

 

「大丈夫ですよ。 いざとなれば協様も私がお守りいたします。」

「・・・お願いね。」

「異論がある人はいる?」

「一刀。」

「? 零ちゃん、どうぞ。」

「野球・・・面白い?」

「面白いよ。 打ってよし、守ってよし。 他の選手を見るのも勉強になるし、燃えるものがある。 真似できるならやってみるのもアリかもね。」

「ふむ・・・鈴。」

「なんだ?」

「外出る。 特訓。」

「ほう、お前がやる気になったとは珍しいな。」

「面白そう、一刀のお墨付き。」

「私もやりたいです! 薔薇ちゃん、行くよ~♪」

「あぁ、お姉様! 引っ張らないでください! 自分で歩けますから!」

 

 あっという間に外に出ていく四人。・・・まだ打順決めてないんだけどねぇ。

 

「打順は私たちで決めておきましょう。」

「そうだね・・・って、俺の心を読まないでください。」

「一刀様は分かりやすい御方ですから。」

 

 

ふふふっと微笑む管轤さん。そんなに分かりやすいのか・・・? ・・・???

 

「一刀、分かりやすい。」

「(こくっ)」

 

 零ちゃんに恋まで・・・

 

「あんたはすぐに顔出るんだから当然じゃない。」

「うっ・・・もしかして、月にも分かられてるの?」

「わ、私は・・・その・・・いつもご主人様のことを見てますから//」

「~~っ、あ~もう! 月は可愛いな!」

「へぅ~//」

「あ~! あんた! 月に気安く抱きつくな! 離れろ~!」

「ただ今、月成分を補給中なんで無理でーす♪」

「へぅ//」

「ぐぬぬっ、引っ張っても取れない・・・。」

「いつも通りですねぇ。」

「月ちゃん、羨ましいなぁ。 私もご主人様にひしって・・・。」

「・・・漫才?」

 

 こんなやりとりをしているうちに時間が経ち、打順を決め終わったのは日が暮れる頃まで掛かったのだった。

 

・・・

 

 そんなこんなしているうちに早くも二日経ち、試合当日。今日の朝食は願掛けの意味合いも兼ねて俺と母さん合作のカツ丼を作った。久々の母さんとの料理はやはり楽しいわけで・・・作りすぎてしまった。ま、まぁ・・・軍師の子たちや桃香、月など少食の子達がいても鈴々と恋、それに何気によく食べる祝融さんのお陰で残るということもなく完食。婆ちゃんがどこか悔しげな表情を浮かべていたのが気になるが・・・。っと、とりあえず食器の片付けも終えた上で、試合開始一刻前。俺たちは母さんと婆ちゃんに呼ばれ、庭に集まっていた。

 

「皆に渡したい物があるの!」

「渡したい物?」

「影刀! 早く出して♪」

「はいよ。」

「??」

 

 爺ちゃんが持ってきた大風呂敷に包まれていたもの、それは・・・

 

「体操着と・・・ブルマ。 しかも名前入りのゼッケン付き・・・。」

「ちなみに、私のお手製よ! 紫苑と桔梗はこっちね。」

 

 どこから取り出したのか分かんないけど、赤いジャージが二着出てきた。

 

「流石に二人にあれはきついでしょうから、別に用意したんだけど。」

「助かりました。 璃々の前でこの格好に着替えろと言われましても抵抗がありましたから・・・。」

「珍しいな。 紫苑が恥ずかしがるなど。」

「桔梗、あなたは私をどのように思っているのかは知らないけど、人並みの恥じらいは持ち合わせているわよ。」

「ではお館様を誘惑するのは別問題ということじゃな。」

「当然じゃない。」

 

 当然なのか・・・。ま、まぁ一人の男として見られる分には嬉しい限りなんだけどさ・・・皆大胆すぎるの!そりゃ全員が全員というわけではないけど、それこそ紫苑に桔梗でしょ。桃香に清羅に鈴に蒲公英に星に・・・人の目を少しは気にしてください!

 

「一刀、一刀。」

 

? こっちにおいでと母さんに手招きされるまま側に向かう俺。

 

「一刀はどれがいいかしら?」

「・・・。」

 

 

 母さんが懐から大事そうに取り出したものは・・・身の覚えのある体操着。・・・確かに俺のだが・・・

 

「明らかにサイズ合わないのあるよね。」

 

「全て一刀のものってことに変わりはないわ♪」

 

 ・・・幼稚園時代のものから聖フランチェスカのものまで一式揃ってる。

 

「よく見つけられたね。」

「一刀のものは全て保管されているもの。 捨てたものなんてないわ。」

「・・・。」

「ほら、懐かしいでしょ。」

 

 俺の幼き頃の写真。・・・というかアルバム?

 

「何で持ってきたのさ?」

「え? 女の子たちも興味あるみたいだったから。」

「わぁ~♪ これ、ご主人様? 可愛い~♪」

「・・・はっ!?」

 

 いつの間にか俺の隣には桃香が!

 

「ちょっ! まっ!」

「ふむ、寝顔に幼さが残っているとは思っていたが、この頃の名残か。 納得した。」

「いつの間に!?」

 

 あれよあれよという間に、俺のアルバムはみんなの手に・・・。たらい回し状態だ。

 

「ほ、ほら! 野球するんでしょ! 早くしようよ!」

「一刀さん、私にも見せてください!」

「お姉様、一緒に見ましょう。」

「わ~い♪」

「・・・、もういいよ。 好きなだけ見ていいよ・・・。」

「一刀様・・・申し訳ございません。 菊璃様をお止めできず・・・。」

「海未さんのせいじゃないですから・・・はぁ。」

「なんだぁ? 一刀、しけたツラしてんじゃねぇか! そんなんだと運気が逃げんぜ?」

「かずくん、笑顔だよ笑顔! ほら、いつもみたいに女の子たちとイチャイチャしてきなよ~。」

「咲夜叔母さん・・・蕾姉ちゃん・・・。 全然フォローになってない! とりあえず、母さん。 フランチェスカの体操着貸して。 着替えてくる。」

 

 俺は母さんから体操着を受け取ると部屋へ向かった。こうなったら・・・目一杯楽しんでやる!写真のことなんて知るか!後は野となれ山となれだ!・・・そうならなきゃいいなぁ。部屋でちょっぴり項垂れた一刀なのであった。

 

・・・

 

「兄貴、おせぇじゃねぇか。」

「・・・なんで蒼は体操着じゃないの!?」

「俺のが用意されてなかったんだよ。 っつうか、朱里嬢ちゃんや皇帝姉妹っ子ちゃんたちはともかく、武官たちは普段からあんだけ動き回れんのに着替える必要があんのか?」

「・・・それを早く言ってよ! 全然気付かなかったよ!!」

「はぁ・・・んなとこで天然発言が出てくるたぁ思わなかったぜ。」

 

 野球するなら・・・というか、婆ちゃんたちの口車に上手く乗せられてしまった。

 

「二人とも、来るのが早いな。」

「お、艶火。 ・・・その箱は?」

「これか? これは医療箱だ。 武官どうしの模擬戦ならともかく、今回は運動に不慣れなものも参加だからな。 こういう時は近くに置いておいたほうが対処しやすいからな。 わざわざ医務室に移動するのも面倒だろう。」

「確かに。 流石は五斗米道、医者の鏡だな。」

「世辞を言われても何も出ないぞ。」

 

 そんなことを話していると、城の方から女の子達が出てきた。どうやらようやく着替え終わったみたいだな。

 

「ご主人様~♪ えい♪」

 

 いの一番に俺に抱きついてきたのは桃香。なんとまぁ、嬉しそうな顔しちゃって。

 

 

「ご主人様、似合う? 似合う?」

「うん、可愛いよ。」

「えへへ~♪」

「なんや、桃香はえらいご機嫌やな。」

「だって、最近は政務が忙しくてご主人様と一緒にいれるの少なかったんだもん。 今日はいーっぱい甘えとかないと♪」

「せやなぁ。 うちかて負けてられんわ! 一刀、うちの活躍よう見とき!」

「そうだね。 霞の勇姿、拝ませてもらうよ。 俺も頑張らないとな~。」

「そういう一刀は余裕綽々やな。」

「霞ちゃん、頑張ろうね!」

「応!」

「(じろーーー・・・・・。)」

 

 ・・・なんだろう、朱里と雛里から異様に視線を感じるんだが。

 

「(たゆんたゆん)」

「(ぺたぺた)・・・敵!」

「敵です!」

「?? 確かに朱里ちゃんたちと私は組違うけど・・・。」

「むむむ~えいっ!」

「たぁ!」

 

 朱里と雛里が両腕にしがみついて来た。

 

「どうした? 二人も甘えたりないのか~?」

「・・・ご主人様の反応がさっきと違います。」

「・・・もう少しあれば私だって、ごにょごにょ・・・。」

「ふむ、これが胸囲格差というやつじゃな。」

「卑弥呼、それを口にするのはタブーよん。 けど、私たちだって胸囲は負けてないわ。 このムチムチな体で影刀ちゃんたちに抱きつけばデレるはずだわ! ぐふふふふ♪」

「貂蝉! それは妙案じゃな! では早速・・・」

 

 談笑している霧刀と影刀の背後からにじり寄る漢女二名。

 

「・・・? 何やら騒がしいのぉ。」

「・・・っ!? 父さん、背後です!」

「? げぇ!?」

 

 ドドドドドドドドドド

 

「かげっち~~~、私の熱い抱擁を受け止めて~♪」

「霧刀殿! お主のデレ顔、頂戴いたす!」

「くるなーーー!!」

「霧刀! あやつらを止めんか!」

「無茶言うなぁーーー!!」

 

 試合前に体力を使い果たした北郷親子だったとさ。その後二人がどうなったか・・・それを知るは本人たちのみ。

 

・・・

 

「一刀よ、儂は思っとったんじゃ。 是非、子供には大○ーグボールを投げられる選手に育ってほしいと!」

「・・・爺ちゃん、いきなり何言ってるのさ。」

「巨人の☆じゃよ。 知らんか?」

「いや、知ってるけどさ・・・。」

 

 部隊の子達が試合出来るように整備している間、俺と爺ちゃんと愛紗でのんびりしていると隣に座っている爺ちゃんが変なことを言い出した。

 

「ご主人様、大○―グボールとは一体何ですか?」

「えーと・・・なんて言えばいいのかな? 野球って投手が球を投げるじゃん。」

「えぇ。」

「その投手が投げる凄い球・・・誰も打てないような球ってこと。・・・でいいのか?」

「???」

「まぁ、愛紗も投げるとそれぐらいのものを投げられるだろうからさ。 あんまり気にしなくていいよ。」

「え、えぇ。 ご主人様がそうおっしゃるのでしたら。」

「最初は霧刀にやらせようか覚えさせようと思ったんじゃがな、ある程度年齢を重ねとったんで拒否されてしもうたのだ。」

「そりゃそうだ。」

 

 

 誰だって拒否するぞ・・・。

 

「で、お前は覚えとらんかもしれんが、一刀がうちに泊まりに来とったとき卓袱台までひっくり返したんじゃぞ・・・。」

「なんでそこまで・・・。 で、どうしたの?」

「・・・そこで一刀が泣き出してしまったからのぉ、美桜に殺されかけた。」

「そりゃ爺ちゃんが悪い。」

「またあんなことしでかしたらほんとに殺るわよ♪」

「おわっ!?」

 

 背後から婆ちゃんが抱きついてきた!?

 

「もうせんわい。 美桜を相手しとったら体がいくつあっても足らん。」

「あら、良く分かってるじゃない。」

 

 ちなみに、影刀は自力で大○ーグボール育成ギブスを作ったそうな。しかし、美桜に木っ端微塵に破壊し尽くされたのはまた別のお話。

 

・・・

 

 ようやく始まった・・・。総当たり戦ということで、初戦。母さんのとこvs父さん、爺ちゃんのとこか。試合直前に各チームのオーダーが発表されるから、各チームの頭脳役が誰かによって作戦も大きく異なるだろう。

 

「母さんのとこは人数の都合上、雛里がベンチか・・・。それもそうか。」

「たんぽぽ! 容赦しねぇからな!」

「蒼兄様、翠姉様はそっちにいても蒲公英だって容赦しないんだから!」

「はいはい、二人とも落ち着け。」

 

 牽制しあう妹たちを宥める蒼。そこに審判の馬騰さんが割り込む。

 

「お前たち、静かにせんか!!」

「うっ!」

「あいたっ!」

 

 容赦なく脳天に叩き込まれた拳骨。・・・あの音、大丈夫か?観客席まで聞こえてきたんだけど。

 

「お袋! 少しは加減しろよ!」

「・・・もう一発もらいたいかい?」

「ごめんなさい!」

 

 母強し。この一言に尽きるな。

 

「ぶー・・・殴んなくてもいいのに。」

「蒲公英、お袋に聞かれたらもう一発来るぞ。」

「・・・っ。」

 

 これも馬家の日常風景なんだろう。

 

「翠さんたちの家族は賑やかですね~。」

「姉様、あれを賑やかと表現するのは違うような・・・。」

 

 観客席の俺たちは試合前の緊張感なんて無縁のようだ。そんな話をしているうちに時間が過ぎ、試合が始まった。

 

~~~第壱試合・・・壱組vs弐組

 

「母さん側の投手が風香姉さん。父さんのとこは父さんなのか。」

「静空さん、よろしくお願いしますね。」

「えぇ。」

「静空が捕手か。 これはなかなか点が入らんな。」

「そう?」

「あいつは我らの中で最も頭が回るやつ切れ者。 人間で言うとこの軍師にあたる立ち位置だな。」

「竜の軍師か・・・これは手強いね。」

 

 

 あとで雛里に色々教えてもらうよう言っておこう。同じチームだし、話す機会も結構あるだろうから。

 

「よーし! ガンガンいこうぜ!」

「猪々子さーん、頑張ってきてください!」

「ガッテン承知!」

 

 一番、猪々子がバッターボックスに立った。猪々子が一番・・・どちらかというと四番気質な気がするけど、まぁ同じチームに咲夜叔母さんがいるしなぁ。仕方ないのか。というか猪々子が打順は気にしなさそうだし、大丈夫だな。

 

「よーし!麗羽様んとこまでかっ飛ばしてやるぜー!」

 

 一球目、風香姉さんが球を投げた。・・・?風香姉さんのわりに、それほど速くないな。ということは・・・。

 

「こんなの、ちょろいちょろい!」

 

 という猪々子。・・・だが、

 

「・・・あれ?」

 

 真芯に捉えたと確信を持った猪々子のバットは無情にも空を切った。

 

「ストラーイク!」

「球が落ちた!?」

「ふふっ、猪々子さん。 球はまっすぐだけではないのですよ。」

「・・・というか猪々子、変化球について覚えてないよな。」

「わ、私は教えましたよ!」

「別に疑ってないって。 ただ・・・まぁ、猪々子のことだから。 それが分かれば持ち前の反射神経で対処できるだろう。・・・多分。」

 

 2球目。風香姉さんが球を放る。これは明らかなボール球だな。

 

「ふんっ!」

 

 ・・・ん?振った・・・?。

 

「反射神経で対処できるのではなかったのか?」

「いや、多分・・・。」

「た、たいむです!」

 

 朱里が審判に対して待ったを掛けた。待ったを掛けられた猪々子は頭上に?マークを浮かべる。あれはタイムを掛けられたか分かってないな。

 

「猪々子さん、何であの球に対して振ったんですか? 私にもあれはボール球だと判断できたのですが・・・。」

「へ? 球が来たら遠くに飛べばいいんじゃないの?」

「猪々子さん・・・。」

 

 猪々子・・・あれだけ斗詩に補習してもらってたのになぁ。離れた応援席では斗詩が溜息を吐いていた。

 

「まぁ、猪々子の考えも分からんではないな。 球が飛んできたら可能な限り遠くまで打てば良いだけのことだろう?」

「猪々子のあれは考えと言うのか・・・まぁそれはとにかく、猪々子にはあれが一番だね。 うだうだ考えるより、でかいの一発狙っていこうみたいな。」

 

 朱里も説得を諦めたのか、ベンチへと戻っていったところで試合再開。

 

「さぁ、どんどん来いや! どんな球でも場外までぶっ飛ばしてやるぜーー!」

 

 2ストライクに追い込まれてもめげない猪々子には感心するよ。追い込まれているという自覚があるのかということは置いておいて。

 

「猪々子さんのそういうまっすぐなところ、嫌いではありませんわ。」

 

 三球目。ストライク一つを狙ったど真ん中ストレートだ。先ほどの変化球を見ているせいか、より勢いを感じる。だが・・・

 

 

「よっしゃ来たーーー!」

 

 まぁ、猪々子には緩急の差なんて関係ないわけで。猪々子の豪快なひと振りは球を真芯に捉え、容易く場外まで飛ばした。というか見事に麗羽のとこまで飛んでいった。

 

「あらら、打たれてしまいましたか。」

 

 そう言うも、あくまで想定内といった様子で動じた様子はない風香姉さん。それは静空さんも同じようで、様子見といったところだろうか。そんなことを考えているあいだに猪々子がベースをひと回りしホームに辿りついた。

 

「どうだ、見たかー!」

「猪々子さん、お疲れ様です。」

「よーし、蒲公英も頑張るよー!」

 

 蒲公英が気張りながらもバッターボックスへ。だが、それ以上点はやらんと言わんばかりに風香姉さんは蒲公英を三振に抑えた。三番の父さんも2ストライク3ボール、3ファールまでは粘ったものの、結局は三振に抑えられてしまった。

 

「・・・風香の投球は見事なものだ。 一打席目にして相手の癖、視線、バットの振りで特徴を捉え球を選んでいる。コントロールも然り。 だが・・・」

「なんでしょう?」

「まったく、平然としていながらも相手の苦手なコースをきちんと把握しているとは。 恐れ入った。」

「恐縮です。」

 

 あの父さんを三振に抑えたか。それにしてもあの静空さんの洞察力・・・恐ろしいな。どこまでも考えを見透かされているような。あのタイプの人って考えが単純・・・シンプルな人の方が対処しやすいんだよな。鈴々とか猪々子とか。桃香や麗羽も違う意味で考えがシンプルだけど。

 

「何も考えてないの間違いではないのか?」

「そこは分かってても口に出さないのが優しさだよ。 口に出したら桃香あたりが拗ねるからさ。」

 

 参組の桃香と麗羽の手綱は斗詩と白蓮に握っててもらおう。うーちゃんには燼、美以には祝融さんってところか。ミケは基本的に美以にくっついてるから大丈夫。・・・うん、特に問題はなさそう。

 

「かぁ~! やっぱ生の野球観戦しながら呑む酒はうめぇな~!」

 

 あ・・・うるさく言う人がいないことをいいことに真っ昼間から酒を仰いでいる人発見。もう、美彩姉はぁ・・・目を離すとすぐにお酒のむんだから。とりあえず、海未さんに釘を刺してもらおうかな・・・。海未さんがいる応援席に視線を向けると既に気づかれている様子だ。俺と視線がバッチリあったし。というか俺の方に歩いてきた。

 

「美彩のことでしたら大丈夫ですよ。あの程度で呑まれるような彼女ではありませんので。 ・・・もう少し自重してくれとは思いますけどね。 言っても聞く耳を持ちませんし・・・はぁ。」

「海未さんがそう言うのでしたら俺からは何も言いませんけど・・・昔から変わりませんね。」

「えぇ。 ・・・ふふっ、酒を呑みたいと言い出さなくなったらそれはそれで心配しますけどね。」

「そうですね。」

 

 海未さんと談笑しているうちに攻守交代。マウンドには爺ちゃん、捕手は父さんか。

 

「さて、締まっていきますよ!」

「ふん、言われんでもやってやるわい。」

 

 やる気を入れる父さんたちだが・・・

 

「ふにゃぁ・・・。」

「にゃーーー!!」

「トラさーん!? そっちじゃないですよ~~~!!」

 

 既に睡魔に負けそうなシャムに、守備位置でじっとしていられないトラに手を焼く朱里・・・大丈夫か?

 

「さっきは何にもやることなかったから暇だったのだ!」

 

 

 相手側の守備などお構いなしにバッターボックスへ立つ鈴々。

 

「おじちゃん、早く投げるのだ! 鈴々がかるーくぶっ飛ばしてやるのだ!」

「ふふ、童め。 儂が一刀に伝授しようとして美桜に半殺しにされたあの球で・・・うっ。」

 

 言わなきゃいいのに・・・。婆ちゃんが殺気を帯させた目で爺ちゃんを見てるじゃん。

 

「まぁよい。 こっそり練習して完成させた大○―グボール! とくと味わうがよいわぁ!!」

 

 おぉ、様になってる! 確かにキレのあるいい球だ。なんだけど・・・。

 

「にゃにゃにゃーーー!!」

 

爺ちゃんの大(以下省略)はカキーンと気持ちの良い音ともに外野を軽く飛び越え場外へ運ばれた。

 

「にゃはは♪ 説明が長ったらしかった割にはちょろかったのだ!」

 

 唖然としている爺ちゃん。なんとも言えない表情をしている・・・鈴々、これ以上の追い打ちはやめてあげて。

 

「・・・えぇい!! なんじゃなんじゃ! やはりこっちにも驚いてくれるおなごはおらんのか! ふぇええん、打てないよー。 とか、おじ様すごーい! とか言ってくれるおなごはおらんのか!! 管轤にしろ祝融にしろ美桜にしろ怪力しかおらんかったもん! ちょっとくらいおおなごに夢見てもいいじゃろ!?」

「・・・。」

 

 う、うわぁ・・・婆ちゃんたちの視線が氷点下以下になっちゃってるよ。爺ちゃん、あとでフルボッコパーティだろうな。南無。

 

「鈴々さんすごいですね~♪」

「そうですね・・・とても真似できそうにないわ。 一刀、私ももう少しくらい鍛えたほうがいいかしら?」

「薔薇は今のままでいいよ。 ふわっとしてて可愛いし。」

「なっ!// ば、馬鹿! 今言うことじゃないでしょ!//」

「あはは。 お~、照れておる♪ あいてて。」

「可愛いですね~♪」

「ね~♪ あたた、叩かないでって。」

「ね~♪ じゃない!// もう//」

 

 爺ちゃんがうなだれているのを他所に、薔薇にじゃれつかれる俺だったとさ。・・・? 照れ隠しか。まぁ、可愛いからどっちでもいいか♪その後・・・五回表。

 

「蕾! セカンドに投げなさい!!」

「え、えと・・・えーーーいーー!!」

「これ! 走者に向かって投げる三塁がどこにおる・・・あだっ!?」

「え~~? ランナーにボールを当てればいいんじゃないんですか~~?」

「たっちあうとっ!!」

「う~~、今日は厄日じゃ・・・。」

 

 爺ちゃんの災難が続いたり・・・七回裏。

 

「はい、姉様。あうとーー。」

「・・・はっ!? だって球は投手の清羅が持ってるはず・・・。」

「実は渡してなかったんだよ~~。 渡すふりして蒲公英が持ってたのでした~~にしし♪」

「くぅぅ~~~!! 正々堂々やりやがれ!!」

「蒲公英の中では隠し球も正攻法だも~ん。」

「ふふっ。」

「姐さんの入れ知恵だろ、あれ。」

「あら、人聞きが悪いですね。 発案は蒲公英ちゃんで、私がちょろっとコツを教えただけですよ。」

「どうだか・・・。 蒲公英と姐さんの組み合わせ、考えがどこにあるかまったく読めねぇ。」

「蒼、修行が足りませんよ。」

 

 

 その後、調子を崩された爺ちゃんは父さんのリードを無視。というか自棄だろう。暴投が祟り、終いには母さんの二塁打からの静空さんのスリーランホームランでゲームセット。

結果:6-2で母さんチームの勝利。外野に星、翠、霞。内野に小回りの効く鈴々と胡花を置いたことで守備は万全だった。

 

「おい爺さん! ありゃどういうことだ!! オレの活躍の場が全然なかったじゃねぇか!! ポンポン打たれやがって!」

「え、えぇい! 皆まで言うでない! 儂じゃって、儂じゃってなぁ・・・。 ・・・・・・。」

「か~げ~と~? 試合中に私が怪力だどうのって聞こえたんだけど~♪」

「み、美桜!? あれは言葉の綾で・・・管轤に祝融まで、怪しげな笑みを浮かべながら儂に近づくでない!!」

「影刀様、どうやら反省なされていないようですね♪」

「なら影刀様でいう私たちの“怪力”。体で味わってもらわないといけませんね♪」

「・・・(にじり・・・)逃げっ!(がしっ)」

「られると思ってないわよね~♪ 一刀~、薔薇ちゃんたちにはちょ~っと刺激が強いから目と耳は抑えておいてあげてね~♪」

「・・・こ、これ! 霧刀、しれっと逃げるでない!」

「俺には関係ないからさ。」

「この白状者~~~!! にぎゃぁぁぁぁぁあああああ~~~~~~!!!」

 

 薔薇たちの教育上よろしくないと判断したので、俺と鈴でしっかりガードさせていただきました。・・・ちなみに、爺ちゃんは婆ちゃんたちからのフルボッコにされた後、ノックアウト。見事に燃え尽き、今日からお星様・・・念願の巨人の☆になったとさ。めでたしめでたし「めでたくないわ! というか死んどらんからな! その前に助け(ごふぅ・・・)」 南無。

 

 屍とほとんど相違ない爺ちゃんはおいといて、第弐試合目。

 

「おーーーーっほっほっほ!! 一刀さん、ここで会ったが百年目ですわ!」

「麗羽! それは何の遊びにゃ!?」

「あそび!? うーちゃんもいれるべきだ! ぜひ!!」

 

 ・・・三人よれば姦しいとはよく言ったものだよ。なんか、美以とうーちゃんも俺を指差して「ここであったがひゃくねんめ!」と言ってきた。意味についてはとくに考えてない・・・もとい、分かんないんだろうな。

 

「あぁ、すみませんすみません! ほら麗羽様! 私たちの番はまだですからべんちに戻りますよ!」

「何ですの? 斗詩さん、今いいところなのですから邪魔しないでくださる?」

「そうにゃそうにゃ!」

「美以もさっさと戻りましょうね~。」

「にゃ~~!?」

 

 首根っこを祝融さんに掴まれ引きづられていく美以。ドナドナ~。

 

「かずと、これはどんなあそびなのだ? よくわからん。 われにもくわしくおしえてくれ!」

「そんな期待のこもった目で見つめられても・・・。 多分麗羽の方が詳しいから麗羽に」

「かずとにききたいのだ!」

 

 俺にどうしろと!?だってこれ遊びでもなんでもないじゃん!

 我に任せておけ。

 

「漆よ、ここで会ったが百年目ごっことはな、遊ぶ前の宣言みたいなものだ。 自分たちの方が強いのだから目を離してくれるなよ、とな。」

「おぉ~。 じゃあかずと! うーちゃんのかつやく、みのがすなよ!」

「うん。」

「あとでかんそうもきくからな!」

「わかったよ。」

「ではあとでな~。」

 

 ・・・あんなんでいいの?

 言ったもの勝ちのようなものだからな。漆がそうなのかと納得してしまえばそこまでだ。後は己で答えを出すだろう。・・・今回の場合、答えがあるのかは置いておいてな。

 な、なるほ・・・ど?・・・なんか煮え切らない!!

 

・・・

 

 

 一回表。攻撃は桃香チームから。一番打者は麗羽。俺は今回に限りキャッチャーミット等は付けてない。投手が百合だもん・・・体に重しを付けてるような状態じゃ万全の状態でカバーできないし・・・

 

「百合!! 本当に大丈夫!!? 怖かったらいつでも言っていいからね!!」

「大丈夫ですよ~♪ 一刀さんは心配症なんですから~~♪」

 

 あぁ、心配だ・・・。やっぱり落ち着かない!!そしてもう一人、俺と同じくらい落ち着きのない子が約1名。

 

「姉様・・・怪我とかしないとよいのだけれど・・・というか球をまっすぐ投げられるのかしら?」

 

 俺とは別の意味で心配してるみたいだな・・・。

 

「にゃわわ・・・ちゃんと球取れるかな・・・。」

「大丈夫。 恋、頑張る。」

「うぅ~、頼りなくてすみません。」

「気にしなくて・・・いい。 頑張ったら、一刀にご褒美、もらえる・・・から。」

 

 ????? 恋の口から身に覚えのない単語が聞こえたんだけど・・・。

 

「で、でしたら私も頑張りますよ~!!」

「・・・無理は、禁物。」

 

 ・・・ふっ、また財布が軽くなる程度の話だ。どうということは事はない・・・。えぇと、愛紗になんて言おうかな・・・ご飯代ください?前借りさせてください?・・・駄目だ。どうシュミレーションしても行き着く先は・・・

 

 

~~~回想

 

「ご主人様は恋に甘すぎます! 上に立つ者、時には厳しくせねば下が育たないのですよ!! しっかりしてください!!」

「はい・・・。」

「大体ですね! 鈴々にも星にも桃香様にもです!! ご主人様がしっかりしてくだされば私もここまで口をすっぱくして叱ることもないのですよ!!」

「はい・・・。」

「それとですね!!! クドクドクドクド・・・・・・」

「わふーーー!!」

 

 

回想終わり~~~

 

 

このように廊下で正座させられる俺の姿だ。なんでここまで回想が長いのかって?・・・ふっ、叱られた数では誰にも負けない自信があるからな。

 愛紗も大概、お前には甘いと思うぞ。

 ・・・えぇ~~~~?? どの観点から見たらそうなるのさ?

 お前の上目遣いにはいつも根負けしているではないか。

 ・・・・・・? 覚えがないんだけど? 恋あたりと勘違いしてない?

 やはり無自覚てあったか。まぁ良い。

 ???

 

「じゃあいきますよ~。」

 

 俺と薔薇の心配を他所に百合が球を投げる。超スローボール。球速は70キロいかないくらいかな。

 

「ふんっ!!」

 

 すかっ。

 

「すとらーいく!」

 

 コントロールはいいみたいだ。まぁ、武官の子たちに通用しないかもしれないけど、そこは俺たちでカバーすればいいか。

 

「あまりに遅くて打ちどきが上手く掴めませんわ。 一刀さん、何かコツはありませんの?」

「・・・麗羽、今は試合中だからさ。 試合が終わってからなら教えられるけど。」

「今でなくてはいけませんわ! さぁ、早くしてくださいな!!」

「と言われてもなぁ・・・。 馬騰さん、ちょっとタイム。」

 

 馬騰さんにタイムをかけてもらい、とある人にこちらに来てもらった。

 

 

「・・・北郷、麗羽が何か言ってきたら私を呼べばなんとかなると思ってないか?」

「・・・そ、そんなことないぞ?」

「まったく、その間でばればれだ。 で、今回はどうしたんだ?」

「麗羽が珠を打つコツを教えてくれって。 試合中に敵から打ち方教えてもらうのも何か違うでしょ?」

「敵側のべんちから相手を呼び出すのも問題じゃないか?」

「・・・まったくもってその通りです、はい。」

 

 ぶつぶつと文句を言いながらも麗羽にアドバイスを出す白蓮。なんだかんだで面倒見がいいからなぁ。

 

「ややこしいですわねぇ。 もっとこう・・・かっ!ぱっ!!すぱーん!!といきませんの?」

「ならねぇよ!! そんなの、北郷と愛紗くらいだろ。」

「待て待て。 俺だってそんなに上手くはいかないって。」

「これまでの北郷の行動を見てきた私からすればその発言、説得力ないからな。」

 

 うむ、それは確かに。

 半分は鈴のせいだからね!?

 私は力を貸したまでのこと。行動に起こしたのは一刀であろう?

 力を付与されたのも半分以上は無理やりだったんだけど・・・。

 気にするな、いつものことだと割り切ればいい。

 割り切ったら色々と大事なものを失う気がするんだ、俺。

 

「ともかく! 麗羽はもっと球をよく見て打て。 お前が早く振りすぎだ。」

「む~~~、納得いきませんわ! これで打てなかったら白蓮さんのせいですわよ!!」

「そこまで責任取れるか!!」

 

アドバイスの結果、ファーストゴロで敢え無くバッター交代。だが麗羽としてはバットに当たったので良しとしたようだ。ま、まぁ、本人が納得したからいいのか・・・?

 

「うーちゃんのでばんだーーー!! とおくまでとばすぞーーー!!」

 

 バットをブンブン振り回すうーちゃん。砂埃の舞い方が尋常じゃないんだけど、球が破裂したりとかしないよね?・・・ね?

 

「えぇ~~~い。」

「とりゃーーー!!」

 

 おぉ・・・飛ぶ飛ぶ。流石はうーちゃんだなぁ。というか竜だからパワー自体が桁外れなのか。・・・場外とかそんなレベルじゃないな。破裂はしなかったけど、行方不明になっちゃった。とりあえず、馬騰さん・・・審判の判断によりホームラン扱いになった。いくつボールが消えるか心配になってきたぞ・・・。うーちゃんがスキップしながらダイヤモンドを一周し、ホームへと戻ってきた。

 

「かずと! とおくまでとばしたぞ!! すごいだろ~~」

 

 俺にVサインを送るうーちゃん。なんともまぁ、嬉しそうな顔しちゃって。打たれたはずなのに、こっちまで嬉しくなってくるような、そんな笑顔だ。

 

「すごいね。 流石はうーちゃんだ。 おめでと。」

「つぎはもっととおくまでとばしてやるぞ!!」

 

 ホームラン記念の意味もうーちゃんの頭を軽く撫でてあげた。チームとしては敵どうしだけど、妹みたいな子だからね。このくらいはご褒美としてあげてもいいはずだ。

 

「ふむ・・・活躍すれば一刀に頭を撫でてもらえる・・・もとい、ご褒美をもらえるのだな。」

「っ!?」

 

 ん?あたりの雰囲気が変わった・・・?

 

「かずと、どうかしたのだ?」

「・・・なんでもないよ。」

 

 気のせいか?・・・この時の俺はまだ気付いていなかった。皆の目付きが明らかに変わっていたことに。

 

 

「若い子達は元気だねぇ。」

「え~い。」

 

 美彩姐・・・その発言は色々と負けじゃないか?うちの百合は打たれてもマイペースです。

 

「あらよっと。」

 

 先ほどのようなホームランではなく弾道の低いピッチャーライナー。百合が反応出来る間もないまま股下を抜けていく。プロ野球ならばツーベースヒットものだ。だが、うちのセカンドとショートは恋と管轤さん。まさに鉄壁と言っても過言ではないだろう。

 

「ふんっ。」

「うひゃっ!!」

 

難なく恋が捕球し、ファーストへ差した。一塁の明里はグラブを構えていたところにドンピシャで飛んできたことに驚いたみたい。というか、明里の場合は構えたとこに飛んでこないと取れないかな。

 

「ここから先は通さんぞ。」

「あれま、こりゃ残念。」

 

 まったくもって残念という表情ではないぞ。というかパワーヒッター多すぎぃ!誰が打者でもホームラン狙えるなんて・・・下手なとこにサインも出せないし。

 

「れ、恋さーん、もう少しだけ加減してもらえませんか~?」

「ん? 加減・・・した。」

「今どのくらいに抑えてるの?」

「ちょっと。」

「ん~~~? 俺が璃々ちゃんと遊ぶ時くらいに抑えられる?」

「(ふるふる)。」

 

だよなぁ。

 

「セキト、撫でるくらい?」

「うん、それぐらい。」

「分かった。・・・それより。」

 

 ・・・? 恋がこちらに歩いてくる。

 

「恋、ちゃんと抑えた。 だから・・・撫でて。」

「試合が終わってからじゃダメ?」

「うーちゃん、撫でてもらった。 恋は・・・駄目?」

 

 そんな捨てられた目をするなって・・・まぁ、そのくらいならいいか。

 

「~~~♪」

 

 撫でてあげるとそりゃもう、ずっと撫でてあげたくなるくらい上機嫌になるからなぁ。俺もほっこりするからついつい。・・・観客席から「恋殿~~~」と聞こえた気がするが気にしないでおこう。いつものことだし。

 

「微笑ましいわぁ。 じゃあ私がホームランを打ったら・・・ぎゅーーーっと抱きしめてあげるわ♪」

「か、母さん・・・試合中だから少しは自重してくれると・・・。」

「♪♪♪」

 

 あ、鼻歌を歌って誤魔化したな。というか聞き耳を持ってないぞこれ。まぁ、そんなこんなで白蓮を三振に抑え攻守交代。一番、俺。捕手が一番ってありえない打順だとは思うけど、仕方ない。

 

「ご主人様~、頑張ってくださ~い!」

「隊長~~~!!」

「北郷様~~~!!」

 

 観客席が一斉に盛り上がり始めたぞ!?主に女の子たち。軽く手を振ると黄色い歓声が一際大きくなった・・・ここまで目立つと少しやりずらいなぁ。

 

「一刀はいいのぉ、おなごにモテモテじゃ。 それに比べて儂は・・・。」

「爺さん、気にすんな。 兄貴のあれはいつものことだ。 本人が無自覚な分、対処法もねぇしよ。」

「じゃあかずくん。 後ろの子たちには悪いけど、遠慮なくやるわね。」

「えぇ、お願いします。」

 

 

 投手に祝融さん、捕手に燼。このバッテリー・・・ゴリ押しで攻めてくるだろうな。下手に盗塁もしない方がいいだろう。

 

「ふっ!」

 

 一球目。ど真ん中ストレート。とりあえずはセオリーどうり見逃そう。

 

「すとらーいくっ!」

「慎重ねぇ。 私なら打ち頃と見えた瞬間、大振りしちゃうのに。」

「祝融さんのように器用ではありませんので。 コツコツと、相手の出方を窺いながら俺なりにやっていきますよ。」

「私が器用? 面白い事言うわね。 というか、かずくんが器用じゃないなら器用な人なんてひと握りしかいなくなっちゃうわよ?」

 

 そんなことを言いながら祝融さんはフォームを整え、二球目を投げた。次は低めいっぱい・・・入ってる!

 

「ふんっ!!」

 

 ギリギリまで引き付けた球・・・打った感触的に真芯では捉えられていない。低めから更に落としてきたか。ピッチャーゴロ・・・とりあえず一塁ベースまで走るか。

 

「これでワンアウト・・・って、桃香ちゃん! 前に出すぎ!!」

「へっ!?」

 

 桃香が一塁手なのだが、ベースから離れすぎてる。これなら凡打でもヒットになる可能性はある!

 

「桃香ちゃん、球もってかずくんに触れればいいから!!」

「わ、わかりました!! けど、ご主人様遠いよ・・・こうなったら~~~えええええい!!」

「ちょっ!?」

「掴まえた~~♪」

 

 タッチアウトというよりも抱きつかれてる・・・。いや、流石に飛びかかってくる猫の如き勢いで飛びかかれたら俺も避けように避けれないわけで。

 

「いきなり飛び込んできたら危ないだろ、もう~。」

「えへへ~♪ だって、こうしないとご主人様をあうとに出来なかったんだもん。」

「俺が避けるって考えはなかったの?」

「抱きついたらちゃんと受け止めてくれるって知ってるもん♪ だから、今回は私の勝ちだよ♪」

「・・・してやられた。 けど、次はこうはいかないよ。」

「うん♪ けど、ずーーっとこうしていたいなぁ。」

 

 桃香が力が少し強くなる。けど、痛いとかじゃなくて・・・どこか安心する優しい力加減。

 

「こういうのはお休みの日にしなさい。」

「じゃあじゃあ! お休みの日はご主人様にずーーっとくっついてるからね!」

「お仕事がない日ならね。」

「やた♪」

「イチャイチャイチャイチャ・・・あんたら、夫婦漫才は他所でやりなさいよ。 ぼくの打順なんだけど、祝融も投げるに投げれないじゃない。」

 

 俺と桃香をジト目で見やる詠。周りの視線がちょっぴり痛いのは・・・気にしないとして。

 

「・・・詠も混ざる? 漫才?」

「やらんわーーー!!」

「あいたーーーっ!?」

 

 詠のデコピン、いつもより二割増くらい痛かった。ちょっと反省。

 

・・・

 

 

・・・そんなこんなで試合が進み、4対3でどうにか勝利を掴んだ。というか、撫で疲れたよ!管轤さんと鈴には抱きしめられ、祝融さんと燼には頭を撫でられ、ほかの子達はヒットor フォローする度に俺のもとへ駆け寄ってくる始末。                                                

詠もなんだかんだで俺に撫でられていたし・・・月が無理やり?引っ張ってきたのは気にしないけど、詠も月には弱いからなぁ。俺も人のこと言えないけどね!

 ひとまず、次の試合から一刀ご奉仕ポイント(婆ちゃん命名)は試合が終わった後にまとめて精算ということになった。・・・はぁ、先が思いやられるよ。だって、一試合だけで・・・というか一打席あたり一回の計算で誰かしらに点数が入るから残り試合8×最低打席54-男の打席数・・・絶対精算できない気がする。

 ちなみに、今回は総当たりで勝ち点制で争うことになってるから延長戦はない。時間の都合上、こっちにかまけてばかりだと仕事が貯まるからねぇ。そうなると、俺に泣きついてくることになるだろう子たちが目に浮かぶな。

 

~~~参戦目・・・弐組対伍組。

 

「あらあら、わざわざ嬲られに来るなんて・・・あんたたちも物好きねぇ。」

「実の息子にその発言はどうかと思うよ、母さん。」

「儂らと一刀の扱いの差は何なんじゃろうな。」

「愛らしさよ!! 一刀可愛いじゃない!! 異論は認めないわ。」

「流石は菊璃の義母様。 美桜様の一刀様に対する溺愛っぷりは健在のようですね。」

「当然よ! というより、美桜と同じ組だと頼もしいわぁ。」

「恐縮です。 今回は霧刀様、影刀様と相対することが出来るのでこの鄧禹、久しぶりにやる気が出てきました。」

.「母さんと海未の組み合わせか・・・勘弁してくれ。」

「影刀様、霧刀様、お覚悟を。」

 

 へぇ、海未さんもあんな楽しそうな表情するんだな。母さんとお茶会をしているときは温和な印象が強かったけど、童心に帰ったと言えばいいのか。

 

「海未さん、楽しそうだね。」

「えぇ、そうね。」

 

 隣に来た母さんに声を掛ける。海未さんたちを見つめる母さんの表情もどこか穏やかというか、昔を懐かしんでいるような・・・そんな感じだ。

 

「私たちがまだ学生だった頃は、あんな表情の方が多かったのよ。」

「へぇ、なんか意外だ。 俺の中では優雅に微笑んでるイメージが強く残ってるから余計にそう感じるよ。」

「幼馴染だもの。 あの子のことなら色々なことを知っているわ。 けど、私が王として天下統一を目指し戦続きになってから、あの子の笑顔が少しずつ減っていったの。 戦中は一つの選択ミスが命取りになる・・・そんな考えが付きまとっていたのでしょうね。 

あの子は常に策を張り巡らせていた。 戦時中でなくとも、次の戦、その次の戦・・・その次・・・その次ってね。 仲間が増え、勢力が大きくなるのと比例してあの子はどんどん自分の中に抱え込むようになってしまったわ。

どうにかしないといけないと頭では理解しつつも、私はあの子に救いの手を差し伸べることはできなかった。 あの頃の私は臣の一人一人より、全体を上手くまとめあげなければって考えだったから。 そんな問題山積みの状態のときに現れたのが・・・霧刀さんだった。」

 

 それからの話はちょいちょいノロケ話とも取れるようなものも混じっていたけど、海未さんとの仲直り話だったり父さんとの馴れ初めだったり、はたまた俺の小さな頃の話だったり。たまに母さんの行き過ぎた行為に頭を抱えることもあるけど、やっぱりそこは俺の生みの親なんだなとしみじみ思う。似たような考えも多いことが分かった。

 

そして・・・俺がどれだけ愛されてこの世に生を受けたのかもよく分かった。

 

「母さん。」

「ん? どうかした?」

 

 俺は母さんの話が一段落終えたところで口を挟んだ。良い機会だから今のうちに言っておきたい。感謝の気持ちを。母の日のようなプレゼントは無理だけど、せめて言葉だけでも母さんに伝えておきたい。そんな気持ちになったから。

 

「俺を生んでくれてありがと、母さん。 俺、母さんの子供でよかった。」

「一刀・・・。」

「母さんが俺をどれだけ大切に思っていたか改めて分かったから・・・だから、ありがと。 本当は言葉だけじゃ足りないんだろうけど、俺の正直な気持ちだから。 それに、今を逃したら恥ずかしくて言えそうにないからさ。」

「・・・ありがとうね。 私の子供として生まれてきてくれて。」

 

 母さんに優しく抱きしめられる。この心の中まで温かくなる感覚・・・なんだか久しぶりだ。子供の頃以来だからなぁ。まぁ・・・たまにはこういうのもいいだろう。親子の抱擁も終わったところで観戦に戻ろうか・・・ん?至るところから生暖かい視線を感じるぞ。

 

 

「いいわねぇ。 うちの子も一刀くんと同じくらい・・・とまではいかないまでも、もうちっとくらいあたしのことを気にかけてくれないかねぇ。」

「お袋にあんな抱擁は似合わねぇだろ。 拳骨のが万倍似合ってらぁっ・・いだぁっ!?」

「そうかい。 ならあんたには万回拳骨してやろうかねぇ。 そしたらその減らず口もちったら減るだろうよ。」

「ったく、こんなんだから似合わねぇっつってんのによ、ったた。」

「んん~~~菊璃さんも腕を上げたわねぇ。 それよりも一刀よ!! あの子、いつの間にあんな年上キラーに・・・母性本能が擽られるわぁ♪ やっぱり一刀は天使だったわ!! 流石は私の孫ね!!」

 

 ・・・~~~!! は、恥ずかしい!! まさか皆に見られてたなんて・・・。

 

「あらあら・・・。 まぁ、私は嬉しかったのだから、一刀も胸を張っていなさい。 自分の心に正直なところはあなたの美徳よ。」

「そう言われてもなぁ・・・恥ずかしいものは恥ずかしいって!!」

 

 あとで何を言われるか・・・試合が全て終わったら少しの間、どこかに隠れていよう。

 

「ふふっ、いいものも見れたところで・・・うちの男衆に目にもの見せてあげるわ♪」

「あらら、美桜ちゃん、あまりいじめちゃ駄目よん♪ 霧刀ちゃんたちはもっと優しくしてあげないと・・・ぐふふ♪」

「これ貂蝉、抜けがけとは卑怯な!! 儂ら漢女たるもの、可愛い男子には丁重に奉仕するという鉄の掟があるのを忘れたか!! ・・・だがしかし、今ここでヤらねば機会を失いかねん。 よし!! 貂蝉、儂はヤるぞ!!」

「・・・(私も活躍すればご主人様に抱擁できるのか・・・いや、ここはしていただく方がありがたみが増すというものか。) ・・・はっ!? いかんいかん、気合を入れろ私!!」

「あわわ・・・愛紗さんたち、やる気いっぱいですね・・・。大丈夫でしょうか・・・?」

 

 朱里の心配を他所に試合開始・・・。

 

「他愛ないわね。 あっけなく三振なんて・・・。 私、まっすぐしか投げてないのよ?やる気あるの?」

「お前はもうちっと手加減せんか!! ここぞとばかりに本気で投げおって!!」

「一刀が見ているもの。 仕方ないじゃない。」

 

 一回表・・・猪々子、蒲公英、爺ちゃん。 婆ちゃんのストレート9球で三者凡退で交代。ぱっと見た感じ・・・打てる人いるのかな? 捕手を貂蝉がやっているのも頷ける。婆ちゃんの球、グルーブに捕球されたときの音が尋常じゃない。 重く、鈍い音がこちらまで響いてくる。 多分、並の人じゃ捕球しようにも球の勢いを殺しきれず後ろに吹き飛ばされてしまうだろう。

 

「蒲公英、もう打者やりたくないよ!! あれ当たったら絶対死んじゃうって!」

「次の回まで回ってくるか分からないですよ~~!! う~~~、あんな球投げられたら考えた策も意味を成さなくなります・・・。」

 

 がっくりと肩を落とす朱里。・・・婆ちゃんが投手というのが一番の誤算だろうな。

 

一回裏・・・一番、愛紗。・・・贅沢に使うよなぁ。うちに愛紗がいたら三番か七番で打ってもらうのに。とりあえずまぁ、今回のルールで投手はバッターボックスに立てない為、婆ちゃんが打席に立つことはないんだけど・・・漢女二名に喧嘩武将二名。あとは紫苑に流琉に艶火かぁ・・・。それに加えて策を練るのは海未さん。隙があるなら教えて欲しいくらいだ。

 

「父さんがもう投げん! って言うから、投手変わったら相手チームは母さんに漢女たちか・・・ついてないよ。 まぁ、活躍のなかった父さんの汚名返上だ!!」

 

 そう意気込む父さん。

 

「でりゃあああああ!!」

 

 しかし、そう現実は甘くなかった。愛紗の渾身のひと振りにより容易く柵を越えられホームラン。

 

「ご主人様が見ておられるのだ。 私がこのようなところで立ち止まって良いはずがない。」

 

 愛紗が悠々とダイヤモンドを一周する。流石は愛紗だな。決めるところはびしっと決めて、けどそれを誰かに自慢することなく誇りにしているから、より一層カッコよく見える。

 

 

「愛紗ーーー!! かっこよかったよー!!」

「っ!? ご、ご主人様!? ~~~っ//」

 

 あら、顔背けられちゃった。

 

「あれは・・・照れてるな。 遠目からでも顔が赤いの分かるし・・・可愛いなぁ。」

「せやねぇ。 ほんまかわええわぁ。 どないしてあないにかわええんやろなぁ・・・。」

「兄貴と霞姐さんの可愛いの意味合い、何か違うよな。」

「蒼はちょい黙っとき!! 今はかわええ愛紗を見らんとあかんねん!! 邪魔すんなや!!」

「・・・姐さん、そっちの毛はねぇはずだよな?」

「し、霞!! こっちまで聞こえているぞ!! あまり恥ずかしいことを何度も言うな!!//」

「かわええもんはかわええんやもん!! かわええ愛紗が悪いんやでーー!!」

「~~~~~/////」

 

 今日も照れると可愛い愛紗でした。

 

 さて、真っ赤になってる愛紗の話はまた別にするとして(きっ!!)・・・なんか睨まれたよ!?これがもしかして以心伝心!?まぁいいや。二番、流琉。

 

「よろしくお願いします!!」

 

 流琉もやる気いっぱいだな。父さんにお辞儀をして、バットを構える。

 

「儀礼を重んじることは良いことだ、私から花丸をあげよう。 だが、容赦はしない!!」

 

 第一球、140キロ後半くらい・・・ということは変化球だな。

 

「ぼーる!!」

「外角いっぱいのところを攻めたんだが、振ってはくれないか。」

「私もどこまでが振って良い範囲かは分かっています。 ハッタリは通じませんよ。」

「おいおい兄貴よぉ、もっとどかっと投げていいんだぜ。 というかそうしろよ!! オレが面白くねぇ。」

「どかっと投げて先ほどの結果だ。 私たちはもう少し慎重になる必要がある。 母さんみたいにまっすぐだけで抑えられるほどの剛がないなら、私は柔の考えを持つべきだ。 勿論、捕手の咲夜もな。」

「ったく、めんどくせぇな。 そういうのは海未の専売特許だしよ。 ・・・そうだ!! 馬騰、タイムだ。」

 

 ん?タイム?なんか父さんと咲夜叔母さんが話し込んでる・・・。まだ一回裏だぞ。これからだって言うのに何を・・・。

 

「はぁ~~~、やっぱこっちの方がしっくり来るぜ~~~!!」

 

 ここで投手交代!?まだ父さん二球しか投げてないのに!?

 

「こんなことだろうとは思ったよ。 咲夜、ちゃんと加減するんだぞ。」

「へいへい。」

 

 咲夜叔母さんの投球練習。・・・確かに早い。160は出てるけど・・・何か違和感があるな。そして投球練習が終わり、流琉がバッターボックスに戻る。

 

「よろしくお願いします!!」

「はははっ!! その活きやよし!! ガキはそう、元気があってこそだ!! それでこそ・・・」

 

 咲夜叔母さんの顔つきが変わった。あれは・・・やばい。本気モードだ。

 

「オレに殺られるべき相手ええええぇぇぇぇぇ!!!! 怪我しねぇよう、目ん玉見開かねぇとおおおぉぉぉ、マジで死ぬぜえええええぇぇぇぇ!!!!」

 

 咲夜叔母さんが球を投げた。ど真ん中ストレート。しかし流琉は反応することすらできず、気づいたときには父さんのグローブの中。・・・父さんの足場のヒビ割れが球の勢いを物語っている。

 

「流石は我が見込んだ武人だ。 あの者の太刀筋はなかなかに重かったが、野球でもあそこまで力を発揮できるのだな。」

「・・・咲夜叔母さん相手に流琉はちょっと可愛そうだなぁ。 あの一球だけで流琉、ガチガチに硬くなっちゃってる。 ・・・あれじゃ本当に怪我しかねないよ。」

 

 

 流琉はどうにか心を落ち着かせバットを振るも三振に終わった。

 

「熊さん、すみません。 私では敵いませんでした」

「典韋の仇、この儂が取ろう。」

 

 三番、卑弥呼。バッターボックスに立ち、ひと振りすれば砂塵が起きるほどのパワー。咲夜叔母さんの豪球に対抗できるとすれば漢女と婆ちゃんくらいだろう。愛紗も球に当てられるとは思うが、遠くまで飛ばすとなると至難の業だろう。

 

「ゴツイおっさんの一人が相手か。 相手に不足はねぇ。」

「でかい口を叩いていられるのも今のうちじゃ。 儂が一捻りしてやるわい。」

 

 咲夜叔母さんの性格上、ストレート以外の球種は視野に入れなくて良いだろう。まどろっこしいことがとことん嫌いで、一発勝負が大好きな人だ。己の力に絶対的な自信を持っている為、周りがちょろちょろしているのも気に食わないような・・・そんな人だ。

 

「おらああああああ!!」

「ふんんんぬぅぅぅぅぅ!!」

「へぇ、あの卑弥呼をホームランでなくファールにするなんて。 咲夜もやるわね。」

「私たちの中で力で適うものはいませんでしたから。 技量では耿弇が頭三ほどつ飛び抜けていましたが。」

「あの子は別格だもの。 まぁ、どちらも天武の才を持っていることに違いはないわね。」

「そうですね。」

「あぁ・・・こんだけワクワクすんのはいつ以来だろうなぁ!! 現代日本じゃ味わえねぇ感覚だ。 なぁおいぃ!! もっと・・・もっとだ!! もっとオレをたのしませてくれよおおおおおぉぉぉぉ!!!」

 

 ~~~

 

結果、四対四の同点で終わった。母さんと咲夜叔母さんの投手戦にもつれ込み、打者は形無し。むしろ婆ちゃんたちのとこの独走状態にならなかっただけでも驚きなんだけどね。

 

「ったくよぉ、爺さんや兄貴がもっとしっかりしてりゃあ勝てたのによぉ。」

「そう言うなって。 むしろ母さんたちや卑弥呼たち相手に引き分けたんだ。 この引き分けは十分に価値がある。」

「・・・。」

「爺さん・・・おーい、生きてっか?」

「・・・そっとしておいてあげよう。」

 

 その・・・なんだ。爺ちゃんが半分屍のようになっているのには訳がある。あれは確か八回裏。爺ちゃんが三塁からホームベースに戻る時だった。

 

~~回想

 

「これで一点追加。 これで王手じゃ!!」

「さぁせないわよぉん!!」

 

 猪々子がどうにか外野まで飛ばした球を右翼手、愛紗のレーザービームがホームに刺さる。捕手は貂蝉。ランナー影刀・・・いろんな意味で、大ピンチ。

 

「ぐふふ、来るがいいわ。 私の滾ったぼでぃで受け止めてア・ゲ・ル♪」

「ぐっ・・・儂は恐れんぞ!! 怪物ごときに恐れをなして何が武人か!!」

「いらっしゃーーーい♪」

 

 ホームにヘッドスライディングする爺ちゃん。その眼前には満面の笑みの貂蝉。つまり・・・

 

「ぎいやああああああああ!!」

 

 あの熱い抱擁は勘弁してほしいなぁ。何かが砕けるような音がしたけど、気にしないことにしました。

 

「? 一刀さん、何が起こっているんですか? 私もみたいです!!」

「姉さん、一刀がこうやって目を抑えてる時はよろしくないことが起きてる時なので、見ないほうが良いのでしょう。(私もちょっと気になるけど・・・見ないほうがいいって一刀が決めたのなら仕方ないわね。)」

 

 教育上、大変よろしくない絵面だったため、うちの子たちの視界には当然入れさせませんでした。

 

~~回想終わり

 

 

「・・・お爺様が半分息絶えている状態なのは、半分は私のせいです。」

「関羽さんは悪くないよ。 父さんの運が悪かっただけだから、気にしなくていい。」

「は、はぁ。」

「だらしねぇなぁ。 あんなデカブツ、ブッ飛ばしゃあいいだけの話じゃねぇか。」

「それが出来るのは咲夜と卑弥呼と祝融さんと母さんくらいだよ。」

 

 咲夜叔母さんの本気モードもすっかりなりを潜め、通常モードに戻っている。

 

「ふむ、現時点では一刀たちがトップね・・・菊璃さんたちのとこはまだ試合してないから点数に変動は無しっと。 ワクワクするわねぇ♪ それはそうと・・・」

 

 婆ちゃんが観客席に戻り、母さんがいる席へと向かった。

 

「菊璃さん、ビデオの方はどうなってるかしら?」

「えぇ、抜かりはありませんよ。 一刀の試合はあと三試合ですので、残りもばっちり撮っちゃいましょう。」

 

 ?? 何だろう、ロクなものではなさそうだけど・・・二人とも楽しそうだからいっか。

 

 それからというもの、順調に試合が進み・・・うちの組対父さんたちの組。

 

「影刀~、一刀にデッドボールなんて当てたら浮気するわよ~~♪」

「そげなことせんわ。 というより、儂以外に男の知り合いおらんじゃろ。」

「一刀をお嫁さんにするわ♪ うんとおめかししてウェディングドレス着せたら絶対可愛いわ!!」

「俺!?」

「一刀・・・お嫁さんになるの?」

「ならないよ!? 零ちゃん、変なこと覚えちゃダメだからね!?」

「・・・難しい。」

「そうか!?」

 

 先ほどの試合とはうって変わってのほほんと試合が進んでいった。

 

「はわわ~~~!! 劉協様~~どいてくだしゃ~~~い!!」

「へっ!? ちょっ、ちょっと!? 球が外野から飛んできてるから私もどけないわよ!!?」

「あぶなっ・・・」

「わふっ!」

 

 張々乱入。二人の激突は張々の体がクッションになったことで免れた。

 

「張々、よく・・・やった(ぐっ)。」

「わおんっ!!」

 

 恋が呼んだみたいだけど・・・呼んだ意味はあったのか!?張々はというと、何事もなかったかのように観客席のねねのもとへと戻っていった。

 

「爺ちゃん! 月にボール当てたら呪うからね!! 管轤さんが。」

「お任せ下さい。 一刀様の命ならばこの管轤、とっておきを用意いたしましょう♪」

「・・・儂に味方はおらんのか?」

「だ、大丈夫ですよ。 どこかにいるはずです!」

「では董卓ちゃんは儂の味方をしてくるのじゃな!?」

「わ、私はご主人様のめいどですから・・・ご主人様の味方です。」

「・・・儂、そろそろ泣くぞ。」

 

 とまぁ、こんな感じで試合が進み・・・一対二で負けてしまった。百合の体力が限界に近づいた為、九回裏でコントロールが乱れ最後は押し出しで点が入ってしまった。

 

「どんまいどんまい。 次勝てばいいよ。」

「ちょっと突かれました・・・。 私は少しだけ休憩させてもらいますね。」

「うん。」

 

 観客席に戻った俺たちは日陰に入り、とりあえず腰を下ろした。休憩すると言った百合はと言うと、俺の膝を枕にしてお休みもとい、お昼寝中である。ということで、皆休憩することになった。

 

「ふふっ♪」

 

 

 

頭を撫でてあげると気持ちよさそうにするからずーっと撫でてる。付け加えて言うと、俺の反対の膝では恋が陣取って昼寝している。

 

「俺の膝、そんなに気持ちいいもんではない気がするけどなぁ。」

「そんなことないですよ~♪」

「そうですね。 まぁ、他の男性から膝枕をされたことないから分からないけど。」

「私はご主人様にまた膝枕して差し上げたいですね。」

「清羅の膝、ふわふわで気持ちいいんだよね。 機会があったらお願いするね。」

「はい♪」

 

 一刀たち、楽しそうね。うちにいた頃とはまた違う笑みを浮かべて・・・。

 

「あの様子なら一刀はうまくやっているようだね。」

「そうですね。 何より・・・幸せそうで良かった。」

「私の孫だもの。 世渡りは人一倍上手なはずよ。 管轤、一刀は私たちがいないとき、どんな風に過ごしているのかしら?」

「今ある光景と何ら変わりません。 皆に囲まれ、ご本人も笑顔で・・・何より、楽しそうに生き生きと過ごしていらっしゃいます。」

「そう・・・。」

「心配せずとも大丈夫じゃ。 外史を紡ぐご主人様はどの外史でも出会いに恵まれておる。 結果はどうであれ、幸せに生きておった。 そこにいるご主人様とて例外ではない。」

「えぇ。」

 

 少し離れた席で菊璃たちは一刀たちを眺めていた。息子、または孫の幸せを祈って。

 

~~~

 

 お昼休憩も終わり、そのまま試合再開。まぁ、ゆるゆると進み・・・全試合をとりあえず消化した。皆、疲労は確実に溜まったが笑顔だ。

 

「楽しかったね~~♪」

「そうですね。 たまには模擬戦以外で体を動かすのも良い。」

 

 婆ちゃんたちは現代日本・・・というか実家に戻った。撮っていたビデオカメラを早く見たいようで、晩御飯を食べるとさっさと帰ってしまった。管轤さんは一時間くらいで戻ってきたけどね。

 

「美桜様たちのあそこまで生き生きした表情はなかなか見れませんよ。」

「俺も一緒に見たいけど、多分婆ちゃんと母さんが暴走してるでしょ。」

「えぇ、勿論。」

「あ、あはは。」

 

 思わず苦笑いを浮かべるしかない俺であった。けどまぁ、またこんな形で皆集まって何かやるのもいいな。終わったら少し寂しくなるのは楽しかった証だ。時間があったら俺も皆で遊べるものを考えよう。ちなみに、婆ちゃんのリクエストで最後に撮った集合写真は俺の部屋に飾られている。なかなかない一枚だ。

 

 次の集合写真を撮るときは・・・三国同盟が終わって、三国の皆が笑顔で集まっている写真がいいな。

 

 

 ・・・物思いに耽っていた俺は忘れていた。・・・いや、忘れていたかった。

 

「ご主人様~~~、ご奉仕ぽいんと集計終わったよ~~~♪」

「あっ・・・。」

 

 ・・・仕事する時間ないだろうなぁ。楽しいイベントはまだまだ続きそうです。

 

 

 

桃香 「あとがきの前のあとがき~~~♪」

薔薇 「恋姫†英雄譚、企画出たわね。 うぷ主のsyukaが執筆をちんたらしてたから報告が遅れちゃったじゃない。」

 

 すみません。

 

薔薇 「まぁ、それはおいておいて・・・他の外史の私が織り成す新たな外史。私とは違う私が出るみたね。」

百合 「薔薇ちゃんはずーっと私だけの可愛い妹だよ~~♪」

薔薇 「そうですね。 劉協という名は同じでも真名は違うもの。 今回は、姉様は出ないんですね。」

百合 「じゃあ皆さんが頑張ってる間、私は一刀さんと二人でお留守番しとくね~♪」

一刀 「あっちはあっちで頑張ってくれるだろうから、こっちの俺は百合とのんびりしとこうかな。」

薔薇 「あ、姉様ずるいです! 一刀、私もこっちにいるわよ!!」

一刀 「ちょっとからかっただけだよ。」

薔薇 「~~~// 」

蒼  「劉協ちゃんたちはいいよな・・・。俺なんて、翠の妹だぜ。しかも真名同じだしよ。いや、まだそれは百歩譲って妥協しよう。自己紹介文、酷すぎるだろ。」

蒲公英「えぇとなになに~~“え? なに? 蒼のおしっこ飲みたいの? やっだーもうご主人様ったらヘンタイさん♪” 蒼兄様さぁ・・・これ、引かれても文句言えないよ。」

蒼  「違う! 断じて俺じゃねぇ!!」

朱里 「雛里ちゃん、これはこれで・・・」

雛里 「( ̄― ̄)bグッ!」

蒼  「こら! そこの八百一好き軍師ども!! 兄貴と読者様がたに誤解されんじゃねぇか!!」

麗羽 「オーッホッホッホ!! 蒼さん! そんな細かいことで騒いでいるようでは大物になれませんわよ?」

蒼  「普段から騒いでる麗羽にだけは言われたくねぇ。」

麗羽 「ヘンタイさんの蒼さんはおいといて、英雄譚ではうちの田豊元酷こと、真直(マァチ)が出ますわ。」

斗詩 「真直ちゃんは頑張り屋さんで、私と猪々子と一緒に麗羽様のお世話をしています。真直・・・いつも苦労を掛けてごめんね。」

蒲公英「苦労人は斗詩だけじゃなかったんだねぇ。 馬家は他にも馬休ことルオ(漢字が分かりませんでした。)が出るよ。 すごーく真面目なんだよね。 蒲公英的にはもう少し肩の力を抜いてもいいと思うんだけどねぇ。」

愛紗 「蒲公英はもう少し馬休を見習ってもいいと私は思うぞ。 他の将についてはまた別の機会に紹介するとしよう。」

星  「愛紗にしてみれば恋敵が増えるのだ。 また眉間の皺が増えるのだろうな。」

愛紗 「星!!」

星  「はっはっは。」

愛紗 「ったく・・・。」

月  「皆さん今日も仲良しですね。 それでは今回はこのくらいでお別れです。 最後はご主人様のめいど、董卓こと月がお送りしました。 それでは皆様、また次回お会いしましょう(ぺこっ)」

 

あとがき  ここまでお読みいただき、ありがとうございます。今回は普段のものより倍ほどの文字数になってしまいました。いやはや・・・前のものを見返し、野球のチームを見返しを繰り返しているうちに四ヶ月も経っていました(驚愕)。

休憩がてら横になったら意識が飛び、6時間経過とかザラですね。さてさて、前半の書き始めの頃はマー君、移籍決定記念のはずだったのですが・・・もう自分の中ではヤンキースのイメージが定着していますね。

楽天にいた頃が懐かしい。とまぁ、今回のような全員参加のイベントものを書くのも面白いですね。プロットを一から考えるだけで脳みそ爆発しそうですが(笑)

今回の話に関しましては、一刀ご奉仕ポイントがどうなったかは皆様のご想像にお任せします。いたっていつもどうりと言えばいつもどうりですがねぇ。

次回はおおよそ半年ぶりに本編が進みます。久々でどう進めようかなぁ。と、脳内のちっちゃいおっさんこと、ちっちゃい私たちと相談してます。それでは次回、第九節:赤壁の戦い開戦前・・・一刀と鈴の行き先は でお会いしましょう。

 


 
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