蓮鏡「オォー!!」
私はトンファーを力強く握り、雄叫びを上げながら直進する。
そして敵の懐に飛び込み、全身全霊をかけた一撃ぶち込んだ
蓮鏡「トンファーキーーック!!」
「って、武器関係ねぇ!?うぼあっ!?」
私の渾身の蹴りが敵の腹に綺麗にめり込み、メキボキなどの骨が折れる音と砕いた感触があった。
恐らくトンファーからの攻撃が来ると予測していたのだろう。相手の予想に反した攻撃手段を取った事で、防御する事を忘れ防ぐ事ができなかったと言ったところね。
まったく、これくらいで隙を生むなんて、ズブの素人ね
蓮鏡「まーずひーとりー♪」
私は、お腹を抑えて膝を着いている敵の頭を思い切り踏み潰した。
敵は白目を向いて血を吐いている
「チッ!よくも同士を!?」
敵は残り三人。その三人全員が私に対して殺意を剥き出しにした
蓮鏡「きゃーこわーい♪おっかない男に襲われるぅ!
スケさん、カクさん、懲らしめてやんなさい!」
亞真「お任せを!季春さんはスケさんとカクさん、どっちがいいですか?」
季春「どっちでもいい…」
亞真はノリノリだが、季春はうんざりした様子で、両手に持った鉄扇を開いた。
この二人なら、1対1に持ち込めば負けないだろう。
まぁでも、念には念を入れておきましょうか
蓮鏡「こほん……季春、亞真…《あなた達は強い》」
季春「ハッ!」
亞真「覚悟です!」
季春と亞真は敵に向かって走り出す。季春は両手の鉄扇で切り込むように、
亞真は懐に仕舞っていたナイフなどを投げ込んでいた
「っ!?こいつら!急に強く!?」
「チッ!腐っても次代の呉の将だ!油断せずに当たれ!」
リーダーらしき男が交戦する二人に支持する。なら、私は頭を潰しましょうか
蓮鏡「はぁい。あなたの名前は何かしら?」
リーダーらしき男は、年齢は父様と同じくらいで雰囲気は威圧的で重い。
強いわね。先ほど路地裏で見かけた時は、ここまでの者には見えなかったが…
韓玄「我が名は韓玄。徐福様に仕え、真なる平和と幸福を目指すものなり」
韓玄?その名、どこかで…
蓮鏡「真の平和に幸福だぁ?」
韓玄「いかにも。この大陸が手を結んで17年、大陸は今だに武器を持ち、争うことをやめず、餓えに苦しむものもいる。それなのに、天の御使い、北郷一刀は女との情事に勤しむばかり。我々は、そんな一人の男の色事に付き合うつもりで大陸を任せた訳ではない。だが徐福様なら、そんな不幸な世界にはしない。それを実現する為の薬を発明したのだからな!」
そう言って韓玄は、白い錠剤を取り出した。あれが噂の麻薬かしら
韓玄「これを使えば、皆が平等になる!皆の気持ちが一つになる!争いがなくなる!皆が幸福になるのだ!この薬を大陸に届けるには、邪魔をするお前達の排除をしなければならない。故にこれは正義の戦!我々が闘うこの戦こそ、この大陸で流れる最後の血とする!」
韓玄は槍を構え、熱弁していた
蓮鏡「ふーん。で?」
韓玄「………は?」
蓮鏡「いや、だからなに?」
韓玄「お、お前、ここまで聞いて何も思わないのか?」
韓玄は戸惑っていた。自分のやっていることが理解されなかった事に、
動揺しているのだろう。そんな話、理解できるわけないじゃない
蓮鏡「はーい、しつもーん!あんたさっき、餓えに苦しむ人が居るって言ってたけど、
その薬を使えばその問題も解消されるのかしら?」
韓玄「そ、それとこれは関係ない!飢餓問題は徐福様が解決してくださる!」
蓮鏡「質問そのに!こっちで聞いてる報告によると、その薬の中毒性ってなかなか高いらしいじゃない?薬を与え続けなかった連中が暴れて、薬を奪おうと殺し合う奴らが居たって話があるんだけど、これについてはどう思う?」
韓玄「そんな事態にならない為にも、お前達が邪魔なのだ!
お前達さえ居なければ、薬を定期的に提供出来るのだから」
……はぁ…
蓮鏡「くっだらないわね」
韓玄「は?」
私達が相手にしている連中は、こんなにも馬鹿なのか
蓮鏡「あんた達が一刀おじさんに嫉妬して、こんなくだらない事を企てているのはわかったわ」
韓玄「くだらないだと!?」
韓玄は怒りを露わにし、殺気を剥き出しにした。だが、私はそんな事を気にせず話を続ける
蓮鏡「えぇくだらないわ。だってあなた、所詮人任せなんだもの。
その徐福とかいうキチガイに全部押し付けて、自分は何もしてないじゃない。
それって結局、今と変わらないじゃない。断言してあげるわ。
例え私達を倒したとしても、あなたは次にその徐福とやらに嫉妬する」
韓玄「な、なにを!?」
蓮鏡「薬で幸福になれる?そんなものはまやかしよ。一時の幻想に過ぎない。
その幻想から覚めた瞬間、人は地に堕ちる。薬を求めて、奪い合うわ。
まぁ、徐福はそれすら、狙いなのかもしれないわね。
薬漬けにして、薬がないと生きていけない体にしてしまえば、
その薬を得る為に従わざるを得ないのだもの。やり方が卑劣。結局……《お前は弱い》」
韓玄「黙れぇぇぇ!!」
韓玄はとうとう感情を抑える事が出来ず、私に向かって突進してくる。
敵の槍が私の頭を突こうと迫って来るところを…
蓮鏡「興醒めね」
私は右手のトンファーで防ぎ、左手のトンファーで槍を砕いた
韓玄「なに!?」
韓玄は折れた槍を見て、一瞬放心する。
私はその隙を見逃さず、一気に接敵して懐に飛び込み、トンファーを握りしめた
蓮鏡「あんたの幻想は、私がここで砕いてあげる。猛虎連昇!!」
私は下からすくい上げるような一撃を敵の腹に打ち込み、少し空中に浮いたところを、今度は無数の乱打で一気に攻撃する。トンファーによる乱打は顔、胴体、下半身と体全体を満遍なく打ち込まれて行き、空中に上がった敵の体が地に着く事はなかった
蓮鏡「おりゃ!!」
最後にトドメだと言わんばかりに、怒涛の乱打の後、少し力を溜めて右手のトンファーによる渾身の一撃を敵の顔面に叩き込んだ。トンファーが敵の頬を捉え衝撃を与えると、敵は吹っ飛ばされ、空中で何回転もしてようやく地に堕ちた
蓮鏡「あんたは、人に嫉妬してばかりでその人のやってる事を見ようとしていなかった。
一刀おじさんがどれだけ、この大陸の為に汗水流しているのか本当に知ってるの?
より良い世界を作る為に血を流して、減らない悪と闘い続ける事に涙を流して、
それでも挫けず民を守ろうとしている。だから私は、一刀おじさんを支持する。
少なくとも、こんな武力行使しか出来ないあんたよりはマシよ」
私は無数の乱打で身体中が変形して倒れている韓玄に向かって吐き捨てる。
まぁ、一刀おじさんの女性問題については、フォロー出来ないけどね
季春「終わりましたか、蓮鏡様?」
亞真「うわぁ…いくら敵とは言え、これは同情してしまうくらい酷い事に…」
季春と亞真が何てことない様子でこちらにやって来た。
見れば二人とも賊を蹴散らしたようだ。
亞真が相手にしていた方なんて、いろいろ刺さって大変な事になっている
蓮鏡「亞真には言われたくないわ。それよりあれ、死んでるの?」
季春「はい。最期は自決しました。情報を渡すくらいなら死んだ方がマシと」
亞真「こちらも、四肢を封じたところで舌を噛み切りました。まさか自害するとは思っておらず…」
ふーん…なら私が倒した二人を城に…
「うわぁ…見事に失敗したなぁ」
蓮鏡「!?」
気付けば、一人の女の子がステージに上がって、韓玄の体を調べていた。
こいつ、いつの間に?
「あ、どもどもー。後始末部隊のものでーす」
女の子の手足は細くて長く、背中には彼女の丈には不釣り合いな程大きな弓が背負われていた
蓮鏡「あなたは誰?」
私と季春と亞真はそれぞれ武器を構える。
女の子はそんな事、毛ほども気にしていない様子で、韓玄の体に何かしていた
「言うと思いますかー?あたしは韓玄さんほど、口は軽くありませんよー」
蓮鏡「へぇ、なら、力ずくなら言ってくれるかしら?」
「えー、いやですよー。そういう汗臭いの嫌いだし。
あたしはお仕事は賢く済ませる方なんですよ……
はい、出来ました。それでは皆様、ご機嫌よー」
女の子は韓玄の体に何か黒い箱のような物を残して、飛んで逃げて行った
蓮鏡「な!?待ちな…!?」
飛んで逃げるのかと思ったら、女の子は空中で反転して弓を構えた。
そして構えられる矢には火が灯されている
黒い箱…火…後始末…
何が起こるかはわからない。だけど私の勘が、今すぐここから逃げろと告げている。
まずい!絶対にまずい!!
季春「待て!…!?蓮鏡様何を!?」
亞真「わっ!ど、どうしたんですか?」
私はあいつが弓を構えた瞬間、季春と亞真を両脇に抱えてこの場から離れようとする。
遠くに、なるべく遠くに…そして矢が放たれると…
ドカーーン!!
先ほどまでいたステージが、木っ端微塵に吹き飛んだ
蓮鏡「あぅ!」
私は爆風の衝撃に押され、二人を抱えたまま吹き飛ばされてしまった
ッ!?耳がキーンてしてる!あの女、爆弾なんてやってくれたわね!
さっき、街の方で聞こえたやつも、あいつの仕業か!?
季春「……さ…!……き…う……!!」
亞真「………」
季春は必死に私に語りかけ、亞真はグルグルと目を回していた。
耳鳴りが酷くて上手く聞き取れない。
あぁくそ!あの女、次見かけたらタダじゃおかないわ!
Tweet |
|
|
8
|
0
|
追加するフォルダを選択
こんにちは
Second Generations孫紹伝其四
孫呉編は次回で終了予定です