No.708295

恋姫OROCHI(仮) 一章・肆ノ肆 ~落着~

DTKさん

DTKです。
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、24本目です。

今回は場面転換が多いです。
簡単な図をつけたので、分からなくなったら合わせてご確認下さいm(_ _)m

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2014-08-13 01:05:51 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4418   閲覧ユーザー数:3932

 

 

 

翌日

 

「力押しで攻めに攻め立てろ!!」

 

左慈の一声で、敵軍が再び総攻撃を仕掛けてきた。

意外と、これが守備側には堪える。

もともと城兵の方が圧倒的に数が少ない上に、矢などの物資も有限。

籠もっている以上、有用な策もない。

死者・重傷者は出ないものの、城兵の間には確実に疲労が溜まり始めた。

 

 

…………

……

 

 

日が西に傾き始めた頃になると、城壁に梯子が掛けられるまで接近を許してしまっていた。

 

「お前ら、落ち着きぃ!!まずは弓兵を狙うんや!あ、おい!梯子はもうチョイ引き付けてから蹴落としぃ!」

 

東門でも激戦となり、将軍の霞が直接、陣頭指揮を執っていた。

 

「剣丞は危ないから下がっとき!全体見ながら、なんや動きがあったら教えてや!」

「分かった!」

 

霞の言葉通り後ろに下がり、内側に設けられた物見櫓を登る。

洛陽の東面全域の様子が、城壁の直下を除いて、俯瞰できる。

人の波が見える。

剣丞も戦国時代で戦は経験してきたが、まず規模が違う。

しかも敵は全員白い装束のため、何か別の大きな生き物のようにも見える。

相当数の敵兵を討ったはずだが、数が減ったように感じられない。

 

マズイかもしれないな…

 

そんなことが頭を過ぎった。

その時、

 

「ん……?」

 

目の端で何かが光ったように感じた。

なんだろう?

光った方角は、戦場の外、南東の地平線だった。

何かが蠢いているようにも見える、が、剣丞にはハッキリと見えない。

 

「霞姉ちゃんっ!」

「なんやっ!?」

「なにか向こうに見えるんだけど…」

「なんかってなんやねんっ!?」

 

少しイラつきながら振り返る霞。

彼方を指差す剣丞を見、その指先を追う霞。

何かがどんどん大きく、近付いているようにも見える。

 

「あれは……どこぞの部隊やないか?旗は……」

 

手をかざしながら目を細める。

と、

 

「あっはっはっはっ!!!」

 

突如笑い出す霞。

 

「ど、どうしたの?」

「援軍や、援軍!なんの字ぃまでかは見えんかったけど、この状況で二字姓は奴しかおらん!」

 

不敵な笑みを浮かべながら、陣頭指揮を放棄し、城壁の内側の階段に足を掛ける。

 

「騎馬隊は門の前に集合や!逆撃かけるでー!!時機は剣丞に任せんで~」

 

ぴょんぴょんと跳ねるように階段を駆け下りる。

 

「ちょ、ちょっと!今のこの敵どうしたらいいの!?」

「援軍やー!って鬨でもあげときぃ!そのうち嫌でも敵さんの方から崩れるわぁ~……」

 

あっという間に見えなくなる霞。

 

「………………」

 

 

「………え、援軍だー!!我々に援軍が来たぞ!!…さぁみんな、高らかに鬨の声をあげるんだ!!」

 

 

「ぇ、援軍だー!」

「えい、えい、おー!!」

「助けが来たぞー!」

 

東門では、剣丞の先導で徐々に大きな鯨波が起こっていった。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

「あれは……お味方ですかな?」

 

幽は南東方向を見ながら眼を細める。

 

「やったー!これで勝ったも同然だね!」

 

蒲公英は飛び跳ねながら両手をパチンと合わせる。

 

「どなたなのですかな?」

「すっっっっごいバカだけど、三国最強の武将の一人。三国一の大国の守護者、魏武の大剣!バカだけど!!」

「なるほど。あれが、あの…」

 

はぁ~、と溜息をつきながら再び南東に目をやる幽。

その威容は、徐々に大きくなっていた。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

玉座の間からも、湖衣が金神千里で部隊の存在を確認していた。

 

「少数ですが、南東より部隊がこちらに進軍!旗は……夏侯!」

「春蘭さん、ですね」

 

月がニッコリと微笑む。

 

「明命さん!北と西に伝令を!援軍が到着したことを伝えてきて下さい!」

「分かりました!」

 

こうして援軍の存在は洛陽中に伝播した。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

約二千の兵を率いた春蘭が馬に乗って先頭を走る。

その横を徒歩のまま凪が並走している。

二人の目には洛陽の城壁と、それを攻めている白装束の軍団が入っていた。

 

「春蘭さま、あちらです!!」

「おのれぇ~!どこのどいつだか知らんが、我らに楯突くなど許っ!せんっ!!

 者共!このまま、あのならず者どもに吶喊する!私に続けーーー!!!」

 

さらに速度を上げる春蘭。

許昌から走り通しだった兵も、疲労の色一つ見せずに、それに続く。

率いる将は一騎当千。兵は万夫不当の精兵。

それらが一塊となり、白装束に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

ドーーーーン!!!

 

敵軍後方から大砲でもぶっ放したような轟音がする。

文字通り、人が宙を舞っていた。

春蘭姉ちゃんの、いや、魏の猛将・夏侯惇渾身の突撃だ。

その辺の雑魚が敵うわけがない。

 

「霞姉ちゃんに合図を!銅鑼鳴らしてください!!」

 

ジャーン!ジャーン!

 

「行くでっ!!」

 

門がゆっくりと開く。

隙間から溢れるように、霞姉ちゃん率いる騎馬隊が出撃する。

後背から部隊が現れ混乱する敵軍は、城から出撃した霞姉ちゃんたちを見、さらに混乱を深める。

挟撃を受けた敵は、あっという間に駆逐された。

 

 

 

 

 

 

「おうっ、春蘭!」

 

東門の敵を蹴散らした霞は、春蘭に馬を寄せる。

 

「霞か。お前がいながら籠城など不甲斐ない。一体どういうことだ?」

 

戦場で顔を合わせるなり、無茶苦茶なことを口にする春蘭。

 

「いやいや、アホ言いなや。五万相手に一万ちょいで、どない戦えっちゅーねん」

「正面からぶち当たればいいだろう。全く、情けない…」

 

相変わらずやなぁ、と霞はため息一つ。

 

「それより、四方敵さんでギッシリなんや。掃除、手伝ってくれへん?」

「仕方ない。なら私が北周り、お主が南回りでどうだ?」

「悪ぅない。ほな、西門で会おか」

「あぁ!」

 

そう言うと二人は背を向けあい、それぞれの方向へ兵を引き連れていった。

 

 

 

 

 

 

東から喚声が聞こえる。

 

「夏侯の旗だ!春蘭の奴が来たぞ!!」

 

北門では、翠と雫が春蘭の隊を視認した。

 

「翠さん、敵軍は混乱状態にあります!こちらも打って出ましょう!」

「待ってました!お前ら、行くぞっ!!」

 

翠が嬉々として、騎馬隊の面々を引き連れ階段を下りていく。

 

「私たちは夏侯惇隊と馬超隊をここから支援します!在庫を気にせず、矢の雨を降らせてください!」

「「「応っ!!!」」」

 

城壁から矢雨を受け、側面からは夏侯惇隊の突撃。

そこへ翠率いる騎馬隊も登場し、北門の敵も瞬く間に一掃された。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

「これで一安心、ですかな」

 

霞の騎馬隊の突撃により、南門の敵も東側三分の一ほどが壊滅していた。

 

「そだねー。もうタンポポたちがやることないねー」

「ひょっ?いやいや、この時機でこちらも打って出るのが定石ですが……」

「そんなこと言ってもねー。化け物たちが出てきちゃったらタンポポの力なんて微々たるものだしね~」

「まぁ、そう言わずに…蒲公英殿が出たほうが戦自体早く終わりますぞ?」

 

春蘭の登場で一気にひっくり返る戦場を見て喜ぶ半面、力の差を感じ、やる気をなくしかけている蒲公英。

それを何とかしてやる気にさせようとする幽。

あまり普段は見られない光景だ。

 

「う~ん…そだね。早く終わらせちゃったほうがいいか。蒲公英隊、行くよー」

 

士気の落ちた敵軍相手に、霞と蒲公英は獅子奮迅の活躍を見せた。

北門と同じく、大した時間もかからずに敵を蹴散らした。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

西門では、両翼から敵軍を押し上げるさまが、ありありと目に見えた。

 

「これで勝ちね」

 

詠は眼鏡を直しながら、ふぅと息をつく。

 

「追撃、する?」

 

鞠が小首を傾げながら尋ねる。

 

「大丈夫よ、大勢は決したし。鞠は休んでて」

 

今日も投石器が投入されたため、鞠はかなりの氣を使っていた。

それに追撃部隊は、ほぼ騎馬隊で編成されている。

なので、歩兵や弓兵を出してもあまり意味は無い。

 

「私たちは高みの見物と行きましょう」

 

詠と鞠の二人は、城壁の上から春蘭たちの蹂躙を眺めることにした。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

「くそっ!くそっ!!くそぉーー!!!」

 

左慈は感情を抑えられず、地面に一発、拳を叩きつける。

既に戦局は明らかだった。

 

誤算続きだった。

董卓と賈駆しかいないという洛陽に将が八人以上も居、なおかつ夏侯惇の援軍が来るなど、誤算という言葉では片付けられない。

いったい何が起きているのか。

自分の知らない力が働いているとしか思えなかった。

しかし、今はそれを考えるときではない。

 

「ちぃっ!退却だ!」

 

左慈は匙を投げた。

 

「北郷……お前は俺が必ず、外史ごと潰してやる…っ!」

 

呪詛の言葉を残し、左慈と数の少なくなった白装束の一団は撤退していった。

 

 

 


 
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